機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

赤身肉による心疾患をエクストラバージンオイルの成分で防ぐ

2015-12-31 06:05:00 | 腸内細菌
Researchers identify potential approach to treat heart disease through the gut

Study identifies microbial inhibitor that prevents atherosclerosis; Further confirms link between gut bacteria and cardiovascular disease

December 17, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151217130454.htm

クリーブランドクリニックの研究者は
腸内の微生物を標的にすることにより『動物性食品によって引き起こされる心疾患』を防ぐ可能性を初めて実証した
この心疾患は赤身肉や卵、高脂肪の乳製品などの動物性食品に豊富に含まれる栄養素によってもたらされる

このまったく新しいアプローチは
トリメチルアミン-N-オキシド/trimethylamine N-oxide(TMAO)についての研究チームの以前の発見を中心とする
TMAOは腸が動物性脂肪を消化する間に作られる副産物だが、TMAOはアテローム硬化症や心疾患と関連がある

今回研究チームは、低温圧搾cold-pressedのエクストラバージンオイルやグレープシードオイルに含まれる3,3-ジメチル-1-ブタノール/3,3-dimethyl-1-butanol(DMB)を、自然に生じるTMAOの阻害剤として同定した
DMBはマウスでTMAOレベルを低下させ、アテローム硬化症を抑制した

この発見はアメリカ人の死因第1位である心疾患や、糖尿病のような代謝異常/代謝性疾患metabolic diseasesを防ぐための潜在的な新しい治療法となる可能性がある
それらの疾患は腸の微生物と関連することがわかっているからである
この研究はCell誌のオンライン版と12月17日号の両方で発表される


TMAOと腸内微生物、そして心疾患との間の関連は、今回の研究と同じStanley Hazen, M.D., Ph.D.を中心とする研究チームによって4年前初めて発見された
彼はラーナー研究所で細胞分子医学部のchairであり、クリーブランドクリニックではミラーファミリー心血管研究所で予防心臓学・リハビリテーションのsection headでもある

「アテローム硬化症や肥満、糖尿病のような多くの慢性疾患が腸の微生物と関連がある」
Hazen博士は言う
「我々の研究は、食事によって腸で始まる心疾患の進行を防ぐか遅らせるretardことが可能であるというエキサイティングな可能性を実証する
これは将来アテローム硬化症や他の代謝性疾患に対する新しい種類の治療に向けた扉を開く」

TMAOはコリンcholineやフォスファチジルコリンphosphatidylcholine(レシチンlecithin)、カルニチンcarnitineのような栄養素を消化する間に作られる腸の代謝物であり、それらは動物性食品に豊富である
血液中のTMAOレベルは心臓発作heart attack、脳卒中stroke、死亡リスク上昇と関連することが臨床研究で明らかになっている
カルニチンは赤身肉と肝臓に多く、コリンとレシチンが豊富なのは牛肉、ラム肉、肝臓、卵の黄身、高脂肪の乳製品である


今回の研究は、TMAOが生成される最初の段階、つまり共生微生物commensal microbeによるトリメチルアミン/trimethylamine (TMA) の生成を標的にすることが、食事によって誘発されるアテローム硬化症の阻止を助けることを示唆する

研究チームはコリンやカルニチンを多く含むエサを与えたマウスに3,3-ジメチル-1-ブタノール/3,3-dimethyl-1-butanol(DMB)を投与することでTMAの生成を阻害した
このマウスはTMAOが少なく、アテローム硬化症の発症も抑制された

DMBが抗生物質ではないという重要な事実が示唆するのは、この『治療』が特異的に微生物の経路を標的にする一方で腸の微生物フローラを保護し、世界中の健康上の問題となっている抗生物質の過剰使用と抵抗性を回避するということである

Hazen博士は言う
「我々は『微生物叢に薬を飲ませるdrugging the microbiome』ことがこの種の食事によって誘発される心疾患を防ぐための効果的な方法であることを示した
この『阻害剤』は腸の微生物によって作られる排出物の形成を阻害し、TMAOレベルを低下させて食事に依存的なアテローム硬化症を予防する」

「これは我々がコレステロール合成を阻害するためにスタチンを使うのと非常に似たやり方である」


Centers for Disease Control and Preventionによると、アメリカでは心疾患により国民の4人に1人の年間61万人が死亡する
これはアメリカ人の男性と女性の両方で死因の第一位である
この研究はNIH、AHA、the Office of Dietary Supplementsのグラントによってサポートされた


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.11.055
Non-lethal Inhibition of Gut Microbial Trimethylamine Production for the Treatment of Atherosclerosis.
腸微生物によるトリメチルアミン産生の非致死的な阻害によりアテローム硬化症を治療する


Highlights
・腸の微生物が持つ『トリメチルアミンリアーゼ/trimethylamine lyase』はアテローム性動脈硬化症atherosclerosisの治療標的である
・3,3-ジメチル-1-ブタノールは、微生物によるトリメチルアミン形成を阻害する
・3,3-ジメチル-1-ブタノールは、コリンの豊富な食事によって促進されるアテローム硬化症を弱めるattenuate
・腸内微生物を殺すことなく酵素を阻害することは宿主の心臓代謝表現型cardiometabolic phenotypesに強い影響impactを与えうる


Summary
トリメチルアミン-N-オキシド/trimethylamine (TMA) N-oxide (TMAO) は腸の微生物叢に依存的な代謝産物であり、
動物モデルにおいてアテローム硬化症を促進し、ヒトの臨床研究でも心血管リスクと関連する

今回我々が研究するのはTMAO産生の最初の段階、つまり共生微生物によるTMA産生を標的として阻害することが『食事により誘発されるアテローム硬化症』に対してどのような影響を与えるかについてである

我々はコリンの構造的なアナログである3,3-ジメチル-1-ブタノール (DMB) が、培養微生物からのTMA形成を非致死的に阻害することを示す
DMBは別個の微生物のTMAリアーゼを阻害し、
複数の菌の生理的な培養(例えば腸の内容物やヒトの糞便)からのTMA産生を阻害するとともに、
コリンまたはL-カルニチンを多く含む食事を与えたマウスでTMAOレベルを低下させることも示す

アポリポタンパク質e-/-マウスにおいてコリンによって促進される内因性のマクロファージ泡沫細胞endogenous macrophage foam cellの形成、ならびにアテローム硬化症による病変の発生をDMBは阻害したが、
これには血液中の循環コレステロールレベルの変化を伴わなかった

腸の微生物によるTMA産生を特異的に標的にするような非致死的に微生物を全般的に阻害する化合物は、心臓代謝疾患を治療するための潜在的なアプローチとして役立つことを今回の研究は示唆する



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150129170358.htm
腸内細菌のTMAOが腎臓にも影響



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c6986b5d9e7a95d4b61f18a94e2ee4f6
赤身肉に多いL-カルニチンが腸に入るとTMAOとγ-ブチロベタインに変わり、どちらもアテローム性動脈硬化症を引き起こす



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151202142210.htm
メトホルミンが効く理由の一因は、腸内細菌の変化とそれによる酪酸などの短鎖脂肪酸による



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23563705
カルニチンからのTMAO産生はヒトでは微生物に依存するプロセスであり、TMAOはコレステロールの逆輸送/RCTを阻害する
 

神経変性を止めるための新たな手がかり

2015-12-30 06:34:32 | 
New clues to halting nerve degeneration

December 10, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151210124557.htm

ニューロン変性とニューロン間コミュニケーションの喪失につながるメカニズムについての発見は、
パーキンソン病やアルツハイマー病のような神経変性疾患の治療に将来つながる可能性がある

ノッティンガム大学の科学者は、ニコチンアミドモノヌクレオチド/nicotinamide mononucleotide (NMN) という小さい分子が
軸索axonというニューロンの突起processの内部で一連の破壊反応を引き起こすことを発見した

Cell Reports誌で発表された今回の研究は
大学の生命科学部のLaura Conforti博士と博士課程学生/PhD studentであるAndrea Loretoを中心として実施されたものである


ニューロンは通常とは異なるextraordinary高度に区画化されたcompartmentalised細胞であり、体内の他の細胞に軸索を通して電気信号によるシグナルを伝える細胞である
軸索はとても長く細長い突起projectionで細胞容量の99%までを構成し、その繊細な形と重要な機能により、加齢と関連する様々な神経変性疾患において早くから起きる変性に対して軸索は非常に脆弱である
(神経変性疾患とは例えばパーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、運動ニューロン疾患、多発性硬化症、外傷性神経損傷traumatic nerve injuriesなど)
変性は神経細胞のお互いのコミュニケーションや他の細胞への情報伝達を妨げ、しばしば症状を引き起こす

※運動ニューロン疾患/motor neuron disease (MND): 上位運動ニューロン(大脳~橋,延髄,脊髄)と下位運動ニューロン(橋,延髄,脊髄~筋肉)が選択的に変性脱落して神経膠細胞が増殖する疾患群。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両方に障害を生じる運動ニューロン疾患。MNDがALSのことを指す場合もある


ノッティンガムの科学者は以前ニコチンアミドモノヌクレオチド/nicotinamide mononucleotide (NMN) について調べて発表している
NMNはニコチンアミドアデニンジヌクレオチド/nicotinamide adenine dinucleotide (NAD) の前駆体で、NADは補酵素/コエンザイムであり酵素の機能を『助ける』ための分子である
あらゆる生きた細胞に存在し、細胞のエネルギーを作るために不可欠である
研究では培養したニューロンとゼブラフィッシュによる急激な神経損傷acute injuryならびに神経毒性モデルを使い、NMNが軸索の変性を開始することが示された

 NMN→軸索変性

以前の研究を元に、今回の研究では
損傷した軸索においてNMNが自然免疫系に関与するSARM1タンパク質とともに働き、SARM1が軸索変性において重要な役割を演じることを実証する
SARM1は一連の反応を引き起こしてカルシウムを有害なレベルまで上昇させ、軸索を断片化する

 NMN→SARM1→軸索変性

新たな研究でも再び培養ニューロンとゼブラフィッシュモデルを使い(後者はMartin Gering博士と協力して作成した)、
最新の顕微鏡技術をSchool of Life Sciences Imaging (SLIM) 研究所のTim Selfのアシストで利用した

Laura Conforti博士は言う
「この研究はNADの代謝と神経変性との間の関係について、我々の理解に新たな層を加える
NMNはこれまで単なるNADの前駆体という認識だったが、
我々はそのシグナルを伝達する役割を明らかにした」

「NMNとそれが引き起こす下流のシグナルの制御により
軸索変性が根本的な原因の神経学的疾患において予想もされなかった治療の可能性が生まれるかもしれないことを今回の研究は示唆する」

「臨床的な応用にはまださらなる研究を必要とするが、
我々の発見は軸索の死につながるカスケードで重要なプレーヤーを明らかにした
この段階は治療の最も有望な標的である」


OPEN
http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2015.11.032
Wallerian Degeneration Is Executed by an NMN-SARM1-Dependent Late Ca2+ Influx but Only Modestly Influenced by Mitochondria
ウォラー変性はNMN-SARM1に依存的なカルシウムイオンの遅れた流入によって遂行されるが、ミトコンドリアによる影響は限られたものに過ぎない


※ウォラー変性/wallerian degeneration: 神経線維が切断された時に、その末梢側の線維に起こる変性。軸索がふくらんで数珠状になって断片化し、中は神経原線維で満たされる

※ニコチンアミド ホスホリボシルトランスフェラーゼ/nicotinamide phosphoribosyltransferase (NAMPT): NAD+生合成サルベージ経路の律速酵素。ニコチンアミド/nicotinamideをニコチンアミドモノヌクレオチド/nicotinamide mononucleotide (NMN) に変換する

※ホスホリボシルトランスフェラーゼ/phosphoribosyltransferase: 5-ホスホ-α-D-リボシル-ピロリン酸(PRPP)から、D-リボース-5-リン酸(RP)を、プリン・ピリミジン・ピリジンへ転移させる酵素。特異的なホスホリボシルトランスフェラーゼは、例えば『ウラシル ホスホリボシルトランスフェラーゼ』(ウラシル+PRPP⇔UMP+ピロリン酸)のように転移される側の名称が前に付く

※5-ホスホ-α-D-リボシル-ピロリン酸/ 5-ホスホリボシル1-ピロリン酸(PRPP):ペントースリン酸経路の中間体であるリボース5-リン酸から作られる。リボース5-リン酸の部分を転移する『ホスホリボシル供与体』などとして働く


Highlights
・軸索断片化にわずかに先行してshortly preceding、NMNは軸索内のカルシウムイオン/Ca2+の上昇を刺激する
・NMNはCa2+上昇と軸索分解を誘発するためにSARM1を必要とする
・NMNにより誘発される軸索Ca2+上昇の主な源は細胞外環境である
・ミトコンドリアの活発な変化dynamic changesは、NMNにより誘発される変性において原因ではない


Summary
軸索の損傷により、NADを生合成する酵素のNMNAT2が急速に枯渇し、その基質であるNMNのレベルが高くなる

我々は以前ウォラー変性においてNMNが重要な役割を果たすことを提案したが、
その下流のイベントならびに他のメディエータとの関係は不明のままである

今回我々は、軸索切断axotomyが後の軸索内Ca2+上昇につながり、
それは薬理学的または遺伝学的なNMNレベル低下により無効化されることをin vitroとin vivoで示す

NMNがCa2+流入と軸索変性を刺激するためには、変性促進タンパク質pro-degenerative proteinであるSARM1を必要とする

NMN合成の阻害ならびにSARM1の消去はCa2+上昇を阻害して軸索を完全に保ったが、
早期に起きるミトコンドリアの活発な変化を防ぐことはできなかった

さらに、脱分極したミトコンドリアdepolarizing mitochondriaの存在は、ウォラー変性の生じる割合を変化させない

これらのデータは
NMNとSARM1が軸索内Ca2+上昇と軸索断片化につながる共通の経路で作用するが、ミトコンドリアの機能不全はこの経路と無関係である/dissociate mitochondrial dysfunctions from this pathwayことを明らかにし、
そして治療標的としてどの段階が最も効果的になる可能性があるのかを示すものである
 

陰茎癌のプレシジョン・メディシンに向けた最初の一歩

2015-12-29 06:16:10 | 癌の治療法
Researchers take first step in precision medicine for penile cancer

Defining the genomic landscape reveals similarities with other squamous cell cancers

December 15, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151215091352.htm

まれな癌(男性の癌の17%)である陰茎癌では患者の多くが手術を必要とするが、悪性のタイプでは治療オプション、特に分子標的治療がほとんど存在しない

ミシガン大学総合がんセンターの新しい研究は陰茎癌に関する複雑なランドスケープを記述したものである
これは分子標的治療の臨床試験が潜在的に有効である可能性を示唆するが、患者の中には効果が限られる場合もあるとする

「原発腫瘍と転移組織との間の遺伝子の変化と変動性variabilityに基き、
陰茎癌における最適な標的治療の決定は他の癌よりも複雑で厄介であることがわかった」
ミシガン大学メディカルスクールの病理学と泌尿器学の助教授/assistant professorであり研究の首席著者であるScott A. Tomlins, M.D., Ph.D.は言う


研究者は43人の扁平上皮陰茎癌の患者で次世代シーケンシングを実施した
患者はステージ、グレード、サブタイプが異なり、14のサンプルが原発腫瘍と転移した組織を含むように照合された

分析の結果、KRAS、HRAS、NRAS遺伝子変異の共通する組み合わせが見つかり、EGFR遺伝子にも変異が見られた

結腸癌に一般的に用いられるEGFR阻害剤に対してKRASまたはERASが変異した腫瘍は抵抗性を示すが、
重要なことに、陰茎癌でもEGFR阻害剤を使った臨床試験が計画されている
これは臨床現場での応答例を元にした逸話的な/不確かなanecdotal報告に基いてのものだ

※anecdotal: 逸話的な (個々の経験に基づいた臨床経験の報告)

Tomlinsは言う
「結腸癌ではHRAS変異がほとんど存在しないので、EGFR阻害剤への抵抗性を予測するためのHRAS試験は実施されていない
しかしKRAS、HRAS、NRASの生物学的な知識を元に、それらがHRASも含めて実際に抵抗性を引き起こすことを我々は予測している
陰茎癌でHRAS変異は比較的共通して見られるため、これが腫瘍のEGFR阻害剤への応答に影響する可能性がある」

加えて、研究者は原発腫瘍と転移先の骨盤リンパ節pelvic lymph nodeでの違いも発見した
ほとんどの癌で最良の治療標的は原発腫瘍と転移先で同じであり、これは遺伝子の変化が癌の発達の早くに生じることを示唆する
今回の研究結果は悪性の陰茎癌は転移が始まっている時にも変異が起きることを示すもので、
患者に最適な治療標的を同定するために腫瘍の一つ以上の領域を調べる必要がある

「陰茎癌では、一つの変異に一つの薬をマッチさせるというほど単純ではないかもしれない
戦略を決定するために一つ以上の領域から全体的にゲノムプロファイルを得なければならない」


研究では癌のタイプを網羅して最も共通する遺伝子多型を評価する『腫瘍包括パネル/Oncomine Comprehensive Panel』という新たな分析法/アッセイassayを用いたシーケンシングが実施された
このアッセイでは、承認されているか臨床試験で研究中の潜在的な治療法と関連する多型を含むようフィルターされる
アッセイは国立癌研究所のMATCH試験で使われ、ミシガン大学とThermo Fisher Scientificの研究者によって開発され検証された

陰茎癌は男性の全ての癌の17%というまれな疾患だが、
研究では肺癌や頭頸部癌、子宮頸癌など他の扁平上皮癌との重要な類似性も明らかにした

Tomlinsは言う
「これはより優れ、よりインフォームドな陰茎癌の試験をデザインするためのロードマップを提供する
我々の研究は潜在的な治療アプローチを先導するものだ
これは未来のより個別化された臨床の試験と治療へと向けた新たな扉を開くために我々が必要とする基本的な知識である」


http://dx.doi.org/10.1158/0008-5472.CAN-15-1004
Genomic Profiling of Penile Squamous Cell Carcinoma Reveals New Opportunities for Targeted Therapy.



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/05/150512103305.htm
May 12, 2015
Neoplasia誌で発表されたTomlinsが首席著者の論文は、新たな分析法である『Oncomine Comprehensive Assay』について記述している



関連サイト
http://www.cancerit.jp/xoops/modules/nci_bulletin/index.php?page=article&storyid=298
2009年5月5日
ミシガン大学医学部の研究者らは一部の前立腺腫瘍における特定のパターンを示す遺伝子活性を調べるため、Oncomine [オンコマイン]というオンラインデータベース検索のアルゴリズムを開発した。



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4de8a98f57003cc3904049f1b3072988
脳に転移した56%の患者で原発腫瘍には見られない薬剤の標的となりうる遺伝子の変化が転移先に見つかる



関連サイト
http://www.kegg.jp/dbget-bin/www_bget?ds_ja:H00025
病因遺伝子
H-ras (mutation) [HSA:3265] [KO:K02833]
 


HDAC阻害剤はシスプラチンによる腎症を抑制する

2015-12-29 06:06:27 | 癌の治療法
Newer cancer drug may help protect kidneys from damage caused by older drug

December 15, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151215122403.htm

シスプラチンによる腎毒性は、HDACを介してAMWAP(activated microglia/macrophage WAP domain protein)がサイレンシングされ、炎症が生じることによる

HDAC阻害剤は、シスプラチンによる炎症を抑制する
シスプラチンとともにAMWAPを投与するだけでも炎症は抑制された


http://dx.doi.org/10.1038/ki.2015.326
Histone deacetylase–mediated silencing of AMWAP expression contributes to cisplatin nephrotoxicity.

興味深いことに、HDAC1とHDAC2に特異的な阻害剤は上皮細胞でAMWAPを強力に上方調節するのに十分である
 

脳内のYAPが不十分だと炎症が生じてBBBが破綻する

2015-12-28 06:06:21 | 
Not enough YAP means too much deadly inflammation inside the brain

December 22, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151222113152.htm

YAPというタンパク質は心臓や肝臓の発達を適切なサイズになるように助けることで知られているが、脳内ではサイズの調節とは異なるもののそれと等しく重要な『炎症の制御を助ける』という仕事を持つ

オーガスタ大学ジョージア医科大学の科学者は、脳内でYAP(yes-associated protein)にとって重要なのはサイズではないことを示した
YAPはむしろ星状膠細胞/アストロサイト (astrocyte) が過剰に反応性にならないようにして、スイッチを根本的に入れることを妨げる
アストロサイトは一般的にニューロンを保護して栄養を与える脳の細胞である

「YAPは通常は臓器のサイズを制御するが、脳内でのYAPはアストロサイトの機能に影響し、それは次に保護的な血液脳関門の機能の調節を助ける」
ジョージア医科大学で発達神経生物学者でありワイス特任教授/Weiss Research ProfessorでもあるWen-Cheng Xiong博士は言う


体内においてYAPは細胞死と増殖を調節することにより大半の臓器のサイズの制御を助けているが、
Xiongと彼女の同僚たちは発達中の脳内でのYAPがSOCS3(サイトカインシグナル伝達抑制因子/suppressor of cytokine signaling 3)を誘導する重要な因子であることを発見した
SOCS3は名前が意味するように炎症を引き起こす免疫細胞を抑制する

 YAP→SOCS3─┤炎症

Cerebral Cortexに掲載された今回の論文で責任著者/corresponding authorのXiongによると
頭蓋骨の閉じた範囲において炎症は致死的ですらあり、炎症の結果として生じる膨張と圧力がニューロンを破壊するという

Xiongは、出血性の卒中や水頭症hydrocephalus(損傷に応じて頭蓋内に液体が蓄積する)のような病態においてYAPをともなう問題が要因でありうると推測している
実際彼女の研究においてYAPを持たないマウスも一種の水頭症を生じ、最初のXiongの推測ではYAPは脳のサイズの制御も助けると思われた

しかしながら、彼女たちが大きくなりすぎた臓器、つまり脳を解剖したところほとんどが液体であり、
分析するとYAPを持たないマウスはSOCS3を誘導できないことが明らかになった
「ブレーキがなくなり、過剰な炎症が起きる可能性がある」という

 YAP↓→SOCS3↓─┤炎症↑


脳内のYAPは、アストロサイトと神経幹細胞/neural stem cellの両方で発現している
幹細胞は脳内のアストロサイトを作るのを助け、それよりは少ないがニューロンも作る

Xiongたちの研究により、YAPが存在しないとアストロサイトは過剰に反応性hyper-reactiveになり、
『アストログリオーシス/astrogliosis』という状態を作って、壊れやすい血液脳関門を強めるどころか弱めることが明らかになった

※gliosis: グリオーシス、神経膠症。外傷や炎症などの病変により主に反応性星状膠細胞が増殖する病態

血液脳関門は基本的にきつく編まれた内皮細胞の層であり、脳内の血管を裏打ちしている
その上に単一の平滑筋細胞/周皮細胞の層があり、外側がアストロサイトの層である
脳と脊髄の血管における独特な相対的配置configurationが微細なフィルターを形作り、血液から脳組織にアクセスできる物質を制限する

「出血性卒中hemorrhagic strokeでは血液脳関門が完全に破綻し、いったん壊れるとすべてが変わる」

通常は脳内にアクセスできない細胞タイプと因子が、いつも通りの細胞タイプと物質との間の関係を混乱させる
一つの結果として血液からの液体も脳組織に入って圧力をかけ、混乱した会話につながる
ニューロンは死に始め、傷ついた組織が形成され、そしてより多くのアストロサイトが作られる

研究では、YAP遺伝子が脳内から削除されたマウスではいくつかのSOCSタンパク質が低下していた
SOCS3とYAPとの間の関係を検証double-checkするために
研究者がYAPをノックアウトしたアストロサイトでSOCS3を選択的に発現させたところ、やはり炎症が低下することを発見した

 [アストロサイト]YAP↓→SOCS3↑↑↑─┤炎症↓

YAPを持たないマウスでは炎症が血管に集中focus onしているようにも見えた
研究者が染料dyeのトレーサーを注入したところ、通常は血液脳関門を越えない染料が
アストロサイトにYapを持たないマウスの脳内では容易に貫通した

 [アストロサイト]YAP↓→SOCS3↓─┤炎症↑─┤血液脳関門↓


Xiongは水頭症の新生児の血管を調べて、YAPの変異の徴候がないかを調べて研究を追求したいと考えている
YAPの変異は肝臓癌を引き起こすことが知られている
肝臓癌では細胞は増殖を続け、YAPを活性化させるHippoシグナル伝達経路が癌に対抗するその潜在性のために標的とされている


http://dx.doi.org/10.1093/cercor/bhv292
YAP Is a Critical Inducer of SOCS3, Preventing Reactive Astrogliosis.
YAPは重要なSOCS3の誘導因子であり、反応性アストログリオーシスを防ぐ



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/41f6f77c7ac40a1d1da1be8b50b95aa1
Yap1→Cxcl5→MDSC



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http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150316121925.htm
YAP→IL-6, IL-8, CXCL1, CXCL2, CXCL3



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/894a889669389ffdec7915124f9ae0f8
脳内でMHCクラスI分子はインスリン-mTOR経路を介してシナプス数を調節する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/0fda8922932df875485256fcf8e88dd6
脳内に漏れた血液のフィブリノゲンが多発性硬化症を引き起こす
 

進行性の前立腺癌でYAP1-CXCL5-MDSCを標的にする

2015-12-27 06:06:55 | 
Immune suppressor cells identified for advanced prostate cancer

Study reveals MDSCs as likely target for therapy development

December 21, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151221133834.htm

免疫を抑制する細胞であるMDSC (骨髄由来免疫抑制細胞/myeloid-derived suppressor cells) は進行性前立腺癌の治療の開発で重要である可能性がテキサス大学アンダーソンがんセンターの研究で示された


過去の多くの研究でMDSCと腫瘍との間の直接のつながりが実証されてきたが、
腫瘍の進行、特に前立腺癌におけるMDSCの役割の理解は大部分が推論的なままである

WangとDePinhoの研究チームは前立腺癌患者の腫瘍サンプルと新しいマウスモデルとを用いて、
MDSCが枯渇すると腫瘍進行は抑制されることを示した

彼らはさらに、細胞のシグナル伝達経路であるHippo-Yap1がケモカインのCxcl5を調節することを明らかにした
Cxcl5は癌と関連するケモカインであることが同定され、これがCxcr2を発現するMDSCを呼び寄せてリクルートする

研究チームはCxcr2を小分子により阻害することで腫瘍進行を遅らせることが可能であることを示し、
腫瘍でYap1の発現をサイレンシングすることでMDSCの浸潤を減少させて腫瘍の増大を阻止できることを実証した

「薬理学的にMDSCを取り除くかCxcl5-Cxcr2シグナル伝達経路を阻害すると、in vivoで強い抗腫瘍応答が引き起こされて生存期間が延長する」
DePinhoは言う
「MDSCのリクルートか浸潤のどちらかを標的にすることは、進行性の前立腺癌の治療において有効validな治療の機会となりうるかもしれない」

WangはMDSCの不活化と免疫チェックポイント阻害剤を用いた免疫療法(抗CTLA4, PD1, PD-L1)とを組み合わせたさらなる研究が必要だと考えている



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/27b0095ed74dd85fbf10b1dabd646605
腫瘍のFAKはCCL5を転写させ、TregをリクルートしてCD8+Tを回避する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/cbf111914ff2c4fd3ce03a5dfc6baf92
周皮細胞の減少により腫瘍のIL-6の発現が上昇し、MDSCがリクルートされてCD8+Tを回避する



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150429132753.htm
化学療法は小さい前立腺腫瘍にはよく効くが、大きい前立腺癌は免疫応答を抑制し、化学療法にもかかわらず癌は増殖する
進行した前立腺癌に化学療法もチェックポイント阻害剤による免疫療法も効かない理由の一部は、免疫を抑制するB細胞による

http://dx.doi.org/10.1038/nature14395
Immunosuppressive plasma cells impede T-cell-dependent immunogenic chemotherapy
免疫抑制プラズマ細胞は、T細胞に依存的な免疫性の化学療法を阻害する

CXCL13で前立腺腫瘍にリクルートされたB細胞/プラズマ細胞はリンフォトキシンを産生して、癌幹細胞のIKKα-BMI1モジュールを活性化し、T細胞に依存的な免疫性の化学療法を阻害して去勢抵抗性前立腺癌の進行を促進する



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150316121925.htm
同じ癌細胞を浸潤的にもそうではないようにもできるが、それはこのHippo経路が活性化しているかどうかに依存的である
浸潤する癌細胞は浸潤しないがん細胞と遺伝子的には同じであり、違いはHippo経路が活性化しているかどうかである

http://dx.doi.org/10.1038/onc.2015.44
Cell growth density modulates cancer cell vascular invasion via Hippo pathway activity and CXCR2 signaling.
細胞増殖密度はHippo経路の活性ならびにCXCR2シグナル伝達を通じて癌細胞の血管浸潤を調整する

血管浸潤表現型は、YAP依存的なケモカインIL-6, IL-8, CXCL1, CXCL2, CXCL3の上方調節と関連があった
 

癌で見られる染色体の破壊を分子レベルで説明する

2015-12-26 06:00:00 | 
Experiments explain the events behind molecular 'bomb' seen in cancer cells

December 17, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151217130350.htm

科学者たちが癌細胞のゲノムのシーケンシングを始めて以来、彼らは興味深いパターンに気付いてきた
様々な種類の癌細胞の中には染色体の一部が粉砕されpulverized、それが正しく元通りにならず変異が多く生じているように見える細胞が存在した
この現象は長く科学者たちを悩ませてきたが、ロックフェラー大学の新たな研究はこの癌の前駆体として働く奇妙な分子の『爆発explosion』についての説明を示唆する

「悪い変異が一つ、二つ、三つと続けて生じていくことで増殖が制御できなくなり、そこから癌が始まるという『古い』考えがある」
Titia de Lange教授は言う

「爆弾bombが染色体の一部を爆破して多くの変異が同時に生じるというのは、癌がどのようにして始まるのかに関するまったく新しい観点である
我々の最新の研究結果はこの爆弾の背後にある分子レベルの詳細を明らかにする」

12月17日にCell誌で発表される彼らの研究は、クロモスリプシス/chromothripsisという現象にまで至る細胞内でのイベントを説明する
しかしながら、これらのクロモスリプシスの起源についての洞察は、癌につながりうる別の分子イベントであるテロメア・クライシス/telomere crisisへの研究が元になっている

テロメアクライシスは、テロメアという染色体の末端にある保護キャップが細胞分裂の結果として短くなる時に起きる
テロメアのDNAが少ないと離れた染色体をお互いに接触しないよう防ぐことが難しくなる
もしそのような異常を持つ細胞が生き延びて分裂を続けると、それらは癌を生じる可能性がある

研究者はテロメアが融合しないように防ぐタンパク質を阻害し、
さらに細胞が癌化しないよう保護する分子経路のいくつかを使用不可にすることによりヒトの細胞でテロメアクライシスを再現し、
筆頭著者のJohn Maciejowskiがその後に続くイベントを撮影して記録した


これまで研究者たちは、いったん二つの染色体がテロメアの部分で融合して一つになっても細胞が分裂する間に結局は二つに分かれるだろうと考えてきた
しかし今回の研究で、そのようなことはまったく起きておらず、染色体が融合した細胞はそのまま分裂を続けるのが明らかになった
いったん分裂が完了して二つの娘細胞がお互いに離れようとすると、
両者が共有する染色体の一部が引き伸ばされて『染色体橋/クロマチンブリッジ/chromatin bridge』が形成される

「これを例えるなら真ん中で締め付けて絞ったpinched in the middle風船で、
そうしてできた二つの球がお互いに離れていこうとしているようなものだ」
Langeは言う
「または綱引きのようなもので、この場合は綱の両側のチームが娘細胞を表す
ロープはどんどん引き伸ばされる」

そうして形成された染色体橋の長さは、0.2ミリにもなるという
これは細胞レベルとしては聞いたことがないサイズである

結局、この『橋』はウイルスDNAのような異常DNAを標的とする酵素の一つによって分解される
ここで研究者が驚いたのは、この橋を壊す酵素TREX1が通常存在する場所は染色体を含む核ではなく、核外の細胞質だということである
二つの接触した細胞がお互いに離れようと進むにつれて橋のDNAは引き伸ばされ、その張力によって核を覆う核膜に小さな裂け目tearsが生じる
そこからTREX1が核内に入り、染色体橋を破壊するのである

いったんTREX1が染色体橋を分解すると、二つの娘細胞はお互いにはじかれたように離れる/spring away from each other
それぞれの細胞はブリッジのDNA断片のいくらかを持ち、細胞はそれを元に戻そうとする
細胞の何割かはこのイベントの傷により死ぬが、他は生き残って分裂し、損傷を受けたDNAを広める
このDNAはごちゃまぜに組み替えられているか、または癌を抑制する遺伝子のいくつかが失われている
言い換えれば、この一連のイベントがクロモスリプシスを引き起こす

「この研究結果ができれば癌を引き起こしうる早期の分子イベントの理解につながればいいと思う
それがいつの日か癌を早くに診断する新たな方法の開発に至るかもしれない」
de Langeは言う


de LangeとMaciejowskiは今回のプロジェクトでケンブリッジ(イギリス)のウェルカム・トラスト・サンガー研究所と(無論ロックフェラー研究所とも)協力して研究を実施した


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.11.054
Chromothripsis and Kataegis Induced by Telomere Crisis.
テロメアクライシスによって誘発されるクロモスリプシスとカティージス


Highlights
・テロメアクライシスの間に形成される『二動原体性の/2つの動原体を持つdicentric染色体』は、有糸分裂mitosisでは壊れない
・二動原体性の細胞は染色体橋を形成し、これが核膜を断裂ruptureさせる
・TREX1という 3′ヌクレアーゼは染色体橋に一本鎖DNA/ssDNAを生成し、その分解を促進する
・テロメアクライシス後の細胞はしばしばクロモスリプシスとカティージスを示す


Summary
テロメアクライシスは腫瘍形成の間に発生し、それはテロメアの予備の枯渇が頻繁にテロメア融合につながる時に起きる
その結果としての二動原体性の染色体/dicentric chromosomesがゲノム不安定性を促進することが提案されてきた

※centromere: セントロメア,動原体

今回我々はテロメアクライシスにおける二動原体性のヒト染色体の運命について検証した
二動原体性の染色体は有糸分裂の間一定不変invariablyに存続し、
娘細胞をつなぐ50から200マイクロメートル/μmの染色体橋が形成された

有糸分裂後期anaphaseの後の3時間から20時間時点でそれは分解するが、
その前の間期interphaseに染色体橋は核膜の断裂ruptureを誘発し、
細胞質の3プライムヌクレアーゼ/3′nucleaseであるTREX1を蓄積させて、
複製タンパク質A/replication protein A (RPA)でコートされた一本鎖DNAを形成する

CRISPRによるノックアウトでTREX1は一本鎖DNAの生成ならびに染色体橋の分解に寄与することが示された

テロメアクライシス後のクローンはクロモスリプシスとカティージスを示し、これはおそらくpresumably、断片化された染色体橋DNAの修復とAPOBEC編集の結果として起きると思われる

我々はヒトの癌におけるクロモスリプシスがテロメアクライシスにおいて形成される二動原体性の染色体のTREX1を介する断片化から生じる可能性を提案する


<コメント>
以前の訳でKataegisを適当にカティージスと読みましたが、いまだに正確な読み方がよくわかりません



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2557d6b78c3d3f44d0182feeb688dfd9
切断により誘発される複製/break-induced replication (BIR)が一本鎖DNAの大量の蓄積とその後の突然変異クラスターの形成につながる



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http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151210095101.htm
ER+乳癌のタモキシフェンへの抵抗性はAPOBEC3Bによって促進される可能性があり、原発腫瘍でAPOBEC3Bレベルが高い患者は低い患者よりもタモキシフェン治療での無増悪生存期間中央値が短い (7.5ヶ月 対 13.3ヶ月)
APOBEC3Bは遺伝子の変異を引き起こす酵素であり、変異の促進が抵抗性を促進することが示唆される



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4f370829bd235639aadb3a084208976c
APOBEC遺伝子ファミリーが癌の発症に関与する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/1b6d2086f9750f89df2334806e745196/?st=1
V(D)JリコンビナーゼによるDNA編集が的を外れてリンパ腫につながる


関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/1524a2901f5928ca17d0ccf185865a87
B細胞が急速に増殖するにつれてAIDの発現も増大し、的外れの損傷を引き起こす
 

メトホルミンは子癇前症を予防して治療する

2015-12-24 06:06:14 | 心血管疾患
New study indicates that metformin has the potential to prevent and treat preeclampsia

Drug shows promise for treating this complication of pregnancy that can threaten the life of both mother, baby

December 22, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151222082011.htm

産科学と婦人科学の学術雑誌であるAmerican Journal of Obstetrics and Gynecologyで発表された論文によると、
糖尿病で一般的に使われている薬のメトホルミンは
子癇前症/preeclampsia(妊娠高血圧症候群)を予防し、治療する能力があるかもしれないという
メトホルミンは妊娠中の糖尿病患者の治療にも長い間使われてきており、妊娠中の使用は安全であると考えられている

子癇前症は妊娠女性の5%から8%が罹患し、妊娠20週以降の高血圧の新たな発症ならびに尿中タンパク質の存在により診断される
この病態は妊婦死亡の主な原因であり、全世界で毎日約100人の母親と400人の周産期女性が亡くなっているが、
これまで子癇前症の唯一の治療は出産しかなかった

子癇前症は妊娠時にのみ生じる疾患であり、胎盤の問題と関連がある
胎盤への不十分な血液供給が損傷を引き起こして母親の血液中に有害な『毒素toxins』を放出させ、
高血圧や肝臓、脳、腎臓など多くの臓器に障害を引き起こす

数十年かけて、科学者は子癇前症が血管上皮細胞の疾患であることを同定してきた
少なくとも二つの『毒素』が胎盤によって作られ(可溶性VEGF受容体1/soluble vascular endothelial growth factor receptor 1、可溶性エンドグリン/soluble endoglin)、
子癇前症で増加して血管上皮細胞にダメージを与え、疾患の原因となる機能不全を引き起こす
しかしながら、現在これらの毒素を減少させる薬剤を妊娠中に臨床で利用することはできない


マーシー婦人病院とメルボルン大学(オーストラリア)の医師と科学者からなる研究グループは、メトホルミンがこれら二つの毒素の産生を減らし、傷ついた血管の治癒も助けることを報告する
筆頭著者のFiona Brownfoot博士たちは、メトホルミンが妊娠中の使用も安全であり、子癇前症の治療に使えるかどうかを見るための臨床試験が実施されるべきであると考えている

American Journal of Obstetrics and Gynecology誌で産科学の編集長であるRoberto Romero, MD, DMedSci.(Doctor of Medical Science) は、
今回のin vitro/ex vivoの研究結果をエキサイティングで有望であると評する/みなすcharacterize

Romero博士は、抗血管形成状態/anti-angiogenic state(血管形成が促進されない状態)は子癇前症だけでなく、他の妊娠合併症にも存在することを示す
(例えば胎児死亡fetal death、胎児発育遅延fetal growth restriction、早産premature labor)

※fetal growth restriction: 胎齢に対して5%以上の体重減少

「メトホルミンは21世紀のアスピリンのようである
この薬は糖尿病だけでなく多嚢胞性卵巣疾患polycystic ovary diseaseや癌に対してすら思いもよらない健康的な利益をもたらすことが発見されている」
Romero博士は言う

この容易な介入が子癇前症や他の妊娠合併症を防ぐのに効果的でありうるかどうかを決定するために
妊娠女性にメトホルミンを投与した以前のランダム化臨床試験や新たな臨床試験のシステマティックなレビューが至急必要であると
彼は考えている


http://dx.doi.org/10.1016/j.ajog.2015.12.019
Metformin as a prevention and treatment for preeclampsia: Effects on soluble fms-like tyrosine kinase 1 (sFlt-1) and soluble endoglin secretion, and endothelial dysfunction.

子癇前症は、胎盤の虚血/低酸素、ならびに可溶性Flt-1と可溶性エンドグリンの血液循環中への分泌と関連する
これが広範囲に血管上皮の機能不全を引き起こし、臨床的には高血圧と多臓器傷害として表れる

※endoglin: エンドグリン。血管内皮細胞の表面に存在するタンパク質で、TGF-βに結合する

最近、HIF1αを阻害する小分子が可溶性Flt-1ならびに可溶性エンドグリンの分泌を低下させることが発見されているが、それらの安全性プロファイルは不明である
メトホルミンは妊娠中も安全であり、ミトコンドリアの電子伝達鎖の活性を低下させることによりHIF1αを阻害することも報告されている



関連サイト
http://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&view=article&id=6056:2015723&catid=24&Itemid=111
メトホルミンを服用することで、母親の血糖値と子癇前症や未熟児に関連するマーカーのレベルは低下したが、流産や死産リスクは低減されなかった。



関連サイト
http://nihonjinken.kilo.jp/blog/?eid=100
抗VEGF薬はvascular healthを阻害するために、高血圧をきたします。薬の使用開始直後に血圧がはねあがることも少なくありません。また、使用開始数週間後には高度の蛋白尿がでることも珍しくありません。これは糸球体のpodocytesにVEGFが高濃度に発現していることが関係していると思われます。
Preeclampsiaは、血管新生のバランスがpro-angiogenicからanti-angiogenicに傾きすぎるために起こると考えられています。健全な胎盤発達のためにはVEGFやplacental growth factorなどが必要ですが、pro-angiogenicに傾きすぎないように、胎盤からはVEGFのシグナルを減少させる物質も同時につくられています。このVEGFシグナルを減少させる物質は、一般にsoluble Fms-like tyrosine kinase 1(sFlt1)、もしくはsVEGFR1といわれ、端的に言えば、VEGFのレセプターが細胞膜から分離して浮遊しているようなものです。sFlt1が血中に大量に浮遊しているとsFlt1と結合するVEGFが増え、結果、細胞膜上に存在しているVEGFレセプターと結合するVEGFが減少することになります。つまり、sFlt1が増えるとVEGFのシグナルが減少します。sFlt1, VEGF濃度とpreeclampsiaの発症には強い相関関係があります。
治療ですが、ハーバードのKarumanchiらのグループはコレステロール吸着膜を使用してsFlt1を取り除く方法(apheresis)を選択しました。
 

関連記事
ミトコンドリアからの逆行性シグナルはHIF-1αを介する

CAFは癌細胞が転移するための高速道路を作る

2015-12-23 06:48:50 | 
Smoothing the way for cancer cells to metastasize

How metastasizing tumors use non-cancerous fibroblasts to make a migration highway through surrounding extracellular matrix

December 15, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151214090017.htm

細胞外マトリックス(ECM)は全ての線維芽細胞から分泌されるフィブロネクチン/fibronectin(Fn)から主に構成される
通常組織の線維芽細胞(NAF)はそれを密集した網目状dense meshにするが、
癌関連線維芽細胞(CAF)は平行な束parallel bundlesにする


バンダービルト大学Donna WebbラボのBegum Erdoganたちが前立腺腫瘍や頭頸部腫瘍から得られた癌細胞をこれらのECM上で培養plateすると、
CAFのマトリックス上の癌細胞は一方向にうまく動いた

このようにCAFはマトリックスを『道』へと再編成するが、
その理由はCAFがフィブロネクチンの線維をNAFよりもしっかりつかむget a better gripためであることが明らかになった

研究者が牽引力顕微鏡/traction force microscopyを使って両者の違いを計測した結果、
CAFはNAFよりも強くミオシンIIというモータータンパク質からの力を上手く伝えることが可能であり、
それはインテグリンというフィブロネクチン線維へのコネクターconnectorを通じてのものだった

CAFはフィブロネクチンに結合するインテグリンが高レベルであり、さらにRacというGTPアーゼのスイッチがオンになっていた
ミオシンII活性を薬剤により阻害するとCAFの強い牽引力は奪われdeprived of、細胞外マトリックスは『正常な無秩序normal disorder』に戻った
これらの結果は癌の転移に関する長い間の謎を解決し、マトリックスが癌細胞を停止させるための薬剤の標的となりうることを示す
these results point to the matrix as a possible target for drugs to stop cancer in its tracks.


ASCB 2015 in San Diego
 

癌の過半数を駆動するプロセスを明らかにする

2015-12-22 06:54:38 | 
Scientists uncover process that could drive the majority of cancers

December 14, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151214150002.htm

p53遺伝子は遺伝子変異を防ぐという役割で知られ、『ゲノムの守護者』と呼ばれてきた
そして癌の半分以上がp53の変異または機能喪失から生じると考えられている
バージニアコモンウェルス大学/Virginia Commonwealth University (VCU) マッシーがんセンターの科学者、
Richard Moran, Ph.D.による研究はその理由を説明する


まず、Molecular Cancer Therapeutics誌で発表されたMoranの研究結果は、
p53遺伝子の変異または機能喪失がどのようにしてmTORC1(mammalian target of rapamycin complex 1)を活性化させるのかについて記述する
mTORC1は細胞の増殖に必要なエネルギー資源の調節を助けるタンパク質複合体である
mTORC1複合体は多くのタンパク質から構成され、細胞はリソソーム膜を足場として使ってこれらのタンパク質を一箇所に集める

通常の場合、p53遺伝子は必要に応じて
TSC2(tuberous sclerosis complex 2)というタンパク質がリソソームで適切なレベルに維持されるのを助ける
p53が適切に機能しないとリソソーム膜のTSC2レベルは低下し、RHEBというタンパク質がそれに取って代わるtakes its place

このRHEBの蓄積がmTORC1を活性化し、細胞増殖の制御の異常につながる

 p53→TSC2─┤RHEB→mTORC1
 p53↓→TSC2↓─┤RHEB↑→mTORC1↑

「p53が失われると癌の過剰な増殖につながるシグナル伝達プロセスを我々は初めて発見した
これらのタンパク質の相互作用は一連のイベントを通じて癌の発症につながる」
Moran, Paul M. Corman, M.D.は言う

彼はVCUマッシーがんセンターでがん研究のchair、基礎研究のassociate director、
発達治療学/Developmental Therapeuticsリサーチプログラムのco-leaderであり、
さらにVCU医学部では薬理学と毒物学の教授でもある


関連する研究でMoranのチームはペメトレキセド/pemetrexedに焦点を当てた
これは彼が共同で開発した薬であり、現在肺癌の大半で第一線の治療として使われている

Biological Chemistry誌に発表した研究で
MoranたちはペメトレキセドがmTORC1を妨害することにより作用することを実証する
ペメトレキセドはmTORC1を制御する要素の一つであるraptorというタンパク質を阻害し、
それがp53の変異や機能喪失が存在するかどうかに関係なく作用することを研究者は発見した
さらに、mTORC1の重要な調節因子であるTSC2がもはや機能していない場合でさえ作用することも明らかにした

「我々の発見は、ペメトレキセドがこれまで想像されていたよりはるかに臨床的な利用価値があることを示唆する」
Moranは言う

「この研究はp53が適切に機能していない他の癌に対するペメトレキセドの利用についての基礎を築くものであり、
これはもちろんp53だけでなく、TSC2の機能喪失によって起きる症候群である結節性硬化症にも利用できる
結節性硬化症は多くの臓器に良性だが破滅的に増殖する進行性の腫瘍を引き起こす」

※結節性硬化症: tuberous sclerosis
※TSC2: tuberous sclerosis complex 2


http://dx.doi.org/10.1158/1541-7786.MCR-15-0159
p53 Deletion or Hot-spot Mutations Enhance mTORC1 Activity by Altering Lysosomal Dynamics of TSC2 and Rheb
p53の消去またはホットスポット変異は、リソソームにおけるTSC2とRhebの動態を改変することによりmTORC1の活性を促進する

Abstract
p53の喪失または変異は、TSC2ならびにSestrin2の発現を低下させた

p53ヌル細胞へのTSC2のトランスフェクションはTSC2を元に戻しreplace、リソソームのRhebを減少させて野生型p53の細胞を再現した
対照的に、p53ヌル細胞にSestrin2のトランスフェクションはリソソームのmTORを減少させたが、Sestrin2レベルが低いとリソソームのmTORは変化しなかった


http://dx.doi.org/10.1074/jbc.M115.665133
AMPK control of mTORC1 is p53- and TSC2-independent in pemetrexed-treated carcinoma cells.
ペメトレキセドを投与した癌細胞において、AMPKはp53とTSC2には依存せずmTORC1を制御する

Abstract
AMPKはエネルギー状態のセンサーとして重要だが、
『アミノイミダゾールカルボキサミド リボヌクレオシド/aminoimidazolecarboxamide ribonucleoside (AICAR)』

から直接産生されるAMPアナログの『アミノイミダゾールカルボキサミド ヌクレオシド 一リン酸/aminoimidazolecarboxamide nucleoside monophosphate (ZMP)』

によっても活性化され、
また、抗葉酸のペメトレキセドによるプリン合成の阻害によってもAMPKは活性化する


しかし、この共通するメカニズムにもかかわらず、ペメトレキセドまたはAICARによって活性化されるAMPKシグナル伝達の下流は異なる

AICARにより活性化されたAMPKはmTORC1を阻害するが、
これは直接はmTORC1サブユニットのRaptorをリン酸化することによるものであり、
間接的にはmTORC1を調節するTSC2のリン酸化によりmTORC1を阻害する

対照的に、ペメトレキセドにより活性化したAMPKもmTORC1を阻害したが、
その機序はRaptorのリン酸化だけだった


この相違dichotomyの理由はp53の機能による
p53の標的遺伝子(TSC2を含む)の転写は、AICARによって活性化されるが、ペメトレキセドでは活性化されない
AICARもペメトレキセドもp53を安定化させるが、AICARだけがChk2リン酸化を活性化させ、p53依存的な転写を刺激する

しかしながら、AMPKによるRaptorリン酸化はp53から独立しており、そしてそれはmTORC1を阻害するのに十分である
(ペメトレキセド投与でRaptorリン酸化しか生じなくてもmTORC1は阻害される)


結論
ペメトレキセドのmTORC1への効果はTSC2ならびにp53からは独立している
AICARに応じたp53の転写の活性化はChk2の活性化によるものだが、これはペメトレキセドによっては誘発されない



関連記事
http://ta4000.exblog.jp/17636283
核から細胞質に排出されたFoxO1はTSC2に結合する。それによりTSC1/TSC2複合体は解離して、結果としてRhebが介するmTORC1-S6K1経路は活性化する。

http://ta4000.exblog.jp/17719117
AMPKは直接TSC2とRaptorをリン酸化することによりmTORC1を阻害する。

http://ta4000.exblog.jp/17602564/
Rhebの活性は、結節性硬化症タンパク質のTSC1(ハマルチン)とTSC2(チュベリン)により厳密に調節されている。TSC1とTSC2は機能的なヘテロダイマー複合体を形成し、TSC1はTSC2を安定させる。TSC2複合体にはGTPアーゼ活性化タンパク質 (GAP) が存在し、GTPをGDPに加水分解する。TSC1とTSC2の複合体はこの機能によりRhebを不活化させる。
TSC1かTSC2遺伝子のどちらが機能喪失型の変異を起こしても、過誤腫症候群である結節性硬化症を引き起こす。
 

ハイリスクB-ALLの見通しを改善する新しいアプローチ

2015-12-21 06:18:24 | 癌の治療法
Novel drug approach could improve outlook in high-risk leukemia

December 14, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151214142543.htm

B細胞性急性リンパ芽球性白血病/B-cell acute lymphoblastic leukemia (B-ALL) は悪性の血液がんで、
アメリカでは毎年約2600人の子供と1900人の成人がB-ALLを発症する

過去50年を越える化学療法の進歩のおかげで生存率は改善されているが、
毎年約1000人のアメリカ人がいまだに亡くなっており、それは主にハイリスクB-ALLというサブタイプによるものである
ハイリスクB-ALLの患者は高い確率で治療後に再発する

ペンシルバニア州立大学ミルトン・S・ハーシー医療センター/Penn State Milton S. Hershey Medical Centerで
小児科学の准教授associate professorであるSinisa Dovat博士によると、
ハイリスクB-ALL患者のほとんどに共通していることがあり、
それはIkarosという『白血病の発症を妨げるタンパク質』の活性が損なわれていることだという

「我々は通常、DNAにIkarosの二つのコピーを持つが、ハイリスクB-ALLの患者はそのうちの一つが消えているか変異している」
Dovatは言う

今まで、Ikarosのコピー数が減っているか変異している場合にその機能を促進できるとは考えられていなかった
現在のハイリスクB-ALLへの治療が目指しているのは『白血病を促進する経路』を標的とすることであり、『白血病と戦うための経路』ではない

Dovatのチームは、どのようにしてIkarosの機能不全がB-ALLで生じるのかを理解しようとし始めた
それがIkarosの活性を標的として改善する薬剤の開発につながる可能性を期待して

この研究結果はBloof誌に発表された


まず初めに、研究チームはIkarosが白血病を防ぐために使うメカニズムの一つを同定した
転写因子であるIkarosの機能はDNAに結合して細胞の数多くの遺伝子の活性を調節することである
研究によりIkarosはその遺伝子活性を制御する能力により『血球の機能のマスター調節因子』として働くことが明らかになった
正常の場合、Ikarosは血球が無制限に増殖することを妨げる

「もしIkarosの機能が低下するか損なわれると、血球はその制御を逃れて急速に増殖し始める
それが結果としてハイリスク白血病につながる」
Dovatは言う

今回の研究で、一つ残った正常なIkarosの遺伝子から作られる『機能するIkarosタンパク質』は
カゼインキナーゼ2/casein kinase 2(CK2)という酵素を標的とする新しい種類の薬によって回復された

CK2は白血病や他のタイプの癌で活性が強く上昇しているが、研究者はCK2がIkarosの機能を直接損なうことを明らかにした

「このように、ハイリスクB-ALLではIkarosのコピーの一つが失われているか変異している一方で、
Ikaros遺伝子のもう一つのコピーから作られるタンパク質も十分に機能していないが、
それはCK2のレベルが高いためである」

Dovatたちによってテストされた阻害剤はCK2を阻害してIkarosの機能を回復し、B-ALL患者の癌細胞において強力な治療効果を生じる
この薬は癌細胞の増殖と生存を大幅に低下させた

「これまでの典型的な治療アプローチは、癌や白血病を引き起こすタンパク質を標的とするものである
白血病と戦うタンパク質の機能を促進するというアプローチはほとんど存在しない」


Dovatは現在CK2阻害薬の適切な用量を研究し、どのようにして新しい薬を現在の治療に組み込むかを決定しようとしてる

「我々は今回の前臨床モデルを使い、
最良の治療効果を得るために既存の化学療法をどうやって組み合わせることができるかを決めるつもりである」

今回の研究結果は、B-ALLに加えてT-ALLや急性骨髄性白血病のような他のタイプの白血病、さらに充実性腫瘍など、Ikarosの機能の喪失が関与する癌に関連がある
研究者はCK2阻害薬をこれらの疾患でテストしようと計画している


http://dx.doi.org/10.1182/blood-2015-06-651505
Targeting casein kinase II restores Ikaros tumor suppressor activity and demonstrates therapeutic efficacy in high-risk leukemia.
カゼインキナーゼIIを標的にすることでIkarosの腫瘍抑制活性を回復し、ハイリスク白血病において治療効果を実証する

Abstract
転写因子のIkaros (IKZF1) は腫瘍抑制因子である
Ikarosは細胞の増殖を制御し、それは細胞周期の進行を促進する遺伝子の発現ならびにPI3K経路を抑制することによる
Ikarosの機能はCK2によって損なわれ、CK2は白血病で過剰発現することを我々は示す

ハイリスク白血病ではIKZF1アレルの一つが消去されているが、
CK2の阻害により残っている野生型IKZF1アレルの転写抑制性の機能は回復する
 

手術前/手術後の化学療法について

2015-12-20 06:36:31 | 癌の治療法
Adding carboplatin to presurgery chemo improved disease-free survival for patients with triple-negative breast cancer
Previous results showed carboplatin also increased pathologic complete responses
December 10, 2015
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151210031209.htm

アントラサイクリンまたはタキサン系をベースとするネオアジュバント化学療法へのカルボプラチンの追加は、トリプルネガティブ乳癌の無増悪生存期間を改善する

GeparSixto臨床試験フェーズII

the 2015 San Antonio Breast Cancer Symposium


※アジュバント化学療法: 主治療(手術,放射線など)の後の化学療法

※ネオアジュバント化学療法: 主治療前の化学療法



Pathologic complete response to presurgery chemo improves survival for patients with triple-negative breast cancer
December 9, 2015
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151209103911.htm

手術前化学療法/ネオアジュバント療法による病理学的な完全奏効は、トリプルネガティブ乳癌患者の生存を改善する

CALGB/Alliance 40603臨床試験フェーズII

「このことは重要ではあるが、我々の研究は規模が十分ではない
標準的なネオアジュバント化学療法にカルボプラチンまたはベバシズマブを加えることが、
無再発生存event-free survivalならびに全生存を改善するかどうかを決定するための統計的検出力を持たない」

the 2015 San Antonio Breast Cancer Symposium



Capecitabine improved outcomes for breast cancer patients with disease after presurgery chemo
December 9, 2015
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151209103903.htm

カペシタビンは、手術前化学療法/ネオアジュバント療法後の乳癌の結果を改善する

the 2015 San Antonio Breast Cancer Symposium



Women with luminal A subtype of breast cancer did not benefit from adjuvant chemotherapy
Patients with other subtypes had benefit
December 9, 2015
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151209103907.htm

luminal Aサブタイプの乳癌には、アジュバント化学療法は有益ではない

the 2015 San Antonio Breast Cancer Symposium



Survival and time to surgery, chemotherapy for patients with breast cancer
December 10, 2015
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151210125205.htm

アジュバント化学療法は、手術から91日以内または診断から120日以内に受けるべき

http://dx.doi.org/10.1001/jamaoncol.2015.3856
Delayed Initiation of Adjuvant Chemotherapy Among Patients With Breast Cancer.

http://dx.doi.org/10.1001/jamaoncol.2015.4508
Time to Surgery and Breast Cancer Survival in the United States.

http://dx.doi.org/10.1001/jamaoncol.2015.4506
Timeliness in Breast Cancer Treatment—The Sooner, the Better.
 

CTL019療法の高い奏効率と長期の寛解が観察される

2015-12-19 06:12:20 | 癌の治療法
High response rates, long-term remissions seen in trials of personalized cellular therapy CTL019 for pediatric and adult blood cancers

December 7, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151207164042.htm

再発/難治性の急性リンパ芽球性白血病/acute lymphoblastic leukemia (ALL) に罹患した59人の子供のうち、93%の55人がCTL019療法により寛解した
CTL019はまだ研究中の治療法で、自分自身の免疫細胞であるT細胞を使う
子供の18人は1年を越えて寛解を維持し、9人は2年以上寛解が続いている

CTL019は非ホジキンリンパ腫/non-Hodgkin lymphoma (NHL) の治療法としても認識され始めており、
今回の研究では患者の半数以上の57% (28人中15人) が奏効した

ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院とフィラデルフィア小児病院/CHOPによるこれらニつの臨床試験の研究結果は、
第57回米国血液学会議/American Society of Hematology (ASH) で発表される

この結果はペンシルベニア大学のキメラ抗原受容体/chimeric antigen receptor (CAR) 療法を使った研究を広げるものであり、
2010年に始まった慢性リンパ性白血病/chronic lymphocytic leukemia (CLL) への臨床試験の結果が元になっている

「観察されている奏効率response rateと持続性durabilityは前例がないものであり、
個別化された細胞療法はこの困難な血液がんを長期間コントロールするための強力な方法となるだろうという希望を我々に与える」
ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院の教授であり
フィラデルフィア小児病院でがん免疫治療フロンティアプログラムのディレクターでもあるStephan Grupp, MD, PhDは言う


ALLについての発表は以下の通りである (Abstract #681)
再発/難治性ALLの子供59人にCTL019細胞を注入する臨床試験の結果、55人が完全奏効に至り、1年全生存率は79%だった
6ヶ月時点での非再発生存率relapse-free survivalは76%で、1年経過時点では55%だった
中央値12ヶ月のフォローアップで34人の患者が完全寛解を継続し、6人が幹細胞移植のような追加治療を受けた
再発した20人の患者のうち、3人は追加の治療後に疾患が再発し、13人はCD19陰性による再発が生じた(CD19はCTL019療法の標的である)


もう一つの発表は非ホジキンリンパ腫の試験についてである (Abstract #183)
CTL019の細胞注入から3ヶ月後、評価対象となった28人の患者のうち、57%の15人が治療に応答した

濾胞性リンパ腫/follicular lymphoma (FL) の患者の奏効率は72% (11人中8人)、
びまん性大細胞型リンパ腫/diffuse large B-cell lymphoma (DBCL) は47% (15人中7人)、
マントル細胞リンパ腫/mantle cell lymphomaは50% (2人中1人) が奏効した

全体として、14人の患者が完全寛解complete remissionに至った
CTL019を受けた患者の全てが、試験以前に既存の治療(多くが幹細胞移植)に応答しなくなっていた

濾胞性リンパ腫/FLならびにびまん性大細胞型リンパ腫/DBCLの患者で、
無増悪生存期間/progression-free survival (PFS) の中央値は
フォローアップ中央値の14ヶ月~後にまだ到達していない


ペンシルバニア大学アブラムソンがんセンターとペレルマン医学大学院の慢性リンパ性白血病/リンパ腫臨床治療研究で
ロバート・マルガリータ・ルイス-ドレフュス准教授/Robert and Margarita Louis-Dreyfus Associate Professorである
Stephen Schuster, MDは言う
「過去数年、この免疫療法の分野は、血液がんに対する新しく有望な一連の実験的治療を提供してきた
今回の臨床試験の結果は、
ホジキンリンパ腫/NHLの患者における個別化医療が果たす役割に関して増えつつあるエビデンスに加わるものとなる」


CTL019ではそれぞれの患者自身のT細胞を透析と同様の方法で集め、癌細胞を追跡して殺すようにラボで再プログラムする
患者はリンパ球を枯渇させるよう化学療法を受けた後、作り変えられたT細胞を注入される
修正されたT細胞はキメラ抗原受容体/chimeric antigen receptor (CAR) という抗体のようなタンパク質を持ち、
このCARはALLならびにホジキンリンパ腫を特徴づける癌性B細胞を含めたB細胞の表面に存在するCD19タンパク質を標的にするようにデザインされている
こうして患者の体内に戻された『ハンター』細胞は、増殖して癌細胞を攻撃すると考えられている

CARに組み込まれたシグナル伝達ドメインは修正細胞の急速な増殖を促進し、
今回の試験で単一の修正細胞それぞれから1万以上も増殖することが明らかになった

T細胞療法を受けた患者の中には注入から数週以内にサイトカイン放出症候群/cytokine release syndrome (CRS) を発症する者がいるが、これは典型的には修正細胞が体内で最も増殖する時期である
この病態ではインフルエンザのような症状を様々な程度で生じ、
高熱、吐き気nausea、筋肉痛、幻覚hallucinationやせん妄deliriumのような神経症状を伴い、
重症の場合は血圧低下と呼吸困難が起きるため集中治療intensive careが必要となる
今回の試験でリンパ腫患者の18人がCRSを経験し、子供のALL試験では88%がCRSを発症した

フィラデルフィア小児病院/CHOPとペンシルベニア大学の研究チームはこれらの副作用を治療するためにIL-6阻害剤のトシリズマブtocilizumabを含むマネジメント・ストラテジーを開発した
二つの臨床試験に参加した患者全てがCRSから回復したが、リンパ腫患者の一人が重症の脳炎encephalitisに数ヶ月苦しんだ

現在、CLL、多発性骨髄腫、中皮腫mesothelioma、卵巣癌、膵臓癌、脳腫瘍に対するCARの臨床試験がペンシルベニアで進行中である

CTL019は研究中であるため安全性と効能のプロファイルはまだ十分に確立されておらず、
十分にコントロールされた監視下での臨床試験を通してのみアクセス可能である
これらの試験は治療についてのさらなる理解と潜在的な利益、そしてリスクを調べるために注意深く設計されている



関連サイト
http://www.afpbb.com/articles/-/2917476
米ペンシルベニア(Pennsylvania)州のフィラデルフィア小児病院(Philadelphia)の医師らは先週、白血病で余命わずかとみられていた7歳の少女の命を救うことに成功したと発表した。
改変エイズウイルスを使い、医師らはエミリーさん自身の免疫細胞を、白血病に打ち勝つことができる細胞に変えて治療に使用。エミリーさんは、正式には「CTL019治療法」と呼ばれるこの治療を受けたわずかな患者の1人であり、最初の小児患者だ。



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150909213412.htm
September 9, 2015
Source: University of Pennsylvania School of Medicine

9つの治療が効かなくなった多発性骨髄腫multiple myelomaの患者が、ペンシルベニア大学によって開発されたCTL019という治療法により完全な寛解を経験した
この研究中の方法は化学療法ならびに自家移植の幹細胞移植と組み合わせたもので、骨髄細胞になる細胞を標的にして殺すようデザインされた新たな治療戦略である

キメラ抗原受容体/CARを持つT細胞は、B細胞表面に見られるCD19を標的にするようデザインされる
B細胞には癌化したB細胞も含まれ、これは複数タイプの白血病とリンパ腫の特徴である

「多発性骨髄腫の患者にCD19治療が有効なのかという疑念もあるが、それは患者の癌化したプラズマ細胞はほぼすべてがCD19を発現していないためである」
首席著者のEdward Stadtmauer博士は言う

「しかし、幹細胞の可能性がある細胞はCD19が陽性でありうるというデータが存在する
我々の仮説は、それら細胞前駆体を標的にした治療を開発できる可能性があるというものだ」


http://dx.doi.org/10.1056/NEJMoa1504542
Chimeric Antigen Receptor T Cells against CD19 for Multiple Myeloma.




関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141207091419.htm
December 7, 2014
Source: Children's Hospital of Philadelphia

急性リンパ芽球性白血病/acute lymphoblastic leukemia (ALL) に対して、生体工学でbioengineered生成したCTL019細胞/CD8+によりCD19を標的にする
副作用は免疫調整薬immunomodulating drugで抑制する
健康なB細胞も死んでしまうため、抗体を投与して対応した

試験には39人の子どもが参加
1ヶ月後、36人 (92%) が完全奏効complete responses
36人中25人 (69%) が中央値6ヶ月フォローアップ時に寛解を維持remained in remission
36人中10人が再発、10人中5人が死亡



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141204152703.htm
December 4, 2014
Source: University of Texas M. D. Anderson Cancer Center

急性リンパ性白血病/acute lymphocytic leukemia (ALL)、非ホジキンリンパ腫/non-Hodgkin lymphoma (NHL)、慢性リンパ性白血病/chronic lymphocytic leukemia (CLL) に対するCAR T細胞療法
CD19特異的キメラ抗原受容体をT細胞に発現させ、B細胞に発現するCD19を標的にする

CAR発現T細胞を作成する際にトランスポゾンのSleeping Beautyを利用する
ドナーまたは自分の幹細胞にトランスポゾンを使ってT細胞にCARを発現させる



関連サイト
http://www.cancerit.jp/28187.html
患者のCARを作成するのに、ウイルスを使わず、それほど費用もかからない方法を開発した。この手法はSleeping Beauty(眠れる森の美女)と呼ばれる。
なぜなら、この手法が、何百万年も前に脊椎動物の最後の共通祖先に存在したトランスポゾン(ゲノムの中でその位置を移動することができるDNA塩基配列)を再構築したものに依存しているためである。



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141015190826.htm
October 15, 2014
Source:University of Pennsylvania School of Medicine

急性リンパ芽球性白血病/acute lymphoblastic leukemia (ALL)に対して、B細胞のCD19を標的にするようにT細胞をリプログラムして投与するCTL019療法
副作用はサイトカイン放出症候群/cytokine release syndrome (CRS) であり、最悪の場合は血圧低下と呼吸困難が起きる
さらに、CD19を発現しないB細胞による再発が起きることもある
 


RNAトリプルヘリックス・ヒドロゲル接着剤で腫瘍を縮小する

2015-12-18 06:20:36 | 癌の治療法
Shrinking tumors with an RNA triple-helix hydrogel glue
December 7, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151207113746.htm

ブリガム・アンド・ウィメンズ病院/Brigham and Women's Hospital (BWH) の研究者は
効率的かつ効果的efficient and effectiveに遺伝子療法を送り届けるための手段を開発し、
それによりトリプルネガティブ乳癌の前臨床モデルにおいて90%近くまで腫瘍を縮小させた

この新しい技術はヒドロゲルhydrogelと自己形成性のナノパーティクルを使う
ヒドロゲルは強力接着剤super-glueのようなゲルであり、2つの溶液が混ざると自発的に形成される
そしてナノパーティクルは腫瘍を抑制して標的にする2つのマイクロRNAから構成される

このプラットフォームは局所的に注入することが可能である
それにより腫瘍のある箇所に用量を増やすことができるようになり、一方で腎臓や肝臓などの臓器に蓄積するリスクを低下させる

この自己形成性のナノパーティクルを含む粘着剤adhesiveがこのアプローチを使ってマウスモデルに注入され、
既存の化学療法薬より強力で、腫瘍細胞に選択的かつ特異的な効果を示し、生存時間を延長した

「癌は全身性の疾患であり全身への治療が必要であると通常は見られているが、今回我々は局所的な治療が非常に強力であることを示す」
首席著者のNatalie Artzi, PhDは言う

「この結果はとても優れたものであり、局所的で徐放性sustainedのデリバリーの強力さを実証する
これは癌治療における遺伝子治療の有望さを示すものだ」

研究者はこのアプローチが他のマイクロRNAや別の種類の遺伝子的な物質、例えばアンチセンスRNAや低分子干渉RNAなどを組み合わせて、癌以外の広範囲な疾患に送り届けて治療するためにも使えることに言及する

次のステップとして研究チームはこの技術をより大きな動物モデルにおいて生体適合性biocompatibilityと効能efficacyに関してテストする予定であり、
プラットフォームの規模を拡大して、潜在的に治療として使えるマイクロRNAと癌の治療法の組み合わせをスクリーニングすることで治療の改善につなげようとしている


http://dx.doi.org/10.1038/NMAT4497
Self-assembled RNA-triple-helix hydrogel scaffold for microRNA modulation in the tumour microenvironment.
腫瘍微小環境においてマイクロRNAを調整するための、自己形成性RNAトリプルヘリックス・ヒドロゲルによる足場

Abstract
マイクロRNAを癌の治療法として使える可能性は、効果的に届けるための手段がないために限定される
今回我々は、
2つのマイクロRNA(腫瘍を抑制する『マイクロRNA』と、腫瘍形成性マイクロRNAを阻害する『拮抗マイクロRNA/antagomiR』)から構成される自己形成性のデュアルカラーなRNAトリプルヘリックス構造/self-assembled dual-color RNA-triple-helix structureが
腫瘍を相乗的に阻止する優れた能力を発揮することを示す

※color: 色、色合い、外見


RNAトリプルヘリックスからデンドリマーへの共役結合は安定した三重ナノパーティクルを形成させ、
これがデキストランアルデヒドとの相互作用上にRNAトリプルヘリックスの接着性の足場を形成する
後者のデキストランアルデヒドは腫瘍で自然に生じる組織アミンと化学的に相互作用して結合する

我々はさらに自己形成性のRNAトリプルヘリックス共役結合体がin vitroとin vivoで機能的なままであり、
トリプルネガティブ乳癌マウスモデルの腫瘍をゲル移植後2週間で90%近く縮小させることも示す

我々の発見は
RNAトリプルヘリックス・ハイドロゲルが有効な抗癌プラットフォームとして使用可能であり
癌の内因性マイクロRNAの発現を局所的に調整することを示唆する



Figure 1: Self-assembled RNA-triple-helix hydrogel nanoconjugates and scaffold for microRNA delivery.
マイクロRNAを送り届けるための自己形成性RNAトリプルヘリックス・ハイドロゲル・ナノ共役結合体と足場

aは『2カラーのRNAトリプルヘリックス』を形成するための3本のRNA鎖の自己形成プロセスを示す
このRNA三重ナノパーティクルは、安定したツーペアのFRETのドナーdonor/クエンチャーquencherとなるRNAオリゴヌクレオチドから構成される

※quench: 火/光を消す、冷却する、力づくで抑える



参考サイト
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/FRET
二つの蛍光分子がごく近接して存在する場合、一つの蛍光分子からもう一つの蛍光分子へエネルギーが移行する事が知られ、この現象をFörster共鳴エネルギー移動(FRET)という。蛍光分子のうち、エネルギーを受け渡す方をドナー、受け取る方をアクセプターと呼ぶ。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B6%88%E5%85%89
消光

https://en.wikipedia.org/wiki/Quenching_(fluorescence)
クエンチング/quenching


関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ba31225fb3f8b2ca8d9732645ddc4c3d
PD-L1を抑制するmiR-34aをリポソームナノパーティクルにより癌にデリバリーする



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151203122211.htm
重炭酸アンモニウムammonium bicarbonateを使ったナノパーティクルを近赤外線レーザー光near-infrared laser lightによって気化させ、癌細胞のエンドソームを破壊してマイクロRNAのmiR-34aを届ける
 

検出が難しい癌遺伝子の変異を明らかにする

2015-12-17 06:10:07 | 
Study uncovers hard-to-detect cancer mutations

Findings could help identify patients who would benefit from existing drugs

December 14, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151214130353.htm

ワシントン大学医学部の新たな研究によると、
現在のゲノム分析へのアプローチは患者の腫瘍に存在するある種の『複合的な突然変異/complex mutation』を検出するのに一貫してsystematically失敗することが示された
さらに、この複合的な変異のかなりの割合がよく知られた癌遺伝子で見つかるという
その遺伝子は既存の抗癌剤で標的にできる可能性があり、おそらくそれにより利益を得る患者の数を拡大するだろう
この研究結果はNature Medicineの12月14日号に掲載される

「標的になりうる変異を発見できないというのはショッキングであるdevastating」
ワシントン大学マクダネル・ゲノム研究所/McDonnell Genome Instituteのアシスタントディレクターであり、
医学部の准教授associate professorでもある首席著者senior authorのLi Ding, PhDは言う

「我々はこれまでの癌ゲノム研究で一貫してconsistently見逃されてきたある種の遺伝子エラーを発見するためのソフトウェア・ツールを開発し、そのようなイベントを重要な癌遺伝子で非常に数多く発見した
この種のイベントを発見する能力は癌の研究と臨床的な実践のどちらにも重要である」


ゲノムの変異の生じ方は様々だが、最も単純なものはおそらくDNAコードの『文字』の一つが変化することだろう
より複雑な変異には文字がいくつか消えたり挿入されるものがある

今回の新たな研究では8,000人の癌患者の変異に焦点を当て、文字が挿入されると同時に削除されるという変異も調べた
「挿入と欠失がゲノムの同じ箇所に同時に起きていることから、我々はこの種の変異を『挿入欠失indel』と呼ぶ」
Dingは言う

「このようなイベントを捉えるのは非常に難しいが、
それは既存のアプローチがどちらか一方を見つけるようにデザインされているからである
両方のタイプを同時に同じ箇所で検出できるようにはなっていない」

研究者は複合的な挿入欠失を見つけるために特殊化したコンピューターソフトウェアを開発し、
意図的に複合的な変異を導入することでそのゲノム配列決定の正確さを確認した

次に研究者は既に配列決定された癌のゲノムを調べ、
癌と関連する遺伝子内に285の複合的な挿入欠失が存在するのを発見した

これらの複合的な挿入欠失イベントの約81パーセントがこれまでのアプローチによる最初の分析で見過ごされており、
他の18パーセントは別の種類の変異と誤認されていた


Dingはこれら複合的な挿入欠失を見つけるための特別なツールを開発する重要性を強調する
なぜなら、今回の研究データから
それらが既存のツールではほとんど全く検出されず、
加えてランダムとは考えられないほどそれらが重要な癌遺伝子に集中するように見えることが示唆されるからである

この情報は、挿入欠失が見つかった遺伝子にその変異の影響を打ち消すようにデザインされた薬剤が既に存在する時に価値を持つ
研究者は特に肺癌に関連するEGFRに複合的な挿入欠失変異を同定したが、
もしそのような挿入欠失がEGFRに見つかった場合、
エルロチニブのようなEGFR阻害剤が腫瘍のタイプとは関係なく有益な可能性があることをDingたちは示唆する

また、研究者は複合的な挿入欠失を、メラノーマに関与すると思われる遺伝子のKITにも発見した
この分析は、KITに複合的な挿入欠失を持つ患者にイマチニブソラフェニブのようなKITを標的にする薬剤が有効だろうということを示唆する

研究者が開発したソフトウェアはPindel-Cという名称で、 2009年に筆頭著者のKai Ye, PhD准教授によって公表されたPindelを元に構築されたものである
どちらも現在オンラインで自由にダウンロード可能である
http://www.ebi.ac.uk/~kye/pindel/
http://gmt.genome.wustl.edu/packages/pindel/


http://dx.doi.org/10.1038/nm.4002
Systematic discovery of complex insertions and deletions in human cancers.
ヒトの癌における複合挿入欠失の体系的な発見

Abstract
複合的な挿入欠失(インデル/indel)は、
DNAが削除されると同時に様々なサイズのDNA断片が同じゲノムの場所に挿入されることにより形成される

今回我々は8000人を越える癌患者のサンプルのコード配列における体細胞の複合インデルの体系的な分析を発表する
使用したソフトウェアはPindel-Cである

分析した患者の約3.5%において285の複合的なインデルが癌関連遺伝子に存在するのを我々発見した (PIK3R1, TP53, ARID1A, GATA3, KMT2D)
以前の2199人のサンプルの報告では、これらはほぼ全ての例で見落とされていたoverlooked (81.1%) か、アノテーション/注釈が間違っていたmisannotated (17.6%)

フレーム内の複合インデルはPIK3R1とEGFRに多く、フレームシフトはVHL, GATA3, TP53, ARID1A, PTEN, ATRXに広く見られた

さらに、複合インデルは強い組織特異性tissue specificityを示す
(例えばVHLは腎細胞癌サンプル、GATA3は乳癌サンプル)

最後に、これまで見過ごされてきた薬剤開発の対象となりうる変異の発見は、構造的分析により支持される

今回の研究は複合インデルの発見改善ならびに医学研究における解釈の重要性を示す