即席の足跡《CURIO DAYS》

毎日の不思議に思ったことを感じるままに。キーワードは、知的?好奇心、生活者発想。観る将棋ファン。線路内人立ち入り研究。

一芸に徹すれば、万般に通じる

2008年10月04日 10時18分33秒 | 将棋
先日、《七冠ロードひとまず休憩》、と言う記事を書きました。

王位奪取に失敗ということだけでなく、昨日の棋王戦挑戦者決定トーナメント3回戦で、久保八段に負けてしまいました。

これで、来年秋の王位戦での七冠達成Xdayも延期。
一番順調に行ったとして、再来年春の棋王戦まで持ち越しです。

再度の七冠の夢は、ちょっと遠ざかり、これで七冠騒ぎからも解放され、すべては竜王戦=永世七冠に集中です。
満を持して待ち受ける次世代代表の竜王との対決まであともう2週間。
日本中の将棋ファンが注目しています。

さて、shogitygooさんも下記のように取り上げられていた、昨日のNHKハイビジョンの番組
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『羽生は、情報化時代における将棋で勝敗を分けるのは「人間力」であると話す。どうやって人間力を高め、「勝つ頭脳」はどう決断しているのか?』

と言うことなので、将棋ファンに限らず、現代の情報化社会を生きる全ての人間にとって必見といえそうです(笑)。
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将棋を知らない人でも、こんなにも多くの人たちに影響を与えた人はなかなかいないでしょうし、一言一言に重みがあり、人間羽生は、ますます多くの人たちを魅了するはずです。


ここでいつも共感することが多い田坂広志さんの言葉、引用します。
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『スーパージェネラリスト』

 アメリカのニューメキシコ州の片田舎に、
 現代科学の最先端のテーマ、「複雑系」を研究する
 サンタフェ研究所があります。

 世界的に知られるこの研究所では、
 物理学、生物学、心理学、政治学、経済学、社会学など
 様々な分野の専門家が世界中から集まり、
 広汎な学際的研究が行われています。

 かつて、このサンタフェ研究所を訪問したとき、
 初代所長のジョージ・コーワン博士に会う機会を得ました。

 そのとき、博士の語った言葉が、心に残っています。

 「世界中からノーベル賞級の研究者が集まる
  このスペシャリスト集団をマネジメントするために
  どのような人材が必要なのでしょうか」

 その問いに対して、コーワン博士は、ただ一言で答えました。

 「スーパージェネラリストです」

 なぜ、博士のこの一言が、深く心に残っているのか。

 それは、博士の語る「スーパージェネラリスト」とは、
 単に、様々な分野の知識を幅広く理解している人材
 という意味ではなかったからです。

 「スーパー・ジェネラリスト」とは、
 一つの専門分野を深く掘り下げた経験を持ち、
 その結果、すべての分野に通じる深い哲学を獲得した人材のことだったからです。

 「一芸に徹すれば、万般に通じる。」

 その古き日本の諺のごとく、
 我々の知識や智恵は、
 あたかも「井戸水」のように、
 一つの場所を深く掘り下げていけば、
 必ず地下水脈に突き当たり、その地下水脈は、
 どこまでも横に広がっている。

 西洋科学の最先端が求める「スーパージェネラリスト」

 それは、東洋思想における
 智恵の在り方に通じる言葉でもあったのです。
________________________

深いです。重いです。

そして、将棋世界9月号に、かなりのボリュームのインタビュー記事が載ってます。

題して、「羽生善治インタビュー」
 《狭く深く》から《広く深く》へ。   
  大渋滞から抜け出す激走術

数々の重みや深みのある言葉が紹介されています。

「深さのある将棋を指したい。」

それは、

「たくさん研究してたくさん考えて、でも想像もしてなかった場面が出てくる。
予想できることはすべて予想しているんだけど、それでも予想し得なかった状況が起こるような将棋。そういう将棋を指したい。」

ずっと続いている強い発見は、

「将棋は全部の駒が関係していると言う事。
将棋って、全然関係ない隅っこの香車とか端歩とか、そういうのが大事なんです。これはすごい発見です。」

羽生が将棋をどんどん深く追求しつつ語る言葉は、

その意味がどんどん広がっている。

イチローやヒデのように、一つの場所を深く掘り下げていった人はいろいろいるけど、羽生の地下水脈は、彼らよりもより広く横へずーっとつながっている気がする。

「将棋は全部の駒が関係している」と言うのと同じように、

いろいろなジャンルの知恵や哲学や思想は、すべてが関係している、繋がっているということなのでしょう。

takodoriさんが言ってます。

『羽生名人に勝てないって事はイコール「人間力」が足りないってことになるんですかね。
 昔は将棋の強さは純粋に技術の問題と言っていた様な記憶があるのだが。。。 』

「人間力」=「パーソナリティ力」で上回るということ。

それは、羽生のどこまでも横に広がる地下水脈よりも、
さらに巨大な地下水脈を作るということに他ならないのだろうか?
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3 コメント

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人間力対純粋技術 (またまたまたんご)
2008-10-04 09:40:33
『羽生名人に勝てないって事はイコール「人間力」が足りないってことになるんですかね。
 昔は将棋の強さは純粋に技術の問題と言っていた様な記憶があるのだが。。。 』

これは羽生が人生経験を積み、昔の言動は若気の至りで今になれば将棋は人生だというように思うようになった、という話。
で、あるわけがない。

ジャスト・ア・ゲーム。
羽生がこの言葉を発した当時と、最近の発言での人間力云々では、恐らく文脈が全く異なる。
以前将棋は
「終盤になってからが勝負」
「序盤研究など弱い奴がやること」
「将棋には人生の苦労がものをいう」
「遊ぶのも修行のうち」
というような価値観の世界で行われていた。
羽生は世代の先頭に立ってこのような過去の価値観を破壞し、棋界の勢力図を塗り替えた。
結果、羽生以降の若手で目茶苦茶な人間はいなくなった。
「日々の生活の延長が勝負(勉強が大切)」
「最低限の情報は集めなければならない。少なくとも知らない分野を避けられるだけの知識は必要」
「人生の苦労を口にする人間で努力をしている人は少ない」
「遊びは遊び、修行は修行」
恐らくこんなふうなのが将棋界の常識になった、その後にどうやって突破すればよいのか。
それに対する現在の羽生の意見が、人間力云々であると思う。
注意すべきは順番で、
遊びも芸のうち=芸をのばす為に遊ぶ、遊びの言い訳
一芸に徹すれば万般に通じる=芸を突き詰めていったら、他の芸(遊び)のこともわかるようになった。

こんな感じでしょうか。
返信する
出遅れTB深謝 (Dancho)
2008-10-06 19:55:52
nanaponさん、こんばんは。

出遅れたことに、先ずはお詫び申し上げます。
TBありがとうございました。

確かに、深いし重たい…。

でも、やっぱり「好きこそものの上手なれ」とリンクするような気がします。

羽生善治の場合、それがたまたま将棋であって、それを突き詰めて行ったら、実はたくさんの壁があって、それを突き破る方法が、彼の場合、全ての壁で微妙に異なっている…そんなイメージで小生は捉えています。

メジャーリーグに活路を見出したイチロー然り…。

解釈が難しい内容のエントリーだけに、色々このエントリーを読んで思うところがある読者…たくさんいらっしゃると思うけれど、言葉って難しいからコメントも残しにくい気がします。

小生もこのコメント書いていて、訳がわからなくなっていますし、整理する時間が凄く要する気が…。

だからこの場合は将棋ですが、奥が深いのだと思いますね。

これ…哲学的なエントリーですよ、案外。
返信する
難解! (nanapon)
2008-10-10 19:17:14
★またまたまたんごさん、こんばんは。

長文コメント、ありがとうございます。

うーん、この問題難しいですよね。
僕もこの件は、自信もなく、こういうことは、こうなんだろうか、
であれば、そういうおとかもしれない、
というような自問自答とか、
いろんな考えをめぐらしながら書いている、という感じです。

>それに対する現在の羽生の意見が、人間力云々であると思う。
注意すべきは順番で、
遊びも芸のうち=芸をのばす為に遊ぶ、遊びの言い訳
一芸に徹すれば万般に通じる=芸を突き詰めていったら、他の芸(遊び)のこともわかるようになった。

おっしゃることわかります。
必要条件でなく、十分条件だ、というようなことかも。

どちらにしても、羽生がこれからどのような将棋観、人生観を持ち進んでいくのかを興味深く見守って行きたいと思いますし、ことあるごとに書いていければと思います。
書き続けながら頭の中を整理していく、ということで。

★Danchoさん、こんばんは。

>解釈が難しい内容のエントリーだけに、色々このエントリーを読んで思うところがある読者…たくさんいらっしゃると思うけれど、言葉って難しいからコメントも残しにくい気がします。

ほんと、そうだと思います。
しにくいのに、ありがとうございます。

>小生もこのコメント書いていて、訳がわからなくなっていますし、整理する時間が凄く要する気が…。

はい、訳がわからなくなってるのは同じです。
頭の中で転がしながら熟成させている感じ。
なので、何か感じたら、適当に書いちゃってくれた方がありがたいと思います。
それだけ僕らを惹きつける羽生の魅力が大きすぎるんでしょうね。
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