二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

おススメSS 銀英伝天上編?

2016-04-04 22:53:46 | おススメSS

銀英伝天上編?

ヤングジャンプで掲載が始まり、
来年以降に放映予定の銀河英雄伝説のSSです。

今回は転生オリ主抜きの話で「死んだ先のヴァルハラで帝国、同盟が交流する」
という銀英伝にしては珍しくほのぼの系のSSであります。

主にヤンとの対話が多いですがヤンが毒舌家である点、
さらに相手の心理を読んだ上での論破に、予想外の考察をする。
といった原作で描かれていたヤンの特徴をよくとらえており、大変素晴らしいSSです。

また本編であったことを補足する話が多く、
ウェブ小説初期によく見られた王道的なSSで非常に珍しく、
また読んでいて「なるほど」と納得できるところが素晴らしいです。

ぜひ見てください。

「先日、閣下から伺いましたよ。陛下のプロポーズの花束を。
 赤と白の薔薇の花束には、温かい心という意味があります」

「そうか、ヤン元帥が教えてくれた意味ではないということか」

だが、無難な言葉だ。キルヒアイスはさらにほっとした。
それを見たシェーンコップは、にやりと口の端を持ちあげた。

まだまだ甘いな、小僧ども。

「もう一つの意味は『和合』というのです」

金髪と赤毛の頭が、そろって膝の上で抱え込まれた。
黒い目が、部下と来客を交互に見詰め、掛ける言葉を見つけられない。

「女性に贈っていい組み合わせではありませんな。
 混ぜるな危険、というのは薬剤だけではないのですよ」

最悪に最低だ。
それをあろうことか、
朝帰りの直後に自宅まで押し掛け、父親の面前で渡した。
マリーンドルフ伯は、よくも赦してくれたものだ。そして、ヒルダ自身も。

型破りな彼女は、知らなかっただけかも知れないが。

もう死んでるけど死にたい。

若気の至りに転げまわりたくなるということを、ラインハルトは初めて経験した。

「シェーンコップ、そんなに詳しい人はそうそういるもんじゃないよ」

「なにをおっしゃいます、帝国貴族の基礎知識ですよ。
 知らないと非常に危険ですからな、贈り物の花というやつは」

シェーンコップは器用に片眉を上げてみせた。

「迂闊な贈り方をしてごらんなさい。
 末代まで、成り上がりの田舎者と後ろ指を指されると、祖父が小官に教えたのです」

彼の祖父の本家は、シェーンコップ男爵であった。
帝国騎士といっても、ミューゼル家とは家格が違うのだ。
この一言は、ラインハルトの儚い希望を打ち砕いた。
美貌が台無しになるほど蒼褪めた皇帝陛下を慮って、ヤンがとりなしてみる。

「同盟じゃそんなの気にしないがなあ」

「客が気にしなくても、代わりに花屋が訊くでしょう?
 予算と用途、相手のイメージや何かを。そして、危険物を外してくれるんですよ」

「え、そうなのかい」

「それも資格取得の条件だと聞きましたよ。
 告白に使う花で、ピンクが好きな相手だったら、
 大輪の薔薇を避けてカーネーションに変えるとかね」

彼の花園の中には、百花を商う美女もいたに違いない。

「それが何か違うのか」

震え声の皇帝に、シェーンコップは重々しく頷いた。

「ピンクのカーネーションなら『熱愛』です」

ヤンは感心した。

「ああ、それならたしかに愛の告白にぴったりだ。
 それにしても、花屋さんもすごいものだな。
 しかし、君の言い方だとピンクの大輪の薔薇はまずいのかな」

「ええ、『赤ちゃんができました』ですからな」

ぬけぬけと喩えに爆弾を仕込む部下を、ヤンは睨んだ。

「君のところにこそ、誰か送ってきたんじゃないのかい」

すかさず反論してやったが、百戦錬磨の色事師が怯むはずもない。

「そこが小官の選択眼でしてね」
「もういいから、下がってくれないか。話がややこしくなるから」

これが帝国貴族が五百年にわたって培った、悪意の社交術であった。
貴族の馬鹿息子にやられたところで、痛くも痒くもなかったラインハルト達だったが、
相手が、有能で洗練された魅力的な年長者だと、こんなに心を抉られるものはない。

悄然とする若者ふたりに、
余裕たっぷりの笑みを見せつけて退出する不良中年。

まったく大人げない。ヤンも顔を覆いたくなった。
しかし、部下を咎めたところで、ラインハルトの顔色に改善の兆しはない。
いや、蒼白から真っ赤を目まぐるしく往復し、彼のプロポーズの花束のようだった。

「その、なんと言うか、何と言ったらいいのか、何と言うべきか……。
 陛下、今日のところはお帰りになったほうがよろしいでしょう」

ヤンは、とりなすことを諦めた。
バーミリオン決戦の前、妻へのプロポーズに何の用意もしなかった自分としては、
やっただけラインハルトの方が上だと思う。後日、真紅の薔薇を差し出してから、
宝飾店に二人で出掛けたけれど。それも先輩のアドバイスのおかげだが。

とりあえず彼に必要なのは、叫び声を上げて、転げ回ることのできる場所だろう。
キルヒアイスが静かに頷いて、親友の肩を抱くように、半ば引き摺って歩き出した。
見送ったヤンの視界から二人の姿は消えたが、声は届いてきた。

「ラインハルト様、アンネローゼ様に申し開きのできないことをしないでくださいと、
 私は言いましたよね。あなたの思い出話に、それを義妹から聞かされたら、
 アンネローゼ様がどんな思いをされることでしょう。……おいたわしい。
 しかし一番お気の毒なのは、フロイライン・マリーンドルフです。
 ヴェスターラントの死者や私に申し訳ないというなら、
 やるべきことが違うでしょう!今度こそ私も折れませんから、
 ゆっくりとお話をしましょう、ええ、ゆっくりと。
 もう、生前の身分は有名無実でしたよね!」

穏やかなキルヒアイスには珍しい、立て板に水のようなお説教だった。

「藪蛇だったかなあ……」

ヤンは黒髪をかきまわした。
こんなイースタンの干支にちなんだハプニングはいらない。
蛇だけに手も足も出ないってか。やれやれ、すっかり本題がすっとんでしまった。

結論も、当分出そうにない。















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1 コメント

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読む人は読んでいるんですね (電子笑鬼洞)
2018-12-20 00:37:33
 私は『呑めども飲まれず』が好きでした。

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