凛太郎の徒然草

別に思い出だけに生きているわけじゃないですが

ウイスキーの定義 Ⅱ

2005年05月25日 | 酒についての話
 ウイスキーの定義について、大まかに世界中で納得されるであろう定義について書いてみた
 では、日本の酒税法における定義とはどうなっているのか?
 ちょっと抜粋する。

(ウイスキー類の定義)
イ 発芽させた穀類及び水を原料として糖化させて、発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの (当該アルコール含有物の蒸留の際の留出時のアルコール分が95度未満のものに限る。)
ロ 発芽させた穀類及び水によつて穀類を糖化させて、発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの(当該アルコール含有物の蒸留の際の留出時のアルコール分が95度未満のものに限る。)
ハ イ又はロに掲げる酒類にアルコール、スピリッツ、香味料、色素又は水を加えたもの。ただし、イ又はロに掲げる酒類のアルコール分の総量がアルコール、スピリッツ又は香味料を加えた後の酒類のアルコール分の総量の100分の10未満のものを除く。


 法律用語は難しいので僕なりに解釈すると、イはモルトウイスキー、ロはグレーンウイスキーについて書いてあるのだと思う。発芽させた穀類、とは大麦麦芽のことで、これを100%使ったのがモルト。ロは、穀類を大麦麦芽によって糖化発酵させる(麦芽に含まれる酵素の働きで発酵)もので、グレーンウイスキーを指していると類推される。ややこしいな。
 問題は「ハ」である。
 これはつまりどういう事かというと、「イ」「ロ」つまりモルト或いはグレーンに混ぜ物をしてもウイスキーと認めますよ、そしてその混ぜ物は全体の90%以下であればウイスキーと見なしますよ、ということである。

 なんですと! ! !

 つまり、全体の一割以上ウイスキーが入っていれば、それはもうウイスキーなのだ。これは驚くべきことではないか。10倍に水増ししてもいい、ということなのだから。
 僕は普通の人の感覚でモノを言おうと思うのだが、10のうち9がウイスキーではなく工業用アルコールや甲種焼酎、水、着色料、香料であったとしたら、それはもはやウイスキーではないだろう。
 百歩譲って、日本の技術の進歩でそのようなウイスキーまがいのシロモノであっても、限りなくウイスキーの味わいに近づいた、素晴らしく旨いものが出来たとする。しかしそれでもそれはウイスキーではないだろう。以前僕は「日本酒テイスト飲料」という言葉を用いたことがあるが、それに倣えば「ウイスキーテイスト飲料」であるだろう。

 日本の国家と国税局というものは本当に情けない存在である。日本酒について言及したときにもそう思ったが、つまり税金が取れるとなったら平気でウソをつくのだ。世界基準で考えれば、9割が混ぜ物のウイスキーなぞウイスキーだとは誰も呼んでくれない。それをウイスキーと呼ぶのは世界中で日本の国税局、そしてそれに追従するメーカー、そして騙されている日本の酒呑みだけである。

 しかし僕は、こうしたまがい物ウイスキーを撲滅せよ、と主張するものではない。
 日本酒について言及したときにも書いたことと同様のことを僕は言いたいと思う。
 混ぜ物絶対反対、というのではない。しかし、混ぜたなら混ぜた、とはっきり書きなさい、ということである。そして、混ぜたものは世界基準に照らして既にウイスキーではなく、それは混成酒(リキュール類)に相当するから、はっきりとリキュールです、と書きなさい。そして混ぜてもウイスキーの味がする、と言ってメーカーは自慢しなさい。僕は「ウイスキーテイスト飲料」もしくは「ウイスキー風飲料」と明示するのが一番正しいやり方であると思う。
 そしてメーカーは、もはやウイスキーではないのだから税率を下げてもっと廉価で販売できるように国及び国税局に働きかけなさい。ビール業界を見ろ。安くするために発泡酒を発明し、「これはビールではない」と大見得を切って税金を抑えて廉価で提供した。それにも税金をかけると国が言うと、今度は「第三のビール」だ。あの態度は消費者の味方である。なのにウイスキーメーカーは(日本酒メーカーもそうだが)国とつるんで、ウイスキーじゃないものをウイスキーだと言い、ウイスキー分の税金を我々から取り立てようとする。

 世界基準のウイスキーの定義である原料・蒸留・熟成について、きちんと明示出来るようにならないものか。混ぜ物ウイスキーが本物と言われる日本では難しいのかもしれないが、モルト○%、グレーン○%、そのグレーンの材料は何かを明示、混ぜ物は何が○%、そして熟成は何年、とはっきり書いてくれればわかりやすい。それでも美味くて安ければ買う。現に僕も、こういう知識がありながらペットボトル入りのウイスキー(飲料)だって購入しているのだ。ああ美味い、とまでは思ってはいないが、普段呑むのであればいっこうに差し支えない味の水準はあると思うのだ。だからこそ業界はもっと奮起して欲しい。国に追従しているだけでは消費者にいずれ見放されてしまう。


 関連した過去記事:日本酒についての話
 吟醸酒の味わい  
 日本酒あれこれ  
 普通酒そして三増酒について  
 特定名称酒について 

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
めっぽう弱くて・・・ (Mami)
2005-05-26 17:51:34
凛太郎さん、こんにちは。



私の父は、銘柄は忘れましたが、角ビンなるものを買ってよく飲んでおりました。

そんな酒豪の父に対し、私はかなりお酒には弱い。



でも、バーの雰囲気は好きですね。

弱めのカクテルを1杯程度飲み、大人の女を気取るのですが、最後は赤い顔でヘラヘラしている情けないやつです。(笑)
返信する
僕も強いというわけではありませんが ^^; (凛太郎)
2005-05-26 23:16:19
こんにちは♪



角ビン、とはおそらくサントリーの角のことでしょうね。僕は、「角」というのは日本のウイスキーの王道だと今だに思っているんですよ。最近はサントリーも「北杜」とかピュアモルトを全面に押し出して、それはいいことではあるんですけれども、やはり一つの銘柄の歴史が醸し出す空気もウイスキーで酔うためには必要かと。「角」にはいろんな人たちの様々な時間が沁み込んでいると思います。味だけではないものがあると思います。



バーには僕もとんとご無沙汰しています。雰囲気をたまに味わいたくなりますよね。でも、Mamiさんは気取らなくても充分大人の女性だと思いますけどね。(^-^)

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なぜこちらに来たかって? (まるちゃん)
2007-10-01 08:36:30
そりゃあ『呑んべまるちゃん』だから。

若いときは サントリーホワイト一辺倒だったの。
オールドなんかは 手が出ないくらい貧しかった。
お金がなくてご飯食べられなくて でも レコードと本とホワイトとお花(一輪)買ってた。

今?
今は 焼酎よ。
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>まるちゃん (凛太郎)
2007-10-01 22:01:14
まるちゃん呑んべですか。仲間だ(笑)。
僕もずっと安いウイスキーを呑んできましたね。これの次の記事にも書きましたがもっとえげつない安物ウイスキーを。ホワイトは、僕は今でも呑みます。郷愁の味ですからね。

>レコードと本とホワイトとお花(一輪)買ってた。

ここらへんが本当に詩人ですね。
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