二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

ヴァルハラの乙女 第9話「変化Ⅱ」

2014-04-15 19:56:38 | ヴァルハラの乙女

警報が響く。
ネウロイの接近、戦場が向こうからやってきた音だ。

怖くて、怖くてたまらない。
頭を押さえて縮こまりたくなる。
じっとその場で眼をつむり嵐が過ぎ去るのを待ち続けたい、そうリネット・ビショップは思った。

「低空から接近したから発見が遅れたですって…っ!!」
「うへぇ、本当かんべんしてよなー」
「て、敵ですか!?」

待機室に設置してあった電話に応対するミーナ。
ミーナの言葉に対する反応はそれぞれで、エイラは面倒くさそうに反応し、芳佳は見るからに動揺していた。
そして3者の反応を他所にミーナは受話器を置くと、エイラ、芳佳、リネットの3人の方へ向き直る。

「坂本少佐の方は全力で向かっているけど……間に合いそうにないわ。
 エイラさん、念のためもう一度聞くけどサーニャさんはやっぱり出られない?」

「まぁムリダナ、夜間哨戒で魔力を使い切ってる。
 仮に無理に出撃させても寝不足で墜落しかねないぞ」

どこか棒読みな口調で指でバッテンを作りムリダナ(・×・)と呟くエイラ。
エイラの言葉にミーナは表情を曇らせたが、直ぐに軍人としての決断を下した。

「……やむ得ないわ、皆行くわよ」
「しょうがないなー、行くぞ宮藤、リーネ」
「は、はい。頑張ります!!」

やれやれ、と言いたげに立ち上がるエイラ。
続けて緊張しつつも立ち上がる芳佳であったが。

「ん?おいおい、大丈夫かよリーネ?」
「ああ、は、はい!大丈夫です!」

リネットだけは違った。
2人続いて立てることが出来ずにいた。
口こそは問題ないと言っているが、青白くなった表情に身体は震えが止まらない。
どう見ても出撃していい状態ではなかった。

「……リネットさんは待機ね」
「…………はい」

ミーナがそんなリーネを見て、ただ一言だけ言葉を発した。
リネットはミーナに対して申し訳ない気持ちと、自分のこの体たらくに泣きたくなった。
これでは駄目だと頭では理解していても、心と体は付いてゆけていなかった。

(どうぜ私なんて――――)

黒い、鬱屈した感情が心を満たす。
頭を下げ、眼をきつく瞑り何もかもから逃れたい衝動に教われた――――しかし。

「リーネさん!」

前から声をかけられる。
リネットは顔を上げて声の主の人物を眼に入れる――――宮藤芳佳だ。

「あのねリーネさん、一緒に出撃しよう」

初めて体験するスクランブルでやや戸惑いを感じつつも芳佳はきっぱりとリネットに言った。
リネットはどうしてそんな言葉が出るのか分からず、同時に迷いが無い芳佳に嫉妬を覚えた。

「どうせ、自分なんて足手まといだから何もできません……」

「そんなことないよ!
 わたしやリーネさんだってもしかしたら必要とされる時が来るって!」

視線を逸らし、リネットは諦めの言葉を口にする。
しかし芳佳が即座にその言葉を否定した。

「初めから、諦めたら何もかも終わりだよリーネさん!」

迷いが無い、真っ直ぐな瞳で芳佳はリネットに訴えかける。
なぜ宮藤芳佳はここまで自分に構うのか?そんな疑問がリネットの内心で浮かぶと共に。
芳佳に対して嫉妬と怒りといった負の感情の炎が沸きあがった。

「さすが宮藤さんですね、訓練もなしにいきなり飛べた人は言う事が違うよね」

「そんなこと……」

「ほんとっ!!宮藤さんは羨ましいよね!!!
 私が何日も何ヶ月も訓練をしてやっと飛べたのに宮藤さんはそれを無視する。
 おまけにネウロイと戦えたなんて宮藤さんはすごいよね、尊敬しちゃうし羨ましく妬ましいよッ!!!」

積りに積もった鬱憤が口から吐き出る。
普段大人しいリネットがこうまで感情を露にしたことにミーナとエイラは驚き、慌てる。

だが、負の感情を一身に受けることになった芳佳はその程度で怯まない。
なぜなら彼女は頑固かつ真っすぐで、自分が信ずる道を往く人間であるからだ。

「……そうだよ、わたしはリネットさんと違ってすぐに飛べた」

一拍

「でも、ちゃんと飛べないし魔法はヘタッぴで叱られてばっかりで、銃だって碌に使えない」

何を言う、芳佳の言葉にリーネは反感の感情を覚える。
噴きだした鬱憤のせいで今日は口が軽く、また言葉を綴ろうとしたが。

「ネウロイとは本当は戦いたくない。
 赤城を守るためにシールドを張った時はすっごく怖かったし今でも怖い。
 でも、それでもわたしはウッィチーズにいたい。だってこれはわたしの意志だから」

だから、とリネットが言いかけたところで芳佳の手が震えているのを発見した。
それが寒気とかそういうものではなく、緊張と恐怖による物なのはリネットは知っていた。

その事実を認知した後。
不思議と徐々に腹に溜まった黒い感情が抜けてゆく感触をリーネは感じる。
そして彼女自身が気づかぬ間に宮藤芳佳の言葉に引きこまれてゆく。

「わたしが持つ魔法で誰かを救えるのなら、何か出来る事があるならやりたい…………」

芳佳がリーネの手を優しく握る。

「この力、ウィッチの力でみんなをわたしは守りたい」
「まも、る……」

守る。
その単語にリーネは思い出す、姉に続いてウィッチとなった理由を。

(――――ああ、そうか)

どうして忘れてしまったのか。
姉が羨ましく堪らなかったのはそれだったのだ。
空を飛ぶ姿だけでなく誇りに満ちた姉が眩しくて、自分はウィッチを目指したのだ。

「宮藤さん……」

手を握り返す。

「私は……」

緊張とそれでも喉から言葉を絞りだそうとする。
たった一言、それだけにも関わらず踏み出す勇気が出ない。
呼吸が苦しく、緊張で震えが止まらない。

「大丈夫」

そんなリネットを察した宮藤が言葉を発する。

「お互いまだ半人前だけど、わたしたち2人なら一人前だよ」

かつてウィッチになると言った姉と同じく。
迷いがなく、眩しく、美しい笑顔を宮藤は浮かべている。

リネットは思った。
本当に、かなわない。
宮藤芳佳は本当に強い子なのだと。
しかし、だからっと言ってそれを理由にイジイジ落ち込むわけにはいかない。
彼女はこちらから手を差し伸べて来て断わらることはできない。期待に答えなければいけない。

「宮藤さん、わ、わたし出来るかな?」
「できるよリネットさんなら!」

緊張でうまく言葉を綴れない。
しかしそれでも今なら前を向いていける。
もう何も怖くないとまでは言えない、けど今度こそ初心を貫きたい、という淡い気持ちが湧く。
そして、リネットは言った。

「私も、飛びます!」



※ ※ ※



二条の飛行機雲が蒼穹の空を切り裂いていた。

「しっかし、まさかネウロイが分進進撃をするなんて」
「そうだな」

ネウロイと交戦からおおよそ15分。
基地にネウロイが向かっているいると報告を受けてから、
先に足が早いわたしとシャーリーの2人で先行して基地に向かっている。
恐らく間に合わないだろうが、それでも向かわざるを得ない。

「でもさあ、今後あんな風に対応することになるかな?」
「さあ、な。ただネウロイは常に進化するからそれはありうるかもな」
「うへぇ、勘弁してくれよ~」

わたしの答えにシャーリーがぼやく。
そのぼやきは分からなくもない、何せ唯でさえネウロイは数が多いのだ。
人類側はネウロイの単調な動きを読んで戦力を集中して対応してきたが今日のように、
『戦術』のような動きを見せるとなるとその前提が崩れてしまうことになる。
だが、それだけではない。

人型ネウロイ。

ストライクウィッチーズという物語には【小説の原作】【アニメの原作】がある。
が、どちらも人型ネウロイに関しては物語の中では重要な位置を占める。
この動きも今後の変化の中で注視してゆく必要があるだろう。

人型ネウロイの目的は何か?
【小説の原作】では結局ウィッチをまねた「兵器」にすぎないと定義していた。
もしそのままだとすると、ネウロイと人間は永久に分りあえない存在で生存を賭けて戦い続ける以外ないわけだ。
だが、それがまだ決まっていない上にスオムスにこそ姿を見せたらしいが、こちらではそもそも姿を見せていない。

私のような転生憑依者は大抵事前知識を生かして良い方向へと行動するものだ。
しかし、たった一人で、数十万人いる軍人の内の新米将校かつ10代そこらの小娘で一体全体何ができる?

所詮現実はこんなものだ、憑依や転生して大活躍しても中世ならいざ知らず近代の時代。
100万単位の軍人が動員される戦いでは個人の武勇が戦局をひっくり返すなど夢のまた夢。
精々空戦戦法を小細工程度に工夫、進言するほかない。

【原作】の501によるガリア解放は軍事上、本当に本当に奇跡の代物なのだ。
なぜなら、そう簡単にネウロイの巣を11人で破壊できるなら戦争など、39年の内に終わっていた。

――――そうすればあの子だって死なずに済んだ。

「大丈夫か……大尉?」
「…っと、すまない。気が抜けていた。」

いけない、どうやら気が飛んでいたようだ。
今この場には2人しかいなが指揮官失格だな――――む?

「大尉、基地だ!」

薄っすらとだが、水平線の向こうに501の基地が見えた。
シャーリーが思わず安心するが、やはりというべきか小さな閃光が幾つも見えた。
それが閃曳弾の軌道と発砲炎であることは経験則から推測できる。

「バルクホルン!」

ああ、分かっている。
そしてこれからすべき事も分かっている。
どこか緩んでいた空気が再び緊張したものに変化しわたしは口を開いた。

「いくぞ」

そこで私が下すのは至極単純明確。
見敵必殺の精神でただ突っ込むだけであった。







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