北ユーラシアの歴史
貂主の国
西シベリアと南ウラルの青銅器・鉄器時代
タイガとツンドラに覆われた厳寒の地、北ユーラシア。
その厳しさ故に気候条件に適応できたごく少数の人々の手によってのみ
歴史を紡がれてきたというイメージがあります。
#あるいは歴史なんてそもそも存在しない世界で、「20世紀に至るまで
#石器時代のような暮らしぶりであった」といういろんな意味で間違っている
#「停滞した始原社会」という偏見もあったりするわけですが。
#これは明らかに間違いであることは議論の必要も無いくらいですが、
#それはさておき。
実際には北ユーラシアは他の歴史世界と隔絶していたわけではなく、
恒常的な交流の中、均しく時の流れを受けて変化していたのです。
そんな北ユーラシアの中にあって特に草原地帯との結びつきの強い南ウラルから
西シベリアにかけての青銅器時代、鉄器時代に関する決定版ともいうべき書籍が出ました。
心なしか表紙が違うような・・・・いや、確かに届いた本と違う!(笑)
バキに転蓮華をかけられた烈海王のようなブロンズ像が目印です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/6a/476206592c5606218df361029f5a8eff.jpg)
扱っている年代は紀元前3200年頃から紀元300年位まで、新石器時代から
青銅器時代へ移行する年代に始まって、フン族が現れるあたりまでですね。
地域的には中・南ウラル山脈の東西両翼、西はカマ川流域からウファ川流域の
南ウラル地帯、トボル川流域を経て東はイルティシ川流域までの、
森林と草原の接壌地帯を扱っています。
この地域・年代の通史を扱う、非常に野心的な内容になっています。
ケンブリッジ大学の紹介ページに目次が掲載されています。
目に付くところを抜き出すと
The Urals' Bronze Metallurgy 28
The Beginning 28
Further Developments 33
The Apex of Uralian Metallurgy: Expansion and Perfection 40
といったウラル地方の青銅器時代への移行とか、
The Cultural Formations in the Forest Zone 98
Cis-Urals Subarea 98
The Forest-Steppe and Southern Taiga of Western Siberia 103
The Pre-Andronovo Horizon in the Western Siberian Forest-Steppe 104
Sites of the Seima-Turbino Type 106
森林地帯におけるアンドロノヴォ文化前史やセイマ=トゥルビノ文化、さらには
Mezhovka-Irmen Cultural Horizon 170
The Mezhovka Culture 170
The Irmen Culture 175
メジョフ文化やイルメニ文化まで独立して取り上げられています。
イルメニ文化はまだしも、メジョフ文化やガマユン文化(どちらも
トボル川下流域に紀元前1000年紀初頭頃分布)について、
数ページとは言え章立てた情報が出てきたのには感激しました。
7 The World of Cultures of Cis-Urals Forest Zone of Eastern Europe: The Maintenance of Cultural Identities 251
The Ananyino Cultural Groups 252
The Pyanobor Cultural Groups 261
ウラル西麓からロシア東北部一帯に大きな影響を与えていた両文化を
取り上げた後、
8 The Forest-Steppe Cultures of the Urals and Western Siberia: On the Northern Periphery of the Nomadic World 277
Cultural Groups of the Forest-Mountain Area of the Middle and Southern Urals 277
The Forest-Steppe Cultures of the Trans-Urals and Western Siberia 287
Pre-Sargat (Formative) Phase 289
Gorokhovo-Sargat Phase 292
Classic Sargat Phase 298
Late Sargat Phase 311
Summary: Interactions between Nomads and Forest Populations 312
と紀元前8世紀から紀元3世紀にかけて西シベリアの森林ステップ地帯に栄えた
「サルガト文化」が詳しく取り上げられています。
この地域は後にキマクやシベリア汗国が栄えた場所であり、
北ユーラシアの森林世界と中央ユーラシアの草原世界との接壌地帯という
地政学的な条件により、はるか太古の昔から重要な地域であったことを
このサルガト文化は教えてくれます。イラン系とフィン系の混淆により
生まれた文化であるということくらいしか知りませんでしたが、
読むのが楽しみです。
この10年、こんな本が出てくるのを待っていました。
むかーし書いた西シベリアの年代表を置いておきます。元ネタは「ソ連の考古学」シリーズですね。
どこまでこれをブラッシュアップできるか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/38/591d8cca484e1d621032bc515c9e79ca.jpg)
しばらくは夢中になりそうです。
・・・早く仕事終わらせたい・・・orz
その厳しさ故に気候条件に適応できたごく少数の人々の手によってのみ
歴史を紡がれてきたというイメージがあります。
#あるいは歴史なんてそもそも存在しない世界で、「20世紀に至るまで
#石器時代のような暮らしぶりであった」といういろんな意味で間違っている
#「停滞した始原社会」という偏見もあったりするわけですが。
#これは明らかに間違いであることは議論の必要も無いくらいですが、
#それはさておき。
実際には北ユーラシアは他の歴史世界と隔絶していたわけではなく、
恒常的な交流の中、均しく時の流れを受けて変化していたのです。
そんな北ユーラシアの中にあって特に草原地帯との結びつきの強い南ウラルから
西シベリアにかけての青銅器時代、鉄器時代に関する決定版ともいうべき書籍が出ました。
![]() | The Urals And Western Siberia in the Bronze And Iron Ages (Cambridge World Archaeology)Cambridge Univ Pr (Sd)このアイテムの詳細を見る |
心なしか表紙が違うような・・・・いや、確かに届いた本と違う!(笑)
バキに転蓮華をかけられた烈海王のようなブロンズ像が目印です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/6a/476206592c5606218df361029f5a8eff.jpg)
扱っている年代は紀元前3200年頃から紀元300年位まで、新石器時代から
青銅器時代へ移行する年代に始まって、フン族が現れるあたりまでですね。
地域的には中・南ウラル山脈の東西両翼、西はカマ川流域からウファ川流域の
南ウラル地帯、トボル川流域を経て東はイルティシ川流域までの、
森林と草原の接壌地帯を扱っています。
この地域・年代の通史を扱う、非常に野心的な内容になっています。
ケンブリッジ大学の紹介ページに目次が掲載されています。
目に付くところを抜き出すと
The Urals' Bronze Metallurgy 28
The Beginning 28
Further Developments 33
The Apex of Uralian Metallurgy: Expansion and Perfection 40
といったウラル地方の青銅器時代への移行とか、
The Cultural Formations in the Forest Zone 98
Cis-Urals Subarea 98
The Forest-Steppe and Southern Taiga of Western Siberia 103
The Pre-Andronovo Horizon in the Western Siberian Forest-Steppe 104
Sites of the Seima-Turbino Type 106
森林地帯におけるアンドロノヴォ文化前史やセイマ=トゥルビノ文化、さらには
Mezhovka-Irmen Cultural Horizon 170
The Mezhovka Culture 170
The Irmen Culture 175
メジョフ文化やイルメニ文化まで独立して取り上げられています。
イルメニ文化はまだしも、メジョフ文化やガマユン文化(どちらも
トボル川下流域に紀元前1000年紀初頭頃分布)について、
数ページとは言え章立てた情報が出てきたのには感激しました。
7 The World of Cultures of Cis-Urals Forest Zone of Eastern Europe: The Maintenance of Cultural Identities 251
The Ananyino Cultural Groups 252
The Pyanobor Cultural Groups 261
ウラル西麓からロシア東北部一帯に大きな影響を与えていた両文化を
取り上げた後、
8 The Forest-Steppe Cultures of the Urals and Western Siberia: On the Northern Periphery of the Nomadic World 277
Cultural Groups of the Forest-Mountain Area of the Middle and Southern Urals 277
The Forest-Steppe Cultures of the Trans-Urals and Western Siberia 287
Pre-Sargat (Formative) Phase 289
Gorokhovo-Sargat Phase 292
Classic Sargat Phase 298
Late Sargat Phase 311
Summary: Interactions between Nomads and Forest Populations 312
と紀元前8世紀から紀元3世紀にかけて西シベリアの森林ステップ地帯に栄えた
「サルガト文化」が詳しく取り上げられています。
この地域は後にキマクやシベリア汗国が栄えた場所であり、
北ユーラシアの森林世界と中央ユーラシアの草原世界との接壌地帯という
地政学的な条件により、はるか太古の昔から重要な地域であったことを
このサルガト文化は教えてくれます。イラン系とフィン系の混淆により
生まれた文化であるということくらいしか知りませんでしたが、
読むのが楽しみです。
この10年、こんな本が出てくるのを待っていました。
むかーし書いた西シベリアの年代表を置いておきます。元ネタは「ソ連の考古学」シリーズですね。
どこまでこれをブラッシュアップできるか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/38/591d8cca484e1d621032bc515c9e79ca.jpg)
しばらくは夢中になりそうです。
・・・早く仕事終わらせたい・・・orz
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