海辺のねこ

どんな日もかけがえのない一日。

『朝顔は闇の底に咲く』

2011-08-24 | 


一昨日、3鉢目の朝顔が咲き始めました。
同じ時に種を植えたにもかかわらず、他の2鉢が咲く頃に芽を出した奥手の朝顔。
咲いてくれてありがとう。


この朝顔が呼び寄せてくれたのか、一冊の本と出合いました。
五木寛之『朝顔は闇の底に咲く』(東京書籍)
表題となっている「朝顔は闇の底に咲く」という章に綴られていたお話が、とても印象的でした。
心に響いたのでご紹介いたしますね。


五木氏は、『ヒマワリはなぜ東を向くか』(瀧本敦著、中央公論社)という本の中に登場する、ある女性の植物学者の短いエピソードに感銘を受けたと言われます。
中学生の頃から朝顔日記をつけていた生物学好きの少女は、高校・大学で生物学を学び、その後も朝顔の研究を続けます。
「どうして朝顔は朝になって、あの大輪の花をきちんと咲かせるのだろう」と疑問を抱き―。
いろいろな実験をした後に、次のような仮説にたどり着きました。

 「アサガオの花が開くためには、夜の暗さが必要なのではないかと考えた」

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 そうか、朝顔が朝開くのは、夜明けの光とか暖かい温度のせいではない。夜明け前の、冷たい夜の時間と闇の濃さこそが必要なのだ。朝顔は、夜の闇のなかで花を開く準備をするんだな。
 こんなふうに思考を飛躍させ、そして、このことで勝手に、しかし非常に感動しました。
 朝顔は、夜の闇のなかに咲くのです。
 人間も希望という大輪の花を咲かせるのは、かならずしも光の真っただなかでも、温かい温度のなかでもなかろう。冷たい夜と、濃い闇のなかに私たちは朝、大輪の花という希望を咲かせる。夜の闇こそ、花が咲くための大事な時間なのだ、と、私はそう考えました。
 いまの時代というのは、まさにそういう時代かもしれません。
 そして私たちは、日々溜め息をつき、この時代の闇のなかに生きている。
 その自分の行き先を模索しながら、なんとも言えない時間を過ごしています。
 しかし、この時間にこそ、ひょっとしたら本当の意味での希望というものがどこからか訪れてくるのを、深い所で、人間の命の時計は感じているのではないか。
 あらためて、泣く時にはちゃんと泣こう。喜ぶ時にはちゃんと喜ぼう。笑う時には笑おう。
       五木寛之『朝顔は闇の底に咲く』(東京書籍)
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人生、いつもいつも光の中を歩いて行けるわけではない。
闇があるからこそ、光を感じられる。
闇の中にあって、真の強さと優しさを磨いていこう。
大輪の花を咲かせるために。

料理の世界でも“夜の時間”は重要なようです。
よく「一晩おく」という表現が使われますよね。
同じ8時間でも、昼間の8時間と夜を過ごした8時間では、味わいが違うそうなのです。

人生も、料理も。
夜が、闇があるからこそ味わい深くなる。

一日一日夜を越えて、
どうぞ、素晴らしい朝を迎えられますように。

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4 コメント

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朝顔 (エンピロ)
2011-08-24 21:13:02
なるほど、朝顔は単に朝になって咲いているのではないのですね。夜間に十分な力を蓄えて、朝に大輪の花を咲かせるのですね。

確かに人間は陽のあたる所だけではなく、暗闇の中を歩かなければならないときもあります。闇があればこそ、光と希望が見えたときの喜びは倍になりますね。

先日我が家の月下美人が夜咲きました。暗い時に咲くこと自体信じられません。同じようにカラスウリも夜中に咲きますね。これらは逆に、夜咲くために昼に力を蓄えているのでしょうね。
勝手に愛しく (suzie)
2011-08-26 07:25:06
素敵な文章を紹介してくださってありがとうございます。
目の前の朝顔がいっそう愛おしくなりました。

そして、五木寛之氏の「勝手に、しかし非常に感動しまし」との言葉にもとても共感。
そうなのです。こちらが「勝手に」愛おしく感じているだけなのです(笑)
朝に夜に (mari)
2011-08-28 13:38:16
エンピロさま
朝顔は夜間に力を蓄えているみたいですね。
で、朝になるとパッと咲く。
(そういえば、人間も夜眠りますね)
闇を抜けて光を浴びて、希望の花が咲く。
何だか、そう思うだけで元気がでてくるように感じます。

月下美人の記事、拝読いたしましたよ~。
徐々に咲いていく様子も神秘的ですが、あの香りもまた最高ですよね。
それも一夜限りのいのち。
とても印象深い経験を、わが家でも何度かさせてもらいました。
カラスウリも夜に咲くのですね。
こちらは生で拝見したことがありません。
いつか見てみたいですね。

朝に咲く花、夜に咲く花。
寒さを耐えたからこそ、美しく咲く春の花。
植物の持っている力って素晴らしいですね。
学ぶべきことがたくさんあるお姿たちです。
“私”の朝顔 (mari)
2011-08-28 13:48:08
suzieさま
suzieさんのところの朝顔と夕顔、今日も元気に咲いていますか?
この文章を読んだら、我が家の朝顔がより可愛く思えてきますよね。
もう、「咲いてくれてありがとーーー!と叫びたいくらいに。

そう。“勝手に”なんですよね。
何しろ感情は主観以外の何者でもありませんから。
そして今日もまた、咲いてくれている朝顔を愛おしく感じる朝でした♪

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