年に一度、年末になるとここに一人、二人と人が集まってくる。
数個の段ボール箱が持ち込まれ、その周りを牛刀や骨スキ、筋引きといった
特殊包丁を片手に取り巻く面々。
段ボールの中身は、ビニール袋に詰められている。
大量のバラ肉だ。
このあたりで、何をしに集まってきたか解った方に、座布団一枚。
バラ肉に対して、塩1.8%、砂糖1.0%を平均にすり込む。
そう、豚バラベーコンの仕込みだ。
今回は、道産豚バラ36キロを捌き、仕込む。
こちらは、豚肩ロースから筋を取り除き、適当な大きさに切る。
その後は、ベーコンと同じ量の塩、砂糖。
こちらは、約6キロ。
本日の作業はここまでで、仕込まれた肉は冷蔵庫の中で一週間の
眠りにつく。
~ ここで、一週間経過 ~
再びアジトに集まって、作業の続きを。
一週間塩蔵した豚肩ロースと脂身に粗挽きペッパー、セージなどの
香辛料を加えてミンチに。
これを、二度繰り返す。
熱を帯びて変質しないよう、かき氷や雪で冷やしながら根気強く練る。
練ることで、製品になったときのプリプリ感が出る。
美味しそうと見るか、グロと見るかは個人差がある。
羊腸のケーシングに詰め、くるくるとくびれを入れる。
ちょっと熟練?のワザが光る。
このアジトを使う最大の理由の秘密兵器、大型の業務用燻煙機。
奥にひと洗いしたベーコン、手前にソーセージを吊して、炭を焚いて数時間
乾燥する。
この手順をきちんと踏まないと、この後の燻煙が肉に入らず、良い製品には
仕上がらない。
乾燥した後は、スモークウッドと呼ばれる桜のチップで燻煙を掛ける。
燻煙時間と温度管理が味に響く。
燻煙機の小窓から温度計を照らして見ながら調節。
ソーセージは細めの羊腸なので数時間程度、ベーコンは翌日の朝まで
このまま燻煙を続ける。
ソーセージは、燻煙を終えると75度のお湯で20分ほどボイル。
これで、肉の中までかなり殺菌できる。
ボイルした後は、雪を入れた水で急冷し身を引き締める。
ソーセージのできあがり。
すぐに味見するのは、燻煙作業をしている者の特権。
~ ここで、さらに一日経過 ~
ベーコンもいい感じに仕上がっている。
本当は、四十数枚のベーコンを並べた画像を撮ろうと思っていたのだが、
アジトに集まったメンバーに頒布してしまってから気がついた。
で、自分で買った分だけ並べて、ちょっと残念なベーコン画像。
これを、美味しそうと見るかどうかは…。
ここで作るベーコンは、塩・砂糖のみのシンプルな味付け。
好みはいろいろあるだろうが、長年やってみて、ここに落ち着いた。
最終的には、専用のラップマシーンで真空保存。
といっても、保存料など一切使っていないので、長期的には冷凍保存
となる。
貼ってあるラベルに目をやると…、
「ソーセージ詰め、ベーコン燻(いぶ)して29年!」
どうやら、製作者集団は、かなり年季を積んでいるようだ。
本来ならば、作りたてのベーコン・ソーセージ肴に缶ビールを
プシュッとするところなのだが、ユー地区では夕刻に再びの
暴風雪警報発令。
ボスの命令で、自宅待機となってしまった。
やれやれ、災害のないことを祈る。
[オマケ又は付録]
ベーコン、ソーセージの製造過程で、ほとんど何もしないで時間がかかるのは、
乾燥・燻煙の工程。
アジトにテレビもないので、本などを読みながら過ごすが、今回、仲間内から
差し入れされたのがこれ。
今年、何とか大賞をとった話題作らしい。
北の国、東方面に実際にある農業高校を舞台にした連載漫画だ。
一気に、6冊読み切って、丁度燻煙を終えることができた。
作中で、飼われている豚を食肉にし、その肉を使ってベーコンを作るところが
出てきたりして、内容がぴったり。
配慮とセンスが光る差し入れだった。