ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】ローマ人の物語 1・2 ローマは一日にして成らず

2006年05月25日 20時59分01秒 | 読書記録2006
ローマ人の物語 1・2 ローマは一日にして成らず (上)(下), 塩野七生, 新潮文庫 し12-51・52, 2002年
・昔、大学の某文系科目の講義にて先生が、
「塩野ななせいさんの『ローマ人の物語』がおもしろい!」
と絶賛していたので、早速講義後、図書館へ。
『ローマ人』はなかったがその著作がいくつかあった。手に取り、チェック。

ななせいじゃなくてななみじゃん!!』

・・・そんな出来事から10年近く経ち、ようやく読みだしました。
・ローマの歴史について。その建国からイタリア半島の統一まで、紀元前735年から前270年までの約500年間をとりあげる。
・三国志のような英雄譚的な読み物を想像していましたが、そうではなく、出来る限り正確に当時のローマを文章で組み立てようという、学術書寄りの読み物でした。なにぶん古い話で当時の資料が少ないために、こういう形式になっているのかもしれません。今後の展開に期待。
・ローマ、ギリシア、アレキサンダー大王などなど、それらをかなり混同していました。 ロムルス、ヌマ、トゥルス・ホスティリウス、アンクス・マルキウス、タルクィニウス・プリスコ、セルヴィウス・トゥリウス、タルクィニウス・・・ローマ建国の初代から歴代の王の名前。これらを頭に入れつつ読むのはなかなかキビシイ作業。
・「われわれが「文庫」と呼んでいる書物の形は、現代からならば五百年も昔になる、ルネサンス時代のヴェネツィアで生れたのでした。」上巻p.3
・「そしてまた、文庫版もそれなりに美しい造本であらねばならないと考え、その想いの実現にも努力したつもりです。アルドも言い遺しているのです。本造りには、「グラツィア」(優美)を欠いてはならない、と。」上巻p.10
・「ちなみに「サラリーマン」も語源にもどれば、ローマ人の言語であるラテン語の「sal」(塩)で支払われる人、になる。」上巻p.16
・「ローマの王は、神の意をあらわす存在ではない。共同体の意を体現し、その共同体を率いていく存在なのである。それゆえに、終身だが世襲ではない。また、選挙によって選ばれる。(中略)王様というよりも、終身の大統領と考えた方が適切かもしれない。」上巻p.61
・「人間の行動原則の正し手を、 宗教に求めたユダヤ人。 哲学に求めたギリシア人。 法律に求めたローマ人。 この一事だけでも、これら三民族の特質が浮びあがってくるぐらいである。」上巻p.76
・「だが、このスパルタは、戦士のほかには何も産まなかった。哲学も科学も、文学も歴史も、建築も彫刻も、まったく何ひとつ遺さなかった。スパルタ式、という言葉を残しただけである。」上巻p.176
・「理論的なギリシア人に比べて、ローマ人は現実的性向の実に強かった民族であると言われている。」下巻p.94
・「S・P・Q・Rとは、セナートゥス・ポプルス・クェ・ロマーヌス、即ち「元老院並びにローマ市民」を意味する四つの頭文字を集めた記号である。」下巻p.108
・「ところが、古代ローマの元老院は、議会民主政体をとる国の二院の一つである上院ともちがい、現役を引退した長老たちの集まりともちがって、一院しかない政体をとる国の一員であり、バリバリの現役たちを集めた機関であったのである。」下巻p.110
・「ローマ人の柔軟性は、経済人であったヴェネツィア人さえもはるかに越えていた。(中略)ローマでは、上位にあった者が下位の官職を務めることは、政官界にかぎらず軍隊でも行われ、不名誉とも不適切とも思われていなかった。」下巻p.113
・「ローマ人には、敗北からは必ず何かを学び、それをもとに既成の概念に捕われないやり方によって自分自身を改良し、そのことによって再び起ちあがる性向があった。」下巻p.115
・「ローマ人は、保守的であったというのが定説になっている。だが、真の保守とは、改める必要のあることは改めるが、改める必要のないことは改めない、という生き方ではないだろうか。」下巻p.121
・「同時代のギリシアの旅行者は、ギリシア人は神殿建造に熱心であるのに対し、ローマ人は公共施設の充実に重点をおく、と書き残している。」下巻p.134
・「こうなると、歴史の主人公である人間に問われるのは、悪しき偶然はなるべく早期に処理することで脱却し、良き偶然は必然にもっていく能力ではないだろうか。」下巻p.171
・「貧しき者こそ幸いなれ、というイエスの教えの優しさはわかるが、「貧しいことは恥ではない。だが、貧しさに安住することは恥である」としたペリクレスのほうに同感なのだ。」下巻p.203 つい最近、誤訳とはではいかないが、原文とはニュアンスが変わって広まってしまった聖句の例として挙げられているのを新聞で見たなぁ(鈴木範久『聖書の日本語―翻訳の歴史』)。翻訳の弊害がここにも。
・「なぜなら、ディオニッソスのあげた宗教、ポリビウスの指摘した政治システム、プルタルコスの言う多民族同化の性向はいずれも、古代では異例であったというしかないローマ人の開放的な性向を反映していることでは共通するからである。」下巻p.208
・「知力ではギリシア人に劣り、体力ではケルト(ガリア)やゲルマン人に劣り、技術力ではエトルリア人に劣り、経済力ではカルタゴ人に劣っていたローマ人が、これらの民族に優れていた点は、何よりもまず、彼らのもっていた開放的な性向にあったのではないだろうか。ローマ人の真のアイデンティティを求めるとすれば、それはこの開放性ではなかったか。」下巻p.208
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?ノーブレス・オブリージュ (フランス)noblesse oblige  もとはフランスのことわざで「貴族たるもの、身分にふさわしい振る舞いをしなければならぬ」の意。

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