虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

文字を書くことへの不安が強い子と

2017-12-06 20:53:16 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

年長のAくんは、感覚の面でも精神的な面でもとても敏感な男の子です。

完璧主義で不安が強い性質のためか、

ひらがなを練習することに強い拒絶を示します。

手本そっくりな文字が書けないことが我慢できない様子です。

 

Aくんと初めて会ったのは、ユースでのお泊りのレッスンで、友だちと

は楽しく過ごせていたものの、お勉強の時間と聞いたとたん

「絶対、やりたくない」と逃げていました。そして、

他の子らが楽しそうに活動する間も、意地でも近づこうとしませんでした。

 

そこで、Aくんに教室に来てもらって、

Aくんが「お勉強」と聞いただけで逃げ出したくなる気持ちをやわらげて、

文字を書くこと親しめるよう手助けすることにしました。

Aくんに、今日はどんな活動をしてみたいか、いくつか例を挙げて選ばせると、

「海や川に住んでいる動物の世界や恐竜の世界が作りたい。

それから、電車の線路をつなげたりしたい」と言いました。

 

Aくんは「ザリガニは海じゃなくて、川に住んでいるんだよ」と言いながら、

ワニといっしょに川の絵が描いてあるプレートに置きました。

「Aくん、魚や恐竜の名前をよく知っているね。水族館や動物園みたいに

名前の札をつけておこうか。

「そうだ、電車の駅に、大阪行きですとか光ながら文字が動いていく

やつあるでしょう?あんな風に字が動いていくようにしようか?」とたずねると、

「うん」と答えていたものの、やらされるのかな?と思ったようで、

少しこわばった顔をしていました。

その後、Aくんは青いプラスチックの板の上に熱心に

水の中の生き物を乗せていった後で、

「ああ、疲れた」とつぶやきました。それから、

「水の生き物の次に普通の動物も出してもいい?」と、

動物のフィギアが入ってある箱を指さしました。

「おもちゃはもう十分出しているよね。電車も出しているし、

水の中の生き物も出しているし、ブロックも出しているよ。だから、

これ以上、新しいおもちゃを出すのなら、ひとつ、チャレンジしなくちゃいけないよ。

今日、Aくんがチャレンジするのは、ひらがなを書くことよ。

もし、チャレンジしたくなったら、先生に言ってね。

でも、無理にしなくてもいいよ。今のままでも、楽しく遊べるはずだから」と

言いました。

 

「それじゃ、先生は恐竜の名前の札を作ることにするね。」と言いながら、

細長い紙にAくんに教えてもらった「ぶらきおざうるす」の名前を書くことに。

「手伝って」と頼むと、点や横線を入れるのを手伝ってくれました。

Aくんは頭の中で形をイメージするのは得意な子らしく、

ブロックでピラミッドのような形を作ることもできるのですが、文字を書く手は

ふらふら揺れるようで、線をとめるのも難しそうでした。

 Aくんは、紙のわっかを回すと、

「ぶ、ら、き、お、ざ、う、る、す」と一字ずつでてくることに

とても喜んでいました。

そして、いっしょに文字の一部を書くのを手伝ってもらう時に、

先生は無理やり書かせたりしないんだな、と感じたようでした。

それで、少し退屈してきたところで、「チャレンジしたい。

ぼく字を書きたいよ」と言いました。

「そう?それなら、どんな字が書いてみたい?

簡単なのがいいかな?

しっぽの『し』は、本物のしっぽみたいな形よ」と言うと、

「ぼく、『し』は字を知らないんだ」と言いました。

そこで、見本を書いてから、しーってすべっていって、

少し曲がる、ほら、しっぽみたいでしょ」と言うと、しを書いてから、自

分が知っているという『か』も

書いていました。

 

宝物を隠す地図を描くことにしたAくん。

 

 

おばけのヒューゴのゲームに夢中でした。

とっても怖がりなのに、怖いゲームに挑戦したい様子のAくん。

自分で自分の敏感さを乗り越えようとしているかのようです。