ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】量子宇宙をのぞく

2006年06月19日 22時23分47秒 | 読書記録2006
量子宇宙をのぞく 時間と空間のはじまり, 佐藤文隆, 講談社ブルーバックス B-865, 1991年
・著者がそれまで書き溜めた小文の寄せ集め。それまでの研究生活の集大成のようで、内容が濃い。 形而上的記述が多く、理解が困難な箇所が多々あります。そもそも視覚化(映像化)できない世界を活字で表現しようとするのだから、致し方ない面もありますが、入門書としてのブルーバックスシリーズの範疇を超えそう、というか付録(ウィーラー-ドゥウイット方程式)に至っては完全に逸脱しちゃってます。入門書と勘違いして手にとってしまうと、人によっては拒絶反応を起こすかもしれません。
・これは何という分野の学問になるのでしょうか。物理学、数学、宇宙論、素粒子論、相対論、量子論・・・全てを包含するような壮大な分野です。 「量子宇宙とは宇宙時空の量子力学の意味であり、一般相対性理論と量子力学を融合させようとする試みである。」p.6
・「じつは10-33センチメートルという非常に小さなものが膨張して1029センチメートルという巨大なシステムになってきたのだというのが、この章の結論なのである。」p.19
・「力は、全部で四つになる。一つは「重力」で、その法則はごぞんじのようにニュートンが発見した。次は「電磁気力」で19世紀のなかごろにマックスウェルが理論を完成した。つぎは「弱い力」で、これは原子核のベータ崩壊のときに作用する力として、イタリアのフェルミが理論を完成したものである。四番目が「強い力」。これは原子核をつくる力であるが、最近では、陽子や中性子を総称するハドロンをつくっている力であることがわかってきた。これは日本の湯川秀樹が最初に言いだした力である。」p.51
・「相転移というのは対称性が破れることで、つまりは秩序が発生することだ。読者はたぶん、転移後のほうがシンメトリック(対称的)だと思われるかもしれないが、相転移前のほうが対称的なのである。」p.54
・「コペルニクス原理は、われわれの現在いる場所を無意味化した。そして今度は、"今"という時間にも特別な意味はないことに気づくのである。」p.83
・「したがって、時間・空間もツルッとしているように思えるが、非常に小さなスケールでよくよくみると、ゴツゴツしたものなのかもしれない。」p.89
・「なにかが「生まれる」といった場合には、だいたい、存在するエネルギー(物質をふくむ)の形態が変わることをさしている。たとえば生命の起源というと、分子はそれ以前に存在するのであるから、分子どうしのあいだに新たな関係が生まれるということになる。」p.92
・「もちろん、まだはっきりしたわけではないが、少なくとも時間・空間という概念を第一義的なものだと思わないようにしないと、宇宙の起源は説明できない。」p.94
・「ここで、時間とはなんであったかを思いおこしてみよう。現実に時間という概念を考えてみると、しょせんは二つ以上の出来事――物理では変数という――のあいだの相関である。」p.96
・「このことは、人類と宇宙の関係は、たえずわれわれの側からなにかを問いかけなければ答えは得られないという、そんな関係であることを示すよい一例だと思われる。」p.100
・「現在の理論物理学は、基本的には数学の論理に現実との対応関係を求めている。」p.101
・ホーキングについて「「そこまでして動かなくても」とわれわれは考えがちだが、多分、彼が生きておれるのは、その行動力に支えられているからなのである。日本にきた時の看護婦は、「彼がなぜ生きているのか医学的にはわからない」と言っていたが、まったくその通りであると思う。まったく驚異的な人である。」p.115
・ホーキングの講演より「さて、宇宙が収縮する時は、熱力学時間の矢は逆転するだろうと私は予言します。そしてこの矢は心理時間の矢も決めます。したがって、収縮期に生きている人間がいれば、かれらは時間を逆の方向に計るでしょう。すなわち、やはり無秩序は増大し、宇宙は膨張すると考えるでしょう。」p.133
・ホーキングについて「比較的妥当な前提から、想像し難い結論が引き出されるのは、途中の論理で日常的観念にひきずられない論理構成をするからである。」p.138
・「もちろん、無限の未知に対していても、科学法則は人間という有限な系への写像のされ方だという立場に立てば、人間のコスモスを語ることは意味がある。「統一理論」は、この人間というコンピュータ用の、比較的汎用のプログラムソフトにすぎないのかもしれない。」p.146
・「すると、誕生とは、重力が特殊な「組織化された存在」になることである、といえるのかもしれない。」p.155
・「簡単にいうと、時間はもともと具体的な出来事の呼び方であったのが、われわれの共同体が拡大することによって、抽象化された共同幻想のようなものになってきたのであろう。」p.166
・「このように、相対論では個々人が経験してきた時間がほんとうの意味をもつことになる。そして、同時刻には意味がなくなってくる。」p.169
・「物理学の法則は、どんな座標を使っても成り立つように書かれていなければならない。そういう条件を満足している理論のことをゲージ理論とよぶ。」p.172
・「結局、時間などというものはもともとは存在しないものである。その意味で、通常の量子力学に現われている時間というのは、宇宙を構成している部分品でしかない。」p.176
・「外的世界すなわち物理的世界が空間内に存在する物質の時間的な変化であるという見方は、便利性のために"つくられた"ものなのか、それとも本来そうなのかという問題である。この問題は、お金や価値は"つくられた"ものだというほどには自明でない。」p.185
・「素粒子物理で"クォーク"という用語があるが、これは海鳥の鳴き声(鳥の"カー、カー"みたいなもの)をだじゃれで採用したものである。」p.187
・「アリストテレスの時空では、時間空間の各点が他と違うかけがえのない点であった。ニュートンの時間空間はそれに対して各点の無意味化、一様化を行った。そういう対称性を持つ時間空間が認識されたわけだが、時間と空間は別々の、対称なものとしてあった。  アインシュタインの特殊相対論にいたって初めて、両方一体となった時空がもつ対称性が認識された。この過程で、空間的に離れた場所での同時刻というものに絶対性がなくなった。」p.187
・「そしてわれわれはいつの間にか、もともと時間というものがあって、それを計量する手段として時計があると錯覚している。それはあたかも価値(時間)とお金(時計)の関係に似ている。」p.189
・「いずれにしろ、一般的には、時空的でないものの特殊な状態として時空がある、という結論になるのだろう。すなわちわれわれはいつも特殊なものを先に見せられて、それが一般的なものででもあるかのようにあざむかれつづけてきたのである。というより、自らをあざむいてきたのである。」p.190
・「特異点定理とは、通常の物質による重力のもとでは過去・未来のいずれか、あるいは両方に必ず、そういう時間・空間の定義できない領域、つまり特異点があることを示したものである。」p.194
・「このように、現代の物理学は質量という概念を、エネルギーに完全に置き換えている。「質量とはなんですか?」と問われれば「粒子のエネルギー・スペクトルで真空状態との間にあるギャップですよ」となる。」p.231
・「現在知られている素粒子に共通する真空のはっきりした定義は、まだよくわかっていない。有力な考え方は次のようなものである。ヒッグス場と呼ばれるスカラー場(スカラーで表わされる場)が、一定の値で空間的に分布している状態が真空なのである。」p.234
・「ともかくわれわれの宇宙のように大にも小にも独自の構造があるという世界は、この四次元の時空の特徴といえる。四でなければ、このような世界はできなかったと思われる。」p.237
・「しかし、原理にだけ関心がいくと、その筋書きからみて外れている現象には興味を示さなくなる、という「欠点」にも注意しなければならない。すなわち、原理はものの見方に偏見を入れる、ということである。」p.277
・「ともかく、創成期の宇宙は陽子1個のサイズにも満たない存在であったのである。このために、われわれは宇宙全体の力学(ダイナミックス)を量子力学で扱わねばならなくなる。」付録p.2
・「シュレーディンガー方程式の時間tの"奇妙さ"はこれまでにも指摘されている。すなわち、tはヒルベルト空間のオペレーターとして表現できないが、観測可能な量として扱われているということである。」付録p.8
・「宇宙の創成そのものの物理は、われわれが「いままでやっているのが"宇宙の中の物理"であった」という自覚から出発せねばならない。」付録p.16
~~~~~~~
かいたい【懐胎】 子供をはらむこと。みごもること。懐妊。妊娠。
えんぺい【掩蔽】 1 おおいかくすこと。かくしてわからなくすること。  2 月が天球上を動いている間に、惑星や恒星を隠す現象。星食。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【演】2006 第51回 市民音楽祭 | トップ | 【論】Michaels,1998,Cluster... »

コメントを投稿

読書記録2006」カテゴリの最新記事