二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

弓塚さつきの奮闘記外伝 午後14:00(完結)

2014-11-04 22:42:48 | 弓塚さつきの奮闘記〜月姫編

どうも、久々の憑依弓塚さつきだ。

いや、本当にすごかった…。
DEENのfateもそれはそれで楽しんだし、
セイバーと衛宮士郎とのイチャイチャにはニヤニヤと出来たから。

でも、流石uftable。
戦闘シーンといい、背景といい実に精巧だ。
一体何人のアニメスタッフの睡眠時間を犠牲にしたのか分からないけど……。

「次は士郎の出番ね…あれ、士郎は?」

引き続き2話を鑑賞しようと思ったが、
遠坂さんが衛視さんの名を呼ぶがいない。
ボクも振り返り喫茶店の中を見渡すが赤毛の青年はどこにもいない。
可笑しいな、さっきまでその辺で寝ていたはずだけど。

「あの…姉さん、何か手紙がありますよ?」
「手紙……?げ、これって、まさか…」

皆で頭を傾げるが、衛宮さんの行方に関するヒントは直ぐに出た。
桜さんが妙に古風な手紙を見つけ、遠坂さんが嫌悪感を表情に浮かべる。
…なんだろう、凄く嫌な予感がする。

「あ、それ聖堂教会の事務報告用の手紙ですね」

シエル先輩がカレーライスを頬張りつつ言った。
……それって、衛宮さんを浚った犯人って。

「一体何が…こ、これは!!?」
「また、何かあったのっ……!!」
「先輩……え?」

そして、手紙を開けて絶句し、石になるヒロイン3人。
一体その手紙には何が書かれているのやら……どれどれ?


雑談にうつつを抜かした駄目ヒロインへ。
カレンルートが解禁されるまで、衛宮士郎を永久租借します。


……う、うわー。
煽る、煽る、煽りおる。
公式で明言はしていないけどあの父にして子あり、と言った所か?

む、それに2枚目か?
……写真か、あ、これは…。


追伸:駄犬に責任を取らすので結婚式は言峰教会で行います、ぜひ来て下さい。


なんて素敵な言葉が綴られると同時に、
写真には花嫁姿の銀髪金眼の少女カレンが、
白のタキシード姿の衛宮士郎に寄り添う姿が写っていた。

新郎と花嫁の年が少々低いが、
純朴そうな赤毛の青年に銀髪一見ミステリアスな外見をした銀髪美少女。
その組み合わせは奇妙ながらも、婚姻衣装で着飾った2人の行く末に妄想を膨らませるには十分であった。

…タキシード姿の赤毛の青年が手足、さらに口を封じられているのを除けば。
なんかベットの上だし、カレンが衛宮さんの太ももに手を伸ばしているし、エロイな。

で、だ。
どう見ても幸せな結婚式の記念写真です、本当に(以下略)。
そして、この次にFate勢のヒロイン達が移す行動は言わなくても分かる。


ぶちん、ぶちん、ぶちん。


「ふ、ふふふふふふ」
「あは、あはははは」
「クスクスクス、せんぱーい」

魔力を噴出させブリテンの覇王の王気全開のセイバーさん。
腕の魔術刻印を光らせ、米神に青筋を立てて笑う遠坂さん。
そして、全身に影を纏い、顔を下に向けて嘲笑する桜さん、もとい黒桜。

ああ、全力で関わりたくない。
そして渦中の衛宮士郎は……うん、生きろ。
カレンの元から奪還されても、この調子だと八つ当たりの対象になるしない。

「さて、どうしてくれようかしら……って、
 まだ続きがある…あ、これ貴女たちの方のだわ、弓塚さん」

「え?」

喧嘩上等オーラを背負った遠坂さんであったが、
どうやらボクの方、ボク達がらみの内容らしい。

あーーうん。
すっごい、すっごい嫌な予感がする。
こうしたイベントが大好きな割烹着とか割烹着の影がちらつく。

どうせ琥珀さんが銀髪シスターが衛宮さんを拉致ったように、
拉致監禁、そしてヒロインに挑発でもしているだろうな……どれどれ。


シキをエルトナムの婿とします。


実に素っ気無い一言。
付随する写真には先と同じく花嫁姿の紫髪の少女が、
恥じらいつつも学生服の黒髪の青年、志貴に膝枕をしていた。

愛らしいというより学者のような理知的な面影が強い少女であるが、
今の少女はまさに恋する乙女、否、恋する乙女そのものであった。

……え゛

「ってシオン!!?」

どう見てもシオン。
シオン・エルトナム・アトラシアじゃないか!!
あ、あの子は一体何をしているんだ!?

あれか?ボクの記憶とか読んだせいか?
あるいは、そこまでしてゴールドヒロインに成りたいのか?

委員長キャラで真面目一直線だけど、
結構思考が乙女なのは【原作】でも薄々分かっていたけど、分かっていたけど。

まさか琥珀さんじゃなくてシオンがイベントを張るなんて…。
後、なんか、指に指輪があるのですけど…シオン、まさか本気なのか?

「………妹が錬金術師には気をつけろ。
 って耳が蛸になる程言っていたけど……本当に、そうね」

「ええ、まったく同意ですアルクェイド。
 手段を選ばないことは承知してましたけど、ここまでやるとは…」

背後から声。
ヤバイ、すっかり忘れていたけど、
この場には月姫のメインヒロインであるアルクェイドさん、シエル先輩がいる。
2人は揃って肩越しにボクが手にしていた手紙を読んでいた、つまり…そのシオンの写真も。

「シエル、私さ、エクストラ以来暴れていないし、暴れていいよね?
 後、あの錬金術師のことだから途中で障害とか妨害があるだろうし、コンビを組まない?」

「奇遇ですねアルクェイド、今の私もまた少し暴れたい気分です。
 何時もなら断る所でしたが、貴女とコンビを組むのもやぶさかではありません」

「じゃあ、決定。よろしくね、シエル」

「こちらこそ、アルクェイド」

がっしり、と握手を交わす吸血鬼と代行者。
2人の口元は綻んでいるが――――眼は全然笑っていない。
あの泥棒猫を殴ッ血KiLL!!と怒りに爛々と眼を輝かせている。

シオン、そして多分八つ当たりされるであろう志貴。
すまん、この2人を止めることできない、出来るのは君達の骨を拾ってあげることだけだ…。

「ねえ、貴女たちも朴念仁を奪われた口でしょ?
 どうせ行き先は同じみたいだし、一緒に行動しない?」

「あ、同じなんだ。いいよー」

「同じく賛成です」

さらに遠坂さんの連合提案。
その申し込みに2人はあっさりと承諾した。
かくしてここに魔術師、ラスボス、英霊、真祖、代行者の連合が結成された。

……うーむ、相対する相手は骨どころか灰すら残らないような面子だな。

「で、さっちんも行くよね?」
「あ、いや、その、だな」

なんて考えていたけど、アルクェイドさんから話し掛けられたー!?
ボ、ボクとしてはシオンは自分から喧嘩を売ったからいいけど、うん。

寝ている姿をニコニコ動画でアップしやがった恨みとかあるし。
翻って、完全にとばっちりな志貴のために参加を辞退したいところだが、

「い・く・よ・ね」
「イエス・マイ・マスター」

だが、すまん。
志貴、真祖が眼を金色に輝かせて睨んでくる中で断る言葉なんていえない。

「話しは済んだようね、さあ、行くわよみんな!!」

怒りの炎を背負った遠坂さんの掛け声にヒロイン勢は無言でうなずいだ。
言葉は要らない、一斉に立ち上がり其々の得物を手にして出発しようとしたが、

「ふっふっふっふー。だがその前に私達を倒すのだな!」

背後から楽しげな声。
思わず全員振り返る。

というか、誰だこの声は?
普段は耳にしないけど、どこかで聞いたことがあるような?

「久しぶりだな、あかいあくま!!。
 ブラウニーを奪還したければ先にわたし達を倒すのだな!
 あかいあくまを倒せと私のガイアが囁く、カレイド・ブラック、ここに参上!」

何かの戦隊ヒーロー物のポーズをとった、
褐色肌で和服の似合う日本美人さんがそこにいた。

あかいあくま…?遠坂さんを知っている人か?
いや、この人はそうだ。遠坂さんとはいわゆる悪友関係である蒔寺楓さんだ。

うん、確かに和服が似合う美人さんだ。
中々凛々しい顔立ちをしているし、体型も体育会系なのかスリムで羨ましい。
…パンツ見えそうな位短く、色合い的にも派手な改造和服を着用している魔法少女コスをしているのを除けば。

「えっと、カレイド・ブラウンです。ど、どうか宜しくお願いします」

次は普通に挨拶をされた。
あ、どうも此方こそ宜しくお願いします。
先と違い栗毛の愛らしい少女は、陸上部の三枝由紀香さんだな。
今日は由紀香リリィでなくカレイドスタイルで行くつもりですか?

「恋愛相談と人間観察は魔法少女の仕事、カレイド・シルバーここに」

痛ったい服装だが、クールな口調を崩さず銀髪眼鏡の少女。
こちらは氷室鐘さんだな、たしか人間観察が趣味らしいけど、
カレイドなステッキの洗脳が解けた後の自分に果たしてどんな評価を下すのだろうか?

「魔法少女といえばツインテールだ!
 萌豚よツインテールを崇めよ、カレイド・グリーン、爆・誕!」

4人目は緑のツインテールの少女だ。
緑を基調にやはりカレイドな魔法少女姿であった。
ただしポーズがその、某北斗の腕を空に突き上げるポーズなのは如何なものか。
萌え豚兼ツインテールキャラの先輩の助言として、もっと萌え豚に媚びて…げふん、げふん。

で、隣でケータイ電話が浮いているけど、魔法少女のマスコットキャラのつもりか?
何で吸血鬼の気配がするのやら……ああ、アルクェイドさんが前に言っていた南京錠の吸血鬼だなあれは。
だとすれば彼女は「まほうつかいの箱」の桂木千鍵さんだ、間違いない。

「魔法少女は愛と勇気の物語、カレイド・オレンジ。みんなーよろしくーー!」

そして、その隣で向日葵のような笑顔を振りまく少女は、日比乃ひびきさんだ。
一見普通の女子高生だが、その正体は月姫で言うところセブン、俗にななこの愛称で親しまれている者と同じ。
つまり人間ではなく、死徒二十七祖コーバック・アルカトラスが生み出した聖典「トライテン」だ。

同じ聖典のななことは偶にマスターへの愚痴を聞いてあげる仲だけど、彼女と気が合いそうだ。
そして、彼女、さらに例のケータイさんとは色々面白い事が聞けそうだ。

「「「「「5人揃ってカレイド戦隊、ここに登場!」」」」」

掛け声と同時に戦隊ヒーロー物のお約束的な感じで背後で爆発した。
5人は揃って魔法少女姿で、これ以上ないドヤ顔で各々がキメポーズを決めていた。

……あ、あいたたたたたたた。
痛い、痛い、痛い、痛い、見ている側の心が痛い。
こんな姿を遠坂さんはされたのか…確かにこれは精神的にキツイ。

アルクェイドさんやシエル先輩はあまりの痛々しさに天を仰ぎ見ているし、
セイバーさんや桜さんも俯いたり、顔を背けたりしている。
ふと、カレイドな魔法少女では先輩格の遠坂さんはどうだろうか、と彼女を見る。

「―――――――」

彼女は操られている知り合いたちを見て、
ただ無表情で道化を演じる彼女達を無表情で見ていた。
哀れみといった感情もなく、ただただ痛々しい姿を見つめていた。

「――――笑い飛ばしてあげる。悪い夢はここで終わりよ、みんな」

凜ルートバッドエンドを彷彿させる台詞を口にした遠坂さんが宝石を手にして呟いた。

――――ああ、その通りだ。

遠坂さんの言う通り、ここで楽にしてあげるのがせめての慈悲なのだろう。
そうだ、悪い夢はここで終わりにしよう、彼女達のためにも終わらせよう。

「さて、新たな魔法少女の仲間は遠坂の野郎は兎も角、
 間桐は腹黒だから魔法少女的に合わないし、そうだなマジカル☆さつきをデビューさせ…」

よし、全力で殺ろう!








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弓塚さつきの奮闘記外伝 午後13:00(完結)

2014-10-13 12:26:16 | 弓塚さつきの奮闘記〜月姫編

「あーそういえばさー。
 奮闘記もTS物SSだけど、皆は他に型月のTS系SSでどんな物を見ているの?」

思い出すようにアルクェイドが残りのヒロインに尋ねる。
TS物、すなわちトランスセクシャル、性転換の略語である。

「TS物ねー。
 そういえば士郎がTSする志保。
 アーチャーがTSするアチャ子の2パターンがあったわね」

凛が口を開き、妙にヒロイン力が高い己の従者の顔を思い浮かべる。

「「Fate/stay night 〜剣の女王〜」や、
 「正義の魔術使い、立派な魔法使い」のように聖剣の鞘の影響でシロウが私と同じ姿になるパターンもありました。
 剣の女王は完結しており今も閲覧できますが…ネギまクロス物である「正義の魔術使い、立派な魔法使い」はHPが閉鎖されました…」

セイバーは己のマスターがTS化するSSを語る。
「Fate/stay night 〜剣の女王〜」は本編でランサーに心臓を貫かれた士郎を蘇生させるべく、
発動した凛の治癒魔術に聖剣の鞘が反応してしまい、外見がセイバーそのものになってしまうTS物SSである。

凛ルートと桜ルートを元にそのまま聖杯戦争を戦いぬき、ロンドンに留学。
第二部のロンドン編では、クロス物では定番のゼル爺に弟子入りを果たし投影で宝石剣を再現。
魔法の再現に成功してしまい6人目に認定されその生涯を過ごす、というかなり変わったSSである。

対する「正義の魔術使い、立派な魔法使い」はネギまとのクロス物。
Fateルート後、正義の味方として戦い抜き死を迎えつつあった士郎だが、
平行世界の移動は遠坂宅急便、肉体の交換ならお任せ橙子先生!の遠坂凛、蒼崎橙子のコンビが登場。
早速肉体を入れ替えたが、鞘の影響でセイバーの姿になれるようになってしまった。

物語の展開はその後ネギまの世界で何らかの要因で飛ばされた、
宮崎のどか姿のランサーと共同戦線を張り、佐々木小次郎と戦うなど今後の展開が楽しみであったが、
非常に残念なことにHP「NIGHT KNIGHT KINGDOM」は現在閉鎖されている。

ただし、HPのURLをインターネットアーカイブに入力すれば閲覧は可能である。

「あーそういえば結構閉鎖されたSS多いかも。
 確か「出席番号32番 衛宮志保」も閉鎖された影響でアーカイブで発掘しないと見れないだっけ?」

「はい、あれも良いものでしたが、今では…」

「というか、Fateもそうですが大半のSSは完結せずエタって放置が多いですし」

アルクェイドが思い出すようにセイバーに尋ねた。
その問いにセイバーは悲しげに今は見れない事実を肯定し、シエルがエタッた作品の多さに嘆く。

「でも、先週(10月4日)からFateが放映されましたし、また新たなFateSSに出会えるはずですよ」
「む、それもそうね…そういえばFateが放映されたんだっけ?なんならさー、ここで皆で鑑賞会でもしない?」

桜のフォローにアルクェイドが頷く。
と、同時にFateが放映された事実に気づいた彼女がヒロイン勢による鑑賞会を提案した。

「あら、良いわね。でも貴女達は店員じゃないの?」
「どうせ客はしばらく来ないし、某3人組とかは展開的にもう少し先になってから来るから大丈夫大丈夫」
「ネタバレ乙」

凛がアルクェイド達が今はアーネンエルベの店員であり、
店員としての作業を放棄しても良いのか聞くがアーパー吸血鬼はまったく気にしていなかった。
そして、さり気無くネタバレをした事にさつきが突っ込んでいるが誰も聞いていなかった。
無視されたことに気落ちするさつきだが、ある事実に気づき再度口を開いた。

「あれ?というか先週の内容なんて今は放映されてないんじゃ…」

「愚問よ、弓塚さん。ここはアーネンエルベ、何でもありの空間。
 時間軸の無視なんて当然だし、大人数でも見やすい大きなテレビが都合よく現れるなんてよくあることよ」

つきの疑問に凛がここは都合主義万歳である事実を答える。
現に指差す先には今までなかったはずの20インチ以上のテレビが何故か鎮座していた。

「ふむ、何故かもう電源が着いている上に始まっているようです」
「…ご都合主義ばんざーい」

セイバーの呟きにさつきはご都合主義を賛美する他なかった。


(遠坂邸での朝のシーン)


「さっすが、uftable。
 背景画像に気合が入っているわね。
 BGMとかも合わせて雰囲気がブルーが活躍する「魔法使いの夜」みたいね」

「おお、言われてみればたしかに」

「あのーブルーって誰ですか?」

「魔法使いの1人、蒼崎青子のことよ桜」

予想以上の映像美に感嘆の声を挙げるヒロイン勢。
余談であるが遠坂邸のモデルは神戸の異人館の1つ。
「風見鶏の館」であり、神戸には他にも間桐邸、冬木大橋などの原作に登場したモデルがあることをここに記す。
なお会話に参加していない、さつきは鑑賞会のために飲み物や食べるものを準備している。


(弓道部道場で雑談を交わすシーン)


「いいなーこっちは志貴も妹も部活に参加してないわねー」
「志貴は体が弱いしな…っとできたぞ」
「感謝します、さつき」
「…そういえば姉さんは中学生の時、部活とか参加したことはあるのですか?」
「魔術の勉強優先だったから、代わりに生徒会の活動をしていたわ、桜」

学園者に定番である部活動について話題の花を咲かせる。
この話題に参加していないセイバーは、さつきが運んできたポテトフライを一心に頬張っている。


(ワカメ登場)


「モジャララ君ね!」

「む、頭にワカメを乗せたモブキャラですか?」

「あれ、誰だっけこのモジャモジャ?何とか慎二というらしいけど」

「ああ、モブキャラですね、直ぐに死ぬ枠ですね」

「ひ、ヒドイです!
 中の人は確かに某物語の人ですけど、
 昆布やワカメでも兄さんは小物かつ、物語の礎となる立派なやられキャラですから!」

「みんな色々ひどい、というか妹の突込みが一番ひどい!」

間桐慎二が凛に話掛けるシーンに、
ヒロイン達は次々と容赦ない言葉を出す。
まあ、それは仕方がないと言えば仕方がない。
なぜならエクストラに至るまで間桐慎二というキャラは小物枠で固定されているのだから。


(英霊召還シーン、そしてポカミス)


「えっとつまり遠坂さんは無課金で英霊を呼んだら、
 ご当地ヒーロー、それも同級生を招待してしまったでおっけ?」

「ご、ご当地ヒーロー……。
 アーチャーがご当地ヒーロー、ぷ、あ、あははは。
 あはははは!そ、その発想はなかったわ、今度アーチャーに言ってあーげよ」

「触媒を課金アイテム扱いですか…」

「公式でも英霊ガチャなんて代物が出ましたね…」

英霊を招く触媒を課金アイテム。
さらには呼ばれた英霊を地元のヒーローショーのヒーロー扱いなアルクェイドの言葉に、
凜は爆笑し、セイバーはその発想はなかった、と複雑な表情を浮かべる。
対するシエルは公式が病気なことをふと思い出した。


(整理された居間にドヤ顔のアーチャー)


「これ以上ないほどドヤ顔をしているけど、
 中身はあのヘッポコな士郎の未来だと思うとなんか複雑」

「執事レベル高いわね、翡翠みたい」

「黒執事ではなく、赤執事といった所か?」

「姉さんズルイです。
 こっちは認知症のおじい様の世話と我侭ワカメの管理を始めに、
 掃除洗濯家事炊事、家計簿管理、その全てが私だけでやらなきゃいけないのに!」

これ以上ないドヤ顔で紅茶を入れるコーチャーなアーチャーにヒロイン達はそれぞれの感想を言い合う。
特に凛は自分のサーヴァントであるが同時に舎弟…もとい弟子の未来の姿であることを思う所がある複雑な表情を浮かべる。
なお桜だけが妙に所帯じみたこことを口にし「そろそろ老人ホームも探そうかしら?」と呟いておりゾォルゲンの老人ホーム行きまったなしだ。


(冬木市探索シーン)


「『弓兵は、眼がよくなければ、つとまらん』。BYアーチャーっと」

「英霊川柳やめーい!」

「Fate/Zeroであったわねー」

「次の回は自分が登場しますから、
 待ち遠しいです…さつき、ポテトフライお代わりです」

英霊川柳を口にするアルクェイドに、突っ込むさつき。
感嘆深げに過去に思いを馳せる凛に、お代わりを要求するセイバーであった。


(アーチャーVSランサー戦、前半)


「うっわ、容赦ないー」

「ランサーは生粋の戦士ですから。
 それより、飲み物のお代わりです、桜」

「というか、姉さん屋上でランサーさんに襲われてよく無傷で済みましたね…」

「確かに、ランサーが本気で一撃で凛を殺すのではなく、
 遊んでいたのを除いても、英霊を相手にその場で怯まず逃走を選択できるとは、流石です」

「ふふん」

凛がランサーに襲われるが、
突き、あるいははらわれる槍の攻撃をかわして、逃走するシーンに、
妹である桜が呆れ、セイバーは英霊の攻撃から逃れた凛を賞賛する。


(アーチャーVSランサー戦、後半)


「……すごい」

「士郎はこの戦闘に入ろうとするのね、
 おまけに次はバーサーカー戦だしアイツ、本当に馬鹿というか無謀というか」

「しかし、本当に映像が綺麗です。
 それによく動くキャラ…一体何人のスタッフが魔力切れを起こしたことか…」

「『DEEN「これがサーヴァントの戦い…」』」

「アルクェイドさん、やめて。
 ほ、ほらDEENは2006年に放映。
 つまり8年もの月日が流れているから技術的に差異があるのは仕方がないって」

「月姫のリメイク版が出るとしたらぜひこうなって欲しいものです…今度こそカレーを」

迫力の戦闘シーンに圧倒されるヒロイン達。
だがその裏で一体何人の作画スタッフが睡眠時間を犠牲にしたのかセイバーは嘆く。
そしてアルクェイドがDEENとのシーンを見比べるような言い方に、さつきが冷や汗をかいた。
シエルはカレー風味のポテトを頂きつつ、黒歴史扱いのアニメとの差異に嘆く。


(ランサーに刺殺された衛宮士郎を遠坂凛が発見したシーン)


「『どんな顔であの子に会えばいい』姉さん、もしかして私のために先輩を……?」

「…………ま、まあそうよ。士郎は桜の面倒を見てくれたし」

「姉さん……ありがとう」

「…こ、今回だけは特別なんだから!」

衛宮士郎を蘇生させるために、父親が残した切り札を使う凛。
その理由は「どんな顔であの子に会えばいい?」と言ったように桜のためであった。

その事実に気づいた桜は凜に感謝の言葉を伝える。
感謝を受け取る側の凜は顔を赤らめ、そっぽを向いている。
麗しき姉妹愛、だかそれは即座にぶち壊された。

「あ、でもこのルートって凛ルートでしょ?
 つまり妹の想い人と知りながら恋人になった寝取りルートってこと?」

空気を読むことを知らないアルクェイドの指摘に空気が凍りついた。
たしかに、桜のために衛宮士郎を蘇生させた、だがこのルートでは最終的に恋人になるのは姉の凛であった。

「…………ふ、ふふふ」

「さ、桜、落ち着いて。ほら来年はHFルートの劇場版があるから!」

「ギャー!桜さん影!影を仕舞って飲み込まれるー!」


(衛宮邸でセイバーと対峙)


「あの時はこれからどうするとか考えずに、
 セイバーに見惚れていたわね、だってずっと憧れていたセイバーのサーヴァントだったから」

「でも、アーチャーさんの方がいいと思いますよ?
 セイバーさんなんて先輩のエンゲル係数を無限に上げて行く食っちゃ寝サーヴァントですよ?
 前回の聖杯戦争でドヤ顔で対等に渡り合えたと行ってましたけど実際はそもそも交戦回数すらアレでしたし」

「さ、桜!?」

「それでも、セイバーの方が可愛いじゃないの!
 あのガン黒皮肉屋バトラーサーヴァントよりもずっと可愛いじゃないの!」

「ひゃ!?凜?」

食っちゃ寝で衛宮家の家計簿に打撃を与え、
姉同様横から自分の想い人を略奪したセイバーを扱き下ろす桜。
だがそれでもセイバーの方がいいと言い、セイバーの可愛さを力説と同時に彼女に抱きつく凜であった。

「ねえ、さっちんこれってタワーが建つと言うのだっけ?」

「正確にはキマシタワーで」

「あ、終わりました。いやー次が楽しみです」

そして1時間はあっという間に過ぎて行った。





コメント

弓塚さつきの奮闘記外伝 午後12:50(完)

2014-09-18 21:44:23 | 弓塚さつきの奮闘記〜月姫編

「痛ったいなあ、シエル」

瓦礫の中からアルクェイドが這い出した。
服などが埃で汚れているが流石真祖というべきか、
代行者が全力で放った黒鍵を受けても痛いですませていた。

「は、このくらいやらないと貴女にダメージが入りませんからね、当然ですよ」

そして、その事はシエルも知っていた。

「あーもー、暴力的なんだからー。
 というか、ウチのシエルといい型月のヒロインは暴力的ね」

「いや、アルクェイド何自分の事を棚に上げているんですか?
 私もそうですけど、貴女も何度も遠野君をぶち殺しているではありませんか
 それに、いいですか?型月のヒロインたるもの一度は主人公を殺さねばなりませんから多少暴力的でも問題ありません」

「え゛」

やれやれ、と言っているアルクェイドにシエルが突っ込みを入れる。
ただし、ヒロインたるもの一度は主人公をぶち殺す必要があると放言するもので、常識人たるさつきが唖然とする。

「あ、こっちもキャスターに杖にされた士郎に止めを刺したりしたわね」
「自分もシロウを剣で…」
「……私は兄さんの首をチョンパして、金ぴかさんを飲み込んで、おじい様を握り潰して、それから…」

そして凛、セイバー、桜の順で思い出しように、突っ込みどころ満載な内容が出て来た。
月姫、Fateといったゲーム化されている型月の特徴としてやたらとBADENDが多い上に、ヒロインが主人公をぶち殺す。

という実にショッキングな光景が普通に存在している。
そしてここがミソであるが、当初からヤンデレ設定を持つヒロインが主人公を殺るのではなく、
ごく普通のヒロインが躊躇なく、それも選択肢を1つ誤っただけで一瞬でヒロインの手によって主人公が殺害されるのであった。

「あ、待てシオンは…駄目だ、あの子も始め志貴に喧嘩を吹っかけて来たし、
 吸血鬼ルートなら、うん…駄目だこりゃ、どいつもこいつも主人公を一度は殺している件について」

転生者にして常識人を自認するさつきは、
思い出話と主人公を殺した内容を語るヒロインズに着いてゆけず、
一瞬、友人のシオンに希望を見出したが主人公と行き成り喧嘩を吹っかけた挙句。
吸血鬼化ルートでは吸血対象として殺しに事実を思い出した。

「んん〜良い子ぶっちゃって。
 さっちんだって、リメイク版が出れば志貴をコロコロする癖に〜」

「私と同じ悪堕ちキャラの可能性もありますね!先輩として何時でも歓迎します!!」

「積極的に主人公の抹殺を推奨するヒロインにボクは異議を唱えたい!!」

のほほん、とした表情で物騒極まりないことを口にするアルクェイド。
そして悪堕ちヨゴレキャラがすっかり板についたせいか、妙にテンションが高い桜であった。

「ええーでもこっちが殺そうとすれば、
 間違いなく志貴は私をもう一度バラバラにしてくるから、
 気を抜くと殺されそうな緊張感、でも普段はぼっとしていて守ってあげたくなるようなギャップ。
 そっれがすっごくいいのになあー、この感覚が分からないさっちんは人生で損しているわよ損、損」

「うわーい、何この型月ヒロインの歪みっぷりは?」

頬を赤らめ惚気るアルクェイド。
彼女程の美人が惚気る程愛されている男は、
全世界の童貞並びに彼女居ない=年齢な男共から呪詛が深夜の夜に送られるだろう。

だが、殺し愛上等な型月。
殺されそうな緊張感がいいと公言する彼女に、
慣れてきたとはいえ、さつきの常識は色んな意味で限界であった。

「可愛い後輩だと思った?
 残念ヨゴレの悪堕ちキャラでした!
 そんなのが、一杯居ますからね…ふ、ふふふ」

「桜さーん…さっきからテンションが色々ヒドイのですけどー?」

「ああ、大丈夫よ弓塚さん。
 あの子、偶にストレスで可笑しくなるから気にしないくてもいいわよ」

「はい、何時ものことですね、凛」

頭のネジが数本ぶっ飛んだ言動を繰り返す桜に、
心配するさつきであるがfate勢のヒロインは慣れた光景なのか動じる気配はなかった。

「あーもう!自分が話しを振ったとはいえ、
 型月ヒロインはヒロインとして色々最悪ですね!
 あーオホン、話を変えますけど皆さんはウェブ小説をお読みになられますか?」

「ウェブ小説?それなら架空戦記の「提督たちの憂鬱」かな?
 あれは掲示板参加型の形式な上に、自由に雑談したり創作活動ができるから、ちょくちょく見てるかな」

「あ、私は基本ドンパチ物ね。
 映画で例えると何の権力のないニューヨークの平刑事がひょんな事からテロ組織と関わって、
 奥さんとかの不倫問題を抱えつつ2時間ずっと走りっぱなしで、最後は恋人を抱えてハッピーエンド!
 みなたいな感じので冒険活劇、ウェブ小説時代のSAOとか自衛隊彼の地に、とかオリジナルが多いわね〜」

シエルのネタ振りにさつきとアルクェイドが答える。
片やマイナーすぎて商業的には縮小傾向が強い架空戦記。
片や個人の創作活動から始まって今では大衆の一般的な支持を得ている小説。
と、どことなく2人の性格が分かるような好みが現れた。

「あら、オリジナルじゃなくて二次創作派ね私は、それもFate。
 Fateを主題としたSSは、結構私のルートを中心としているしね。
 特に「Fate in Britain」がいいわね、ゼロもなく、ホロウ程度しか出ていなかったあの年代で、
 あれ程よく考察された世界観と物語構成はまさに封印指定クラス、もう2度と眼にかかることはないと思うわ」
 
「ほう、SSですか。
 それならば異なる世界の強者と剣を交え、
 交流するクロスオーバーを主題としたSSを読みます。
 昔はよく見られたネギまとのクロスオーバーSSは新作が出るたびに夢中になって読みました。
 その中でも今は過去ログでしか読めませんが「出席番号32番 衛宮志保」が特に記憶に残っています」

こちらもキャラの性格が強く出た。
凛が挙げた「Fate in Britain」は凛ルートグッドエンド後の時計等留学生活を主題としたものだ。
ゼロから始まりエクストラ、プロトと派生作品が生まれる前、それもホロウが出た程度の時代。
にも関わらず確かな知識によって生み出された、独自の世界観は閉鎖された今でも根強い人気を誇っている。

対するセイバーはクロスオーバー物。
それもTSと地雷要素しかないが「出席番号32番 衛宮志保」はあまりそうした要素は少ない。
むしろ、クロスオーバー物でたびたび陥るキャラ崩壊、あるいはキャラが多すぎて思うようにキャラが動かない。

等といったことがなく、1人1人のキャラに躍動感をうない具合に躍動感を与え、
無理な設定がなく、世界観の崩壊もまたなく、誰もが楽しめる名作であった。
……現在は過去ログでしか読めないが。

「むう、Fateは確かに型月の中では最も多く二次創作がされている作品ですが、
 ウェブ小説の歴史ならばこちらが先輩です、なんといってもかれこれ14年の歴史ですから」

シエルが月姫代表として対抗意識を出した。
2001年から10年に渡って運営されていた「全自動月姫Links-Albatoross-」のように。
月姫のウェブ小説の歴史は非常に古く、そして月姫より前の「空の境界」よりもSSの投稿が盛んであった。
もっとも、派生作品が続々と出るFateに比べ、リメイクも何もない月姫は今では目立たぬ存在であった。

「へぇ、14年かぁ。
 コミケの同人ゲーム時代から数えるとそうなるのかー。
 それでも、こうして今も生き続けているなんて、あの当時は誰も思わなかったでしょうね」

「ええ、そうね。
 Fateだって今年で10年だし、まさかここまで来るなんて」

アルクェイドの呟きに凛が同意を示した。

「「空の境界」が生まれて16年、月姫が生まれて14年、Fateが生まれて10年。
 次の16年後、14年後、10年後はどうなっているのか、ボクは興味が尽きないよ」

「そこまで行くだったたら、サザエさん時空かこち亀時空に入るわね。
 あーそのくらい待てば月姫のリメイク版や続編だって期待できそうねー」

更なる未来へ思いを馳せるさつき。
その言葉にアルクェイドもまた未来へ夢を見る。

この先は、どうなっているのか分からない。
だが10年以上の月日が流れた型月の世界の可能性は終わることはないだろう。

アルクェイドとさつきの2人。
そして残るヒロイン達はそう感じた。





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弓塚さつきの奮闘記外伝「午後12:30」(完)

2014-08-28 21:11:09 | 弓塚さつきの奮闘記〜月姫編

金髪の少女が十字架を前に跪き、祈る。
願う内容は己の救いを求めず、ただただ人のため。
ひいては人類のため、少女は願い、信じる神へ祈り続け、宣言する。

「主よ。今一度、この旗を救国の―――いえ、救世の為に振るいます」

少女、否。
救世主、オルレアンの乙女。
奇跡を体現し、祖国を滅亡から救い出した少女が今一度信ずる神へ誓いを立てた。

そして、ゆっくりと立ち上がり、
背後に立つ人物、マスターに対して述べる。

「サーヴァント・ルーラー、召喚に応じ参上した。
 ……ですがマスター。調停者(ルーラー)のクラスですら、もはや一介の英霊にすぎないのです」

調停者(ルーラー)は本来聖杯戦争の運営役として、
戦いに秩序を保つことが期待された存在であり、マスターの存在を必要とせず、
如何なる陣営にも関わらず中立を維持していたが、今の彼女はその他の英霊と同じだ。

「秩序は燃え尽きた。多くの意味が消失した。
 わたしたちの未来は、たった一秒で奪われた」

回想し、悔やむように言葉を綴る。
目を伏せ後悔、悲しみといった感情を彼女は表現する。

だが、彼女。
調停者(ルーラー)は涙を流さなかった。
かつて姦計でその身を業火に焼かれてもなお、自身の選択肢を嘆かなかったように。
顔を上げ、自身の象徴である軍旗を床に立て、言った。

「聞け、この領域に集いし一騎当千、万夫不倒の英霊たちよ!
 本来相容れぬ敵同士、本来交わらぬ時代の者であっても、今は互いに背中を預けよ!」

声を張り上げ、周囲にいるであろう数多の英霊達に語る。
姿は見えないかあちこちから突然の申し込みに動揺する雰囲気が流れる。

「我が真名はジャンヌ・ダルク。主の御名のもとに、貴公らの盾となろう!」

宝具たる旗を高々と掲げ、
高らかに、誇らしげに、奇跡の少女は宣誓した。


 ◆

『霊長の世が定まり、栄えて数千年』
『神代は終わり、西暦を経て人類は地上でもっとも栄えた種となった』
『我らは星の行く末を定め、星に碑文を刻むもの』
『そのために多くの知識を育て、多くの資源を作り、多くの生命を流転させた』
『人類をより長く、より確かに、より強く繁栄させる為の理―――人類の航海図』


『これを、魔術世界では人理(じんり)と呼ぶ』


 ◆

『第一の聖杯 救国の聖処女
 AD.1431  ■■百年戦争 オルレアン』

「貴方の戦いは、人類史を遡る長い旅路」

  /

『第二の聖杯 薔薇の皇帝
 AD.0060 永続■■帝国 セプテム』

「ですか悲観する事はありません。貴方には無数の出会いが待っている」

  /

『第三の聖杯 嵐の航海者
 AD.1573 封鎖終局四海 オケアノス』

「この惑星(ほし)のすべてが、聖杯戦争という戦場になっていても」

  /

『第四の聖杯 ロンディニウムの騎士
 AD.1888 ■■■■■■ ■■■■』

「この地上のすべてが、とうに失われた廃墟になっていても」

  /

『第五の聖杯 ■■の白衣
 AD.1783 ■■■■■■ イ・プルーリバス・ウナム』

「その行く末に、無数の強敵が立ちはだかっても」

  /

『第六の聖杯 輝けるアガートラム
 AD.1273  ■■■■■■ ■■■■■』

「結末はまだ、誰の手にも渡っていない」

  /

『第七の聖杯 天の鎖
 BC.■■■■ 絶対魔獣戦線 ■■■■■』

「さあ―――戦いを始めましょう、マスター」


  ◆


「過去最大の規模で行われる聖杯戦争、
 開幕。――――それは 未来を取り戻す物語」


「Fate/Grand order」2014年冬、開戦予定!

「さあ、皆も艦これに続いて課金して遊んでください、わん!」
「え゛??」



※  ※  ※



「と、いうわけで生憎ですが自分はFate/Grand order、
 に参戦が確定しているので、ゼロ同様今年は主人公枠となりました」

「くそっ!敵!
 やっぱりセイバーは敵よ!
 ええい!これが、ゴールドヒロインかつ、型月のドル箱の余裕か……」

「うう、セイバーさんはずるいです!反則です!」

澄ました表情で今年の出演を表明したセイバーに遠坂姉妹が悔しがった。

これまでFateはタイガーコロシアム、
エクストラと散々ゲーム化されてきたが今回はいよいよ課金ゲーム業界への参入が決まったのだ。
しかも、これまでマスター枠として活躍が期待できる桜と凛の出番は今回は望めない可能性が高いと来た。

「でも、セイバー。
 この場合、貴女のセイバー戦隊が一番のライバルになりそうね」

「はい、アルクェイド。
 たしかにヒロインとして私は負けるつもりはありません。
 ですが、黒から始まり白、赤、そして桜と増え続ける量産型ヒロインの猛攻に正直参っています。
 Apocryphaに至っては我が息子であるモードレットが活躍してしますし……元が自分なだけに色々と複雑です」

最初は「セイバーのアホ毛を握ると属性が反転する」という一発ネタに過ぎなかった。
だが、公式が月姫やその他Fateシリーズ以外への創作意欲の変わりにこの一発ネタに注ぎ込んだ結果、暴走が始まった。

純白の姫騎士である白セイバー。
アーサー王じゃないけどそんなの関係ねぇなローマ皇帝の赤王。
公式では設定のみだったがついに父親と続き聖杯戦争で活動を開始したモードレッド。
そして、コハエースの帝都聖杯奇譚で登場した桜セイバーと、ネタの暴走は留まる所を知らない。

というか、月姫2はよ!
そうでなくてもメルブラの続編でもいいから……。

「あー、セイバーさん、セイバーさん。
 セイバーさんのライバルは量産型セイバーだけじゃないと思うなー」

と、ここに第三者の意見が出る。
奮闘記の外伝と言いつつ、影が薄い主人公弓塚さつきだ。
が、太陽光対策のため、し○じろうの着ぐるみを着ているため、声でしか判別できない。
弓塚さつきのアイデンティティーともいえるツインテールも学生服も今はなく、さながら某パンダのようだ。

「あ、さっちん起きたの?」
「あー、はい。何とか……」

アルクェイドの問いに気が抜けた調子で答える。
椅子を並べて作ったソファーから起き上がった弓塚さつきだが、体の彼方此方が痛むようで動きが鈍い。
無理もない。セイバーとアルクェイドが来る前は英雄王(小)とキャス狐のどつきあいに巻き込まれたのだから。
DEADENDにならなかったのは、ここが何でもありのアーネンエルベであるお陰に過ぎない。

「それは良かったです。
 で、さつき、私のヒロインとしてライバルに何か意見があるようですが?」

介抱した者として安堵するセイバーであるが、
さつきが話したヒロインのライバルについて喰らい着く。

今でこそ型月のドル箱にして黄金ヒロインであるが、
Apocrypha、そして昨年のヒロイン十二宮でそのあざと過ぎる演技。
何よりもどれほどセイバーが努力しても得られない包括力(胸)を持つルーラーのように、
ゴールドヒロインの座を脅かすヒロインが後から後から登場しているので、さつきの話を聞き漏らすわけにはいかなかった。

そして、ヒロインとしての矜持を持つ、
その他の人物、アルクェイド、遠坂凛、間桐桜もさつきに注目している。

「セイバーにとって最大のライバルになり得るのはずばり……」
「ずばり?」

一拍。
ざわ、ざわ、ざわと某賭博漫画の緊迫した空気が流れる。
そしてさつきは言った。

「ヒロインにしてヒロインに在らず。
 ヒロインとは真逆の存在であるが時に最凶のヒロインなりうる存在――――男の娘だよ」

「「「「な、なんだってーーー!!?」」」」

その時ヒロイン一同に電流が走る。
なぜならその発想はまったくなかったからだ。

男の娘。
それは男にも関わらず女のように可愛らしい、
というギャップ萌えを前面に打ち出したキャラクター属性である。

「男の娘?馬鹿な型月にはそんなキャラは……いや、アストルフォか!!」

「あーなるほど、それがあったかー。
 ウチの所には男の娘枠なんて、強いて言うならば、メレムかな?
 出番がない月姫のせいで随分前に出版された「Character material」以来出てないしなー」

型月にそのようなキャラがいないことを否定しようとしたセイバーであったが、
男の娘として息子と共に活躍している聖杯戦争、Apocryphaのアスフォルトを思い出す。

アストルフォ。
シャルルマーニュ十二勇士の1人。
中世における武勲詩に登場する人物で性格は極めて陽気。
というより、元ネタの作品でも「理性が蒸発している」という設定であるほどだ。
なお、女装しているのは「狂えるオルランド」と呼ばれたローランを鎮めるためと言われている。

どうして女装することでローランの狂気が静まったのか、実に気になるが……。
そして、なぜかApocrypha material 「C86 ver」ではヒロインと混ざって乳比べをする男の娘であった。

「く、たしかに強敵です。
 あのけしからん胸を持つセイバー系ヒロインが負けれない戦いがある、と言わしめたほどの敵ですし」

「それだけではないわ、セイバー。
 色々なキャラ属性のヒロインを抱える型月世界の中で、現段階で男の娘属性はアスフォルトただ1人。
 例え、キャラの人気でナンバーワンでなくても、彼女、いいえ彼は誰もが持ち得ないオンリーワンのキャラよ」

セイバーが戦慄し、
凛がアスフォルトを彼女なりに考察する。
思わぬダークホースにその他のヒロインもまた戦慄を覚えるが、さつきがさらに爆弾を投下した。


「ついでに言うとアスフォルトの髪はピンク、そうあの淫乱なピンクなんだよ!」


この時、くうきがこおりついた。

淫乱ピンク。
その語源はどこから来たかは定かではないが、一説によると。
二次元においてピンク色の髪を持つヒロインは18禁の作品等において、
金髪ヒロインと並んで高い確率でヤリ易い……ゲフンゲフン、攻略しやすかったためだと言われている。

そして、アスフォルトの髪はピンク。
さらには小説においてマスターのSMプレイを受るなど淫乱要素を有していた。
つまりアスフォルトは淫乱ピンク、キャラ立ちとして、これ以上濃いキャラはいないだろう。

「男の娘で淫乱なピンク、だと」

セイバーが衝撃のあまりよろめく。

「く、淫乱なのは桜だけかと思ったのに!」
「そうです、淫乱腹黒枠は私だけの席…って、何を言わせるんですか!!」

凛、桜も衝撃を受けるが、
さり気に酷い事を言う姉とそれを自覚する妹がそこにいた。
そして、アルクェイドの反応だが彼女だけは違った。

「待ちなさい、さっちん。
 淫乱ならエロイエロイといわれている、
 月姫だって負けていないわよ!お尻プレイをしていたシエルのように!
 シスターのくせにけしからんお尻をしているし、志貴なんて舐めていたし!」

「あ、はい、ソウデス、というかそれ誇るところですか?」

尻カレーの異名を着けられたネタを暴露したアルクェイドにさつきは若干引いた。
少しばかり後ろに下がり、彼女から距離をとった刹那――――先程までいた場所に剣が通り過ぎた。

そして、剣がアルクェイドに直撃し、吹き飛ぶ。
受身の体勢をとる事ができず、そのままカウンターの方まで飛び皿やコップが割れ、内装が砕ける派手な轟音が響いた。

「さっきから、監視も兼ねて黙って聞いていれば、
 何て事を言うのですか、アルクェイド!!エクストラでサーヴァントとして出演して以来最近調子に乗っていませんか!?」

ヒロイン達が振り返った先には、
黒鍵を指に挟んだシスターこと、シエルがそこにいた。








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弓塚さつきの奮闘記外伝「午後12:15」(完)

2014-08-08 23:13:24 | 弓塚さつきの奮闘記〜月姫編

「この間桐桜。
 ついに、ついにヒロインになりました!」

紫色の髪をした少女、
間桐桜がこれ以上ない程ドヤ顔でヒロイン宣言をした。

「長かった……。
 後輩キャラでありながらもエログロなHFルートのせいで、
 正統派金髪ヒロインと王道貧乳ツインテールヒロインルートの猛攻で影に隠れて幾星霜。
 公式のヒロインの人気度でもセイバーさんと姉さん、イリヤさんの3ヒロインに押されてた状態。
 二次創作でもセイバールートと姉さんルートを元にしたものがメジャーで、わたしのルートはマイナーでした……」

遠くを見るように桜は回想する。
確かに間桐桜は金髪ヒロイン枠のセイバー、ツインテール王道ツンデレヒロイン枠の遠坂凛。
とそれぞれ属性がある中で密かに主人公を慕う後輩キャラとしてFateのヒロインとして想定されていた。

だが、桜のルート。
HFルートは凛のUBWルートをクリアした後に解禁される隠しルート。
そして、これまでの愛と信念を主題とした内容とは打って変わって、HFルートはエログロホラー要素を前面に出したものだった。
Fate、UBWルートでは判明しなかった聖杯戦争の裏、主人公にとって日常の掛け替えのない存在が抱える闇。

そして型月お約束の「ヒロインがラスボス」を体現した。
と、まあそんなわけで公式人気投票では他のメインヒロインと比べると水をあけられてしまった。

また、二次創作の世界でも純粋にHFルートを元とすることは少なかった。
とはいえ、逆に少ない分光るものがあるように「まとうりん」「IFアーチャーのHFルート」のような名作がある。

そしてヒロインの人気度だが、2012年6月8日から24日にかけて行われた、
Fate/Zero、空の境界。魔法使いの夜、月姫から選ばれたオールキャラクター人気投票の結果では8位。
5位アルクェイド、6位イスカンダル、7位蒼崎青子、9位ギルガメッシュという順位であり善戦したといえる。

だがしかし――――。

「Fate/Etra CCCでは確かに、確かに前作と違ってヒロインルートはありましたよ、えええ。
 でも、でも……何で公式は4月のエイプリールでは扱いが未だラスボス色物系ヒロイン何ですかーー!!」

2013年に発表された「路地裏さつき ヒロイン十二宮編」
ではメガ林桜子と遊びすぎな名前で登場したように、桜の扱いは色物であった。
シオンからは「ここまで暗黒面に落ちたヒロインがトップアイドルになる世界は、間違っている」と指摘され、
逆に桜は「怨念系の役回りとか超☆上等!一周まわって楽しくなってきたところです!」と開き直る始末であった。

ホロウから始まりコロシアム、カニファンと桜にファンの間では腹黒キャラ属性がつき、
公式の引くことを知らぬ悪ノリと相俟って間桐桜はすっかりラスボス腹黒色物系ヒロインの扱いであるのだ。

「それに今旬のプリズマ☆イリヤに至っては姉さんとルヴィアさんが出ていても、
 私なんて影も形もアニメの諸事情どころか、原作からフェードアウト状態ですからね…ふ、ふふふ……」

なお、桜は出ていなくても毒舌シスターカレンはカーニバル以来2度目のアニメ出演となっていた。

「ですが、そんな黒桜の時代はもう終わりです。
 銀幕デビューが決定した私、間桐桜は正統派後輩ヒロインとして生まれ変わるのですから!!」

「答・コロンビア」のポーズでこれ以上ないドヤ顔で再度宣言する桜。
携帯音楽機器で態々棒ユニコーンのBGMが流しているあたり、実に手が込んでいる。
だが、それは「ヒロイン十二宮編」で判明したアホの子疑惑により説得力を抱かせるだけであった。

「ヒロイン、ヒロイン。実にいい響きです。
 後は劇場で先輩と(自主規制)なシーンを流せば金髪ヒロインなんて目じゃないはず。
 空の境界で原作に忠実に(自主規制)なシーンを流したufotableなきっと、きっとやってくれるはずです!」

だが、桜はヒロインの条件を忘れていた。
すなわち男が理想とする乙女心とキャラ属性を。
一体誰が要素ガン無視の、確信犯的にエロネタに走るキャラをヒロインとして見るだろうか?
それが分からない間桐桜はすっかり腹黒かつ、ネタキャラ要員でしかなかった。

「どアホーーー!!」
「ひゃん!!?」

そして、これまで黙って聞いていた桜の唯一の肉親が暴走する桜の頭を叩いた。

「黙って聞いていれば、
 脱げば人気出るとか何とか、
 桜、アンタ。ヒロイン舐めてんの!?」

「ね、姉さん」

頭を抑え、涙目の桜が振り返った先には、
王道貧乳ツインテールヒロインの遠坂凛が憤怒の表情を浮かべて桜を睨んでいた。

「正統派どころか、型月のドル箱にしてヒロインの覇者セイバー。
 プリズマから人気をさらに高めつつある、お兄ちゃん大好き、ロリコン銀髪魔法少女のイリヤ。
 ダークホースに、セラ、リズの銀髪メイドコンビに褐色銀髪幼女のクロエを始めとするロリコンヒロインの攻勢。
 エクストラなら貧乳ヒロインから卒業しやがった赤セイバー、淫乱ピンクのキャス狐、ロリコン枠ヒロインのドラゴン娘。
 どいつも、こいつも強い個性があってヒロインとして熾烈な戦いを繰り広げているのに、脱げば人気でるとかヒロイン舐めんじゃないわよ!」

溜まっていた思いを言うと、凜はフーフーと荒い息を吐く。
増え続ける型月のヒロインの中で、未だ現役で数々の派生作品に出演する遠坂凛であるが、
近年の型月のヒロイン増産体制(ただし月姫を除く)で強力なライバルが出現しつつあり危機感を覚えつつあった。

だから、色気の1つや2つで簡単にメインヒロインになれる。
等と甘い言葉を吐く唯一の肉親の言葉に我慢できなかった。

「でも、そういう姉さんだって、
 エクストラでは尻チラとか絶対領域の極みをしてたじゃないです――――あいたぁ!?」

「シャラップ!!CCCではセーラー服だったから関係ない!」

だが、エクストラで尻チラという新たな領域を開発した事実を桜が指摘するが、否定される。

「だいたい桜はCCCでは、何あの胸?
 パッションリッフは私への当てつけかしら?
 幼女枠のメルトリリスは下半身丸出し、エロ路線しかないの?」

「あ、あれは私じゃなくて、オリキャラ!
 二次創作で生まれたオリキャラだから関係ないもん!!」

黒歴史な姿を思い出した桜が涙目で強く否定した。
エクストラCCCでは桜を模した新キャラが登場したが問題はその姿だ。

パッションリップの外見は桜そのものであるが、上半身はサスペンダーのみという完全な痴女。
なお、その胸のサイズは160センチあり、某メイドの90センチ代を突破し、型月ヒロインの中でナンバーワンであるのには間違いない。

パッションリップと同様に桜と同じ姿であるが、
幼い姿をしており、服は袖が余るぶかぶかなロングコート。
足に付けた剣のように鋭い具足『だけ』そう、下半身を覆うものは股間にある貞操帯のような下着のみであった。
しかも、コートの前は画さず全開状態でを全開にしている上に腰から下を隠すものはなく股間は殆ど丸出し。
どこからどう見ても痴女であるが、当の本人はこれ以上なないくらいドヤ顔で「貞淑に隠している」と主張しているのであった。

「やっぱり、桜はヒロインというよりネタキャラ専門よね」
「………………」

姉の茶々に桜は俯く。
昔の彼女ならここで黙って引いていたであろうが、
ホロウで虎視眈々と蟲爺の暗殺を企んでいたように成長した今の桜はここで黙って引くような人間ではなかった。

「あは、姉さんこそプリズマ☆イリヤではギャグ枠。
 虎聖杯では猫耳、軍服、魔法少女と大活躍だったじゃありませんか?」

「あ゛!?」

地雷を踏み抜いた桜の発言に凛の米神に血管が浮き上がった。

「あは、怒っているのですね、姉さん。
 ふふふ、前みたいにルヴィアさん直伝のプロレス技を披露しましょうか?」

「あら、上等。前回は油断したけど、
 外道神父が教えてくれた八極拳の威力。まだ桜は味わったことなかったわよね?」

売り言葉に買い言葉。
戦う以外の選択肢はなかった。
桜は一瞬で腰を落として、両手を前に出すプロレスラーの型を作りにじり寄る。
対する凛も腰を落とし拳を握り、八極拳の構えで桜を待ち受ける。

このまま、姉妹対決が成されるかと思いきや――――。

「凛、桜。往来の前で喧嘩はよしてください」
「!」
「!?」

姉妹喧嘩を止める人間がいた。
聞き覚えのある声に姉妹2人は声の元に振り返り、驚く。

「せ、セイバーさん、どうしてここに!」
「というか、何でセイバーがメイド服なんて着ているのよ!」

振り返った先にいたのはセイバーであった。
理由は知らないがフィギアにもなった背中のラインが美しい某メイド服姿ではなく、
足元が汚れないロングスカートに、これまた頑丈な白いエプロンを羽織り、胸元にはきっちりとリボンを締めた正統派メイドの姿をしていた。

「本来。客として喫茶アーネンエルベに来たのですが、
 色々ありまして不本意ながら店員をすることになりました」

「アーネンエルベ……あ、ここアーネンエルベの前だったのね」

今更ながら凛が往来で騒いでいたのに気づく。

「そして、店の前で見知った方々が騒いでいたので、来ました」
「う、すみませんセイバーさん…全部姉さんが悪いので、後でヴェルデの大判焼きを姉さんが奢りますから」
「ちょっ!桜!何、私だけに戦犯を押し付けようとしてんのよ!セイバーに奢るとか破産させるつもり!」

ジト目で姉妹を見るセイバー。
慌ててる姉妹であるが、さり気無く姉に責任を押し付ける桜は間違いなく黒かった。

「結構です、今は大判焼きは不要です」

しかし、セイバーは桜の言葉を否定した。
あのセイバーが食べ物に釣られない、その事実に姉妹の間に衝撃が走った。

「え、……嘘!セイバーさんが、
 あのセイバーさんが食べ物に釣られないなんて」

「く、落ち着きなさい桜!
 まずは胸は……よし、私と同じまっ平らだから赤王ではないわ」

「な、なんですかその認識は!」

腹ペコキャラが根付きすぎたせいで、
食べ物に釣られないセイバーの態度に疑心暗鬼になる凛と桜にセイバーは、
不本意だと言わんばかりに吼えるが、店内から出てきた金髪の少女に追い討ちを駆けれるように肯定される。

「事実じゃん、セイバー。
 アーネンエルベの店員やる代わりに余った食材食べ放題で釣られたくせにー」

新たな登場人物、アルクェイドが店のドアから出てきた。
彼女もまた、メイド服、よくよく見れば遠野家で使用しているのと同じものを着込んでいた。

「あ、やっぱり」

「だよねー、セイバーは……。」

「ん、なぁ!それを暴露しないでくださいアルクェイド!」

「えーいいじゃん、別に」

アルクェイドの言葉に納得する桜と凛。
対してセイバーはアルクェイドに憤慨するが、気にしていない。

「私もセイバーと同じく色々あって、
 店員をやることになったんだけど、アーネンエルベに寄っていかない?」

紅い瞳をウィンクさせ、
アルクェイドは遠坂姉妹をアーネンエルベに招待する。

「……ま、そうね。
 少し暑いし、せっかくだから休ませてもらうわ」

「……そうですね、姉さん。
 決着は何か飲んでからもできますし入りましょう」

その言葉に姉妹は顔を合わせて一瞬考える。
だが、結論は直ぐに出て、アルクェイドの提案に凛と桜は乗った。

「はいはいー。2名様のご案なーい」

かくして、アーネンエルベは新たな客人を向かえ入れた。









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弓塚さつきの奮闘記外伝 「正午12:00」

2014-07-29 21:10:57 | 弓塚さつきの奮闘記〜月姫編

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
と、有名な文学作品のフレーズがあるが――――ドアを抜けるとカオスであった。

「あは、オバサンなかなかやるね」
「あ゛!?この糞餓鬼がぁーーー!!」

金髪の少年と、
桃色の髪を持つ少女が互いに宝具と魔術をぶつけ合う。
流れ弾が喫茶店の床や机を破壊し、破片があたりに散乱する。
おっかしいなぁ、ボクはヒロインの座を狙う化け猫退治を依頼されたはずだけど。

というか、桃色の少女はもしかしてキャス狐か?
うぉおおお、リアルキャス狐キタコレ!

なんだ!あのけしからんスタイルは!!
アルクェイドさんやシオン、秋葉さんとか美少女は見慣れているけど、
流石かつて帝に魅入られた絶世の美女、キャス狐マジ美少女。

そして、隣にいる学生服の少年はそのマスター、ザビエルだな。
エクストラエンドならば4畳半アパートであんな美少女と同居してるんだよな……爆せリア充。

「あ、あのー喧嘩はその、本当によくニャイから辞めませんか―――って今掠ったニャーー!!?」

なんか足元から声が聞こえるから視線を向けると、いた。
本当にそれは奇妙な生き物であった、なぜなら見た目は動物の属するにも関わらず人語を解していた。

それだけなら、魔術の世界ならばさほど珍しくないが、問題はその造形だ。
2速歩行で人間の服を着て、頭にこれまた人間のような髪を生やしていた上に、その顔が実に奇妙であった。
神の造形ミスを疑いたくなるようなアンバランスな配置、特にその瞳は宇宙人グレイのごとく顔の面積の多くを占めていた。

早い話美少女マンガの大きな瞳をしたヒロインがそのまま三次元に登場したらどうなるか?
そんな思考実験的代物がボクの視線の先に存在しており――――ネコアルクはグロイというよりクリーチャーだった。
それこそ、クトゥルク神話で出てくるようなクリーチャー並に見るに耐えられるものではなく、ボクのSAN値が一瞬急降下した。

体温が一気に低下し、ガチガチと恐怖で歯が鳴る。
心臓もまた恐怖と極度の緊張で暴発寸前で今にも暴発し、その動きを止めてしまいそうだ。

また、冷や汗も流れる。
息もひゅーひゅーと吐くだけでうまく呼吸することが出来ずにいる。

化け物、血を吸う鬼になってもなんて様だ。
今は奴は自分を見ていないがもしもこちらを向いた時、ボクは正気でいられるだろうか?
あの、大きな瞳が自分の姿を捉えた時、果たしてボクは――――。

「弓塚さん、どうかしましたか?」
「…………っ、あ、い、いや何でもない!」

ヤバイ、琥珀さんが呼びかけていなかったら本気であのままSAN値直葬しそうになった。
というか、何でこいつだけ二次元的描写に忠実なんだ!!?

今まで見たことなかったグロイ、
キモイと皆が口を揃えていたけどその気持ちが分かるよ……。
で、リーズバイフェはこれをキモ可愛いと申すとか、訳が分からないよ。
少なくてもシオンよりも芸術のセンスはあるというのに、どうしてアレを好むのか理解不能だ……。

「さて、弓塚さん。あのお二方を止めましょう!」

なんて考えていたら琥珀さんが両手に注射器を挟みそう言った。
……え゛冗談ですよね琥珀さん、あれをボクが止めろと?

「当然じゃありませんか、アーネンエルベを守るために弓塚さんを雇ったんですから」

何を言っている?と言わんばかりに返された。
あ、あのー琥珀さん相手はどちらも神話世界の住民ですよ?
片や古代メソポタの英雄、片や国を傾けた傾国の美女にして最強の魔、勝てるわけないでよー。
リアルに二次元的表現を再現したせいでクトゥルフ生物みたくなったネコアルクを相手にするよりましかも知れないけど。

「まあ、確かに元悪神とはいえ今は正義の味方症候群の肉体を借りているだけの抜け殻。
 弱体化しているよーだが、マジモンの神の類を相手にするのは少しどころかオレの自滅技でもキツイぜ」

気だるげにアヴェンジャーが呟いた。
どうやら、この全身刺繡男は意外とまとものようである。
よし、このままアヴェンジャーと共同戦線を張り逃げてしまおう。

「ケケ、だがオレは別にかまわないぜ」

あ、アヴェンジャー、この戦闘狂がぁー!!

「アハ、大丈夫ですよ弓塚さん、
 赤信号、皆で渡れば怖くない、という言葉があるじゃないですか」

色々一杯な自分に対して、
琥珀さんは向日葵のような笑顔を浮かつつそう励ました。
だけど、琥珀さん赤信号を渡ったら普通に車に轢かれますがな……。

「覚悟を決めろ、吸血鬼。
 アーネンエルベで素敵なパーティーをしようぜ」

某ソロモンの悪魔のような言い回しでアヴェンジャーがニヤニヤと話しかける。
逃げようにもさり気無く琥珀さんが退路を絶っており、前方は子ギルとキャス狐が絶賛戦闘中だ。

あー分かった、分かりましたよ畜生!
英霊2人を張り倒すだけの簡単なお仕事をこなせばいいのですね!

「あーもう、分かりましたよ琥珀さん、行きますよ。
 ええ、行きますからその怪しいお薬を準備しないでください」

「おやおや、違法じゃなないお薬ですから大丈夫ですよ?」

注射器を自分に刺す素振りを見せていた琥珀さんは、
何のことかしら?と人懐っこい表情と共に惚けて見せた。
…………一体どういう薬を注射する気だったんだ?

「カカ、話しは纏まったようだな、んじゃ一番乗りはオレだ」

「ちょ、アヴェンジャー」

隣のコンビニに行って来るのノリで、
ボクが止めるより先にアヴェンジャーが突撃した。
何の考えなしにカチコミするなんて何時も皮肉っている正義の味方同様正気じゃないな!!

「オレにも混ぜさせ…」
「あ゛何ですか?」
「君、邪魔だから」

そして案の定というべきか、
アヴェンジャーが2人に飛び込んだ瞬間、
キャス狐の魔術に子ギルの宝具が飛来し、アヴァンジャーの周囲は粉塵に包まれる。

ボクは粉塵にむせるる。
そして粉塵が晴れた先にいたはずのアヴェンジャーはいなかった。

いや、視線を天井に向けるといた。
アヴェンジャーはカニファンのランサーと同じく天井に突き刺さっていた。

アヴェンジャーが死んだぁあぁぁああ!
というか全身刺繡で無くなっているから衛宮士郎に戻っている……衛宮士郎も死んだ!この人でなし!

「あー何ですかそこの方々、私の喧嘩を邪魔するつもりですかー?」

アヴェンジャーが突撃したせいで、
最悪なことに今度はボクの方にタゲられた。
子ギルも興味津々といった感じで宝具がこちらに向いている。

逃げようにも狭い喫茶店。
ゆえに、前に進む以外道はないのだ――――畜生、やってやる!



※  ※  ※



少女が2人歩いていた。
その事実だけなら、どこにでもある現象であったが、
2人はこの国ではいわゆる「ガイジンさん」である上に2人揃って美女と来た。

1人は金髪碧眼の少女。
ネクタイを外す習慣が根付いて久しいこの国の習慣に反するように、
この暑い時期にブラウスの襟元をリボンできっちり結んでいた。

にも関わらず汗をかかず涼しげな表情を浮かべている事実から、
少女は体を鍛えている事が推測される、現に歩き方も武術を嗜む者特有の体のブレがない動きをしている。

そして、見た目から年は高校生にようやく届くと思われるが、
中性的な顔立ち、愛らしいと表現するより凛々しい顔つきで、どこか剣を連想させた。

もう1人の少女もまた美少女であった。
ただし、先の1人より女性らしい顔つきをしている。
体の方も女性らしさに溢れており、たわわに実った双球が服の下から突き出ていた。

また碧眼の少女よりも感情表現が豊かで、
紅い瞳はクルクル動き、表情が話すたびに変わった。

そして、美少女たちの正体は、
碧眼の少女は英霊のセイバー、紅眼の少女は真祖の姫アルクェイドであった。

「で、セイバー。
 夏のプリズマ、秋のUBWといい今年の型月はFateアニメ祭りね。
 おめでとー、いいなー私のほうはエクストラで友情出演して以来暇よー」

アルクェイドが夏、秋と連続してFateシリーズが放映されることに、
セイバーに賞賛を送ると同時に、いつまでたってもリメイク版が出ない自分の現状を嘆いた。

「ありがとうございます、アルクェイド。
 ですが、いずれ月姫のリメイク版もでるはずですから、アルクェイドも大丈夫です」

「何年先の話になるか分からないけどねー。HFが劇場版で放映される予定だし」

セイバーが慰めの言葉を綴るが、
アルクェイドは頬を膨らませて不貞腐れる。

無理もない。
これまで小出しに月姫の続編やリメイク版の情報は出たが、
続々と各種メディアで展開するFateとは違い、月姫には動きがまったくと表現していいほどない。

幾ら月姫が2000年に登場した古い作品とはいえ、
2004年にアダルトゲームとして登場したFateも今年で10年。
Fateシリーズはその勢いが減速することなく、未だ根強い人気と派生作品は増殖が続いている。

しかも、月姫よりも古い。
始めはウェブ小説でしかなかった空の境界に至っては劇場で全話が放映されている。
型月3大ヒロインとして、そして月姫のメインヒロインとしてアルクェイドはまったく面白くなかった。

「き、きのこがダークソウルに飽きるのに期待しましょう」

「飽きる何て期待はしてないわよ、セイバー。
 あの暗黒世界観、一撃死上等の鬼畜設定とか、きのこの好みにドンぴしゃりだし。
 例えるなら、八極拳神父に穴を埋められて、思わず気持ちよすぎてダブルアヘ顔ピース状態のケリーのように」

「ちょ…!?アイリスフィールみたいな例えはよしてください!
 貴女は、貴女だけはそうではないと私は信じていますから、もっと言葉を選びなさいアルクェイド!!」

セイバーが苦し紛れな慰めの言葉をかけたが、アルクェイドは腐ったネタを吹っかけた。
ゼロ以来増えたホモォなネタを混ぜている所から見るに、アルクェイドは相当不貞腐れているようだ。

そして、セイバーはドラマCDで守るべき主君ともいえる存在が、
アイリス腐ィール、すなわちホムンクルスならぬ、ホモォクルスへ進化した事を知るだけに慌てる。

「ああ、そういえば。
 秋に放映されるUBWなら定番のアッー!チャー×槍(意味深)だけでなく、
 肉塊×ワカメの触手プレイ、金ぴか×狂戦士のリョナプレイな組み合わせもできるわね」

「……っ!!」

駄目だ腐っていやがる。
早急に何か話題を変えなければ。
さもなければ、よりアルクェイドが腐界の深みに入り込んでしまう。

冷や汗を流しつつセイバーは内心で独白する。
何か、何か話題を変えられるものはないか!!?
セイバーは周囲を見渡すが、何も――――いや、あった。

「きょ、今日は月がきれいです……ではなく、暑いですね。
 アルクェイド、アーネンエルベに着きましたし、まずは冷たい物でも飲みましょう」

「え、あっ、ちょっと!
 まだ、ゲイ♂ボルクが主人公の……」

アルクェイドの腕を掴み、
セイバーは強引に喫茶アーネンエルベに入店する。
最後の不穏な台詞については、聞こえなかったフリをして。

同時に、これ以上腐った話しを聞かずに済む。
そう安心したが、アーネンエルベの有様に驚きの声を挙げた。

「な、なんなのですかこの惨場は?
 というか、シロウ!しっかりしてください!」

虎の着ぐるみが頭から床に突っ込み、
セイバーのマスターである衛宮士郎が天井に突き刺さりぶら下っている。
他にも桃色の髪をした少女に、妙にカレーが匂う筋肉質の男が床に倒れていた。

当然のことながら喫茶店の内装はボロボロで、
まるで戦争でも起こったかのごとく廃墟当然の有様であった。

「うっわ、何このカオス?
 というか、そこの着ぐるみはさっちん?」

セイバーの後ろからアルクェイドが顔を覗かせ、アーネンエルベの有様に眉をしかめる。

一体何があったのか?
そんな疑問が2人の中に疑問として浮かぶが、手がかりはない。
振り子時計が正午12:00の鐘を鳴る中、2人は途方に暮れた。





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弓塚さつきの奮闘記外伝「午前10時53分」

2014-06-01 21:27:25 | 弓塚さつきの奮闘記〜月姫編

「よっと、やれやれ」

喫茶アーネンエルベの路地裏。
全身刺繡男ことアヴェンジャーが溜まったゴミを出していた。
現在アーネンエルベはアヴェンジャー、マジカルアンバー、カレンの3人で運営しており力仕事はアヴェンジャー担当であった。

カレンはこうした力仕事をもっとも不得意としていたし、アンバーは調理に忙しい。
ゆえに、配膳担当のアヴェンジャーがこうした力仕事全般を担当していたが流石に疲労を覚えつつあった。

おまけに今はモーニングを終え、ランチタイムに入りつつある時間帯。
配膳だけでも大変にも関わらず、こうした雑務に追われているのだから仕方がない。
会計でカレン、調理はアンバーとある程度役割分担をしているためどこぞの牛丼チェーンのごとく。
一人で何でもしなければならないことはないが、それでもオーバーワークであることには変わりがない。

「というか、あの自称魔法少女が言っていた援軍はいつ来るんだ?」

だから、周囲に人がいないためアヴェンジャーがボヤく。
というか、今日の働きに給料でるのか?と疑問を覚えた所で人の気配。
それなら特にアヴェンジャーは気にしなかった問題はその人物が発する気配が堅気のものではなかった。

そう、とても濃厚な魔の空気を纏っていた。

「っ……おいおい、こんな昼間っから…………はい?」

反射的に振り返り、右歯噛咬(ザリチェ)と左歯噛咬(タルウィ)を具現化する。
最弱を自認する英霊であるが、それでも意地というものがあり戦闘準備を整える。
もしも、相手が自分に敵意をむき出しにした瞬間、立ち向かうつもりであったが、アヴェンジャーは絶句した。

確かに堅気の雰囲気ではない。
だがその人物は何故かしま○ろうの着ぐるみを着込んでいた。

「……もしかして、アヴェンジャー?」

しま○じろうから声が漏れる。
年齢性別が不詳であったが、少女であるらしい。
この姿をあまり人前で出さず、かつ知っている人物は限られている。
にも関わらず、開口始めに自分の名前を言い当てたこの少女は何者か?
アヴェンジャーは警戒心と疑問が内心で浮かんだが、その思考は一度中断された。

「あ、弓塚さん来てくれたんですね!」

アンバーこと琥珀が裏のドアから顔を出し、少女の名前を呼んだ。
どうやら、目の前の着ぐるみの少女がアンバーが言っていた助っ人らしい。
にしてもここまで強力な魔が喫茶店の助っ人とは……と、自分の事を棚に上げてアヴェンジャーは呆れる。

「ああ、琥珀さん。いくらこれで日中歩けるとはいえ、この姿は狙っているでしょ!!」
「当然じゃありませんか!似合ってますよ」

ああ、そういえば声がしま○ろうに似ているどころかまんまだな。
とアヴェンジャーが悟り、いい感じに割烹着の悪魔に玩具にされてるのを見て。
思わず自分とカレンの関係を連想させ、親近感が沸いた。



※  ※  ※



はい、久しぶりに出番をいただいた弓塚さつきです。
志貴が幼女に手を出して思わずドン引きした、歌月十夜。
エジプトニーソと出会い、ボクが余計なことを知っていたせいで面倒になったメルブラ。

等などと色々あったけど、現在遠野家に居候状態。
扱いとしては遠野家専属の何でも屋で琥珀さんの実験台から始まり夜の見回り。
裏世界の揉め事の解消、屋敷の清掃など本当に色々やっている忙しい日々を過ごしている。

いや、本当に色々あった……。
志貴がレンに手を出したことを知ったアルクェイドさんは別に気にしてなかったけど、
シエル先輩はマジ切れで黒鍵片手に志貴を追いかけ回していたし、巻き込まれたボクは志貴のラッキースケベの被害にあった…。

おまけに、メルブラではボクが余計な知識を持っていたせいで、
不安要素と捉えたシオンに本気で殺しに掛かって来たし、ワラキアはボクの知識を元に強化するわで散々だった。

ワラキアの能力でFateのサーヴァントが再現され、真正面から戦ったせいで両腕をぶった斬られた。
あの時、首が胴から分かれなかったのは本当に運がよかった、というか二度と思い出したくない出来事だ。
まあ、流石に古の英雄達を再現し続けることはワラキアのキャパシティを超える行為だったから、最終的には自滅したけど。

けど自滅したとはいえ、その状況に持ち込むまでに粘ったボク達の勝利であることに違いなく。
その夜は遠野の屋敷で勝利を祝い、始めはボクを殺しに来たシオンと友情を結んだ。

彼女はボクが転生者であることを知る唯一の原作キャラだ。
そして、その秘密を共有する仲間であり、共に見果てぬ未来を目指すことを約束し合った。

でも、翌日シオンが志貴のベットにいたけど!
裸だったし、シーツに赤い染みとかあったし、どう見てもベットウェー開戦の後でした本当にありがとうございました。
それを発見した翡翠さん悲鳴で集まってきた女性陣がホイホイと食った絶倫眼鏡を吊るし上げ、大騒ぎする中シオンが、

「魔術師として子孫を残すのは義務であり責務です。
 彼の異才をエルトナムに取り組みたいと考えています。
 それに、その…彼には女性として私は惚れています、というわけで、志貴を婿に下さい、秋葉」

顔を赤らめつつも、これ以上ないドヤ顔で言って、
途方にくれる秋葉さんを始めとする面々が妙に印象に残っている。
といか、シオンさん、貴女原作では淡い恋心を抱きつつも三咲町を去るはずだったけど何故にここまで積極的なんですか?

その後、当然ながら大反対な女性陣により大乱闘(ガチ)が勃発。
黒鍵が壁を貫き、吸血鬼の爪が柱を打ち壊し、怒り狂う鬼が床を破壊。
そこにタタリの残骸が加わり、わけの分からない状態になり魔女の大鍋とはこのことか、と納得する以外なかった。

本当、色々あったなあ……。

おっと、ここだな。
ええっと、何度か来たけど喫茶アーネンエルベの裏口は……なんだあの男?
アーネンエルベのウェイターの姿をしているけど、顔全体に刺繡を入れ込んでいるし。

いや、待て。
バンダナ、いや赤い布を頭に巻いた黒髪。
それに、背丈は一度アーネンエルベで見たことがある人物にそっくりだ、とすれば。

「っ……おいおい、こんな昼間っから…………はい?」

と、答えを口にする前に向こうが振り返った。
両手に物騒な代物をこっちに向けて、直後に絶句した。

あ、うん。
その気持ちは痛いほど分かるよ。
何せ今のボクの姿は某教育番組に登場する虎のきぐるみ姿だから。

そんなのが街中にいるのは正直ない。
けど、こうでもしなければ太陽を浴びればたちまち灰になってしまう吸血鬼である自分には必要なものだから。
仕方がない、といえば仕方がないのだけどしま○じろうとか、琥珀さん分かっていたでしょ?

さて、それは置き。
眼の前で絶句している青年の名は、多分もしかして。

「……もしかして、アヴェンジャー?」

あ、正解のようだ。
アヴェンジャーの言葉に向こうは反応した。
けど、どうやら向こうは自分を知らないようで警戒している。
……しまった、アヴェンジャーとは会ったことがないから警戒して当然か。

というより、本来ならボクと彼とは会うはずがない仲だ。
方や夜にしか動けない吸血鬼、方や幻のような存在と接点がない。
しかも、お互い住んでいる場所は三咲町と冬木とまったく違う所である。

けど、こうして出会ってしまったのは、
これも全てあらゆるご都合が許される喫茶店アーネンエルベの奇跡と言うべきか。

「あ、弓塚さん来てくれたんですね!」

なんて、思いに浸っていたらボクをここに呼んだ琥珀さんが出てきた。
肩には黒いマントを羽織り、頭には猫耳、そして服は妙に短い裾をした改造和服姿だった。
ニーソックスと裾の間にある絶対領域がとても眩しい……じゃなくて、今の琥珀さんはマジカルアンバーのようだ。

「ああ、琥珀さん。いくらこれで日中歩けるとはいえ、この姿は狙っているでしょ!!」
「当然じゃありませんか!似合ってますよ」

やっぱり、狙っていたか畜生め!
まあ、それでも支払いがいいからここに来たけど、いい加減真意を聞くとしよう。

「で、琥珀さんがわざわざボクをここに呼んだのは、
 ただ喫茶店の援軍だけではないと思うのだけど、どうかな?」

「おっ、御明察です。
 喫茶店のお手伝いなら翡翠ちゃんにもできますからね〜」

楽しそうに向日葵のような眩しい笑顔を浮かべる琥珀さん。
けど、内心はさながら魔女の大鍋で煮込みまくって黒焦げになるほど腹黒であるのをボクは知っている。
そして、琥珀さんは騒動を起こし、楽しむ人間であり、何かを企んでいるのは確かであった。

「実はですね……」

直後、破壊音が喫茶店から轟いた。

「わっ!?」
「おいおい、何だこれは?」
「しまった!まさかこんなに早く来るなんて……っ!!」

ボク、アヴェンジャー、琥珀さんの順に反応する。
いや待て、「こんなに早く来るなんて」とはどういう意味だ?

「説明は後です!ヒロインの座を狙う憎っくきあの化け猫たちがまたやって来たのです!」

化けネコ?化けねこ?化けぬこ、化け猫……って!

「ネコアルクのことかーーー!!」

見たことないけどいるのか!
二次だと落書きみたいな姿をしていたけど、三次元だとどう見えるんだ!!?
気持ち悪い、あるいはキモ可愛い(リーズバイフェのみ)とコメントしていたけど。

というか、アレはヒロインというよりマスコット。
あるいはクリーチゃー枠の存在なのに何故にヒロインの座を狙うのだろう…。

「さあ、弓塚さん!ヒロインの座を死守するために行きましょう!」

そう言うと琥珀さんはどこからか箒を持ち出し、
両手に派手な原色入りの注射器を指に挟み、よく知るマジカル・アンバーのポーズで構えた。

「カカ、オレは主人公枠だが助太刀するぜ。
 丁度給仕作業で疲れてきたからな、殺し合いで気分展開だ」

ニタニタ笑みを浮かべるアヴェンジャー。
両手には歪に曲がり、禍々しい装飾をなされた武器を握っている、殺る気満々である。

はあ、まったく。
来て早々騒動に巻き込まれるとか、実に面倒だ。
しかし、これも琥珀さんから頼まれたバイトの内と思えば気が楽である。

ゆえに、拒否する理由もない。

「じゃあ、思いっきり暴れていいのだよね琥珀さん?」

「もちろんです!そのために呼んだのですから!
 あ、安心してください、店の被害請求は全て化け猫と秋葉様に押し付けますから!」

「ケケ、いいぜ、いいぜ、最高だなぁ!」

よし、決まりだ。

「了解、行こうか」
「はい!」
「おう」

そして、しま○じろうの着ぐるみ、全身刺繡男、コスプレ少女。
という我ながら奇妙で個性的な3人はカオスの世界である喫茶「アーネンエルベ」に突撃した。







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弓塚さつきの奮闘記外伝 「奮闘記的アーネンエルベの一日 午前9:23」

2014-04-17 20:26:14 | 弓塚さつきの奮闘記〜月姫編

少女たちが道を歩いていた。
それだけならどこにでも見られる光景であったが、少女らは目立っていた。
といのも、3人の少女は未だ小学生高学年程度の歳相応の幼さを残していたが。

その内2人はこの国では珍しい銀色の髪を有する「ガイジンさん」の風貌であったためだ。
しかも3人揃って将来に期待が持てる容姿をしていたため、なおさら道行く人々に見られた。

「あーもう、喫茶店いこー喫茶店」

焦げ茶色色の肌をした少女、クロエ・フォン・アインツベルンが天を仰ぎつつぼやく。
そして、クロエの橙色の瞳が隣の銀髪少女に向けられる。

「そんなこと言ったてお金ないよ、クロエ」

視線を向けられた銀髪赤眼の少女、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンが即座にその提案を却下する。
なぜなら、自分たちは未だ小学生であるため使えるお金など知れており、その事実を思い出したクロエが言葉を詰まらせた。
が、そんな2人のやり取りを見ていた黒髪の少女、美遊・エーデルフェルトがそのイリヤの言葉を否定した。

「大丈夫、ルヴィアさんからお小遣いは貰った」
「え、お金あるって……うそぉ!!」
「ちょ、ちょっとこれって!?」

美遊のい言葉に怪しんだが、視界に入ったそれを見て驚愕する。
そのお小遣いと称するものは財布にギッシリと詰まった福沢諭吉の群れであった。
小学生どころか大人にも手が届かなさそうな金額にイリヤとクロエ思わず唾を飲み込む。
そして、クロエは神妙な顔つきでイリヤに顔を向けると言った。

「持つべきは金持ちの友人だとは思わない、イリヤ?」
「自分も過去に似たような事を言ったけど最低だーーーー!!!」

『プリズマ☆イリヤ』ではすっかり突っ込み役が定着したイリヤが叫んだ。

「だから喫茶店に行っても問題ない」
「じゃ、みんなでケーキを食べましょ!決まりね!」
「待ちなさいよー!クロエ!」

美遊の手を握り嬉々とクロエが喫茶店へ走り、イリヤがその後を追いかける。

『おや……?』
「どうしたのルビー?」

『アーネンエルベ』という名前の喫茶店のドアを潜った後に。
どこぞの割烹着の少女と同じ声を持つ天然人工精霊にしてネタ製造機のルビーが疑問符を口にする。

『はーい、なんだか面白おかし……。
 いえいえ、少しだけネタの空気を感じただけですから、イリヤさんは気にしなくて大丈夫ですよ』

「それって私にとって凄く嫌な予感を意味するよねルビー!」

ルビーの発言にイリヤがまた巻きこれるーと嘆くが時既に遅し。
既にギャクもネタもあるんだよ、という言葉が思わず出てしまうアーネンエルベに入っていた。



※ ※ ※



「改めて結婚、そして懐妊おめでとうございます。両儀さん」
「悪魔なオレからも新たな命の誕生を祝福してやるぜ」
「あ、ああ。どうも……なんか、おまえ達に祝福されるなんて違和感を感じるな」

再度改めて言われる祝福の言葉に両儀式はぎこちなく受け取った。
片や同属嫌悪で一度殺しあった人物、片や退治すべき魔である悪魔であるからある意味仕方がない。

「しっかし、散々ドラマCDの『アーネンエルベの1日』で、
 「月姫はエロいっ(キリッ)」と言っておいてヤルことはヤッタ式だって十分にエロいじゃないか!」

「ぶぅ―――おまっ!」

アヴェンジャーの発言で式は口にしたお冷を噴出した。
前に自分が言ったことが今になって反って来たのだから仕方がない。

「ケケケケ、そういえばオレはカレンと教会で後ろからヤッタがやっぱオマエもそうなのか?」
「う、うるさいな!」

女性に向けて体位を聞くなどセクハラ全開の発言をアヴェンジャーはする。
これに何時もの式ならば養豚場の豚を見るような冷たい眼と共にで物理的に切り捨てていただろう。

が、覚えがあるせいで顔は赤くなり、動揺が止まらずたじたじになる。
この様子にニヤニヤと人が悪い笑みを浮かべた悪魔は更なる追撃をしようと試みたが。

「失礼じゃないか士郎君、いやこの場合アヴェンジャーか。そんな事を言うなんて」

さらに何か口にしようとした刹那。
しかし、遠野志貴がアヴェンジャーに制止を促す。
式が殺人貴といえどもその辺は常識人であることに感謝した。

「だいたい女の子、例えばアルクェイドだってエッチが好きだし、俺も大好きだ。
 すなわち、エッチが大好きなのは男女の区別はない。つまり、両儀さんは普通だ!」

「そこの絶倫眼鏡は喧嘩を売ってるんだな。
 そうだな?次に会った時はたっぷり買ってやるから覚えていろ」

式の殺意交じりの鋭いジト眼が主人公2人に向けられた。

「……はぁ。で、おまえ達はセイバーとアーパー吸血鬼を連れていないのか?」

これ以上この手の話を追求するとこちらがまた弄られる。
そのことを知っていた式は前回ここに来た際にいた主人公に伴うヒロイン2人について言及する。

「ええ、もう直ぐ来ると思いますけど。なにせ携帯電話とか持ってないし」
「こっちも以下同文。まぁそのうち腹ペコの騎士王サマは来るだろうから問題ないぜ」

のんびりと答える志貴に、やれやれと言いたげにアヴェンジャーは答えた。

「そういえば、おまえ達は携帯電話とか持っていなかったな」

今や日常生活に不可欠な文明の利器を持っていない事実に今更ながら式は気づいた。

「まあ『月姫』は『魔法使いの夜』より新しいけど、
『空の境界』と並んで年代が少し古いですから、琥珀さんが仕事で使っているのなんて黒くて頑丈な奴ですよ」

「メタいな、おい」

「こっちは辛うじて2000年代の一桁のせいか正義厨は持って無くもないが、
 普段持ち歩かない上にネットなんて繋がらない通話とメールだけで姉貴分からのもらい物だ」

日本のガラパゴス的技術、文化の象徴として日本の携帯電話がしばし指摘される。
今でこそスマートフォンに押されているが1996年に世界初の着メロを開始。
また、1999年に京セラは世界初のカメラ内蔵携帯を発売。
2001年にはインターネット回線と繋げるようになるなど技術的には最先端を走っていた。

「まあ、2014年秋に公開されるだろうFateで正義厨の服装も変わる様だし、その辺も変わるかもな」

「そういえばそうだったね、リメイクおめでとうアヴェンジャー君」

「ケケケ、今回はゼロでも好評だったufotableが担当だからDEENなようにはいかないぜ。
 この人気を背景に、このままホロウまでアニメ化すれば今までゲームでしか出番がなかったオレとしては満足だな」

「リメイクなんて相変わらずFateは型月のドル箱だな。
 ああでもDEENの事は言うな、当時はあれで面白かったのだから……」

元々ufotableはオリジナルアニメの作成より、
原作の再現度に高い評価を得ており『空の境界』そして『Fate/Zero』で高い評価を得ている。
一方DEENは全体的に可も無く不可もなくで、たびたびufotableと比較され、酷評されてしまっている。

「カッコイイポーズとかか?」
「あれは、うん。そうだな、うん……」

対バーサーカー戦で見せたアーチャーのカッコイイポーズ(棒)
を思い出した式は露骨に眼を逸らし沈黙した。

「しかし、いいねFateは派生作品もあって。
 こっちの『月姫』はリメイクしているらしいけど全然だよ」

「別にいいじゃないか、静かで。
 こっちは銀幕に出たりエクストラで出演したりで忙しかったからな。
 ま、『魔法使いの夜』もなんだかんだと言って出たわけだしそのうち出演する機会はあるさ」

「何この銀幕出演者の余裕はよお、おい?」

志貴のぼやきに式は経験者として助言する。
だがどう見ても出番がある恵まれた役者の類の発言でアヴェンジャーが突っ込む。

「で、そこの全身刺繍のウェイターは雑談ばかりでいつまで客をいつまで待たせるつもりだ?」

再度ジト眼でアヴェンジャーを見る式。
忘れてしまっていたが、この場ではアヴェンジャーは喫茶店「アーネンエルベ」の店員である。

すっかり客に奉仕する義務を忘れ、雑談に興じてしまったいたけど。
なお式の手には空になったお冷を持っており、どうやらお冷もほしいようだ。

「ぎゃはは、そうだったな。
 オレとしたことがすっかり忘れていたぜ、出来ちゃった婚のお・きゃ・く・さ・ま」

「知っているか?妊婦は感情が乱れ易ってことを。
 ――――――なあ、こいつを17分割にしてもいいか?」

「抑えて!両儀さん抑えて!芸風、これは彼の芸風だから!」

煽るスタイルのアヴェンジャーに苛立ちが抑えられない式は懐のナイフを手にする。
そして最後の良心として妊婦による殺人事件を止めるべく志貴が必死に思い留まるように説得する。

だが、式は本気らしく眼を青く光らせる。
重心も前のめりになり、次の瞬間には切りかかって来そうである。
ここは俺が全力で止める必要があるかもな、そう志貴が達観した刹那救いの主は外から来た。

「店員さーん、ケーキとかある?」

ドアの鈴を鳴らし、愛らしい少女の声が店内に響く。
流石に人前で流血沙汰はまずい事を自覚していた式はその声でナイフを仕舞う。
来客が幼い少女であることを確認したからなおさらである。

「……銀髪の少女か、いや2人揃って普通の人間じゃないと来たか。
 おまけに妙な存在が一緒にいるし、いよいよアーネンエルベが魔窟じみてきたな」

が、唯でさえ目立つ銀髪の妙に整った顔をした肌黒の少女。
同じく黒髪の少女の正体を一発で看破し、意味人外の類であることを察した式が眉を顰める。
ついでに、愉悦製造機の人工天然精霊の存在も式は看破した。

そして式の呟きは少女たちに聞こえたらしい。
現に黒髪の少女はびくり、と肩を震わせる。
黒い肌をした銀髪の少女は意味ありげに式に視線を寄越し言う。

「あら、悪魔に人の皮を被った殺人貴、それに空の入れ物。何だかここは妙に賑やかね」
「へぇ、歳の割には言うじゃないか――――コピーの割には」

嫌な緊張感が漂う。
俺は喫茶店でのんびりするはずだったが、どうしてこうなった?
志貴は嘆くが、再度救いの主は外からやって来た。

「待ちなさいよークロエ!ってお兄ちゃん!?じゃなくて誰なのよ!」

さらに遅れて店に入ってきた銀髪の少女、イリヤがアヴェンジャーを指差して叫ぶ。
騒がしい奴が来たな、と面倒臭そうに見る式に本格的に接客をしなければいけい事にやれやれとアヴェンジャーは頭を振る。

そして、志貴。
遠野志貴はまたカオスが深まることを予感した。





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弓塚さつきの奮闘記外伝 「奮闘記的アーネンエルベの一日 午前9:03」

2014-04-01 20:49:14 | 弓塚さつきの奮闘記〜月姫編

「いらっしゃいませー」
「おや、士郎君じゃないか?」

遠野志貴にとってすっかりアルクェイドとの待ち合わせ場所になった、
喫茶店「アーネンエルベ」のカウンターから出迎えたのは衛宮士郎であった。

彼とはここで色々縁があって知り合ったが、その時は同じ客としてである。
お互いデートプランが重なり、仲良く修羅場を見ることになったのも忘れられない……。

「しかし、士郎君がここでバイトしているなんてね」
「ええ、まあ。家は大飯ぐらいがたくさんいますから」

苦笑まじりの回答に遠野志貴は思わず金髪碧眼の騎士王の顔を思い浮かばさせた。
あそこまで清々しい食いしん坊キャラは彼女以外ありえない。

「ところで、今日は態々早朝から着ましたけどデートですか?」

「ああ、まあな。
 今日はここで一日アルクェイドとダラダラ過ごそうと思ってね、
 とりあえずモーニング、飲み物は紅茶をお願いできるかな、士郎君」

「任せてください、遠坂に散々鍛えられましたから」

「お、言ったな。期待しているよ」

自信満々に衛宮士郎は答えると厨房へ走っていった。

「しかし、士郎君。相変わらずエプロンが似合うなぁ……」

長袖のシャツに単色のエプロンを羽織っただけであったが、
琥珀さんの割烹着と同じく違和感を感じさせない姿とオーラを放っていた。
もしかすると正義の味方よりもよっぽど天職な気がするのは俺だけだろうか?
そう遠野志貴は思いをはせ、ゆっくりモーニングがくるのを待った。



※ ※ ※



「とりあえずモーニング、
 それにその他の準備はできている。
 けどなあ、カレン。おまえは知らないと思うけど、
 こういうのは調理免許とか資格が必要だったりするんだぞ」

厨房ではモーニング用のパンが焼きあがり、サラダの野菜にはたっぷりドレッシングがかけられ、
その他事前準備が必要なカレーやデミグラスハンバーガーの準備も店にあったレシピ通り完成していた。

食欲をそそる香りが充満し、文句の付けようもない状態であったが。
彼、衛宮士郎は大きな、それも巨悪な問題に対面していた。

「あら、人殺しの分際でよく吼えるわね駄犬。
 それとも何かしら?私が警察に突き出すよりも自首してハラキリする覚悟ができたと?」

背後からパイプオルガンのBGMでも流れてきそうな知人の銀髪シスター、
カレン・オルテンシアが淡々と衛宮士郎を犯罪者として処分しようとしていた。

「なんでさ!!!というか自首してなぜに切腹しなきゃいけないのさ!?
 というか、言ったよな。厨房に入ったら巻き込まれただけで俺は無実だと!!」

だが、カレンの黄金の瞳はまるで屠殺場の豚でも見るかのような、
実に冷ややかで、口元は曲がり、汗をかきながら必死に弁解する衛宮士郎を嘲笑していた。
どうして俺はいつもこんなのばっかりなんだ、と内心で嘆きつつ手は調理器具の片づけをしている所を見ると。
やはりこの少年の末は正義の味方ではなくブラウニーに相応しいかもしれない。

「衛宮士郎、残念です。
 私が目撃したのは自称正義の味方が哀れな一般市民をその手で殺人を犯す現場だけです。
 ああ、哀れな店長さんどうしましょう。店員として、この落とし前…どうしてくれましょうか?」

「待て待て待て!?!?
 なんか割烹着を改造した女の子から攻撃を受けたから防衛して。
 たまたまはじいた流れ弾が当たっただけで俺は何もしてないぞ、カレン!!!!」

カレンがポケットから携帯電話を取り出したことで動揺が深まる。
身振り手振りであれこれ言い訳を述べようとしている姿は隙だらけ、
そしてこれの瞬間こそが腹黒シスターにとってそれは待ちにまった機会であった。

「いまです、マジカルアンバー」
「はぁい、呼ばれてきちゃいましたー」
「げぇ!!割烹着の悪魔!!!」

ジャーン、ジャーンと銅鑼の音声と共に、
突然あらわれた元凶に驚きを隠さない衛宮士郎。

「イェイ、時代は今まさに魔法少女。
 リリカル☆マジカル、奇跡も魔法(物理)もあるんだよ!
 さすがウロブチッチー、まさに外道の必ず殺すと書いて必殺!!母の日スティンガー!!!」

マジカルアンバーは誰もついてゆけないノリで、
何処からか取り出したスティンガーを(そもそも収納する場所はどこだか?)
哀れな標的に定め、一切の躊躇もなく発射した。

「な、なんでさ――――!!!!」

お約束の言葉の後に厨房に響く轟音と煙。
普通ならば外の人間に気付かれて当たり前な程の影響を及ぼすであろうが。
ここは何が起こっても不思議でないアーネンエルベ、ゆえに外の人間には気づかれないほど防音設備が行き届いている厨房などあって不思議でない。
さらに言えば衝撃で用意してあった料理の数々が汚れたり散乱することもない、というご都合主義もまかり通っており、

「いててて、おいおい。
 いくらこのオレを起こすためとはいえ、少しやりすなんじゃないか?
 つーか、なんだ。なんでこのオレが今更この正義厨から現れることが出来るんだ?」

煙が晴れた先から現れたのは衛宮士郎ではなく全身に刺青を入れた少年。
より正確に記すと、彼の殻をかぶった悪魔、アヴェンジャーであった。
そして悪魔は砕けた口調でわざわざ自分を起こした理由をカレンに問うた。

「やはり駄犬は駄犬ね。
 ここがあらゆるご都合主義が蔓延し、
 奇跡がバーゲンセールされる場所であることを理解していないようね。
 貴方を呼び起こすことなど、ここではコーラを飲んだらゲップが出るくらい確実よ。
 それに私たちのエンターテイメントのために、この程度の労力を惜しむわけにはいかないわ」

「そうですよねー。わたしも秋葉様をからかう事に手は抜けませんし」

「エンターテイメントのためだけにオレを起こしたのかよ!!相変わらずアンタは無茶苦茶だな!!?」

愉悦に満ちた笑顔で即答したシスターとマジカルアンバーの言に突っ込みを入れるアヴェンジャー。
せめてもっともっともらしい理由で呼んでほしかったと悪魔は内心で落ち込んだ。

「というわけで、貴方にはアーネンエルベの店員をしてもらいます」

「私からもお願いしますね、アヴェンジャーさん」

「おい、待て。待て待て待て。
 話の展開が見えないしそれならこの主夫に任せておけばいいだろうが」

そもそもそれなら衛宮士郎に任せておくべき、
とアヴェンジャーは2人に疑問を投げかけるが、

「言ったでしょ、エンターテイメントのためだと。
 ただの衛宮士郎が店員をしていても面白くないですし、
 貴方を皮切りに型月キャラは今日1日カオスと混乱、ご都合主義に色モノの安売りセールを始める予定ですから。
 そして彼らの弱みを握ることで私の冬木支配もまった一歩前進するでしょうし、私の趣味もまた…ふふふ、楽しみです」

「わたしも秋葉様の弱みや、
 皆さんをおちょくって楽しみたいですしね〜。
 あと、リアルタイム的に今日は4月1日。何でもありの日ですからはっちゃけちゃいますよ〜」

「…………うわぁ」

おっかしいなぁ。
ホロウではこれおど饒舌じゃなかったし、
もっと聖者のイメージが前面に打ち出されていたはずなのに。
などと、アヴェンジャーはすでに遥かかなとの思い出となってしまった、
在りし日のカレン・オルテンシアとのギャップに感傷に浸る。

「言っておきますが、拒否権はありませんよ」

守りたくなるような笑顔でカレンは命令を発する。
だが、その内容は脅迫の域に達する最低の言葉であったが。

「…それでもあえて一応聞くけど、もし拒絶したら?」
「その時は、フェイトゼロ以降増えた腐人方に貴方を主題とした薄くて高い本でホモォな本を…」
「貴方にしたがいます。マム!」

ペンと紙を手に不穏極まりない単語をスラスラとのたまうカレンに、
男としての尊厳を死守することを優先したアヴェンジャーは反抗を放棄した。
そう、誰にだって、色モノはあってもおかしくないが尊厳を捨てるレベルには彼といえども負けを認める他はないのだ。

「期待してますよ、アヴェンジャー」
「了解した、地獄に落ちろ」

計画通り、とばかりに満面の笑みを浮かべるカレン。
対して悪魔はこれから起こるであろう悲劇と喜劇に絶望に似た感情を抱いた。



※ ※ ※



「おっそいなぁ、士郎君」

15分ぐらいだろうか?
いくら待っても厨房から衛宮士郎は現れない。
遠野志貴は視線を厨房のドアから外し、ため息をつく。
そして、ふと気づく。

――――このパターン、見たことあるような?

「………たしかめるか?」

立ち上がり、厨房に足を向ける。
既にポケットのナイフは何時でも使えるようにしている。

場合によってはこの『眼』も使う必要があるかもしれない。
そう志貴は考え、さらに眼鏡も何時でも外せるように少しだけずらす。

ゆっくりと、慎重に。
そしてあらゆる事態に対応できるように覚悟を決めて厨房へ足を運んだが。

「マスター、今日は普通の珈琲。
 それとチーズケーキを……って、いない。それにそこのお前は――――」

ドアの鈴を鳴らして着物の女性が入店した。
志貴は何も知らない一般人が入店したと思い振り返り驚愕を覚えた。

肩あたりで切り揃えた黒い髪、中性的で眼や鼻などの顔のパーツが整いすぎた凛々しい顔立ち。
今時珍しい和服で完全に身を固めており、そこに革の赤いジャケットを羽織っていれば完璧であったが。

どうしたわけか、今日は羽織っていない。
志貴の記憶ではあの蒸し暑い夏、2度目のタタリでは彼女、両儀式はそのジャケットを羽織っていた。

同じ『眼』を持つ者同士自己嫌悪と同属嫌悪でお互い殺すつもりで戦ったが。
弓塚さつき、そして彼女の後を追ってきたらしい黒桐幹也と名乗る男性が必死にお互いの感情を冷ましたおかげで事なきを得た。
以来両儀式と出会っておらず、志貴にとってそれはもはや過去の記憶であったが、少なくても過去の記憶でも両儀式の腹部は膨らんでいなかった。

「え、えええっ!!こ、子供!?な、なんで!!?」

というか、まさか一度殺しあった女性が妊娠している姿に遠野志貴はただただ驚愕した。

「ん?ああ、これは……その。
 まぁ、そういうことだ…………」

志貴の驚きに両儀式は恥ずかしげに答えた。
誰とは口では言わないが、恐らく黒桐幹也であろうことは志貴も想像できた。

「えっと、その。おめでとうございます」
「お、おう。どうも」

志貴は曲りなりとも殺しあった人物と再開し内心混乱状態であった。
が、次に志貴の口から出た言葉はごく普通の祝いの言葉である。
正直な所、色々ありすぎて何を言えば分からなかったためである。

両儀式も自分と同属で嫌悪する相手と遭遇してどう反応すればいいか分からなかった。
前程殺す気もないこともあり、ゆえに、両儀式は志貴の祝辞をぎこちなく受け取った。

「あの……」
「……なんだ?」
「あ、な、何でもありません」
「そうか」
「………………」
「………………」

お互い会話の糸口が見つからずに微妙な空気が流れる。
そもそも、お互いは一度本気で殺しあった仲であり、これで会話をしろと言われて出来るほうがおかしい。
居心地の悪さを2人は覚え、どうしたものかと途方に暮れていた時にこの空気を破る乱入者が登場した。

「おいおい、あんまり騒がないでくれないか?
 早朝とはいえ、曲りなりとも商売をやっている身からすると堪らないからな」

「ああ、すまない士郎君……あれ?」

志貴が衛宮士郎に謝罪を述べるつもりで声の方角に顔を向けたが、一瞬戸惑う。
なぜなら声の人物は黒い肌、というよりも顔面全体に施された何らかの模様を描いた刺青姿という異様であった。
口調も違う、だがにも関わらず背丈や服装は直前まで会話をしていた衛宮士郎そのものであった。

が、同時に志貴は自分の体がまるでロアやネロと出会った時のような興奮を感じている事実に驚く。
しかも、気づいたら手はポケットにあるナイフを握っていた。

「……今度は悪魔か。あのアーパー吸血鬼といい、いつからアーネンエルベは魔窟になったんだ?」

両儀式が呆れと嫌悪を滲ませた言葉を呟く。
慌ててナイフから手を離した志貴は彼女の言葉に納得した。
目の前にいるのは自身に流れる血が拒む魔そのものであったからだ。

「おうおう、ここはそんな常識が通用する所じゃないからな」

両儀式の嫌そうな言葉に悪魔を嬉々と反応を示す。
そして衛宮士郎の身を借りて現界した悪魔はニヤリと、オリジナルなら絶対浮かべない笑みを浮かべた。




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第21話「可能性未来」(完結)

2014-02-02 12:44:05 | 弓塚さつきの奮闘記〜月姫編

また寒い季節がやってきた。
ここ十年の間に老朽化が進んだため放棄された廃ビル群の間に流れる風はとても冷たい。
この周囲にはせいぜい4、5階建て程度の細かなビルと朽ち果てたバラック仕込みの廃工場しかなく、
かろうじて近場にあるコンビニが文明の光と利便性を提供しているだけである。

近々再開発が進むらしいがここを根城にする自分にとってはいささか困る。
何せもはや人の身を逸脱し、あまつさえ外見が不老となればそんなに長く人の目がある場所ではいられない。
少し前まで友人の好意と外見にまだ誤魔化しが効いたため、人の世に紛れていたが吸血鬼化して十何年と過ぎると流石に怪しくなった。

周囲の人間が老いたり成長する中で、自分の女子高校生の外見と変わらぬ姿は目立つ。
何せあのシエル先輩も三十代に突入しそうで、必死に若作りをしているくらいなのだから。

前世ならそんな光景など想像したことがない。
なぜなら彼女らの物語はボクら観客側からすれば未完で終わってしまったようなものだから。
もっとも、こうしてリアルで彼女らと出会い共に人生を過ごすなど前世では妄想の類でしかなかった。

「約10年の月日か、」

多くの人と出会った、楽しいこともあれば悲しいこともあった。
想定外の事、予想通りの事、本当に色々あった。

多くの人は月日が過ぎるごとに、
あの10代の面白可笑しな騒がしい騒ぎは収まり、彼女彼らは思い思いの道へ進んだ。
某喫茶店ででの出会いや、マジカルなステッキが引き起こした平行世界絡みの騒動など、
歳を取るにつれて少なくなって来ている――――まるで夏休みや、幼年時代に終わりを迎えつつあるように。

そんな中、ボクは変化しただろうか?
外見的な意味だけでなく周囲が『大人』になるのに対して自分だけが取り残されているような――――。

「――――っ…へっくし!」

鼻がつまりくしゃみをする。
ずるずると音を立てて鼻水が出る。
まったく、頑丈であるのはいいが吸血鬼化したこの身でも寒いものは寒い。

手早く上着からティッシュを取り出して鼻をかむ。
ティッシュから漏れ出す息は白く、手は寒さで赤く冷たい。

今すぐ今の我が家に帰りたいが、一応こんな辺鄙な場所でも人気はある上に、
ここ数年で急激に進んだ監視カメラの眼とその後の権力とコネを使った神秘の秘匿の労力を考えると吸血鬼パワーで一気に飛ぶわけにはいかない。
おまけに今時の裏世界の住民は携帯電子機器による、動画撮影にも警戒しなればいければならず、その点についてかの時計塔でも注意喚起しているくらいだ。

ゆえに、ただ黙って地道に歩くしかない。
黙々と雪こそ降ってはいないが冷えた空気が流れる、冷たく硬いアスファルトの道を踏みしめ歩く。

ふと、空を見上げる。
太陽は既に地平線へ沈んだため、空は濃紺からさらに黒に変わりつつある。
この寒い季節といい、あの日ボクの運命が変わった日とよく似ていた。

だからボクはふと、ロアと最後の会話を思い出した。



※  ※  ※



「ん……?」

目が覚める。
頭は未だぼんやりと動かないが、
視界情報から察するに知らない天井ではなく、どうやら夜空らしい。
しかし、鼻を刺激する花の香りが、ここが公園でないことを証明している。

上体を起き上がらせ、改めて周囲を見渡すと一面に白い花が咲いていた。
なだらかな丘に延々と月日に照らされた白い花が咲き誇り、夜風に揺られその香りと美しい姿を魅せていた。

ここは、どこか?
そんな疑問が一瞬浮かんだが、
夜空を照らすありえないほど大きな月と【原作】からすぐに答えが出た。

「そうだ、ここはかつて純粋であった私が姫に見惚れた場所。
 そして今この光景は、私の記憶を元に再現されたものに過ぎない」

振り返るとロアが立っていた。
だが、その姿は先ほどまでのと随分違う。
まるでカトリックの神父のごとく隙のない服装を着こなしている。
いや、首に掛けてある帯からキリスト教の司教や司祭が礼拝に使用するストラであるから本物の神父なのだろう。

そして、彼は眼鏡をかけ瞳には狂気はなく高い理性と知性を宿しており、
ボクは目の前の人物が「アカシャの蛇」の蛇と呼ばれる前のミハイル・ロア・バルダムヨォンであることを悟った。

「こうして、正面から話すのは初めてだな弓塚さつき。
 始めまして私の名はミハイル・ロア・バルダムヨォン、かつて永遠を求めた愚か者。
 適うことなら吸血鬼になる前に君に会いたかったと今はつくづく思うよ。」

「そりゃ、どうも……」

なんだかえらく丁寧な口調と態度のせいかこっちの調子が狂う。
しかし、こうしてお互いが出会ったということはここは、

「心象世界」

「そうだ、ここは心の世界。
 恐らく元々無理やり君の魂を乗っ取ろうとした影響だろう。だから、私たちはこうして話せる」

「だから、失敗して志貴に殺された」

「ああ、だから君たちに妨害され私は死んだ」

……あれ【君たちに妨害され】?
たしかに何が何だが詳しくは覚えていないが、
イメージ的には、我武者羅にこの男と肉体の主導権をめぐって争い、
何とか主導権を握るとすべてを志貴に託した所まで覚えているが、何か重要なことを忘れている気がする。

「……そうか、覚えていないのだな。
 いや、君がいう所の【原作】知識と同じく認識でないのか」

何か釈然としない。
だが、それよりもどうして【原作】知識という単語がこの男から出ている―――!?

「ああ、それは簡単だ。
 私が乗っ取る際、寄生された人間の記憶は一通り引き継がれる。
 君が言うロアは言うなれば私は四季でありロアでもあったのだ、だから弓塚さつきの記憶は一通り見せてもらった。
 ……まったく、永遠を求めてここまで来たが君のような例は正直驚いたよ、姫の言うとおり案外世界は広いもののようだ」

なんてことだ。
よりにもよってこの男に知られるとは。

「そんなに構えなくていい、
 どの道私はあの殺人貴に殺された消える身。
 ゆえに、今更君を殺したり我が物にしたりする気はない。
 それよりも 老婆心ながら今後の君について言いたいことがある」

思わず襲おうとしたボクを手で制止するようにサインすると、ロアは紳士的に話を進めた。

「改めて言おう、君の吸血鬼としての才能は特異だ。
 私に血を吸われ、グールやリビングデットを通り越していきなり吸血鬼へと変化。
 ある意味君の才能が開花したと言える、もはやこの現象は進化と表現してもいいものだ」

「まったく、嬉しくないね。
 シエル先輩には殺されかけるし」

「ああ、そうだな。
 才能の開花は必ずしも人を幸福にしない。
 見方を変えればむしろそれ以外の生き方を束縛しかねない」

ボクの愚痴に同意するロア。
先ほどまで殺しあったはずの相手だが、
可笑しなことにボクらは随分と親しく話せている。

「そして、例えいずれ出会うアトラス院のエルトナムの娘が、
 どれほど労力を割いてもせいぜい太陽の下を歩ける程度で、君は吸血鬼のままその人生を過ごすだろう」

………ああ、やっぱり。
薄々とだけど覚悟はしていた。
やはりシオンの知識を以ってしても人間に戻るのは無理か。

「君は良くも悪くも吸血鬼として才能がありすぎる。
 姫や殺人貴の元にいる限り今後更なる苦難に見舞われることは間違いない
 ただでさえ、姫は裏の世界では目立つ存在だ。そこにあのバロールの眼を持つ人間、
 空想具現化が使える君が加われば、魔は魔を引き付けるように裏世界の闘争に巻き込まれるのは確実だ」

そっか、ロアから見てもそうなのか。
アルクェイドさんや志貴の傍にいると巻き込まれることは確かなんだ。
元よりあの2人は平穏とは程遠い存在、むしろ原因の渦中になるか飛び込んでしまう性格だ。

だから、彼らの傍にいれば必然的に修羅の道へ自動的に歩んでしまう。
少し前まではそんな修羅の道を避けることばかり考えていたけど、今は違う。

吸血鬼になってしまった以上、
どんなに平穏な日常を過ごすことを努力しても、
遅かれ早かれ巻き込まれ、ビクビクと過ごす日々が来るだろう。

ならば答えは一つ。

「別に構わない、むしろあの2人と一緒に過ごす方がボクにとって重要だから」
「……そうか、君は逃げるという選択はしないのだな」

当たり前だ。
どうせビクビク過ごすならあの2人と一緒にいたほうがいい。

「ならば、これは餞別だ。受け取れ」

刹那、頭に膨大な知識が流れ込んできた。
錬金術、数紋秘、魔術、幾何学、神秘に関するあらゆる知識が続々と頭に刷り込まれる。
軽く頭痛がするが、これは……。

「シエル先輩と同じ」
「然り、あの娘も蘇った後は不死耐性だけでなく私の知識を継承した」

【原作】の設定を思い出す。
シエル先輩の経歴はかつてロアに乗っ取られ殺戮を演じるが、まだ殺人機械であったアルクェイドにより滅ぼされる。
だがシエル先輩の霊的ポテンシャルは世界が生かそうとする程に優れていたので後に蘇生を果たしてしまった。

同時に世界にとって矛盾した存在つまりシエル先輩に憑依したロアこそ死んだが、
ロアは次の宿主に転生し、シエル先輩はシエルでありながらロアでもある存在となった為、死ねない肉体になったのである。

天才魔術師だったロアの知識が丸ごとあるので魔術協会の最上位の魔術師、王冠(グランド)に匹敵する魔術知識を持つ。
しかし、ロアだった頃を思い出してしまうために魔術を使用は控えているが、任務遂行のためなら使う事も躊躇しない。

そんな設定であった、
そして今度はボクはその知識を継承することになる。

「今後世界が君の言うところの【鋼の大地】か、
 あるいは【Fate/Extra】に進むにしろこの知識は君のためになるだろう」

「……サービスと話が良すぎて逆に怖いな」

ボクが知るロアとはネタキャラで、
もっと粗暴な印象が強いせいで先ほどから主導権を握れず調子が狂いっぱなしだ。

「どの道私は消え、あの娘は魔術を使いたがらない。
 ならばまだ私の魔術を継承し継続して研究してくれる可能性がある君に、
 私の一生を求めて追求した神秘の奥義、その全てを君に継承させるだけだ」

「随分と期待してくれているようで、どうも」

少しばかりロアに対する見方が変わった。
やはり過去のロアはボクが知るロアとは随分と違うものらしい。
思うにロアは下手に知識があった上に、永遠という名に固守しすぎた。

転生を繰り返してゆけば、
遠野四季に寄生したロアのように転生先の人格に大いに影響される。
ロアという人格は変容し、寄生先の人格との境界が曖昧になる。
それではロアという人格は消耗し、何れなくなってしまう。

もしかするとロアは理性では承知していたが、
アルクェイドに見惚れて以来、それすら承知で転生を繰り返したのだろう。

「――――あ」

ふと、ロアが口を開け惚けた声を漏らす。
眼を見開き、硬直しているロアに不審に思ったボクは彼の視線の先を振り返った。

視線の先にはアルクェイドさんがいた。
しかし、ボクが知るアーパー吸血鬼な彼女ではなく、
真祖の姫にして真祖の最悪の処刑人であるアルクェイド・ブリュンスタッドであった。

表情こそ無表情であったが、
天上から照らす月の光で混じりけのない金髪が黄金色にぼんやりと輝く。
人の形をしていながらその造形が出来過ぎているせいで却って、この世ならざる者の空気を出している。
その彼女が粛々と歩き、長いドレスが風に揺られる姿にボクはその美しさに一瞬息が止まった。

「ああ、そうか」

ロアがポツリと呟く。
そして、驚いたことにあのロアの瞳に涙が溜まっていた。

「本当は根源探究のためではない、
 私はこうしてただ姫を見ていていたかっただけなのだ。
 にも関わらず――――私は何のために永遠を目指したかもを忘れてしまった」

今のロアは死徒27祖でも三咲町を騒がせた吸血鬼でもなく、
涙を零し、ただただ自らの過ちと後悔を嘆くミハイル・ロア・バルダムヨォンであった。
永遠の時を過ごし、目的と手段を見失った事に死んだ今ようやく知った哀れな男がそこにいた。

「………………」

そして、ボクはロアを笑うことも哀れむこともできなかった。
吸血鬼になった今、永遠の時を過ごした末の末路が目の前にいる以上他人事ではないからだ。

いつか、この世界の両親、志貴やシエル先輩の事を忘れてしまった時。
果たしてボクはどうなっているのだろうか、ボクの未来の可能性について考えさせる。

そう、いつかボクも皆との出会いを忘れ、
ただ殺戮を楽しむ吸血鬼に堕ちる日が来るのかもしれない。
そんな嫌な未来の可能性に逃避するため、何気なく天上を見上げボクは気づく。

「空が……っ!」

故障し砂嵐状態のテレビ画面のようにボロボロと空が欠けてゆく。
空だけではない、地面の花や草、見える全ての空間が消滅しつつあった。

「時間が来たようだ」

ロアに振り返れば体全体が半透明で向こうの風景が見えるほど、
存在がすっかり薄くなってしまい、とうとう別れの時間が来た事実を悟った。

「お別れだ、弓塚さつき。
 私が言っても君は喜ばないだろうが、君と姫の人生に幸福あれ」

「ロア……!」

その時は何て言えばいいのか思いつかなかった。
ただロアの名を口にして手を伸ばしたがそこで意識が消え、
ボクは志貴やアルクェイドさん、シエル先輩が待っている現実世界へ帰還した。



※  ※  ※



そんな風に回想しつつ黙々と歩き続け我が家にたどり着いた。
古びたマンションの階段を上がり、ドアに手をかけるが誰もいない部屋から人の気配を感じた。
だが気配から毎度屋敷から抜け出す不法侵入者であることはわかっていたのでそのままドアを開ける。

「遅い、待ちくたびれた」

待っている間に読んでいた漫画から眼を離し、少女が顔を上げる。
そのさい、少女の金糸のような、長く美しい髪が少しの間だけ宙を舞う。

見た目は10〜13といった所だろうか。
女という言葉はまだ似合わずやっと少女になった幼い肉体と顔をしている。
しかし、黄金の瞳には見た目には似合わない高い知性と理性を宿しており、それが当たり前であると思わせた。

今時見かけない古典的な白いブラウス、
首元を黒いリボンでピッチリと締め、露出度が低い黒のロングスカート。
靴はブーツとそんな隙のない姿と少女の完璧な造形と合わさってまるで西洋人形のような出で立ちである。

そのせいか古ぼけた事務所を改装した部屋と全然合っておらず少女は異彩を放っていた。
おまけに、不法侵入した挙句真っ先に言い放った言葉が待っていたと言わんばかりの物であった。

「そりゃどうも。で、それより見たところまた無断で屋敷から抜け出したのか?
 あれほど勝手に屋敷から抜け出し、翡翠さんを困らせるなとボクは言ったはずだけど、お嬢様?」

「む、確かに用事から無断で抜けたのは事実だが、
 別に重要なものではないし、何よりも暗示で誤魔化しているから問題ない」

「なおさら悪いわ!!」

口調と気品こそ教育の賜物か素晴らしいお嬢様で在らされるが、
このアーパーと自由人気質は間違いなく両親の、それも両方から受け継いでいる。

「しかたがないだろ、
 屋敷では琥珀の部屋に行かなければテレビもゲームもない。
 漫画もさつきの所に行かなければ読めないし、何よりも小遣いが少ない…………」

先程までの尊大な態度とは打って変わって、
遠くを見るように眼を細め呟き、落ち込む姿に妙に哀愁を誘う。

小遣いは日500円(昼食代扱い)
アルバイトは当然禁止で門限は夕方まで、
夜10時を過ぎれば屋敷内を動き回るのすら禁止。
おまけに居間にテレビはなく在るのは新聞だけでテレビやゲームなどの娯楽品も禁止。
遇に待遇改善デモを琥珀さんと一緒に行っているようだが、勝ったためしがないとか何とか。

――――嗚呼、親子二代で鬼妹に絞られるとは。

「あーオホン、話を戻そうアルク。
 ボクの所に来たのはただ漫画やゲームをしに来ただけではないんじゃないか?」

この娘がここに来たということは、
ボクにとって親戚の子供が遊びに来ただけでなく仕事の依頼が来たという事である。
吸血鬼になって以来、遠野の屋敷に世話になり、メルブラなど神秘絡みの事件を解決してゆく内に、
今では怪異や神秘絡みの事案を遠野家が依頼する形で調査、解決する三咲町を守る正義の味方といった所だ。

某喫茶店やカレイドステッキには梃子摺ったが、大抵は自分が強力な吸血鬼なため穏便に済んでいる。
ただ昔、秋葉さんに頼まれたとはいえ、若さと勢いで志貴を追って欧州までブイブイ言ったせいでたまに厄介な事案もあるけど……。

「ああ、これだ」

彼女がファイルを差し出し、すぐに受け取り概要に眼を通す。
簡単な仕事を期待していたがどうやら今日はそうでないらしく実に面倒なものと来た。
だから読み終えた後、ボクは思わず口にした。

「魔術師か、」


やっかいだな。
しかも知り合いであるしこの人は――――。



※  ※  ※



ボクは支度を済ませると直ぐに行動に移った。
間もなく日付が変わろうとしている時間にも関わらず人は多い。
世間は世界規模の不況に悩まされているが、繁華街を歩く人々に笑顔が絶えない。

「あれだ!次はあれを!」
「……買い食いに来たわけじゃなないんだぞ」

で、この金髪お嬢様はあっちこっちで買い食いし、口に突っ込んだ食べ物で頬を膨らませていた。
一度彼女を屋敷に戻そうと思ったが本人が駄々を捏ねて結局ついて来たがご覧の有様だ。
おまけに彼女の見た目的に金髪美少女なせいかかなり目出っており、周囲からの好奇と関心の視線が痛い。

なお、代金はボク持ちである。
既に夏目漱石さんが数枚財布から消えている。
別にそのくらい奢れるだけの収入は得ているからかまわない。
ただ、彼女がはしゃぐ姿を見ていると、どうしても今は眠っている彼女を思い出す。

「―――――」

彼女だけでない、
多くの人間と出会い過ごした短くも濃厚な青春の日々。
そして、二度と戻ってこないあの日々が思い起こされる。

「はぁ……」

いけない、どうも歳を取ると過去の事ばかり考えてしまう。
肉体こそボクは成長し老化しないが、精神は確実に老化してゆく。
そして永い年月の果てに精神が老化して磨耗した果てには――――やめよう、考えるのは。

ただ今の仕事に集中しよう。

「本業に戻るぞ。こっちだ、アルク」

今度はシュークリームをほお張っていた彼女を引っ張り、路地裏へ入る。
繁華街の喧騒と眩しいばかりの光はなく、そこは本当に静かであった。
天にそびえるビルの両側の僅かな隙間とたまに出現する広い空間を次々と超えてゆく。

上を見上げても星空は見えず、碌な明かりもなく、地面と流れる冷たい風は体の芯まで届く。
進めど進めどビルしか見えずさながらドイツの黒い森、シュヴァルツヴァルトのようだ。

しばらく入り組んだ路地を歩き、やがてその先に目的の人物がいた。
向こうからすると自分たちは後ろからやって来た上に寒い時期であるため上着を羽織っているため、
男女の区別は光の角度によって赤髪にも見えなくもない長い髪だけでしか判断できない。
そして、妙に頑丈そうな皮のケースを脇に置いている。

「こんばんわ、いい夜ね。
 でもわたしの後ろにいるとビームと一緒に蹴り飛ばすわよ」

「ゴルゴですか貴女は、
 いや強ち間違ってはいないけど。
 はい、こちらこそこんばんわ、お久しぶりです――――蒼崎青子さん」

そう、今回の対象は魔術師であることに違いないが正確には魔法使い。
志貴にとって生きるための人生の切欠を作った恩人そして世界で数人しかいない魔法使いの1人、

蒼崎青子が今回の対象であった。

「で、管理者である遠野家に未通達で貴女はどうしてここに来たのか教えて貰えますか?」

冬木が遠坂家の管理下にあるならば三咲町は遠野家の管理下にある。
通常裏の住民が三咲町に訪問、あるいは活動するさいには遠野家に許可を得なければいけない。
そしてボクは無許可で入り込むモグリの連中を〆て追い出すことが主たる仕事となっている。

「あ、いやー忘れてた……てへペろ」

あ、今少し殺意が沸いた。

「冗談よ冗談。
 にしても貴女随分と仕事熱心なのね、
 わざわざ直接顔を見せるなんて、でも安心しなさい、
 わたしはただ高校のころの知り合いに会うだけだから」

高校のころの知り合いねぇ……久遠寺さんと静希さんのことだろう。
久遠寺さんなんて出会った瞬間、志貴やアルクェイドさんを巻き込んで殺し愛に突入したし、
静希さんは静希さんで無駄のない動きでボクの心臓を潰し、生死を彷徨う羽目になったのは……色々思い出したくない記憶だ。

今でも久遠寺さんは「実験材料となって」と迫るし、
静希さんは戦闘訓練でこっちが吸血鬼なせいか、人畜無害な顔をしてるのにまったく手加減ないし……。

「こら、そこ!なに遠くを見ているのよ。
 それよりわたしは久々にあの2人に会うのだけど、あの2人に何か変わった所があった?」

「ええ、まあ相変わらずというべきか、
 久遠寺さんは琥珀さんとタッグを組んで怪しげな薬を作るし、
 静希さんはあっちへフラフラこっちへフラフラしていますよ、ただ――――」

ボクと違ってあの2人もまた歳をとった。
今でこそまだ若いがその次の10年後はどうなっているか考えたくない。
彼らもまたいつかは寿命に勝てずに亡くなる定めなのだろう。

「……まあ、人間だから仕方ないわよね
 それが自然の摂理、わたし達のような人間こそ異常なのだから」

眼を細めどこか達観するように魔法使いは呟いた。
その態度にボクはふと気づく、彼女の姿が始めて会った時からさほど変わっていない事実に。

「青子さん、もしかして貴女も――――」

「知りたい?フフン?
 でも教えない、乙女は秘密があるのよ」

ボクの疑問に対しこれ以上ないドヤ顔で、
この魔法使いは自らを乙女と言い切ったシリアスが台無しな上に――――乙女はないわー。

そう思った瞬間、顔の真横にビームが走った。


衝撃で髪の毛が何本か飛び、頬に一条の傷跡が薄っすらできてしまう。
その後、後ろに響いた破壊音でやっと何が起こったのか理解した。

「今、何て思ったかしら?」

にっこり、と向日葵のような笑顔を浮かべる魔法使い。
あ、アハハハー、いやー冗談ですよ、さっきのは冗談ですよ。
今日も蒼崎青子様は若くて凛々しく実に美しい、いや本当ですよー。

「今回は許してあげる、けど次はないけどね。
 ――――まあ、次といっても次は何年後になるかはわからないけど」

そうだ、この風来坊な魔法使いと出会えたのは奇跡のようなものだ。
前回出会ったのは欧州での騒動前後、それも10年以上前の過去である。
次に魔法使いと出会ったそのとき、彼女を知る人間は果たして生きているのだろうか?

「じゃあ、わたしはこれで。
 と、言いたいところだけでそこのお嬢さんの名前をまだ聞いていないわ」

アルクの事を聞かれ、ボクは首を横に向ける。
彼女は一歩前に出て魔法使いと向き合うと綺麗にお辞儀をして言った。

「はじめまして、私は姫月アルク、
 父がよく貴女の事を話していました――――先生」

先生、その単語にどこか懐かしそうに顔を緩め、
驚き、同時に全てを悟った表情で魔法使いは彼女を見つめた。

「そっか、やっぱりそうなんだ。奇跡って以外とあるものなのね」

何時も見せるおちゃらけた笑顔ではなく、
慈悲深く、その奇跡を心底祝う笑顔を魔法使いは浮かべる。

「じゃあね、次はいつになるか分からないけど貴女の人生に幸あらんことを」
「こちらこそ、貴女とまた会える日々をお待ちしています」

お互い軽く別れの会釈をすると、
図ったかのように体の向きを変えてそれぞれの道を歩んだ。

実にあっけない別れだ。
けど、それもまた悪くない。
別れもあれば出会いもあるし再会もある。
まだまだ、ボク達が演じる物語は終わっていないのだから。

「さて、次はたい焼きを頼む」
「金髪だからって、食いしん坊キャラでも目指しているのか?」

彼女と再び手を繋ぎ繁華街へと向かう。
お互い吸血鬼の類だが伝わる確かな体温の温かみ。

ボクはこの世界で転生者という異邦人であった。
そのせいで定められた未来を変え、この世界に影響を与え続けた。
けど、今はこの世界に住む一住民として暮らし【原作】にない未知の未来を歩んでいる。

【月姫】から10年以上過ぎた。
ボクはどこから来たのだろうか?どこに向かうだろうか?
その答えは出ないが、確かに言える事実は未来の可能性は無限だ。

行き着く先は見えないけど、
未来はきっと可能性に満ちている。



おわり










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