虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

レンズーリの拡充学習について 11

2017-02-05 19:13:01 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

レンズーリの拡充学習は、一般的な習い事や講座のように前もって決まったカリキュラムや内容があるわけではなく、参加するメンバーや担当者の興味によって進行するとあります。

興味は、学習を高めるための効果的な方法のひとつで、興味と学習の間の強い正の関係は、著名な哲学者や心理学者によって認められています。

拡充クラスター(レンズーリが提案している自分の興味を探求する異年齢の子どものグループ)は、子どもが選んだテーマについて、子どもたちが何を知っているのか、何を学びたがっているのかを知ることから出発しています。

拡充クラスターは、子どもの集団全体の興味を刺激して、潜在的な才能を伸ばす手助けをし、高次のスキルの発達やそのスキルを創造的で生産的な状況へ本物のように適用されることが重んじられています。

虹色教室での活動も、7割方、このレンズーリの拡充学習のスタイルを取っています。

残りの3割は、そうした興味を探求していく活動の土台となる算数の力が身に着くよう支援しています。

算数学習については、拡充学習とは少し異なるのですが、

「複雑な文章題も、絵図にしたり、整理したりして解ききる力をつけること」

「逆思考が得意になること」

「長さ、重さ、面積や体積などの単位の変換ができるようになること」

「めもりが読めるようになること」

「四則計算がスムーズにでき、工夫して計算することができること」

「コンパスや分度器などの道具の扱いうまくでき、展開図や見取り図が書けること、補助線がイメージできること」

などを重視して教えています。

 

先の文で、拡充クラスターは、子どもが選んだテーマについて、子どもたちが何を知っているのか、何を学びたがっているのかを知ることからはじまることを書きました。

それについて、昨日の国立民族学博物館への遠足の様子から、どのような場面から、子どもが知っていることや学びたがっていることを汲み取っていくのか書いていくことにします。

 

 

たいていの大人は、「子どもはこういうものが好きにちがいない」というイメージを持っています。

世の中にある子ども向けの商品も、そうしたイメージのもと作られています。

でも、実際に子どもたちを連れて博物館めぐりをすると、子どもの興味関心は大人のイメージするそれとはずいぶんちがい独自のそこ子らしさに彩られていることに気づきます。

上の写真は、年長のAちゃんが展示品の舟を覗いているところです。

最初、Aちゃんはその舟の一方に飛び出ている下の写真のような道具に関心を寄せていました。

 

これは何なのか、何をする道具なのか、何か食べ物を入れておくのか、魚をとる時の道具なのか、この上に乗って何かするのかと考え続けていました。

いろいろな方角からこれを眺めた挙句、舟の中を覗きに行ったり、わたしを質問攻めにしたりしてなかなかそこを離れようとしませんでした。

 

博物館の中には、モアイ像や大きな石のお金やまるで小人の家のような宝物をしまう倉庫やクマを捕獲する罠など子どもたちの目を引くものがたくさんあります。

もちろん、そうしたものは多くの子たちの目に留まるのですが、ひとりひとりの子に注目していると、「どうしてこんなものが?」と首をかしげたくなるようなものが、

子どもの興味を掻き立てている場合もよくあるのです。

そうした「どうしてこんなものが?」と思うような対象への興味は、その子その子で、独特の個性的なテーマのようなものがあって、それは教室内での活動や普段の言動や思考のプロセスともつながっています。

Aちゃんの場合、美しかったり派手だったりして目を引くものより、木でできた素朴な民具や楽器を、いろいろな方向から熱心に眺める姿が、入館直後から3時間後の博物館を出る直後までずっと続いていました。

他の子らが素通りしてしまうような同じような打楽器や弦楽器が並んでいるところも、

「どうして、ここはへこんでいるのか」とか「こんなに長い太鼓はどうやって叩くのか、これを立てるんだろうか、

上に乗って叩くんだろうか」といつまでも考えこんでいました。

 

Aちゃんは工作が大好きな子です。

「こういうものが作りたい」という完成イメージをはっきり持っているものの、作品の仕上がり自体よりも、作業工程に含まれている意味に一番興味を寄せているように見えます。

 

以前、折り紙で紙のかばんを作った時、内側がどちらも裏面になるようにしてから袋の形になるように周りに糊をつける ということを面白がり、

切り込みを入れた紙を何枚か重ねたものを2種類作って、それらを内側が裏になるように合わせて魅力的なカバンを作っていました。

カバンという用途を果たす作品にするには、折り紙を裏にするか表にするかが、重要な意味を持つことや切り込みを入れた紙の後ろに折り紙を敷くと下地の色が見えることは、Aちゃんの心を強く揺さぶるようでした。

 

みんなで獅子や竜の舞を演じて遊びました。