ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】クロイツェル・ソナタ/悪魔

2006年05月07日 23時28分00秒 | 読書記録2006
クロイツェル・ソナタ/悪魔, トルストイ (訳)原卓也, 新潮文庫 ト-2-7, 1974年
・トルストイというと『戦争と平和』しか読んだことがありません(たぶん)。そのときの印象は、"退屈"、"疲れる"・・・ しかしこの作品を読んでみると普通に面白く読めました。トルストイの好感度up。この密度感のある文章がタマリマセン。
・クロイツェル・ソナタ:主人公と汽車に乗りあわせた奇妙な紳士の独白。"結婚"にたいする夢と希望が全て打ち砕かれる。音楽が主要なテーマなわけではない。
・悪魔:主人公があまりに真面目すぎるが故の悲劇。
・カバーの紹介文「嫉妬のため妻を殺した男の告白を通して、惨劇の理由を迫真の筆に描き、性問題に対する社会の堕落を痛烈に批判した『クロイツェル・ソナタ』、実在の事件に自身の過去の苦い経験を交えて懺悔の気持をこめて書いた『悪魔』。性的欲望こそ人間生活のさまざまな悪や不幸、悲劇の源であるとして、性に関するきわめてストイックな考えと絶対的な純潔の理想とを披瀝した中編2作。
・「弟子たちは言った。「もし妻に対する夫の立場がそうだとすれば、結婚しない方がましです」
 するとイエスは彼らに言われた。「その言葉を受けいれることができるのは、すべての人ではなく、ただそれを授けられている人々だけである。
 というのは、母の胎内から独身者に生まれついているものがあり、また他から独身者にされたものもあり、また天国のために、みずから進んで独身者となったものもある。この言葉を受けいれられる者は、受けいれるがよい」
(マタイによる福音書第19章10、11、12)
」p.8
・「一人の女なり男なりを一生愛しつづけるなんて、一本の蝋燭が一生燃えつづけると言うのと、まったく同じでしてね」p.21
・「放蕩とは何か肉体的なことではないのです。どんな肉体的な乱行も放蕩ではありません。放蕩とは、真の放蕩とは、肉体関係をもった女に対する道義的関係から自己を開放することにほかならないのです。」p.26
・「ふしぎなことに、美は善であるという完全な幻想が、往々にして存在するものです。(中略)女が愚かなことも醜悪なことも口にせず、しかも美人だったりしようものなら、すぐさま、奇蹟のように聡明で貞淑な女性だと信じこんでしまうものですよ。」p.33
・「「なぜ人類が存続しなきけりゃならないんです?」彼は言った。」p.49
・「("結婚"について) つまり、互いに相手を通じてできるだけ多くの楽しみを得ようと望んでいる、まったく他人同士の、二人のエゴイストがね。」p.54
・「こうした意見はすべて斬新で、わたしの心を打った。」p.59
・「そう、わたしが今知っていることを、世間の人たちはまだ早急には知りえないでしょうね。太陽や星に、鉄がどれくらいあるか、どんな金属があるか、そんなことはすぐに知るにいたるでしょう。しかし、われわれの低劣さをあばいてくれるもの――これは容易にわかりゃしませんよ、ひどくむずかしいことです……」p.
・「音楽の影響で、実際には感じていないことを感じ、理解できないことを理解し、できないこともできるような気がするんですよ。」p.107
・巻末解説(原卓也)より「トルストイは、性的欲望こそ、人間の生活のさまざまな悪や不幸、悲劇の源である、と考えていた。」p.212
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?たいさい‐せつ【大斎節】 キリスト教で、六回の日曜日を除いた復活節の前の四〇日間。身を清め、断食、懺悔(ざんげ)などを行う。四旬節。レント。

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