ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】読書について

2006年09月15日 18時31分41秒 | 読書記録2006
読書について 他二篇, ショウペンハウエル (訳)斎藤忍随, 岩波文庫 青632-2, 1960年
(PARERGA UND PARALIPOMENA : KLEINE PHILOSOPHISCHE SCHRIFTEN, Arthur Schopenhauer, 1851)

・『思索』、『著作と文体』、『読書について』の短編3本収録。

「読書は量より質!!」 言わんとするところはこれがメインです。
・文章は平明ながら非常に密度が濃い。昨今出版されている『読書の方法』的本の内容の原形はすべて、この本に出ているのではないでしょうか。 国語(ドイツ語)の乱れについての記述は、ドイツ語がわからないので話がサッパリ通じず。
・高校生くらいの若い人に是非オススメしたい一品です。
・「数量がいかに豊かでも、整理がついていなければ蔵書の効用はおぼつかなく、数量は乏しくても整理の完璧な蔵書であればすぐれた効果をおさめるが、知識のばあいも事情はまったく同様である。」p.5
・「学者とは書物を読破した人、思想家、天才とは人類の蒙をひらき、その前進を促す者で、世界という書物を直接読破した人のことである。」p.7 前出、デカルトの著作でも同様の言い回しがでてきた(『世界という書物』)。
・「もともと自分のいだく基本的思想にのみ真理と生命が宿る。我々が真の意味で充分に理解するのも自分の思想だけだからである。書物から読みとった他人の思想は、他人の食べ残し、他人の脱ぎ捨てた古着にすぎない。」p.8
・「読書は言ってみれば自分の頭ではなく、他人の頭で考えることである。」p.11
・「読書で生涯をすごし、さまざまな本から知恵をくみとった人は、旅行案内書をいく冊も読んで、ある土地に精通した人のようなものである。(中略)これと対照的なのが生涯を思索に費やした人で、いわば自分でその土地に旅した人の立場にある。」p.13
・「第一級の精神にふさわしい特徴は、その判断がすべて他人の世話にならず直接自分が下したものであるということである。」p.18
・「低劣な著作家の大多数は、新刊書以外は読もうとしない民衆の愚かさだけをたよりに生きているにすぎない。すなわち彼らの名はジャーナリスト。適切きわまる名前ではないか。これをドイツ語に訳すと日給取り。」p.27
・「というのは一般に天才の作品には、どの部分にも精神がくまなく行き渡っていて、それが常に作品の特徴をなしているからである。」p.68
・「少量の思想を伝達するために多量の言葉を使用するのは、一般に、凡庸の印と見て間違いない。これに対して、頭脳の卓抜さを示す印は、多量の思想を少量の言葉に収めることである。」p.74
・「一般に、フランス語、つまり膠(にかわ)でつないだような卑しい言語の貧しい文法をはるかに高貴な言語であるドイツ語の中に取り入れたりすることも、頽廃的なフランス趣味である。」p.80
・「つまり思想というものは、頭から紙に向かうのは容易であるが、逆に紙から頭へ向かうのは大変なことで、その場合には手持ちのあらゆる手段に助けを求めなければならないのである。」p.107
・「無知は富と結びついて初めて人間の品位をおとす。貧困と困窮は貧者を束縛し、仕事が知にかわって彼の考えを占める。これに反して無知なる富者は、ただ快楽に生き、家畜に近い生活をおくる。」p.127
・「したがって読書に際しての心がけとしては、読まずにすます技術が非常に重要である。その技術とは、多数の読者がそのつどむさぼり読むものに、我遅れじとばかり、手を出さないことである。」p.133
・「悪書を読まなすぎるということもなく、良書を読みすぎるということもない。悪書は精神の毒薬であり、精神に破滅をもたらす。  良書を読むための条件は、悪書を読まぬことである。人生は短く、時間と力には限りがあるからである。」p.134
・「読み終えたことをいっさい忘れまいと思うのは、食べたものをいっさい、体内にとどめたいと願うようなものである。その当人が食べたものによって肉体的に生き、読んだものによって精神的に生き、今の自分となったことは事実である。」p.137
・訳者あとがきより「ところでショウペンハウエルは、翻訳者に対して非常に苛酷な姿勢を示す。「汝、非礼な翻訳者よ、すべからく翻訳に値する書物を自らあらわし、他人の著書の原形をそこなうなかれ。」」p.156

?蒙を啓(ひら)く (「啓蒙(けいもう)」を読み下したもの)道理や知識にくらいのを教え導く。啓蒙する。
?しょうけつ【猖獗】 1 勢いがさかんで荒れ狂うこと。また、そのさま。多く有害なものが猛威をふるうことにいう。「インフルエンザが猖獗をきわめる」  2 激しかった勢いがしだいに衰えること。また、そのさま。
?アフォリズム(英aphorism)簡潔な形式の中に深い思考による真理を含ませた文。ヒポクラテスの「芸術は長く、人生は短し」の類。格言。箴言(しんげん)

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