日本の新聞の見方

時事問題の視点ー今の新聞テレビの情報には満足できない人のために

鉄道の復権をめざすアメリカ

2009-11-04 22:02:48 | 経済

関連するニュースを二つ。但し後のニュースは半年前である。

バフェット氏が鉄道大手を買収、総額440億ドルで同氏にとって過去最大

11月4日 6時32分配信 フィスコ

著名バリュー投資家のウォーレン・バフェット氏率いる保険・投資会社バークシャー・ハサウェイ(BRK)は、鉄道大手のバーリントン・ノーザン・サンタフェ(BNI)を前日終値に31%のプレミアムをのせた1株当り100ドル、総額440億ドル(約100億ドルの債務含む)で買収すると発表した。バフェット氏は6月末時点でバーリントン社の株式を22.6%保有する筆頭株主。この買収はバフェット氏にとって過去最大の買収案件となる。発表文において米経済は成長し、繁栄するに違いないとした上で「経済の将来にすべてを賭けた勝負だが、こういった賭けは好きだ」との見解を示している。

米メディア報道によれば、バフェット氏が所有する電力会社のミッドアメリカン・エナジーは米中西部と北東部にビジネス拠点を持ち、その両方の地域にまたがって鉄道を走らせているのが今回買収するバーリントン社であるという。また、今後の石炭需要を見込んでいるものの、石炭関連株は既にかなり上昇しており、石炭を運搬するバーリントン社を買収することでのメリットの方が大きいと考えているようだ。

株式市場では、この買収発表を受けてバーリントンが上昇。他の鉄道大手もバフェット氏が大株主となるユニオン・パシフィック(UNP)、CSX(CSX)、ノーフォーク・サザン(NSC)などが買われた。        株式会社フィスコプレイス


オバマ米大統領が高速鉄道計画を発表 当初予算は80億ドル

 産経ニュース 2009年4月17日 【ワシントン=山本秀也】オバマ米大統領は16日、米本土の主要都市を結ぶ高速鉄道計画を公表した。環境・エネルギー対策を視野に入れた21世紀型の大量輸送網の整備と、雇用創出を狙ったもので、景気対策法の予算枠から当初80億ドル(約8000億円)を支出するほか、向こう5年間で計50億ドル(約5000億円)を政府が追加投資する。  以下略

コメント
 この二つのニュースを総合するとアメリカも鉄道の復権をめざしているように見える。アメリカでは早くも南北戦争直後1869年には大陸横断鉄道が完成したが、その後の石油の発見、自動車の発明によってモータリゼーションがアメリカの輸送手段の主流を占めるようになった。 
 鉄道が十分発達しなかったのは石油業界と自動車業界の政治的発言権が非常に大きかったこともある。
 ブッシュ父子はテキサスの石油業界で財をなした家系であったので、二酸化炭素削減にも消極的、鉄道にも冷淡であったが、オバマが大統領になってこの二つの面で大きく変わった。

 エネルギー効率のいい順に並べると水運、鉄道、車である。日本は海に囲まれているので本来水運の条件には恵まれている。実際明治になって鉄道が普及するまでは水運が中心であった。近世以降発達した江戸、大阪、博多、広島、名古屋などの都市はいずれも海に面している。
 江戸時代初期、それまで東京湾に注いでいた利根川を現在の流れに変えたのは東北や北関東と江戸を水運で結ぶためである。当時としては国家的な大プロジェクトであった。現在では橋など構造上の制約もあり河川を水運として利用するのはむずかしいが、せめて海上輸送を増やすのは可能ではないか。二酸化炭素削減のためには高速道路無料化より鉄道やフェリーに補助金を出し安く利用できるようにする方がいい。

中国の大運河、揚子江は今でも物流の大動脈である。黄河は断流現象のためもはや水運には使えない。
日本の鉄道運賃は高すぎる。中国、アメリカとの運賃比較



日本の財政危機は偽りか?

2009-10-28 07:24:06 | 経済
 昨日、電子新聞「クオリティ埼玉」に書いた表記記事の冒頭部分を以下引用するので全文は同電子新聞でご覧いただきたい。

 先日テレビを見ていたら榊原英資氏が「日本には個人金融資産が
1500兆円あるので、国地方合せて約800兆円の債務があるが国債消化能力はまだ700兆円ある」と発言されていた。
 元大蔵省の高官であった人にしては雑な論理だ。個人には資産もあるが負債もある。個人の負債は住宅ローンを中心に2008年末で330兆円(推計)あり、正味金融資産は1270兆円(1500兆円-330兆円)に過ぎない。
そもそも日本に個人金融資産がいくらあるかということは、国債の国内消化能力の目安にはなるが、日本が財政危機であるかどうかの指標にはなりえない。以下続く

以下にこれに関連するニュースをnikkei.net10月28日から

市場での国債増発、09年度最大8兆円超に

 市場での新規国債の増発が2009年度に最大8兆円超にのぼる見通しになった。税収の落ち込みが6兆円にのぼることに加え、個人向けの国債販売が予定を約2兆円も下回るためだ。歯止めのかからない財政拡大とそれに伴う国債発行の急増が、長期金利に上昇圧力をかけている

 企業収益の悪化を背景に、09年度の国税収入は当初見通し(46兆1000億円)から6兆円以上落ち込みそう。財務省は落ち込み分の多くを償還までの期間が1年以下の国庫短期証券の増発で補う方向で検討する。10年物など国債の主要年限の発行量が飽和状態に近づいているうえ、市場関係者からも流動性の高い短期債の増発で対応するよう求める声が多いためだ。 (09:22)

因みに、日本は財政危機でないとする論者は前記の榊原英資氏の他菊池英博氏、リチャードクー氏、森永卓郎氏、宮崎哲弥氏など。いずれも経済学者もどき若しくは素人である。


日航 執行役員に国交相チーム 再建計画へ明確権限

2009-10-03 10:17:54 | 経済

10月3日7時57分配信 産経新聞

 経営危機に陥った日本航空が、再建計画の策定・実行に当たって前原誠司国土交通相直轄の専門家チームのメンバーを同社の執行役員に迎え入れる方向で調整していることが2日、明らかになった。専門家チームは現在、日航の再建計画の策定を助言しているが、計画の策定・実行に深くかかわるには明確な権限が必要との考えが背景にある。ただ、政府部内には異論もあり、流動的な面もある。

 専門家チーム「JAL再生タスクフォース」は、大企業などの再生を手掛けた旧産業再生機構の産業再生委員長を務めた高木新二郎氏がトップを務め、同機構最高執行責任者(COO)だった冨山和彦氏や弁護士ら5人で構成される。

 日航の執行役員に迎え入れるメンバーや人数などの詳細については今後詰めるもようだ。執行役員の選任は月内に予定する査定の終了後となる見通し。

 同チームは、業績不振に陥った日航の経営再建のため、前原国交相の直属として9月25日に設置された。現在、日航の資産査定に着手しており、再生計画の策定を助言している。 

 日航の西松遥社長はグループ社員の6800人削減や国内外50路線の廃止を柱とする経営改善計画の素案を前原国交相に説明し、同時に、改正産業活力再生特別措置法(産業再生法)に基づく公的資金注入を求めた。だが、前原国交相は「計画の具体性、実現可能性が不十分」として、専門家チームにより再建計画を作り直すことを決めた。 以上引用。

コメント
 JALの魂胆は見え透いている。「JAL再生タスクフォース」を経営陣に取り込むことによって経営責任を分担させようとするものだ。そうなれば簡単に見捨てられることはないだろうという目論見。タスクフォースから人質を取ろうとする作戦だ。前原大臣はこの提案に乗ってはならない。
 先日、前原大臣が「JALは十分自主再建が可能だ」と記者会見で述べた。タスクフォースがJALの資産査定に着手したばかりなのに何でそんなことが言えるのだろう。勿論、これは前原さんの本音ではない。取り敢えず世界に広がりつつあるJALの信用不安を鎮静化しようとしたものである。このまま行けば、キャッシュでなければ給油してもらえなく可能性だってある。
 JALの決算は相当粉飾されている疑いが濃厚だ。機体価格の過大計上とか先物取引で生じた含み損隠しなど。このまま推移すればJALは間違いなく倒産する。年金削減に三分の二の同意を得ることなどできっこない。レガシーコストを一旦チャラにするには破綻処理が有効だ。

村上龍の「カンブリア宮殿」+JR西日本と事故調査委員会

2009-09-28 23:21:28 | 経済

 昨夜テレビ東京の「カンブリア宮殿」を見た。ゲストは小型風力発電機のゼファー社の伊藤社長
 この中で伊藤社長が言っていたが、8月の末発効した法律で太陽光発電の売電価格が優遇されるようになったとのこと。ということはそれ以外の自然エネルギー発電装置は非常に不利な立場におかれるということを意味する。社長が憤慨したのはまことにもっともだ。村上龍はこれに関して頓珍漢なことを言っていた。問題の本質は村上が言ったことではない。経済産業省の産業政策なるものが肝心である。彼らは産業政策の美名の下に特定産業特に大企業の利益に奉仕している。エコポイントによって電器メーカーと自動車産業に恩を売ったのも同じ。太陽光発電を手がているのも大手電器メーカーである。経済産業省は景気対策に名を借りてこうした業界に貸しを作っているのである。(小規模風力発電の会社は小規模であるので経済産業省の役人の眼中にないのである)
 
 そしてこうした実績(?)を背景に、これらの業界に彼らは将来天下るのである。こうした構図をなくすことなしに天下り反対を言ってもしようがない。特に民間企業への天下りは当社に必要な人材ですと言われれば禁止するのはむずかしい。
 経済産業省の役人が半分は公益と信じ半分は私益(或いは無意識かもしれない)のためにやっている産業政策なるものをなくすことが大事だ。ということは経済産業省などなくても構わないということになる。先ごろテレビで「官僚たちの夏」という時代錯誤的ドラマをやったのは、「経済産業省など要らない」という世論が高まる前に先手を打とうとしたのだろう。誰があのドラマ制作過程を調べてくれないか。私は経済産業省がスポンサー企業をけしかけたと睨んでいる。こうした企業には経済産業省出身者も多数いる。

 JR西日本事故調査委員会の狎れあいもよく似た構図である。事故調査委員会を設置したのは国土交通省であり、委員を人選したのも同省である。そして委員の中三名はJR出身で、JR西日本の幹部とは元上司と部下という関係にある。どうぞ談合してくださいと言わんばかりの人選だ。だからこうした事態は当然予想できたはず。
 今のところ、JR西日本と事故調査委員が矢面に立たされているが、実はこうした委員の人選を行い、当事者が私的に会うのを禁じなかった国土交通省にも大いに責任がある。そして同省はJRの監督官庁としてもちつもたれつの関係にある。JR各社には同省出身者が何人もいる。
 
 上に述べたような官と民のもたれあいの構図を作ったが半世紀以上続いた自民党政権であった。谷垣新総裁にそうした問題意識をあるとは思えない。それにしても崩壊寸前の組織のトップになってよく万歳する気になれることだ。
 小泉進次郎もひどいね。たったあれだけのこと(「歴代自民党総裁の中誰を尊敬しているのか」)を質問するのに原稿を棒読みしていやがる。
 谷垣さん、党名を変更してくれないかな。グーグルで民主党を検索したいのに自由民主党ばっかりでてくる。 ためしに試みられよ。

 国土交通省関連でJALのこと。
JALの問題は旧国鉄問題とよく似ている。利用率の低い路線を無理に作らせ或いはなくさせない政治家と役人。強い労働組合等。
 問題は空港整備特別会計(道路公団と同じ)によって採算の取れない空港を作らせた国土交通省、各県の国会議員、知事、県議会議員等、それに彼らがいうところの「地方の活性化」なるものを信じ一票を投じた有権者の責任である。
 「地方の活性化」どころか今後各自治体の厄介なお荷物となることは疑いない。
 JALも発着料という名目で将来の空港建設費用まで払わされていたんだから多少同情の余地はある。
 来年茨城空港ができれば日本の空港数は99となる。まさか国土交通省さん、切りのいい100を目指しているんじゃないでしょうね。

 ついでに特殊法人への天下り。
 今日のニュースによれば特殊法人の人事は政府が斡旋するのではなく公募方式によると政府が決定したとのこと。天下り禁止が問題ではなく渡り鳥の飛来地としての特殊法人をなくすか縮小することが大事だ。天下りの人件費などたかが知れている。問題は天下り役人が膨大な補助金を持参金としてもってくることだ。その金は無駄な事業に回ったり、彼らのへそくりに化けることになる。
公募方式にすれば誰が選考するのかが問題になる。

長崎市長殺害事件控訴審判決
一審の死刑判決を破棄し無期懲役。それはいいとしても理由がいただけない。被害者が一人だけというのも減刑理由の一つであった。被害者が一人なら死刑にすべきでないという最高裁のいわゆる永山基準など反古にすべきだ。永山基準など裁判所の分を超えた一種の立法である。


中国の米国債保有額「減らすのは道理に合う」 人民日報

2009-08-21 02:23:11 | 経済
表題のニュースはNIKKEI.NET20日から

 中国共産党機関紙の人民日報(海外版)は20日、6月末の中国の米国債保有額が大幅に減ったことについて「外貨準備運用の多様化を追求している表れである」とする論説記事を掲載した。記事では、外貨準備を使って中国企業の海外進出を後押しし、先端技術や資源などを手に入れるべきだと主張、ドル資産に偏った運用を早急に見直す必要があるとの認識を強く打ち出した。

 中国は世界最大の米国債保有国だが、6月末の保有残高は前月末比251億ドル減の7764億ドルと、9年ぶりの大幅な減少となった。人民日報の論説は「米国債は見た目が安全であっても、ドルが下落基調にある中で知らぬ間に価値を下げている」と指摘。そのうえで「保有米国債を減らすのは道理に合っている」と言い切った。(北京=高橋哲史) (00:06)

コメント
人民日報は中国共産党機関紙であるので党と政府の意思を代表している。中国が米国債の購入を減らすことは予想されたが、ここまで半ば公式に言明するとはやや意外であった。
 というのはこうした態度表明だけでドル相場を下げ、既にもっている米国債は減価するからである。
 先月末の米中経済閣僚会議でもこの問題が話し合われたが、アメリカから満足できる答が得られなかったのだろう。 
 


村上龍のJMMと龍言飛語

2009-08-05 06:53:49 | 経済
 村上龍の小説は読んだことはないし、今後も読むことはないだろう。今日取り上げるのは彼の政治経済に関する発言である。
 政治経済と書きながら変な気がしてきた。経済の語源は経世済民である。世を治め民を救うという意味。そう、経世済民は本来政治という意味であり、political economyの訳語としてできた。それがいつの間にかpoliticalのほうがなくなり単なるeconomyの意味で使われるようになった。実は政治も経済も同じ意味であったのだ。

 閑話休題。作家が政治経済を論じていけないことはない。政治経済がわからない作家にいい作品が書けるとは思えない。作家が当代最高の知識人であった国、時代もあったのだ。
 村上の発言の場としてはJMM龍言飛語がある。JMMは彼が問題を設定し専門家に問うという形式をとっている。そこで彼自身が問題を分析するわけではないがどんな問題を設定するかに彼のセンスが問われる。以下はJMMのバックナンバーからアットランダムに抜き出したものである。
私が尋ねられたわけではないがそれぞれ簡単な回答を付すことにする。

2002年08月05日
日米とも株の下落が止まらないようです。下落というリスクがあるのに、また直接金融へのシフトの必要性が指摘されているのに、日本の多くの企業・金融機関は、どうしていまだに「株の持ち合い」をしているのでしょうか?
筆者の回答; 
日本企業は金融機関に限らず気心が知れない人々に株をもってほしくない。一種のなれ合い資本主義である。そこには株主として互いに経営には口を出さないことにしましょうという暗黙の合意がある(もの言わぬ株主)。これが戦後の経営者資本主義を支えてきた。

2002年05月20日
サッカーワールドカップは、日本にどのような経済効果をもたらすのでしょうか?
筆者の回答; 経済効果はほとんどない。

2002年04月29日
卑俗な質問ですが、投資、企業活動、商売など、デフレ下でお金儲けをするコツというものはあるのでしょうか?
筆者の回答; それがわからない評論家、大学教授、企業系シンクタンクのエコノミスト(つまりJMMの回答者)が売文業を営んでいる。わかっている連中はだまって金儲けにいそしんでいる。講演や本で儲けたエコノミストが資産運用コンサルタントに資金運用を相談するというマンガチックな例も多い。

2002年04月01日
日本の巨額の財政赤字はインフレを起こす以外に解決の方法はないという専門家もいます。スタグフレーション(インフレ+不況)、あるいはハイパーインフレから資産を守る方法としては、どのようなことが考えられるのでしょうか?
筆者の回答; いつスタグフレーション、ハイパーインフレが起こるかわからないことには答えようがない。ただ言えることはハイパーインフレ下での現金と預貯金及びデフレ下での負債は最悪の選択であること。こんなことは高校生でも知っている。

2002年02月11日

今回の外相(田中真紀子)更迭劇は日本経済にどのような影響を与えるのでしょうか?
筆者の回答; 何の影響もない。

2001年12月03日
メディアが伝えるニュースを見る限り、「日本経済」の状況は悪化の一途をたどっているかのようです。もし「元気の出る」トピックスをご存じでしたらご教示ください。
以下略
筆者の回答; そんなことを聞いて何になる?

私の回答は簡単すぎて原稿料はもらえそうにない。

 以上ほんの一部だが彼の問題設定のセンスがある程度うかがえる。バブル崩壊後彼は「あの金で何が買えたか」というタイトルの本も出した。彼が経済問題に積極的に発言するようになったのはその本以来かもしれない。このタイトルを見た時も「何たる発想か」とあきれたものである。勿論買わなかった。
 なぜなら株にしろ土地にしろ取引されているのはほんの一部である。特に売買される土地は1%にも満たない。その取引価格を残りの土地に掛けて金額を算出し関東圏の土地代でアメリカ全土が買えるとか、皇居の土地だけでニューヨーク全部が買えるとかぬかしたものである。こんな数字は仮想のものであって実体はない。だから「あの金で何か買えたか」という発想はナンセンスである。

 先日「龍言飛語」では「自民党はなぜ凋落したか」というテーマを論じていた。テーマ設定はいいが結論がいただけない。彼の結論は「郵政民営化反対論者を復党させたから」というものである。一貫して郵政民営化を支持してきた彼らしい。
 そうではなく高度成長期が過ぎ去り、税収の自然増もなくなり気前のいいサンタクロースの役割を演じられなくなったことが自民党没落の真因である。
 それとも関連するがネズミ講に近い賦課方式の年金制度を取ったこと。この制度が成り立つためには新規の保険加入者が増え続けることが前提となる。そしてこの前提は失われつつある。これも政府自民党の失敗であり官僚の失敗でもある。

 郵政民営化などこうした大きな潮流の中の小さなエピソードに過ぎない。郵政を民営化すれば何もかもうまくいくと言って大都市の政治的ミーハーをたぶらかし一時的に自民党の退潮を食い止めたという意味で。この間も自民党は地方と農村では支持を減らし続けた。
 郵政民営化を論じるには金融機関としての郵便局と郵便事業者としての郵便局を分けて論じる必要がある。前者は財政投融資改革と一体をなすが、後者はそうではない。郵便事業を民営化する必然性は乏しかった。 

というわけで村上の政治的社会的発言にはピンボケが多いというのが今日の結論。
 

映画「ハゲタカ」

2009-06-24 21:30:14 | 経済

先日映画「ハゲタカ」を見た。大いにありそうな話でおもしろかった。

 中国の政府系ファンド(20兆円)が株価が低迷している技術力のある日本企業を買収しようという話。その手始めに某自動車メーカーにTOBを仕掛け、日本のホワイトナイトと熾烈な戦いを繰り広げる。
 ホワイトナイトが陽動戦としてアメリカの投資銀行にTOBを仕掛けるあたりは、昨年秋からのアメリカ発金融危機を盛り込んだのだろう。急遽シナリオを変更したと見え、ストーリー展開には相当無理があったが、まあまあ楽しめた。

 経済紙を丹念に読めば中国が豊富な資金力によって技術力のある日本企業を買収しようとする話は可能性ではなく既に現実のものとなりつつあことがわかる。

 世界的に見て、日本ほど社歴の長い会社が多い国はない。特に中小企業の親方の職人気質は世襲によって代々受け継がれている。こうした企業が短期的利益しか眼中にないハゲタカファンドの餌食となるのは技術立国日本の将来に重大な脅威となる、というのがこの映画のテーマであると感じた。


住宅メーカーの倒産+白熱電球の製造中止

2009-06-11 18:55:23 | 経済

 さっきテレビで静岡に本社にある富士ハウスの倒産を取り上げていた。川口市のアーバンエステートも最近倒産した住宅メーカーであり事情はよく似ている。着手前に法外な割合の工事費を支払わせていたことが共通している(70%~100%)。
 一般に工事着手前に建築業者が受け取る工事費は総額の20%~30%程度ではないか。それ以上の支払いを求められた時点で業界の事情に詳しい人或いは弁護士等に相談すべきであった。弁護士に相談だけなら1万円までだろう。予防的に弁護士を活用すればわずかの出費で被害を防げる。相手が倒産してから弁護士に駆け込んでも被害額の1割も取り返せない。
 建築業界ではないが、最近語学教育のノバ、旅行業界等で類似の被害が報道されているのになぜ被害者は疑問を懐かなかったのだろう。
 富士ハウスは200年住宅メーカーとして経済産業省の認定を得ていたというから嗤わせてくれる。先日のブログでも書いたようにいつ倒産するかわからない業者が200年住宅を標榜するのはちゃんちゃらおかしい。消費者はもっと賢くなる必要がある。 

話変わって、白熱電球製造中止の話。
通産省が業界を指導して白熱電球の製造を中止させるらしい。

以下当ブログ2008年4月18日号から引用する。 
白熱電球「2012年に生産やめて」 経産省 電機メーカーなどに要請

 経済産業省は電機メーカーなどに、エネルギー効率の悪い白熱電球の生産・販売を2012年末までに自主的にやめるよう要請する。業界側も基本的に受け入れる方向だ。 以上読売オンラインニュース2008年4月7日からの引用

筆者コメント:「自主的にやめるよう要請する」とは変な日本語だな。「やめるように勧告する」とすべきだろう。それはさておき、そんなことを役人に決めさせていいのだろうか。白熱電球には根強いファンがある。消費者とメーカーが市場を通じて決めるべきことだろう。エジソンも泣いているぞ。 

 今私の考えは少し変わった。上のニュースでは経済産業省の要請という体裁をとっているが実は同省は電器業界の意を受けて新規需要開拓の旗振り役をやろうとしているのではないか。エコポイントと同じ構図で経済産業省と電器業界はグルになっていると考えている。
 電器業界は談合して白熱電球と蛍光灯の耐久性能をわざと落としている。新規格の照明器具を売るよりもっと耐久性の長い電球と蛍光灯を作るのが消費者のためにもなり、省資源にもなるのではないか。
 新聞は建設業界の談合をたたくが、新聞だって談合して購読料を決めている。談合のない業界があったら教えてほしい。公正取引委員会だって大部分の談合を見て見ぬふりをしている。