夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

凧揚(仮題) 福田豊四郎筆 その71

2017-03-28 00:01:00 | 掛け軸
庭にはカタクリの花が咲いていました。



本日は福田豊四郎の初期の作品の紹介です。

凧揚(仮題) 福田豊四郎筆 その71(真作整理番号)
絹本着色軸装 軸先鹿角 合箱
全体サイズ:縦2075*横552 画サイズ:縦1207*横420



昭和の初め頃に描かれた下記の作品と作品の落款と印章から判断して、製作時期が同じだと推察されます。

 

冬木立 福田豊四郎筆 その67(真作整理番号)
絹本着色軸装 軸先 共箱
全体サイズ:縦1960*横470 画サイズ:縦1210*横335

 

福田豊四郎の作品の愛好家は初期のノスタルジックな作品が好きという方と、最盛期のでデフォルメされた抽象的な作品が好きだという方に二分されるようです。小生は両方ともに好きなのですが・・。



ところでなんでも鑑定団に出品されて贋作と判断された福田豊四郎の作品、そのなんでも鑑定団での思文閣の山田社長の見解は下記のとおりでした。



「福田の作品とはいえない。落款に昭和三十年秋とあるが、当時福田は「滝」という作品を展覧会に出品している。この「滝」は線描をデフォルメして模様のように描いた点が評価された。対して依頼品は写実的で、西洋画的な陰影法も用いている。当時福田が依頼品のように写実的に描くという事はありえない。もう一つの問題は印章で、福田の印章によく似たものはあるが、依頼品にあるものはよく見ると押したのではなく描いてある。」とのこと。



稚拙な福田豊四郎の贋作作品は何度か観たことがありますが、この出品作は郷里にて何度か写真で見たことがあり、最盛期の真作とばかり思い込んでいたので驚いています。今でも仕入れ先では真作と考えているようですが・・。



当方での紹介作品は「伝」や「贋作考」と明記しない限りは真作と判断している作品を紹介していますが、改めて細心の注意を払わなくてはいけないと痛感しています。



自分の幼少の頃と重ね合わせることのできる、わが郷里を暖かい眼で描いた福田豊四郎の作品、願わくは贋作とは無縁であってほしいものです。

本作品の製作時期は昭和初めから昭和10年頃までの間と思われます。上京して仲間らと各会を結成するなどの多忙な時期を過ごしており、のんびりと過ごすことのできる故郷のことを思わぬ日々はなかったのでしょう。

我がうた  豊
わがうたはふるさとのうた
いつとなくくちずさみし わがうたもいまは
ないはひの くちびるにふくむ ふでのほの
      つめたき たつきとはなりし
ふるさとは はるけし 年老いし父よ母よ
ふるさとは 我がむねにあり ひとりうたはめ
いつとはなく都にすみてみなれざる街を歩めども
我れはさみしき 
我がうたに聞く人ありやなしやと

豊四郎の帰りたくても帰れない望郷の念が表現されている作品かもしれません。故郷から離れて都会で暮らす人には共通の望郷の念でしょう。


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