凛太郎の徒然草

別に思い出だけに生きているわけじゃないですが

普通酒そして三増酒について

2005年01月04日 | 酒についての話
 前回少し言及した世に言う「三増酒」はいつ、そしてなぜ出来たのだろうか。
 日本酒のアルコール添加、そして『三倍増醸法』は戦中戦後の米不足で酒を造ることなど出来なかった時代の対策として(酒がないと酒税を徴収することも出来ないから敗戦国家が税収を増やそうとして)始められたものである。これは致し方ないとしても、悪しき慣例として戦後に至ってもそれは継続していた。

 僕は、さまざまな酒があっていいと考えている。三増酒だって、それじたいに罪があるわけではない。罪深いのは国、そして国税庁、そして三増酒を「銘酒」と表記して売るメーカーである。
 酒には、醸造酒、蒸留酒、混成酒の3つの種別がある。説明は不要だと思うが、醸造酒は穀物ないし果実を発酵させて造る酒、蒸留酒はそれを蒸留し酒精分の濃度を高めた酒、混成酒はその造られた酒に添加物を混入させた酒である。混成酒の代表としては「リキュール」があり、いずれも香味や糖分を添加配合した酒である。
 混成酒に分類されるものはまだある。梅酒がそうだ。そして「みりん」も混成酒だろう。
 そして、日本酒も純米酒以外は、正にこの「混成酒」であることは疑う余地はない。

 だったら、混成酒と表示すればよかろう。なのに本醸造酒のみならず普通酒、そして三増酒までもが「醸造酒」としてまかり通っているこの現状に大いなる問題があるのだ。国とメーカーがグルになったこの状態は許すことが出来ない。
 ビール会社のここ数年の企業努力と国との戦いはよく膾炙しているのでご存知の方も多いだろう。税率を下げるために「発泡酒」を造り、最初は不味かったが後にその味のレベルを「ビールと変わらない」程度にまで上昇させ、その発泡酒に増税しようと国がすれば、今度はビールと麦焼酎をブレンドさせて「ビール風味のリキュール」まで登場させた。麦芽以外の原材料を用いた「第3のビール」などいずれもビールではない、と言い続けている。「発泡酒」という言葉はすっかり「庶民の味方」として定着した。
 比べて日本酒はどうであろう。国は三増酒も清酒として認め、同様に税金を課す。メーカーは反抗して、「普通酒は日本酒じゃない」と言って税率を下げる運動をすれば「庶民の味方」なのだが、廉価で出来る三増酒が日本酒と同様に売れることをいいことに国と癒着して現状維持を続ける。
 吟醸造りは確かに労力がかかる。値段も張る。それとひきかえに三増酒も造ってバランスを取ろうとでもしているのか。あまりにも消費者をバカにしている。

 メーカーそして消費者は、「取りやすいところから税金を取る」国に対してもう少しプロテストしてもいいのではないか。三増酒を造り続けるのなら、かつてそれが国の増税対策に使われたという汚名をそそぐ為にも、「庶民の味方の混成酒」として税率を下げる方向に運動してもいいのではないか。ビール会社のように。

 僕は、さすがに三増酒は呑みたくない。醸造用糖類の舌にのこるべたつきはいかんともし難く、頭痛を誘発するのも困りものだ。しかし、全否定するわけではない。そういう酒もあっていいし、これは好みの問題だ。日本酒マニアは三増酒を含めた普通酒を目の仇にして撲滅を叫ぶが、僕はそこまで思っていない。撲滅すべきは国と国税庁のズルさとメーカーのプライドの無さだ。純米大吟醸と三増酒が同じくくりにされていて何故怒らないのか。

 三増酒は苦手だが、僕は糖類無添加の「普通酒」なら日常よく呑む。毎日吟醸酒ばかり呑むわけにもいかず、それに吟醸は料理に合いにくい(個人的見解)。基本は本醸造だが、懐具合も考えて普通酒だって呑む。この「普通酒」という言い方には疑問が残るが(なんでアル添が普通なのか)便宜上そう呼ぶ。
 純米酒絶対主義者や吟醸しか呑まない日本酒マニアにはアホ呼ばわりされるだろうが、普通酒はさほど悪いものではない。糖類や酸味料が入っていればどうも僕はいけないが、アル添だけなら、「日常の酒」としては充分すぎる。吟醸などの「特定名称酒」はハレの日に呑んで、普段は普通酒で良い。料理の味を殺さなければよし。酒とはそうかしこまって呑むものでもなかろう。

 問題は表示だけだ。まず「普通酒」と言う名称は止め、添加酒ないし混成酒とちゃんと言ってくれ。そしてアル添何%とちゃんと書け。三増酒はそう大きく表示しなさい。「清酒テイスト飲料」や「日本酒テイスト飲料」という名称で売り出しなさい。消費者はちゃんと中身を知って買う。国は混成酒の税率をもっと下げろ。そういうふうに、「ちゃんと」正常な状態にしてほしいのである。

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2 コメント

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Unknown (もも)
2008-03-08 19:36:42
はじめまして
日本酒のことが、ここでまた少しわかり嬉しいです。

 二十歳くらいの頃、行き当たりばったりに飲んだ
日本酒をどうも美味しくは感じなかったのはこういう
添加物いりだったゆえだったのかもしれません。

25歳で「上善水の如し」を知り、
「あれっ!?美味しいのもある!」と気づき奥の深さを遅まきながら知りました。

数年前、ドラマ「蔵」(松たかこ主演)の中での
日本文化である酒蔵や杜氏に魅せられ、美味しい日本酒をもっと知りたいと自然に思うようになりました。

何しろあの清らかな透明感と爽やかな旨みは先祖達が
受け継いできた偉大なものだと感じます。
 ワインもいいでしょうが、身近なものに誇りを持ちたいものです。
 食の安全や真偽が問われる今日この頃、
酒造業界にも分岐点がきているのではないでしょうか。
 自国の優れた食文化を守っていくのは
私たち消費者の意識でもありますね。
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>ももさん (凛太郎)
2008-03-09 16:49:37
コメントありがとうございます。
日本酒の世界って、本当に昭和の時代で栄枯盛衰みたいなものがあるようですね。戦後、どうしても食糧難で酒が造れなかったときに、無理やりに薄めてアル添して造った。それを国税庁が清酒と認めた。税収の問題がありますからどっちが主導したってのは措いてですね。そして、その後技術も飛躍的に上がった。地方の小さな蔵元も素晴らしい吟醸酒を造る。こんなにすみやかな酒造りが出来るようになったのは造りの歴史からみればごく最近のことでしょう。昔はあんなに米を磨いて造るなんて昔は出来なかったに違いない。昔の酒は置いておけばすぐ酢になっちゃいましたからね。

酒蔵は、次の記事で書いたような一部偽造の酒造りはあるものの、大体は正直に造っていると思います。添加物を入れたらちゃんとそれを書いている。添加物入りの酒は確かに僕も度を過ぎると?となりますが、それは好みの問題だと思いますし絶対に悪いとは言えない。アルコールを少し入れることですっきりとした味わいにも成りうる。問題はそれもこれも一括りにする国にあるのだと思います。ウイスキーも然り(これは別立てで記事にしてます)。みんな税金を取るためであって、言わば国が偽造しているのだと思います。そこを消費者は批判しないと、と僕なんかは思うのですね。批判と言ってもこんなブログで叫ぶことくらいしか僕には出来ませんけど(汗)。

「上善如水」美味いですよねー。そういう酒を消費者がちゃんと選択できる環境を整えて欲しいと切に願います。
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