┏┏┏┏ ┏┏┏┏ ┏┏ C O N T E N T S┏┏┏┏ ┏┏┏┏ ┏┏
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┏┏ ◇ 就業規則に競業禁止規定があるか
┏┏ ◇ 競業を禁止できる合理的な範囲
┏┏ ◇ 競業禁止義務の有効要件
┏┏ ◇ 違反した場合の罰則の相当性
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就業規則に競業禁止規定があるか
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憲法に定める職業選択の自由の趣旨からいっても、労働者が退職後にどのような企業に就職するのは自由であり、たとえそれが同業他社であっても同じです。むしろ労働者からすればそれまで培った経験、知識を活用できる企業に就職を希望することは自然なことです。
しかし企業からみれば、退職した労働者が在職中に得た技術、知識、ノウハウ、顧客情報を利用して競業関係にある他社で活動することで著しい不利益をこうむる場合も否定できません。
不正競争防止法は営業秘密に係る不正競争の防止を定めていますが、労働者の競業を一般的・直接的に規制する法律ではありません。そこで企業は実務上、採用時または退職時に就業規則や特約をもって、労働者の退職後の競業禁止を定め、違反した場合退職金の不支給や減額、さらには損害賠償や競業行為の差止請求などの措置をとることが多いのです。
就業規則と特約、それぞれの規制範囲はどの程度でしょう。
「競業避止・守秘義務」規程が就業規則に記載されていなければ、個別の契約でしかなく、効
力は就業規則レベルにひきあげられる為に無効になるでしょう。
また同様に、就業規則に書いてある内容が労基法以下の場合は、この規則は無効になり、法定の基準に引き上げられます。
労使の契約は一般法である民法で言う「契約自由の原則」から除外され、特別法の労基法による為、労働者に不利なものは無効になります。
つまりこの場合は、憲法で保障する「職業選択の自由」が優先されることになると考えてよい
でしょう。
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競業を禁止できる合理的な範囲
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判例では、
・在職時に経営の秘密を知る幹部職、技術者であれば、新製品や最先端技術の開発に携わっていたか否か。
・関わった企業秘密の内容、程度
・禁止の目的。営業秘密など企業として正当に保護されるべき利益のためか。
などと照らし合わせて考えて、
(1)競業を制限する期間の長短
(2)制限する地域の範囲
(3)制限の対象となる職種
(4)代償措置(考えられるのは退職金の割り増し)
などについてどの程度のレベルなのか、により判断されています。
また、判例で就業規則にある競業規定を根拠として競業禁止義務を認めているものが多い一方で、学説では、労働契約終了後は就業規則の適用は及ばないので明示的な合意を必要とする、ものが多いようです。
傾向としては、就業規則に定められた競業禁止義務規定を限定的に解する傾向にあります。
例えば、競業禁止義務規定を設定するにあたり、労働者の受ける不利益に対する代償措置の不存在を理由に、同規定を無効と判断しているもの、とか。
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競業禁止義務の有効要件
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1.まず、使用者に、労働者の競業を禁止する正当な利益が存在しなければなりません。
2.規制対象となる競業の範囲が限定されていること。
ですから、同業他社でも習得できる一般的な知識・技能でしたら、競業から除外されることに
なります。
3.規制対象となる労働者の範囲も限定されている必要があります。
経営の秘密を知る幹部職、営業全般を掌握する地位にあり、企業利益の防衛に高度の責任を負っていた者、中枢にあって技術的な企業秘密に接する労働者、などです。
これに対して、単純労働に従事する労働者に同業他社への就職を規制することはできません。
4.制限期間も最小限にとどめるべきです。しかし明確な基準はありません。
5.競業行為の態様
例えば、退職する際に、元の会社の従業員を大量に引き抜いて連れて行ったり、在庫品を無断で持ち去ったり。
というような場合、常識から考えてもそうですが、規制の正当性は認められ易いです。
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違反した場合の罰則の相当性
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・懲戒解雇
「退職前の年次有給取得中の競合準備をしたことで懲戒解雇が可能か」
については、退職後の競合規制が懲戒事由とは別個に規定されている場合には、差止請求や損害賠償請求が可能となるだけであって、「懲戒処分としては予定されていない」というのが自然な解釈でしょう。
また、仮に就業規則上の懲戒事由に該当すると解釈される場合であっても、処分として重すぎて社会通念上の相当性が認められない懲戒処分は懲戒権の濫用として無効となることに注意が必要です。
・退職金不支給
近年の判例では、それまでの勤続の「功労を抹消するほどの信義則違反が認められなければ許されない」という傾向にあるようです。