二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

第32話「魔女たちの夢物語」

2020-12-29 00:43:00 | ヴァルハラの乙女


欧州の夏は極東の某島国より過ごしやすい。
とはいえカーテンを閉め切った上で窓も閉じているせいで、
乙女たちが過ごすには少々不愉快な温度まで上昇して不愉快な汗が染みだす。
夜間哨戒に備えて太陽がある内に眠れ、と言われても厳しい環境である。

「大尉ってさー」

明かりはカーテンから僅かに漏れる僅かな光のみ。
後は全て真っ暗闇な中でもなお白い肌と銀髪が映える美少女。
自称強くてカッコいいウィッチことエイラ・イルマタル・ユーティライネンがバルクホルンの名を口にした。

「いい体してるよなァー」

横で寝そべっているバルクホルンの腹筋に指を滑らす。
この仕草があまりにも自然すぎたせいか、バルクホルンはしばらく何をされているか理解できていなかった。

「・・・見ても触っても面白くないぞ、
 あれこれ傷跡が結構残っている上に筋肉もあるから」

ジト目でエイラを見据えるバルクホルン。
見てくれは妖精のような愛らしさと美人な顔立ちをしているが、
このスオムス出身のエースが抱く思考は男子中学生のごとく煩悩で溢れ、
言動と行動が外見と一致しない残念美人さんであるのをバルクホルンはよく知っていた。

「マア、確かに胸より魅力は少ないけど、
 一応軍人として筋肉とかには気にしているし、興味があるんだよ」

「ええい、くすぐったいわ!
 というか、胸だけでなく筋肉好きなのか・・・?
 それは兎も角。早く寝ろ、宮藤とサーニャもさっき寝た所だろ」

バルクホルンが寝息を立てている2人を指さす。
既に慣れているサーニャだけでなく夜間哨戒に備えて朝から寝ろなんて言われても寝れない。
などなと先ほどまで愚痴を零した宮藤もエイラのタロット占いを受けてしばらくしてから夢の中の住民と化している。

「イヤ、寝れないし暇なんだヨ。
 だから大尉は私と一緒に暇つぶしをする義務がある、部下の面倒を見るのも上官の務めダロ」

「ここまで図々しい部下はあのマルセイユ以来だな。
 軍規が厳しい部隊なら上官侮辱罪で謹慎されるな」

ある種開き直った態度を取るエイラに対し、
バルクホルンはアフリカで活躍中の元部下の名前を思い出しつつ発言する。

我が非常に強く、協調性と素行に問題がありすぎた部下であったが、
共に戦った戦友として今では時折手紙のやり取りをしている程度の関係に落ち着いている。

「んんーー、
 どうせ軍隊での出世なんてー。
 興味なんてないから気にしなイ~♬」

「や め い」

エイラはどこか癖になるメロディーを口ずさみながらバルクホルンの腹筋を撫でる。
対するバルクホルンはエイラの手を振り払おうと応戦するが、巧妙に避けられる。

「マルセイユといい問題児達は概してそういう考えだな」

聞かされた側であるバルホルンは軍規で縛ろうとも問題児達は出世を気にしないので意味がない。
という共通点を見いだして呆れると同時に、

「・・・あるいは、才能がある人間には軍規なんてなくても、どこまでも飛べるからか」

僅かに嫉妬と羨望の感情を発露させた。

「・・・大尉、何かイヤ事でもあったのカ?」

エイラが先ほどまでバルクホルンの腹筋を堪能していた指を止めて問いかける。
そこに普段の惚けたような、抜けたような、兎も角よく分からない不思議な雰囲気はなく、エイラは真剣に問いかけた。

「・・・別に、嫉妬したんだ。
 ワタシなんて下手な上に無茶ばかりしてきたから、見ての通り傷だらけだから」

何時にもない真剣な問いかけに誤魔化せないと悟ったのか、
バルクホルンは正直な心情をエイラに告白した。

「ネウロイの光線で焼かれ、墜落して骨折し、皮膚が裂ける。そんな傷ばかりだ、エイラと違って」

自身の肉体に刻まれた大小様々な傷跡を指して自虐する。

「何だってワタシは『本当の』バルクホルンじゃないから、な」
「・・・大尉は大尉ダロ?」

自分はバルクホルンではない、この告白にエイラは意味が分からないと首を傾げる。
この言葉の意味について理解できる人間は「ゲルトルート・バルクホルン」というラベルで生きて行く事を余儀なくされた人間のみであろう。

「そもそもさ、」

エイラがバルクホルンの側に寄り添う。

「私は知っているヨ。
 この傷だらけになっても一生懸命な人を。
 皆だれもが自分が傷ついても自分じゃない誰かもために頑張っている事を」

互いの額が触れあう距離でエイラが囁く。
ネウロイ大戦の初頭で亡国の危機に瀕していた国の住民が語る言葉には重みがあった。

「なっ・・・ち、近いぞエイラ!?」

吐息どころか心臓の音が聞き取れる距離まで迫られ動揺するバルクホルン。
残念美人さんからオッパイがついたイケメンへクラスチェンジを果たしたエイラにタジタジである。

「だからさ、
 誰かが大尉の体を馬鹿にしたら私はこう言ってやるサ」

耳元でエイラが小声で囁く。

「馬鹿にすんな!
 お前の目は節穴ダナ・・・なんてな」

「エイラ・・・」

嘘偽りのないエイラの思わぬ告白。
これに聞き手のバルクホルンの心は大きく揺さぶられる。

「・・・ありがとう、エイラ。
 まさかエイラから励まされるとは思わなかった。
 ・・・ワタシは何時も誰かに救われているばかりだ」

「フ、フーン。
 感謝しろヨなー」

バルクホルンの返礼に対して、エイラは満面の笑みを浮かべる。
我欲や邪心を感じさせない綺麗な笑顔である。

「で、思わぬエイラの告白に感動したのは良いがーーーーその手はなんだ?」

双丘、胸部装甲。
あるいは実り、など色々な比喩表現があるが、
確かに言える事実は、バルクホルンの胸にはエイラの指がしっかりと食い込んでた。

「・・・そこに胸があれば揉むしかいないダロ?」

胸を揉んでいるエイラが至極当然、
と言わんばかりな態度でバルクホルンの問いかけに答えた。
先ほどまでの感動やシリアス、百合、エイゲル、等など言った雰囲気が台無しである。

「返せ!ワタシの感動を・・・ひゃう!?」
「おお~大尉は張りも良いけどやっぱ感度もいいネ~」

モミモミ、と絶妙な力加減と指の動きで胸を揉むエイラ。
肉体を刺激されたバルクホルンは思わず変な声を漏らしてしまう。

「胸を揉んで良いのは、
 揉まれる覚悟のあるウィッチだけだーーーーエイラ!」

「ひゃわア!!?」

 だが、バルクホルンはここで泣き寝入りするようなウイッチでない。
即座にお返しとばかりにエイラの胸を揉み返す。

年相応に、手のひらに収まる程度に育った実りを鷲掴みする。
しかも、下着の下から手を突っ込み直接エイラの胸を揉んでいる。

「・・・そっちがその気なら、コッチだって!!」
「ひぁうぁあ!!?」

直ちに報復がバルクホルンに下される。
同じように直接肌に触れ、より巧妙な指の動作で揉み返す。

周囲に止める人間はなく、
暗闇で2人だけのスキンシップ。
ここまで環境が整えば後は意地のぶつけ合い、
どちらかが先にギブアップするまで止まらない事が確定する。

「いい加減・・・んぁあ!?
 敗けを・・・認めろよな大尉、んん!」

「エイラから・・・ひゃ!?
 始めたのだから、エイラが敗けを認めろ・・・あぅ!?」

どれ程の時間が経過したかは不明だが、
2人供汗だくになりながら双方の胸を揉んでいた。
顔を赤らめ、色っぽい声が絶え間なく発声される。

互いに引き下がる気配はないがこれ以上意地を張り続ければ何だか変な気分になって色々不味い、
などと薄々と気づいてはいるが辞める糸口が見つからない。

どうしたものか、
と妙な感覚に半ば酔った気分に陥りつつあったバルクホルンが、視線を感じでふと顔を動かす。

「・・・バ、バルクホルンさん。
 別にこっそり見ていたとかそんな訳じゃなくて、あの、その」

「・・・・・・」

「・・・・・・み、宮藤。それにサーニャも」

「え゛」

バルクホルンとエイラの動きが止まり、凍りつく。
宮藤とサーニャに見られていたという事実が熱を帯びた体を急速に冷やした。

「あの、誰に言いません!
 ・・・なのでゆっくり続きをどうぞ!」

「まてまてまて、
 これはスキンシップだ!
 ほら、宮藤も普段隙あらばリーネの胸を偶然を装って揉んでいるだろ、それと同じだ!!」

宮藤の誤解を解くべくバルクホルンが熱弁する。

「な、なんで知ってるんですか!?」

まさか自分がリーネの胸を揉んでいる。
しかも偶然を装って揉んでいる事実を指摘され宮藤が驚愕する。

「本人から聞いた。
 ・・・というか、501の全員にバレているぞ」

「リーネちゃんから直接!?
 しかも501の全員にバレている!?
 うわーん!明日リーネちゃんと会った時が気まずいよぉ・・・」

心底落ち込む宮藤。
もっとも2人の関係からすれば何とかなる話である。

「さ、サーニャ、
 これは、その、あのダナ」

「・・・・・・・・・」

対するエイラとサーニャと言えば難しい状況であった。
アレコレ言いたいが言えないエイラ。
何をどう受け止めて言えば良いか分からないサーニャ。
話が平行線どころか線すら描けていない状態である。

そして、

「・・・・・・エイラ、私は見てないから」

サーニャが気まずそうに視線を逸らして言う。

「だ、だから違うんだ!サーニャ!」

「・・・違うって、
 どういう意味なのエイラ?」

エイラの弁論対してサーニャが鋭い質問を投げ掛ける。
まるで鋭い槍のような強烈な感情が見え隠れしている。

「・・・そ、それは」

サーニャの見たことがない強い反応にエイラがたじろぐ。
どうにか誤解を解きたいが揺らぐ心のせいで言葉が見つからない。
溢れる様々な感情が表情を歪ませ、瞳から涙が溢れそうになる。

「サーニャ、すまなかった。
 ワタシが変に意地を張る必要なんてなかったんだ」

「・・・た、大尉?」

エイラとサーニャの間に第三者が唐突に介入する、バルクホルンである。
深々とサーニャに対して頭を下げている。

「・・・な、なんで大尉が謝るんだよ!!
 悪いのは先に悪戯を始めた私の方だろ!!
 サーニャ、本当にゴメン!ごめんなさい!!」

続けてエイラも深々とサーニャに対して頭を下げる。
ようやく素直な気持ちで言うべき言葉を見つけたのである。

「・・・エイラ」
「は、ハイッ!?」

一連のやり取りを見届けたサーニャが口を開く。

「・・・恥ずかしいから、
 一度しか言わないから、よく聞いてね」

「聞く聞く!聞くよ、サーニャ!」

顔を背けつつ羞恥心を露にするサーニャ。
エイラは絶対に聞き逃さない、とばかりに必死な態度を示す。

「・・・次はバルクホルン大尉じゃなくて私のを揉んでね」

耳まで赤らめたサーニャがそう告白した。

「へ?」

想像の範疇外な言葉にエイラが石像と化した。

「それじゃあ、
 お休みなさいエイラ」

「あ、ウン、ハイ。
 お休み・・・サーニャ」

再び布団へ潜り込むサーニャをエイラがぎこちなく見送る。

「エイラ、大丈夫か?」

「あ、アハハハ・・・。
 サーニャが、サーニャーが・・・」

「・・・これは酷い」

「いいなー、エイラさん・・・」

まったく身動きしないエイラにバルクホルンが声をかけたがエイラにとって先ほどの言葉がよほど衝撃的、
かつ刺激的な内容だったらしく「サーニャー、サーニャ」と、うわ言のごとく連呼する。

色々と手遅れというか重症というか、バルクホルンの一言が全てを要約していた。
なお、宮藤と言えば、サーニャ公認で胸を揉める事に羨ましがるなど全くブレていない。

「夢だ、これは夢に違いナイ。
 寝れば夢から覚めるに違いナイ・・・」

などと言いつつ、ヨロヨロと布団に潜り込むエイラ。
体を動かしたせいか瞬く間に眠りの世界へと旅立った。

「・・・寝るか。
 ああ、それと寝ている隙に胸を触るのはなしだから宮藤」

「し、しませんよ!!
 大体そんなの卑怯ですし、意味がないから絶対しません!」

「・・・どういう理屈だ?
 いや、まあ。理解できなくもないが・・・」

宮藤の真剣な態度に呆れるバルクホルン。
おっぱい星人もここまで極めると、称賛するべきであろうか?

「なので安心してくださいね、バルクホルンさん、お休みなさい!」

「そ、そうか・・・。
 いや安心していいのか・・・?」

そう誇らしげに語る宮藤。
これに如何に反応すべきか迷うところである。
しかし、宮藤も布団に入ると瞬く間に夢の世界へと旅立ったようで早くも寝息を漏らし始めた。

「・・・・・・寝るか」

自分以外の全員が就寝したのを確認し、
バルクホルンもベットに横になって改めて寝支度をする。

体を動かしたせいか、
徐々に意識が遠く、深い場所へと沈んで行く。

「・・・・・・エイラのバカ、ヘタレ」

そして、完全に意識がなくなる寸前。
先に寝た筈であるサーニャの声が聞こえた気がした。

 

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