渡辺竜王万全の2連勝。
2局とも羽生名人らしさが出ず、なんかおかしいのでは、もしかしてこのまま行ってしまうのでは、という不安がよぎる中迎えた竜王戦第三局。
渡辺竜王の先手、横歩取り中座飛車の展開になりました。
途中までは、なんか1局、2局の流れがそのまま現れたような展開に思えました。
新手、新構想も含め、無理攻めのような、思い切った羽生名人の仕掛けに対して、渡辺竜王は自然流、泰然流で受け止めていく。
自信に満ちて、どんな攻めに対しても、消極的にはならず、記念扇子の揮毫の如く、勢い溢れる攻防を繰り広げていく。
迷いも衒いもなくどっしりとした的確な対応。
このまま一方的な展開になってしまうんだろうか。。
---------------------------------------------
△3一玉。
「△3一玉ですか!この手が羽生名人用意の一手なのですね。」(北浜健介七段)
指しにくそうだけど、指されてみればなるほど、という手。
△7七角成と羽生名人は躊躇無く踏み込んだ。
「攻めが止まったら後手の負けですね」(屋敷伸之九段)
「△9四飛には▲9六歩ですか。その形は後手の攻めが続くようには見えません」(広瀬章人王位)
今までと同じ流れで進んでいきます。
渡辺竜王も受け止めているだけではない。勢いのある手を連発します。
▲7三角成!なんと、いきなりの強襲。控室のそこかしこから悲鳴が上がった。
「▲7三角成!いや、これは仰天以外の何物でもないです。全プロ棋士の中で、この手が浮かぶ人が何人いるでしょうか?さすがの羽生名人も予測してなかったはずです。▲9五角の所で▲8七歩、▲7三角成の所で▲9六歩でも難しそうなので、これは勝ちにいきましたね」(真田圭一七段)
▲53桂成。
これもビックリの勢い十分の手。
これは検討されていなかった。△同銀の瞬間は後手銀得。渡辺はどういった組み立てを用意しているのか。
△2七銀
露骨に銀。
「2七!」「桂ですか?」「銀です」「銀ならガチンという音が聞こえてきそう」と控室。
堂々と▲同金。
「△同歩成▲同飛で、次の攻めが見えません」(屋敷伸之九段)
▲65馬。
「▲6五馬は一手勝ちではなく、圧倒的に勝とうという手です。恐ろしい」(中座真七段)
「単に△7八金、そして▲6五馬でした。これはまだ攻め合うまでもない、という判断で竜王ははっきり優勢を意識してますね」(真田圭一七段)
この時点での真田七段による形勢判断ボードは、
先手70対後手30で先手優勢
下アタックの▲2九香。
「▲2九香ですか。△6七金を防ぎつつ2二の地点へ殺到する狙いの一石二鳥の好手ですね。ここは△8四飛を決行する最後のチャンスですね。この手をいつか指さないと後手は死に切れません」(真田圭一七段)
△7五金。
金が後ずさりして喉から手が出るほど欲しかった一歩をGET。
「△7五金で困りました。こう指されて考えているようじゃいけないよなぁ」(渡辺)
これで逆転のモードになったようですね。
▲3五桂。
「▲4五角のほうがよかった。▲3五桂では、もたれ指しだもの」(渡辺)
変調の兆し。
2三を守って、△2四飛と回る。
「こうぶつけられるのでは変調」(渡辺)
▲同飛は△同歩のあとに△7九飛がきつい。
▲24歩はやりすぎ。(これが敗着?)
これは読みきった上で、勝ったと思って攻めて行ったはずだったが。。。
「▲6八桂だったですか。本譜の▲2八飛で受かると思ってしまって…」(渡辺)
▲2八飛。
ここでかねてからの下アタックの▲2九香の効果があるはずだったが。。。
一貫した読みに基づいていたはずだったが・・。
△2九飛打。
「こう打たれて自信がなくなった。でも本譜の▲4九金はひどい。当然▲4九桂△2八飛成▲3八金とするべきだった。ただそこで△2四竜と引き付けられて、さっきの▲2四歩が意味なくなってしまうのが面白くない」(渡辺)
「2四か1九か、どっちかに行ってください」と▲3八金。
しかし、どっちも取らずの△2九龍。
馬にあてた△6一香。
「逆転ということでよろしいですね」(中座真七段)
「逆転ですね」(屋敷伸之九段)
「△6一香の局面は、もはやはっきり後手優勢です」(真田圭一七段)
完全にひっくり返りました。
そして、最後は見事に即詰みに討ち取り、やっとひとつ返した羽生名人。
---------------------------------------------------
夕方近くまでは、70対30という形勢判断にもあったように、これは早めに終わってしまうかも、という雰囲気までありました。
それが、どこでどう逆転したのでしょうか。
この一手が素晴らしい、とか、この一手のミス、というようなことでなく、徐々に劣勢を取り戻していった羽生名人の気迫に満ちた差し回し、執念の勝利、ということなのでしょうか。
したがって、竜王の直接的な敗因は、「豚丼3連発なのでは?」というのが僕の見解です。(笑)
あのひふみんじゃあるまいし、この3連発はさすがに味が悪かったのではという推測です。
今回の竜王戦は、この記念扇子の揮毫、
「意」と「勢」が、とても現れているような番勝負になっているのではと思います。
渡辺竜王の、攻めでも守りでも、決して消極的にならず、勢いのある将棋を指したいという思い。
羽生名人の、一手一手に、あるいは一局一局に、意義があるように、後世に残るような意味のある棋譜を残せるように、という願い。
「意」と「勢」が盤上で火花を散らす。
ますます面白くなってきた竜王戦。
第四局を期待しましょう。
2局とも羽生名人らしさが出ず、なんかおかしいのでは、もしかしてこのまま行ってしまうのでは、という不安がよぎる中迎えた竜王戦第三局。
渡辺竜王の先手、横歩取り中座飛車の展開になりました。
途中までは、なんか1局、2局の流れがそのまま現れたような展開に思えました。
新手、新構想も含め、無理攻めのような、思い切った羽生名人の仕掛けに対して、渡辺竜王は自然流、泰然流で受け止めていく。
自信に満ちて、どんな攻めに対しても、消極的にはならず、記念扇子の揮毫の如く、勢い溢れる攻防を繰り広げていく。
迷いも衒いもなくどっしりとした的確な対応。
このまま一方的な展開になってしまうんだろうか。。
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△3一玉。
「△3一玉ですか!この手が羽生名人用意の一手なのですね。」(北浜健介七段)
指しにくそうだけど、指されてみればなるほど、という手。
△7七角成と羽生名人は躊躇無く踏み込んだ。
「攻めが止まったら後手の負けですね」(屋敷伸之九段)
「△9四飛には▲9六歩ですか。その形は後手の攻めが続くようには見えません」(広瀬章人王位)
今までと同じ流れで進んでいきます。
渡辺竜王も受け止めているだけではない。勢いのある手を連発します。
▲7三角成!なんと、いきなりの強襲。控室のそこかしこから悲鳴が上がった。
「▲7三角成!いや、これは仰天以外の何物でもないです。全プロ棋士の中で、この手が浮かぶ人が何人いるでしょうか?さすがの羽生名人も予測してなかったはずです。▲9五角の所で▲8七歩、▲7三角成の所で▲9六歩でも難しそうなので、これは勝ちにいきましたね」(真田圭一七段)
▲53桂成。
これもビックリの勢い十分の手。
これは検討されていなかった。△同銀の瞬間は後手銀得。渡辺はどういった組み立てを用意しているのか。
△2七銀
露骨に銀。
「2七!」「桂ですか?」「銀です」「銀ならガチンという音が聞こえてきそう」と控室。
堂々と▲同金。
「△同歩成▲同飛で、次の攻めが見えません」(屋敷伸之九段)
▲65馬。
「▲6五馬は一手勝ちではなく、圧倒的に勝とうという手です。恐ろしい」(中座真七段)
「単に△7八金、そして▲6五馬でした。これはまだ攻め合うまでもない、という判断で竜王ははっきり優勢を意識してますね」(真田圭一七段)
この時点での真田七段による形勢判断ボードは、
先手70対後手30で先手優勢
下アタックの▲2九香。
「▲2九香ですか。△6七金を防ぎつつ2二の地点へ殺到する狙いの一石二鳥の好手ですね。ここは△8四飛を決行する最後のチャンスですね。この手をいつか指さないと後手は死に切れません」(真田圭一七段)
△7五金。
金が後ずさりして喉から手が出るほど欲しかった一歩をGET。
「△7五金で困りました。こう指されて考えているようじゃいけないよなぁ」(渡辺)
これで逆転のモードになったようですね。
▲3五桂。
「▲4五角のほうがよかった。▲3五桂では、もたれ指しだもの」(渡辺)
変調の兆し。
2三を守って、△2四飛と回る。
「こうぶつけられるのでは変調」(渡辺)
▲同飛は△同歩のあとに△7九飛がきつい。
▲24歩はやりすぎ。(これが敗着?)
これは読みきった上で、勝ったと思って攻めて行ったはずだったが。。。
「▲6八桂だったですか。本譜の▲2八飛で受かると思ってしまって…」(渡辺)
▲2八飛。
ここでかねてからの下アタックの▲2九香の効果があるはずだったが。。。
一貫した読みに基づいていたはずだったが・・。
△2九飛打。
「こう打たれて自信がなくなった。でも本譜の▲4九金はひどい。当然▲4九桂△2八飛成▲3八金とするべきだった。ただそこで△2四竜と引き付けられて、さっきの▲2四歩が意味なくなってしまうのが面白くない」(渡辺)
「2四か1九か、どっちかに行ってください」と▲3八金。
しかし、どっちも取らずの△2九龍。
馬にあてた△6一香。
「逆転ということでよろしいですね」(中座真七段)
「逆転ですね」(屋敷伸之九段)
「△6一香の局面は、もはやはっきり後手優勢です」(真田圭一七段)
完全にひっくり返りました。
そして、最後は見事に即詰みに討ち取り、やっとひとつ返した羽生名人。
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夕方近くまでは、70対30という形勢判断にもあったように、これは早めに終わってしまうかも、という雰囲気までありました。
それが、どこでどう逆転したのでしょうか。
この一手が素晴らしい、とか、この一手のミス、というようなことでなく、徐々に劣勢を取り戻していった羽生名人の気迫に満ちた差し回し、執念の勝利、ということなのでしょうか。
したがって、竜王の直接的な敗因は、「豚丼3連発なのでは?」というのが僕の見解です。(笑)
あのひふみんじゃあるまいし、この3連発はさすがに味が悪かったのではという推測です。
今回の竜王戦は、この記念扇子の揮毫、
「意」と「勢」が、とても現れているような番勝負になっているのではと思います。
渡辺竜王の、攻めでも守りでも、決して消極的にならず、勢いのある将棋を指したいという思い。
羽生名人の、一手一手に、あるいは一局一局に、意義があるように、後世に残るような意味のある棋譜を残せるように、という願い。
「意」と「勢」が盤上で火花を散らす。
ますます面白くなってきた竜王戦。
第四局を期待しましょう。
TBありがとうございます。
実は、あれ…会社で1人残業(と言っても、実験の待ち時間)中に見始めて、終わるまで見てさっと書いたものです。
▲2四歩の「決断の一着」を見た瞬間、逆転してしまったと確信してしまった…棋力が入門者程度の私でも、はっきり分かってしまった…それに我ながら驚いてしまいました。
やっぱりあそこでは、馬が入るのと飛車の成り込みを牽制する▲6八桂しかないと思っていただけに…。
私のところでも書きましたが、「羽生 善治」という棋士の凄さを、あの瞬間見た気がしました。やはり「往復ビンタ」を食らったまま終わる様な棋士ではないと…。
これは、2年前の第4局と立ち場入れ変わりの構図になった気がします。
渡辺竜王は、次の第4局で勝たないと、かなり危ないです。
もし防衛に失敗したら、あの▲2四歩は、「勢い余った大悪手」ということになるかもしれません。
第19期でしたか…第3局の、あの△7九角の「歴史に残る好手」を発見した棋士なのに…。
渡辺竜王のあの負け方は、あまり見たことがないので、尾を引くかもしれませんね。
しかし、終盤は見応えありました。
△7五金の粘りは、相当ボディーブローのように効いたのでしょうね。
これで面白くなったことだけは確かでしょう。
おそらく羽生先生がもっとも好きな駒でしょう。
特に歩。
羽生が歩を大切にしていることは渡辺先生も百も承知だったと思います。
今回竜王のテーマーは、歩を渡さない、ということだったのだと思います。
だから1歩取られたときの動揺から流れが変わったのでしょう。
喉からほしかった歩を1つ手にしてから、名人の飛車が生き生きと活躍を始めます。
勝負事で一番大切なことは場面場面での状況判断だと思います。
勝って奢らず、負けて腐らず
状況が良くても悪くても、心穏やかに最善を尽くすことの難しさ。
人生の縮図を今回の勝負で見たような気がします。
まだまだ竜王戦は続きますが、両先生の益々のご活躍を大いに楽しみにしております。
いつもありがとうございます。
>私のところでも書きましたが、「羽生 善治」という棋士の凄さを、あの瞬間見た気がしました。やはり「往復ビンタ」を食らったまま終わる様な棋士ではないと…。
もちろんです。
今、「どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?」を読んでるんですけど(まだ読んでんのかよー、と聞こえてくるけど(笑))、いやそりゃもう別物です。
>渡辺竜王は、次の第4局で勝たないと、かなり危ないです。
レスの時間経ってしまってすみません。昨日しっかり勝って3勝目ですね。
>渡辺竜王のあの負け方は、あまり見たことがないので、尾を引くかもしれませんね。
とりあえず尾を引かなかったみたいでよかったです。
★おでんさん、こんにちは。
>今回竜王のテーマーは、歩を渡さない、ということだったのだと思います。
そうですね。歩があるかどうか、ですね。
たくさんあるときはそのありがたみを忘れそうだけど、ない時はないもんで、喉から手が出るほどほしくなる。
一歩あれば多彩な攻防ができる。
はい、一歩多彩。
>勝負事で一番大切なことは場面場面での状況判断だと思います。
勝って奢らず、負けて腐らず状況が良くても悪くても、心穏やかに最善を尽くすことの難しさ。人生の縮図を今回の勝負で見たような気がします。
おっしゃるとおりですね。
将棋というものはいろいろなことを考えさせてくれます。つくづく面白いと思ってます。
>まだまだ竜王戦は続きますが、両先生の益々のご活躍を大いに楽しみにしております。
そうですね。あと2局、楽しませてほしいです。コメント、ありがとうございました。