アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

漱石の個人主義って人権?

2021年07月22日 | Weblog
 今年度に入って、研修会の講師の依頼が多いです。ホント、ホント!入院したり死んじゃったりする前に講義してもらおうということらしい。来週は、今年度4回目の講義です。対象は、人権擁護委員。テーマは、勿論「人権」です。人権の講義など、自分でもつまらないと思います。それで、「おちゃらけ」「法螺」をふんだんに盛り込んで、90分を、笑いのうちに乗り切ろうといつも考えています。前回など、120分間しゃべり続け、「酸欠死」になるんじゃないかと思いましたら、生きていました。しぶといのです。

 参会者には、「大学の講師」「トップ当選の市議さん」「東大法学部出身の弁護士さん」もおられます。「おちゃらけ」「法螺」は、薬味程度にしなければ、「こんな研修なら、もう出席しない」と、言われちゃいます。難しい話もしなければ…。

 花の朝歌よむ人の便り哉
 死にもせで西へ行くなり花曇
 この2句は、最近見つかった漱石の俳句。同僚の教師に宛てた手紙に添えられていたものだという。
 親友が子規だっただけあって、俳句にも真剣に取り組んでいたのですねえ。漱石は、小説では「無駄なことは一行も書かなかった人」と評されていますが…これは、俳句の影響ですね。俳句は17音。ですから、こまごまと説明している余裕などない。「省略の文学」です。その意識で小説を書いたのでしょう。

 漱石といえば、「個人主義」。「全体主義」という言葉が広まっている昨今、全体主義の対義語は個人主義だろうと思うわけで…。なぬ?「漱石の個人主義は利己主義のような個人主義だから、全体主義の対義語とは言えない」って?そーゆー難しいことは解りませんがね。

 漱石が言うところの個人主義は、利己主義そのものではありませんよ。「自己本位に立脚して、自己の個性の発展に努めること」いわば、「道義上の個人主義」です。どうですか、この解釈、格調高いでしょう!

 1 自己の個性の発展を仕遂げようと思うならば、同時に他人の個性も尊重しなければならない。
 2 自己の所有している権力を使用しようと思うならば、それに附随している義務というものを心得なければならない。
 3 自己の金力を示そうと願うなら、それに伴う責任を重おもんじなければならない。

 漱石の個人主義のこの三ヵ条、実は、「人権」と、密接な関係があります。 なぬ?「そんな話聞いたことがない」って?まあ、私以外は言わないでしょうねえ。
 と、いうことは、人権は個人主義に通じるということかって?その通りです。 人権を守るには、まず、「自己を守る」ことが大切。自己があってこそ、他人を尊重できるのです。私が一番あなたは二番。

 漱石は、(個人主義は)倫理的修養を積んだ人でなければならないことを前提としています。「どうしても人格のある立派な人間になっておかなくてはいけないだろう」とも。ねっ!「人権」でしょう! 権力や金力の濫用の危険性も警告しています…間違いなく、人権。


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