海辺のねこ

どんな日もかけがえのない一日。

「悠久の時を旅する」

2021-09-29 | 芸術・文化

大好きな写真家・表現者である星野道夫さんの特別展「悠久の時を旅する」を観に、岡山県立美術館へ開館時間をめがけて行ってきました。

146点もの写真と直筆の手紙や原稿、カメラや取材ノートなどの貴重な展示もあり、ファンだけではなく何方がご覧になっても見応えのある特別展だと思います。

2日前の9月27日がお誕生日だった星野さん。ご存命であれば69歳になられていました。
会場に展示されている最後の1枚の写真を観て、何とも言えない気持ちになったけれど…。
こうして写真展が開催されたり、紡がれた言葉が読み継がれていく限り、星野さんの想いはずっとずっと生き続けていくのだと思います。

それにしても、何と生命力にあふれた写真たちなのでしょう。
カリブーにムース、グリズリー、オオカミ、フクロウ、ホッキョクグマ等々。
肉食動物だとわかっていても、思わず撫でてみたくなるような毛の質感。
植物たちの色鮮やかさ。
そして、それぞれが持つ時の流れ。
水の輪廻という言葉には、妙に納得し感動しました。

記念のお土産は、毎年のように購入している卓上カレンダーだけにするつもりでしたが…。(写真集・書籍はほぼ持っているので)
6人の寄稿が新たに加えられた『悠久の時を旅する』の新版と、星野さん特集が掲載されている「coyote」の最新号も購入しました。
読書の秋を満喫しようと思います。


美術館に行くということで、テーマに沿った着物で出かけることにしたのだけれど。
いやはやコーディネートに悩みました。袷の時期だったら迷わず深緑色の着物を選んでいたでしょう。星野さんが撮る森の緑色が好きなので。
しかし今はまだ単衣の時期です。悩んだ末に花柄の大島紬にポピーかな?と思っている柄の帯を合わせました。
ご自宅の前に山ほど種をまいてお花を咲かせていらっしゃったし、ポピーの写真も撮られていたのでね。


まん防ということで、仕事と生活必需品の買い物以外は、99%おうち生活でしたが…。
星野さんの写真展は絶対に逃したら後悔するわ!と思い、早々に足を運びました。
行けてよかった。至福の時間となりました。感謝です。

F先生との想い出

2021-09-21 | ねこからの手紙

今年の始めに大学時代の恩師の訃報が届いた。
体調を崩されていることを聞いてはいたけれど、こんなに早く旅立たれるとは思っていなかった。

とても個性的な先生だったので、印象的なエピソードには事欠かない。
ゼミ仲間たちと電話やLINE等で連絡を取り合い思い出話をしたのだけれど、あんなことがあった、こんなことがあったと話が尽きなかった。
ここには面白エピソードではなく、今でも感謝していることを記しておきたいと思う。

それは、学科の全学生必修の講義の最初の時間でのことだった。
「今日は図書館に行きます」
そう言って先生は先頭に立ち、図書館の中をぐるぐると巡り案内し始めた。
「ここには辞典が、こちらにはこんなジャンルの本が」等と、大まかに次から次へと説明していく。
そして最後におっしゃった。
「自分で調べるのが勉強です」と。
この講義がきっかけで、その後に先生のゼミを選択したと言っても過言ではない。
“自分で調べることの大切さ”を学生生活の最初に教わったことはとても大きかったと思う。今も心に刻んだままだ。

あらゆる情報であふれている現在、その中からより良いもの・真実を見極めることに難しさを感じることがある。
特に今、コロナ禍でいろいろな情報が飛び交っている。中でも、いのちに直結する医療に関してはとても重要だ。
そんな時、恩師の姿勢と言葉を思い出す。
医療において基本の“き”を示した上で、それに沿って発信して下さる方の言葉は信頼できるし、ありがたい。

ここまで綴りながらずっと頭の中に浮かんでいたことがある。
「難しいことを難しく書くのは下手な文章だ。難しいことをやさしく表現できるのが上手い文章。人に伝わらなければ意味がない」
これも先生から教わったことである。
決して難しいことを書こうとしたわけではないけれど。
果たしてこの文章で、先生への思いが少しは伝わったのだろうか…。

F先生、最初の講義で一生ものの教えを授けて下さりどうもありがとうございました。
またいつの日か、先生の講義を聴けたらなと思います。

*写真は、大学4年の時のFゼミの仲間たち。撮影者はF先生。
 一番高いところまでのぼっているのが私です。
 楽しかったな。