短歌バトンに続いて今度はブック・バトンが、みあ(やや)さんから渡ってきました。
ネット歌人の多くは、ぼくと世代がだいぶ違います。
ぼくのバトンなどを渡されてもお気の毒だと思いますので、最後の質問は失礼させていただきます。
●一ヶ月の読書冊数
ぼくの読書の仕方は、1冊の本が興味深いと同時平行的に、それに関連した(著者・内容)何冊もの本を次々に集めて読むというだらしないものです。しかも、最初の1冊が読み終わらないうちに、まったく別の興味深い本を読み始めるのがしばしばなのです。さらに、1週間に1回は近くに3箇所ある区立の図書館のどれかに行って、面白そうな本を常に10冊前後借りてしまいます。
現在読書中の本が常に5冊前後という状況のうえ、面白そうなところ、関連するところだけを読む本がけっこう多いものですから、一ヶ月の読書冊数はよくわかりませんね。
●今読んでいる最中の本
鹿野政直『兵士であること 動員と従軍の精神史』(朝日新聞社、2005年1月)
米田利昭『渡辺直己の生涯と芸術』(沖積社、1990年)
高野公彦『宮柊二』(本阿弥書店、2001年)
宮田光雄『《荒れ野の40年》以降』(岩波ブックレット、2005年5月)
永井清彦編訳『ヴァイツゼッカー大統領演説集』(岩波書店、1995年)
北出明編著『風雪の歌人 孫戸妍(ソンホヨン)の半世紀』(講談社出版サービスセンター、2001年)
●最後に買った本
北出明編著『風雪の歌人 孫戸妍(ソンホヨン)の半世紀』(講談社出版サービスセンター、2001年)
『徳島新聞』2005.6.23付けに次のような記事が載っていました。その孫戸妍さんの評伝です。
「韓国で行われた日韓首脳会談は、冷え切った関係を修復できないままに終わった。しかし、脚光を浴びた人がいる。小泉純一郎首相でも盧武鉉(ノムヒョン)大統領でもない。韓国の歌人、故・孫戸妍(ソンホヨン)さんである
会談後の共同記者会見。小泉首相の口から、こんな短歌が飛び出した。〈切実な願いが一つ我にあり 争いのなき国と国なれ〉。日韓両国の行く末を案じる孫さんの作品である。これが上っ面のきれい事でないのは、孫さんの経歴をみれば分かる
一九二三年、東京生まれの孫さんは、ソウルの女子高を卒業後日本に留学。歌人の佐佐木信綱氏に師事して短歌を始め、一昨年、韓国で八十歳で亡くなるまで詠み続けた。「昭和万葉集」(講談社、八○年刊)にも作品五首が収められている
〈もろともに同じ祖先をもちながら銃剣取れりここの境に〉。南北に分断された民族の悲劇を詠んだ作品である。四十年近く朝鮮を植民地支配した日本の短歌など、なぜ詠むのか。そんな非難も浴びながらの短歌制作だったといわれる
だからだろう。韓国の新聞「中央日報」で見つけた孫さんのこんな言葉が心にしみた。「韓国からも、日本からも、北朝鮮からも、星は近くで美しく見えます
日韓国交正常化からきのうでちょうど四十周年。日韓のはざまで揺れた孫さんの「切実な願い」がかなうのはいつの日か。 」
〈切実な願いが一つ我にあり 争いのなき国と国なれ〉と詠った孫戸妍さんの歌自体は「上っ面のきれい事」の歌などではありませんが、靖国参拝に固執して日韓関係をこじらせている小泉さんの口からこの歌が出ると、なんだかそうした歌のように見えてしまいます。
●よく読む、または思い入れのある本5冊
ロジェ・マルタン・デュ・ガール、山内義雄訳『チボー家の人々』
16歳の夏に全身全霊を吸い込まれるようにして読んだ長編です。
若い世代には、高野文子『黄色い本 ジャック・チボーという名の友人』(講談社、1999年)で、辛うじて知られているようですね。
野上弥生子『迷路』
教職に就いたばかりの25歳のころに初めて読み、感動しました。日本文学史に残る傑作長編小説だと信じています。
現在の日本はふたたび戦前という「迷路」に迷い込み始めているのかもしれません。
読み直したくなりました。
堀田善衛『若き日の詩人たちの肖像』
これも教職に就いたばかりに読み、感動した、自伝的小説です。
以来、何回も読み直して来ましたが、去年また再読し、改めてその深さに驚きました。
田村隆一・中村真一郎・加藤周一といった「若き詩人たち」の群像が、いかに戦争に巻き込まれていったか、いかなかったか。
『迷路』と並ぶ傑作です。
辻邦生『背教者ユリアヌス』
これも教職に就いたばかりに読み、感動したものです。
類まれなるストーリーテラーの辻ワールドにすっかり魅了され、辻邦生はそのあとずいぶん読みました。
晩年の辻邦生と往復書簡を交わした水村美苗の『本格小説』(新潮社、2002年)を読んで、『背教者ユリアヌス』を久しぶりに読み返したくなりました。
恩田陸『夜のピクニック』(新潮社、2004年)
これはいかにもといったクサさのまったくない、文字通りの青春小説の傑作です。
若いってやっぱりいいなと心から納得させられました。
直木賞を取るかと期待していましたが、本屋大賞でしたね。
高校生や大学生のお子さんがいらっしゃったら、ぜひおススメです。
ああ、藤沢周平『蝉しぐれ』も挙げたかったなあ…(といって挙げてますね)。
●バトンを渡す相手3人の名前。
ネット歌人の多くは、ぼくと世代がだいぶ違います。
ぼくのバトンなどを渡されてもお気の毒だと思いますので、最後の質問は失礼させていただきます。
●一ヶ月の読書冊数
ぼくの読書の仕方は、1冊の本が興味深いと同時平行的に、それに関連した(著者・内容)何冊もの本を次々に集めて読むというだらしないものです。しかも、最初の1冊が読み終わらないうちに、まったく別の興味深い本を読み始めるのがしばしばなのです。さらに、1週間に1回は近くに3箇所ある区立の図書館のどれかに行って、面白そうな本を常に10冊前後借りてしまいます。
現在読書中の本が常に5冊前後という状況のうえ、面白そうなところ、関連するところだけを読む本がけっこう多いものですから、一ヶ月の読書冊数はよくわかりませんね。
●今読んでいる最中の本
鹿野政直『兵士であること 動員と従軍の精神史』(朝日新聞社、2005年1月)
米田利昭『渡辺直己の生涯と芸術』(沖積社、1990年)
高野公彦『宮柊二』(本阿弥書店、2001年)
宮田光雄『《荒れ野の40年》以降』(岩波ブックレット、2005年5月)
永井清彦編訳『ヴァイツゼッカー大統領演説集』(岩波書店、1995年)
北出明編著『風雪の歌人 孫戸妍(ソンホヨン)の半世紀』(講談社出版サービスセンター、2001年)
●最後に買った本
北出明編著『風雪の歌人 孫戸妍(ソンホヨン)の半世紀』(講談社出版サービスセンター、2001年)
『徳島新聞』2005.6.23付けに次のような記事が載っていました。その孫戸妍さんの評伝です。
「韓国で行われた日韓首脳会談は、冷え切った関係を修復できないままに終わった。しかし、脚光を浴びた人がいる。小泉純一郎首相でも盧武鉉(ノムヒョン)大統領でもない。韓国の歌人、故・孫戸妍(ソンホヨン)さんである
会談後の共同記者会見。小泉首相の口から、こんな短歌が飛び出した。〈切実な願いが一つ我にあり 争いのなき国と国なれ〉。日韓両国の行く末を案じる孫さんの作品である。これが上っ面のきれい事でないのは、孫さんの経歴をみれば分かる
一九二三年、東京生まれの孫さんは、ソウルの女子高を卒業後日本に留学。歌人の佐佐木信綱氏に師事して短歌を始め、一昨年、韓国で八十歳で亡くなるまで詠み続けた。「昭和万葉集」(講談社、八○年刊)にも作品五首が収められている
〈もろともに同じ祖先をもちながら銃剣取れりここの境に〉。南北に分断された民族の悲劇を詠んだ作品である。四十年近く朝鮮を植民地支配した日本の短歌など、なぜ詠むのか。そんな非難も浴びながらの短歌制作だったといわれる
だからだろう。韓国の新聞「中央日報」で見つけた孫さんのこんな言葉が心にしみた。「韓国からも、日本からも、北朝鮮からも、星は近くで美しく見えます
日韓国交正常化からきのうでちょうど四十周年。日韓のはざまで揺れた孫さんの「切実な願い」がかなうのはいつの日か。 」
〈切実な願いが一つ我にあり 争いのなき国と国なれ〉と詠った孫戸妍さんの歌自体は「上っ面のきれい事」の歌などではありませんが、靖国参拝に固執して日韓関係をこじらせている小泉さんの口からこの歌が出ると、なんだかそうした歌のように見えてしまいます。
●よく読む、または思い入れのある本5冊
ロジェ・マルタン・デュ・ガール、山内義雄訳『チボー家の人々』
16歳の夏に全身全霊を吸い込まれるようにして読んだ長編です。
若い世代には、高野文子『黄色い本 ジャック・チボーという名の友人』(講談社、1999年)で、辛うじて知られているようですね。
野上弥生子『迷路』
教職に就いたばかりの25歳のころに初めて読み、感動しました。日本文学史に残る傑作長編小説だと信じています。
現在の日本はふたたび戦前という「迷路」に迷い込み始めているのかもしれません。
読み直したくなりました。
堀田善衛『若き日の詩人たちの肖像』
これも教職に就いたばかりに読み、感動した、自伝的小説です。
以来、何回も読み直して来ましたが、去年また再読し、改めてその深さに驚きました。
田村隆一・中村真一郎・加藤周一といった「若き詩人たち」の群像が、いかに戦争に巻き込まれていったか、いかなかったか。
『迷路』と並ぶ傑作です。
辻邦生『背教者ユリアヌス』
これも教職に就いたばかりに読み、感動したものです。
類まれなるストーリーテラーの辻ワールドにすっかり魅了され、辻邦生はそのあとずいぶん読みました。
晩年の辻邦生と往復書簡を交わした水村美苗の『本格小説』(新潮社、2002年)を読んで、『背教者ユリアヌス』を久しぶりに読み返したくなりました。
恩田陸『夜のピクニック』(新潮社、2004年)
これはいかにもといったクサさのまったくない、文字通りの青春小説の傑作です。
若いってやっぱりいいなと心から納得させられました。
直木賞を取るかと期待していましたが、本屋大賞でしたね。
高校生や大学生のお子さんがいらっしゃったら、ぜひおススメです。
ああ、藤沢周平『蝉しぐれ』も挙げたかったなあ…(といって挙げてますね)。
●バトンを渡す相手3人の名前。
恩田陸『夜のピクニック』からさっそく読んでみたいと思います。
ありがとうございました。
学校の先生でいらしたのですね。
地元では進学校と呼ばれる程度の高校の問題児でした。
読んだことはありませんが『黄色い本』は最近高野文子さんの漫画の横においてあったりします。読んでみたい一作です。
僕も一句作ってみようかしら
パソコンのチカチカ光るきみの声 カタカタ打つ音どきどきする胸
それでは
ようこそ。
この『黄色い本』は『チボー家の人々』のことですね。ぜひお読みください。
ぼくは漫画はほとんど読まないのですが、高野文子さんの『黄色い本』は楽しく読みました。
パソコンのチカチカ光るきみの声 カタカタ打つ音どきどきする胸
おもしろいですね。
穂村弘という歌人の『短歌という爆弾―今すぐ歌人になりたいあなたのために』(小学館、2000年、1575円)を読めば、すぐ歌人になれるかもしれませんね。
アマゾンのユーズドで安く出ていますよ。
ありがとうございました。
若々しい歌に、触発されました。
(夏のガンガンガン)
27年前にひねり出した一句を(後にも先にもこれしかないのですが)思い出しました。恥ずかしいのですが
窓をあければ はるかなるマーチ
微かに聞こえるマーチにもめげず、空にガンガン鉄球吊るせ!
さっそくアマゾンで『チボー家の人々』を注文しました。
歌集ばかり読んでいると、無性に小説が読みたくなることがあります。
2~3日で到着するとのこと。
楽しみです。
『チボー家の人々』を注文されたとか。
ほんとにエネルギッシュですねえ!
まあお若いんでしょうが、それにしても意欲的に次々といろんなことに挑戦されて。
脱帽です。
図らずもブログの衣装が同じで、最初はびっくりしました。お互い様ですね。
小諸の活性化に尽力されているご様子、拝見しました。
藤村の『夜明け前』は中3と20代後半で2回読んで以来、読んでいません。
そろそろ読み返すべき時期かもしれませんね。
堀田善衛ファンとして、今後もよろしくお付き合いください。
私も、日韓の厳しい状況に胸をいためております。
友情年の特集企画を提案しても、この現状をどう認識しているかと一蹴されつづけ。
でも、愚直に日韓市民連帯の企画を、懲りずに夏以降も出すつもりです。
ただ、現実は高橋和巳「孤立無援の思想」であります。
ご訪問ありがとうございました。
〈切実な願いが一つ我にあり 争いのなき国と国なれ〉と詠った孫戸妍さんの願いを、口先だけでなく共有できる方がNHKのOBにもおられるんですねえ。
ぼくは教育の現場で微力を尽くすつもりです。
今後ともよろしくお願いします。