二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

【完成】弓塚さつきの奮闘記~MELTY BLOOD編 ACT.10「憂鬱」

2017-01-23 22:31:47 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編

「ぐ、は――――――」

足取りは重く、呼吸するたびに喉が焼けるような乾いた感触。
体力は消耗し、疲労で睡魔が絶え間なく襲いかかっている。

このままこの場で睡眠を取ることができればどんなに楽か。
そんな誘惑にシオンは心を動かされるが、それでも体は動き続ける。

何故ならいくら人気がないとはいえ、
彼女の計算によれば再度代行者に捕捉され、
今度こそ生命活動を強制的に停止させるに至るだろう。

ふと、その時シオンは思った。
今の自分はどんな姿になっているのだろうかと。
視線を下に向け、路地裏に散らばっている窓ガラスの破片に映る己の姿を見出す。

そこに映るのはこれまでになく酷い表情であった。
顔は青白く、目元は何日も徹夜してきたように疲労の極みであるのを示し、
おまけに代行者に傷つけられた生傷まであった。

「ふ―――――、なんて無様」

シオンの口から自嘲の言葉が漏れる。
何せこうも酷い状態となったのは全て自分自身が原因なのだから。

「長年の疑問が解決したにも関わらず、それを拒否。
 挙句タタリ打倒に必要な協力者とは戦闘状態に入る・・・。
 ふふふ、私と言う人間は計算ではなく感情的な人間だったとは初めて知りました」

自虐の台詞がシオン自身から発せられる。
自らを演算装置と見做す高速思考で感情という要素は省かれる。
計算において感情という計算できない要素は必要でなくむしろ邪魔である。

シオン・エルトナム・アトラシアという人間はだれよりもそれを実現してきた人間で、
これからもそうした生き方に疑問を抱いていなかったが・・・。

「異世界人、それもこの世界を俯角することができた人間の介入など計算外にもほどがあります」

壁に背を預け、シオンが嘆息する。
始めは遠野志貴の記憶から読み取ったなかに登場する重要人物、という程度の認識でしかなかった。

だから実際に弓塚さつきと邂逅した時、
『いつものように』エーテライトで情報を抜き取った。
そして得られた情報にシオン・エルトナム・アトラシアは全てを知った。

弓塚さつきが平行世界、否。
『この世界を物語として』観測できる存在は平行世界、
と言うよりも異世界人と表現した方がこの場合適格であろう。
そしてそんな存在などアトラス院の院長補佐に上り詰めた頭脳を以てしても理解不能であった。

「どう、すればいいのでしょうか?」

月を見上げるシオンからそんな言葉が漏れた。
これまでの人生で積み上げて来た物が通用せず、否定されたことにシオンは途方に暮れた。

「妹から聞いたけど、
 随分と派手に暴れたみたいね、錬金術師」

――――第三者の声が突然路地裏に響き渡る。
女性の、凛と響く声だ。
シオンは顔をゆっくりと下げ声の主を確認する。

暗闇にでも輝く黄金の金髪。
爛々と燃え盛る紅の瞳に造形美を極めた肉体と表情。
何よりも彼女が作り上げる空気は「人の形をした何か」をこれ以上なく主張していた。

「・・・真祖の姫」

「こんばんわ、エルトナムの末裔。
 今夜は良い月ね、私達みたいな魔性の者にとっては」

アルクェイド・ブリュンスタッド。
全ての吸血鬼の生み親である真祖の生き残り。
どういうわけか、極東に長期滞在しているのを把握しており、
タタリ打倒と吸血鬼化の治療に協力を求めるつもりであったが・・・。

「成程、ここが私の旅が終焉する場所ですか。
 ・・・いいでしょう、好きにしてください」

真祖の姫に関わる人間を害して生き残れるとはシオンは考えていない。
もはやこれまで、という心境で終わりを受け入れる。

しかし、シオンの諦めに対しアルクェイドは予想外の言葉を投げかけた。

「何勘違いしているのかしら?
 さっちんが傷ついた事には腹が立ったけど、
 私は別に貴女をここで殺すつもりなんて無いわ」

「なっ・・・!?」

呆れと共にシオンの決断を否定したのだ。
やれやれ、と言わんばかりの身振りすらしている。

「馬鹿な、何故です?
 目の前に吸血鬼がいる。
 それだけでも姫が動くだけの理由があるはずです!!」

魔術師の常識が崩れシオンはアルクェイドに問いただす。
吸血鬼を前にして行動を起こさない真祖の姫、という事実は受け入れがたい物であった。

「そんな事言われても意味がないし。
 ・・・そうね、強いて言うなら貴女の様子を見に来た、それだけよ」

「・・・・・・・・・」

殺す価値もない、
と言われての衝撃と様子見という想像の範疇外の回答にシオンの思考は停止する。
弓塚さつき、遠野志貴から抜き取った記録から魔術師が考える真祖の姫と、
実際の人物の間に大きな亀裂があることを知っていても予想外であった。

「それにしても、正直がっかりだわ
 てっきり私に突っかかって来るものかと期待していたけど、
 世界を知り過ぎて自ら絶望に捕らわれた歴代のアトラス院と同じ道を歩むなんて」

「――――——――—」

アルクェイドの言葉に対しシオンは沈黙を保つ。

「まあ、それが貴女の選択、
 ということなら別に私は止めないわ。
 ここのタタリは私やシエルで何とかするから三咲町から出ていくといいわ。
 それじゃ、もう会うこともないと思うけど、バイバイ――――」

「――――——――待ちなさい、アルクェイド・ブリュンスタッド」

踵を返し立ち去ろうとしたアルクェイドに沈黙を保っていたシオンが言葉を投げかけた。

「先ほどから随分と好き勝手に私を評していましたが、
 認めましょう、確かに私は所詮アトラス院という穴倉の住民。
 自らの行き先とこの世界の未来に絶望と狂気を覚える錬金術師です」

「ふぅん・・・?」

批評を素直に認めるシオンの話す内容にアルクェイドは足を止めた。
先ほどまで失せていた関心が再びシオンに向けられる。

「その上自分の矛盾を認められず癇癪を起した未熟者です。
 ・・・ですが、貴女が言うようにタタリから逃げることなど有りえません!
 タタリとの戦いは私が決着を付けねばならない事情で、そのために此処まで来たのですから」

僅かに残った意地と勇気を頼りにシオンは己の内心を口にした。
これまで自分自身を欺いていた事実を認めつつタタリから逃げないという発言。
その内容にアルクェイドは・・・。

「・・・あは、あはははははは!!
 成程、貴女は意地だけを頼りにしているのね。
 愚かね、貴女程度でタタリに敵うとは自分で分かっているはずよ?」

腹を抱えて爆笑した。
金髪の髪が乱れ、瞳には涙さえ浮かべている。
眼の前にいる人間が抱える矛盾と愚かさに笑い続ける。

「魔術師としては失格だけど―――――――私はそういう人間の事嫌いじゃないわ」

だが、遠野志貴に『壊され』た後、
そうした人間という種族の性質を理解しそれを良し、
とするアルクェイドはシオンの発言に対しそう締めくくる。

「じゃあ、今夜はこれで。
 貴女の健闘を期待するわ」

再度踵を返し、
今度こそ立ち去ろうとする、その時。

「ところで、真祖の姫はどこまで知っているのですか?『弓塚さつき』という異物を」

シオンの質問が飛ぶ。
夜の路地裏に響いたその声は冬の様に冷たく、
肌を突き刺す緊張感がこの場を支配し、重い空気が流れる。

「――—―――—さあ、私が知るさっちんは、私が認識するさっちんしか知らないわよ」

一拍間を開けてアルクェイドが質問に答える。
しかし顔は振り向かず背をシオンに向けたままだ。
そしてその声の音は先ほどまでの感情豊かな音声と違い抑制された音調である。

「好奇心が強いのは感心するわ。
 でもね、あまり深入りすることをお勧めしないわね。
 今回は腹を立てた程度にしたけど――――――—次はないから」

「――――――——っ!!?」

刹那、濃厚な殺意が夜の路地裏を制する。
人には耐えがたい強烈な意思と気配に気圧され、
シオンは吐き気を堪えるように口を手で塞ぎ堪える。

「今度こそ、ばいばい。
 せいぜい足掻きなさい。
 それが未来を目指す人間のあるべき姿であり、
 過去にしがみ付く吸血鬼との最大の違いだのも」

言い終えるとシオンの方へ顔を振りことなく、
手をひらひらと手を振りアルクェイドはその場から立ち去る。

残されたシオンはただ茫然とその後ろ姿を見送る事しかできず、
より深い夜の闇に消えゆくアルクェイドの姿が見えなくなるまでその後ろ姿を見つめた。







 
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【予告】弓塚さつきの奮闘記~MELTY BLOOD編 ACT.10「苦悩」

2016-11-20 20:11:45 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編

「ぐ、は――――――」

足取りは重く、呼吸するたびに喉が焼けるような乾いた感触。
体力は消耗し、疲労で睡魔が絶え間なく襲いかかっている。

このままこの場で睡眠を取ることができればどんなに楽か。
そんな誘惑にシオンは心を動かされるが、それでも体は動き続ける。

何故ならいくら人気がないとはいえ、
彼女の計算によれば再度代行者に捕捉され、
今度こそ生命活動を強制的に停止させるに至るだろう。

ふと、その時シオンは思った。
今の自分はどんな姿になっているのだろうかと。
視線を下に向け、路地裏に散らばっている窓ガラスの破片に映る己の姿を見出す。

そこに映るのはこれまでになく酷い表情であった。
顔は青白く、目元は何日も徹夜してきたように疲労の極みであるのを示し、
おまけに代行者に傷つけられた生傷まであった。

「ふ―――――、なんて無様」

シオンの口から自嘲の言葉が漏れる。
何せこうも酷い状態となったのは全て自分自身が原因なのだから。

「長年の疑問が解決したにも関わらず、それを拒否。
 挙句タタリ打倒に必要な協力者とは戦闘状態に入る・・・。
 ふふふ、私と言う人間は計算ではなく感情的な人間だったとは初めて知りました」

自虐の台詞がシオン自身から発せられる。
自らを演算装置と見做す高速思考で感情という要素は省かれる。
計算において感情という計算できない要素は必要でなくむしろ邪魔である。

シオン・エルトナム・アトラシアという人間はだれよりもそれを実現してきた人間で、
これからもそうした生き方に疑問を抱いていなかったが・・・。

「異世界人、それもこの世界を俯角することができた人間の介入など計算外にもほどがあります」

壁に背を預け、シオンが嘆息する。
始めは遠野志貴の記憶から読み取ったなかに登場する重要人物、という程度の認識でしかなかった。

だから実際に弓塚さつきと邂逅した時、
『いつものように』エーテライトで情報を抜き取った。






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弓塚さつきの奮闘記~MELTY BLOOD編 ACT.9「対立」

2016-11-04 23:23:16 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編

「ぐっ――――!」

シオンの叫びと同時に魔力を放出。
身体に突き刺さっているであろうエーテライトを無理やり取り除く。

そして、後ろに跳躍する。
が、間に合わず両腕がエーテライトで切断された。
飛び散る腕、そして血が志貴の部屋を汚してしまう。

「しっ!」

申し訳ないと考ええるよりも先にシオンの第ニ撃が迫る。
腕がないから鋭い蹴りを体を捻ることで避けるけど―――駄目だ!

「がっ!?」

次の一撃をまともに受けてしまったっ…!!
その細い体から出せたとは思えない程重い正拳突きだ。

骨が軋む、いや肋骨が折れた。
肺から強制的に空気が排出され意識が飛ぶ、痛いっ!!

「さつき!」

一連の出来事が終わった直後、志貴が立ち上がる。
けど、多分ボクを助けることは、

「遠野志貴、貴方はそこで止まっていなさい」
「な、何を言っているんだシオン!大体―――な、動け、ない!?」

やはり無理だ。
魔術回路もない志貴ではエーテライトで簡単に体を操られてしまう。
で、こっちは吸血鬼が苦手な朝な上にとっくにダメージを受けていると来た。

状況は極めて悪い。

「弓塚さつき。貴方はここで亡くなるべきだ。
 貴方という存在がタタリを強化させ、手に負えない存在にしてしまう。
逆に貴方が亡くなればタタリへの勝算は最低3パーセント向上するのですから」

さっきまでラブでコメっていた人間とは思えない程淡々とした声で彼女は言葉を綴った。
いや、しかしそれにしても・・・。

「・・・何が可笑しいのですか弓塚さつき?」

ああ、いけない。
面白すぎて思わず顔が笑顔を浮かべている。
両腕がなくなっているのに我ながら実に陽気なものだ。

「いや、あははは、
 想像通りの人間だなって」

「――——―――——不愉快ですね、
 私の考えを見抜いているとでも?
 『キャラクター』相手だから何でも知っているつもりですか?」

シオンはご機嫌斜めのようだ。
すんごい表情で今睨まれている。

うん、ここは正直に話した方が良さそうだ。
元々頭が良い彼女相手に小手先の誤魔化しなんて通用しないだろうし。

「まあ、それもある。
 けど知ってはいたけど、
 勝算が3パーセント上がっても『タタリに絶対勝てない』
 と内心理解しているはずなのにそんな言葉を口にする人間だったから、ね」

「・・・黙りなさい」

シオン・エルトナム・アトラシア。
という人間は理論を重んじる魔術師である一方で、
タタリに執着する感情的な人間であり、その内心は矛盾を含んでいる。

例え吸血鬼化しても魔術の研究は不可能ではない、
むしろ寿命が短い人間以上に研究時間を確保できる、
と喜ぶのが『普通の魔術師』である・・・衛宮切嗣の父親がそうだったように。

「どこまでボクの頭を覗いたか分からないけど、
 そもそもこんな事をして意味がないことぐらい理解しているはずだよ。
 ボクを殺せばアルクェイドさんとシエル先輩から狙われることくらい知っているはずだよね」

「・・・・・・・・・」

この場でボクを殺害すれば2人は間違いなくシオンを脅威と看做す。
場合によってはより倒しやすい敵としてタタリより先にシオンの排除を試みるだろう。

志貴の記憶や思考を読み取っているならば、
方や真祖の姫、もう片方は埋葬機関の殺し屋と、
通常ならば手を組むなどありえないと思われる2人が実のところ仲が良く、
彼女らの知り合いに手を出せばただでは済まないことが想像できるはずだ。

ではなぜこうなったのか?

「戸惑い?それとも困惑?
 あるいは混乱して何が何だが分からない状態なのかな?
 まあ、でもこの行為はどちらかと言えば八つ当たりと言えるか」

「黙りなさい!」

シオンのエーテライトによる一閃。
しかし先ほどとは違い大振りな動作ゆえに簡単に避けることができた。

「冷静じゃなないね、
 やっぱり八つ当たりだね」

「その口を閉じなさい!
 貴女に何が分かると言うのですか!?
 己が抱いていた矛盾に無理やり気づかされた苦悩を!
 そして身体を蝕む吸血鬼としての衝動、飢えと渇きを彷徨う苦しみに!」

絶叫。
それは彼女が数年に渡って蓄積された感情の発露でもあった。

負の感情が盛大に爆発したせいか吸血鬼の力を制御しきれず、
紫色の瞳も今はボクと同じく吸血鬼の血のような紅色の瞳へと変化している。

「まあ、たしかに分からないね。
 事前に【知っていた】としても何せ他人様のことだから」

嘘ではない。
現にシオンがこうして激高するなど予想できなかった。
事前に彼女の事を知っていたとしても所詮紙の上だけの知識にすぎなかった。

それを今痛感している。

「だけど、その苦しさは理解できる。
 ボクだって経験したから、吸血鬼の衝動には」

今だって覚えている。
人の生き血を啜りたいという止められない欲望。
人を人として見ず、血袋として認識する欠落した論理感。
吸血鬼という二次元の世界の住民に成れた喜びよりも自身に恐怖を覚えた。

「だからお互いに【これから】理解し、分かり合えるはず。
 このタタリの騒動がシオンの想定よりも悪化していたとしても、
 協力しあえばタタリを抹殺できなくても退けることぐらいできるよ、きっと」

「戯言を・・・」

「うん、まあ。
 戯言なのは知った上での発言だよ、勿論。
 だけど、このままだと勝ち目何て最初から皆無だと思うけど?」

「・・・・・・・・・」

沈黙するシオン。
何かと理由を付けていたけど、
結局のところ感情的な行為でしかなにのは薄々理解していたみたいだ。

特異の計算でもしているのだろうか、
視線はボクや志毅ではなく何もない場所を向いている。

「・・・私が事前に知っていた遠野志毅の戦闘能力。
 そして貴女と貴女の知識を持ってもしてもタタリへの勝率はさほど変わりません」

そして静かにシオンが口を開いた。

「しかし、分岐する可能性。
 という要素が非常に変化に富んでいました。
 特に真祖の姫の手によって「朱い月」を再現させることが鍵であり、
 これ以外にタタリを完全に打倒する手立てはなく、姫と協力関係を結ぶことが肝心。
 そのためには目の前にいる異邦人、弓塚さつきを通じて姫と協力関係を結ぶことが必要――——そう結論がでました」

「うわ、アルクェイドさんと協力するためだけにボクが必要なだけか、傷つくな。
 こっちでも仲良く路地裏同盟を結成して、夜のプールに忍び込んだり、ピラミッドで遊びたかったのに」

「生憎、貴女となれ合うつもりはありません。
 それに、その可能性を歩んだ私と弓塚さつきが友好関係を結べた理由は、
 例え吸血鬼なっても弓塚さつきが魔術をまったく知らない一般人であったからでしょう。
 ロアの知識を継承し、半分魔術の世界の住民である貴女には魔術師として接していただきます」

こちらの冗談に対して、
冷ややかな目でセメント対応されてしまった。

魔術師として対応、か。
まあ、それは仕方がないと言えば仕方がない。
【原作】で弓塚さつきとシオンが和気藹々とやれたのも、
強力極まりない吸血鬼にも拘わらず、一般人感覚が抜けていなかったからだ。

だけど・・・。

「つまり【魔術師として】協力し合えるわけかな?」

「その通り、魔術師としてタタリ打倒の契約を交わすことを提案します」

友達感覚で協力こそできなくとも、
魔術師として協力し合うことは可能だ。

行き成り腕を切り落とされ、
殺されかけたことには思うところがある。
だけど、タタリ打倒にはシオンの協力も必要だ。


だから回答は――――。


刹那、窓を打ち破って黒鍵が部屋に飛び込んできた。
投擲された剣とは思えぬ威力を保ったそれは部屋を派手に破壊する。

「っつぁ・・・!?」

一振りがシオンに命中し、吹き飛ぶ。
ドアを打ち破り、廊下へとたたき出される。
黒鍵なんて代物を操る人間は1人しかいない。


「御無事ですか遠野君!弓塚さん!!」


シエル先輩だ。




 










 


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【予告】弓塚さつきの奮闘記~MELTY BLOOD編 ACT.9「対立」

2015-08-03 21:46:47 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編

「ぐっ――――!」

シオンの叫びと同時に魔力を放出。
身体に突き刺さっているであろうエーテライトを無理やり取り除く。

そして、後ろに跳躍する。
が、間に合わず両腕がエーテライトで切断された。
飛び散る腕、そして血が志貴の部屋を汚してしまう。

「しっ!」

申し訳ないと考ええるよりも先にシオンの第ニ撃が迫る。
腕がないから鋭い蹴りを体を捻ることで避けるけど―――駄目だ!

「がっ!?」

次の一撃をまともに受けてしまったっ…!!
その細い体から出せたとは思えない程重い正拳突きだ。

骨が軋む、いや肋骨が折れた。
肺から強制的に空気が排出され意識が飛ぶ、痛いっ!!

「さつき!」

一連の出来事が終わった直後、志貴が立ち上がる。
けど、多分ボクを助けることは、

「遠野志貴、貴方はそこで止まっていなさい」
「な、何を言っているんだシオン!大体―――な、動け、ない!?」

やはり無理だ。
魔術回路もない志貴ではエーテライトで簡単に体を操られてしまう。
で、こっちは吸血鬼が苦手な朝な上にとっくにダメージを受けていると来た。

状況は極めて悪い。

「弓塚さつき。貴方はここで亡くなるべきだ。
 貴方という存在がタタリを強化させ、手に負えない存在にしてしまう。
 逆に貴方が亡くなればタタリへの勝算は最低3パーセント向上するのですから」

さっきまでラブでコメっていた人間とは思えない程淡々とした声で彼女は言葉を綴った。















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【完了】弓塚さつきの奮闘記~MELTY BLOOD編 ACT.6「シオン」

2015-03-02 22:32:15 | 弓塚さつきの奮闘記~月姫編

弓塚さつきがタタリと交戦を始めた頃。
アルクェイドと秋葉に散々絞られた遠野志貴は再度眠りについた。
いつもなら無理をしてでもタタリの捜索に行って行くところであったが、
シエル先輩の安静するようにとのお願いに従い、眠りについていた。

アルクェイドと秋葉はそれぞれタタリの捜索に出ており、
ゆえに今部屋にいるのは志貴のみ、寝息だけが部屋の中で小さく音を立てていた。

そんな中、静かにドアが開かれる。
するりと忍び寄るように人影が部屋に入る。
人影はゆっくりとベットで眠る志貴の元へ近寄る。
やがて、枕元まで来た人影は何もせずじっと眠れる王子を見た。

直ぐそばに人が立っているにも関わらず志貴は相変わらず寝息を立てて寝ている。
これだけなら、何ともない事実であるがしばらくその姿を見ていた人影は、ふと違和感を覚えた。
人影は人より遥かに優れた頭脳を回転させ、その違和感について考える。

解答は直ぐに出た、そうあまりに静かなのだ。
魔術で自己暗示による精神洗浄をしているならともかく自然の眠りにしては生気がない。

志貴の眠りはまるで、

「まるで死体のようですね、貴方の眠りは」

そうシオン・エルトナム・アトラシアが感想を呟いた。

そして、そっと手を志貴の頬を撫で、エーテライトを接続し志貴の体調を見る。
傷は回復傾向にあるが体温は平均より低く、心拍数も少ない。という解が直ぐに頭脳にはじき出された。

「よかった」

その結果にシオンは思わずそんな言葉を発し、
刹那、自分の口から出た言葉の内容に動きを止めた。

何故ならシオン・エルトナム・アトラシアが、
他人を気遣ったような経験は、今は亡き友人であるリーズバイフェ以来だ。

アトラス院にいたころは他人に対して全て無関心で、
ここ最近は教会とアトラス院から逃げる日々であったためそうした余裕は一切なく、
加えて言えば、タタリを追うことのみで他人に興味関心を持つという発想自体まったくなかった。

それがどうだ?
たった今他人を気遣った。
それも初対面は殺しあった人間だ、おまけに異性だ。
何がシオン・エルトナム・アトラシアにこのような行動に移させたのか?

遠野志貴の異能の希少価値?
たしかに研究材料として魅力的であるが解に合わない。
何故ならその眼だけを奪う隙はあったはずだがしなかった理由が見つからない。

タタリ打倒のための協力者であるから?
それはあるかも知れないが、何故遠野志貴なのか?
協力者ならば真祖に代行者、吸血鬼と選択肢は複数あったはずだ。

しかも彼とはタタリが襲来する直前まで殺しあっていた関係だ。
彼が単独でタタリを迎撃しただけで、協力者という関係には至っていない。

「……くっ」

高速思考を展開し、思考を深めるシオン。
だがそれでも解は得られず、謎が深まるばかりである。

「私は、」

私は一体どうなってしまったのか?
そんな疑問と不安がシオンの内心を蝕む。

じっと志貴の顔を見るが、答えは当然出ることはない。
だが、ふとシオンは思いついた、もしかすると彼なら答えを知っているかもしれない、と。

そう思い志貴を起こすため手を伸ばし――――。

「悪いけど、志貴を起こさないでくれるかしら?」

手を伸ばした所で第三者の声が介入してきた。
声の主に聞き覚えがあったシオンは主がいるであろう方角に振り返る。

「真祖の姫君……」
「こんばんわ、錬金術師。もう体調は大丈夫みたいね」

声の主はいつの間に開いていた窓に座っていた金髪の女性。
真祖の姫であるアルクェイド・ブリュンスタッドであった。

「…昨晩は姫君のご好意、深く感謝致します」

「まー、屋敷に置いくれないか妹に頼んだのは私だけど、
 最終的に決断したのは妹だから明日にでもそっちの方にお礼を言っておいてね」

「はっ、」

アルクェイドであることが確認できたシオンは即座に姿勢を正し礼を述べる。
そして、改めて己の名と願いを続けて口にした。

「改めて 私の名はシオン、シオン・エルトナム・アトラシア。
 この街に来訪したのはタタリの打倒と共に姫に願いたいことがございます」

「ふぅん、その年で穴倉の院長補佐?すごいわねー。
 そして外部との接触を一切絶つアトラスの人間が私に願い、いいわ、聞いてあげる」

遠野志貴とその周囲の人間以外にあまり興味がないアルクェイドであるが、
錬金術師が提示した変わったお願いにその内容を話すことを許した。

「私の研究課題は吸血鬼の完全な治療。
 すなわち吸血鬼から元の人間に戻すことです、姫」

「…続けなさい」

アルクェイドが催促する。

「吸血鬼を生んだのは星の精霊である真祖の血。
 ならば、その血を解析することで吸血鬼から人間に戻すことも可能なはず。
 無礼を承知ですが、どうか姫の血を提供して頂けないでしょうか?」

懇願する言葉に徐々に熱が入るシオン。
そして最後に、再度頭を下げた。

その姿を黙ってみていたアルクェイドは、
シオンの願いに即答せずしばらくの間沈黙を保つ。
数十秒ほどの静寂な時間が流れたが、ゆっくりと口を開いた。

「…死徒になりたがる魔術師はごまんといるけどその逆とは、ね
 もしも私の眷属になりたいなんて言い出したらこの場で殺していたわ。
 でもね、死徒から人間に戻るなんて――――無理よそれは」

「なっ!?」

それは否定。
その内容にシオンが絶句した。

「な、何故です!!大本である真祖の血を解析すれば吸血鬼化に治療に…」

「無理なものは無理なのよ」

必死に問うシオンにアルクェイドが顔を横に振り否定を重ねる。

「貴女は知っているはずよ、
 人間が吸血鬼になることは肉体的な変化だけでなく魂そのものが改変されること。
 もしも人間に戻るならそれこそ魔法、それも時間を戻す魔法を使わなければならない、と」
 
「黙りなさい!!」

考えていたがあえて見ぬふりをしていた事実の羅列にシオンが感情を爆発させる。
何時もなら感情を露にすることすら稀であったが、吸血鬼化治療の中でも最後の希望が消滅してことで感情のタガが外れた。

「だいたい、元はと言えば貴女達真祖が撒き散らした病魔ではないですか!
 それを治療できないと言うのはあまりにも身勝手すぎます!」

「怒りで我を忘れているようだけど、大昔から神様や魔物。
 それに貴女達魔術師という人種が生きる世界はそうしたものでしょ?」

「そ、それは……」

アルクェイドの正論に頭が冷やされたシオンがたじろぐ。
「理不尽な魔が人間を襲う」この図式は遥か神話の時代から続いた現象だ。
そして英雄と呼ばれる人種を除けば人間の大半はこの魔に対してまったくの無力だ。
たとえそれが科学技術が発達し、神秘が薄れた今日でもその図式に変化はない。

「それに、教会の受け売りになるけど、魔さえ神の創造物らしいわよ。
 よかったわね、錬金術師。貴女の肉体が半分魔であっても嘆くことはないわ。
 貴女の存在を何せカミサマが保障してくれているのだから、何がいけないのかしら?」

「――――っっっ!!!」

吸血鬼の存在を良しとするアルクェイドの言葉にシオンに衝撃が走る。
朱色の瞳を細め人を皮肉する姿はまだに人ならざる魔の傲慢さを具現化させていた。

「――――志貴の情報から実りのある会話を期待していましたが、どうやら私の思い違いのようでしたね」

「あら悪いけど、自分の事すら分かっていない人間と仲良くしようなんてこれっぽちも思っていないから」

「…自分のあり方がわかっていない?何を一体、」

自分の事すら分かっていない人間。
そんあ評価にシオンは疑問を覚えアルクェイドに尋ねる。

「貴女のあり方と吸血鬼になりたくない、
 という願望に矛盾を生じているのが分かってないのよ」

「何を馬鹿な……」

アルクェイドの言葉を即座に否定する。
吸血鬼にならない、それはあの蒸し熱い夏に友人を失って以来誓ったもの。

そこに矛盾など一切入る余地はない。
シオンは続けて語ろうとしたが言葉が出なかった。

ほんの少し。
ほんの少しだけ違和感を覚える。
アルクェイドの言葉を即座に否定することができなかった。

「やっぱり答えはでない、か。
 じゃあね、錬金術師。私これでも忙しい身だから」

「あ……」

己に迷っているシオンを見て興味を失ったアルクェイドが窓から飛び降り、颯爽とその場を後にした。
部屋に残されたのは眠りを続けている志貴、そして答えを言い出せなかったシオンだけとなった。

「…………」

開けっ放しの窓を黙って見るシオン。
しばらくの間アルクェイドがいた場所を見ていたが、思いを口にする。

「貴女の言うとおり、私は私のあり方が分からない」

顔を俯かせシオンは彼女の言葉を肯定するしかなかった。












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