馬鹿男 空蝉の怪に がんだむを こりて憂き世を くるひつるかな
*今日のは少々きついのをいきましょう。「馬鹿男」という言葉は、ツイッターでは定着しようとしていますね。要するに、男らしいことは何もせず、裏からずるをするようなことばかりする嫌な男のことです。勉強もせず、偉いこともせず、いい女ばかりを欲しがり、別にこんなことはいいんだという目をきょろきょろさせながら、こそ泥みたいなことばかりをしている。
要するに、男になれない、なろうとしない男のことです。
「怪」は「け」と読みましょう。怪しいこと、不思議なことという意味だが、妖怪じみたもの、という意味も付してある。
馬鹿な男は怪しい空蝉のようなもので、ガンダムのようなものを凝って、この憂き世を狂ったのだ。
ガンダムは人気のあるアニメでしたが、かのじょは見ていませんでした。ヤマトなどは楽しみで、第1シリーズは見ていましたがね、ガンダムはなんとなく好きになれずに、見ていなかったのです。だが、基礎知識くらいはある。いわゆるロボットアニメの人気作で、主人公アムロが、ガンダムというモビルスーツに乗って、何だか怪しい帝国とたたかうのだと。その帝国のすごいやつが、シャアというのだと。まあ、それくらいは知っています。
本当はもっと複雑でいろいろな心模様なども織り込まれていて、いろんなおもしろいキャラがいて、人気が出たらしいのですが、あまり興味のない人間の教養はこの程度です。
わたしたちも、かのじょの記憶倉庫にないことは、言えないのです。
しかしだからこそ言えることもあるものでね。ガンダムみたいな巨大ロボットは、いわば男の身を守る鎧を徹底的に進化させたようなものだ。激しくでかくかっこいい。すべては機械がやってくれる。人間は操縦席にいて、操縦桿や妙なボタンをいじっているだけでいい。
それは少々、ずるいことのような気がしないでもない。ガンダムみたいなものに守られていたら、何も痛いことをしないで、すごい男になれる。そういう、甘い気持ちを読みとれないこともありません。
この時代は、まだ男の勉強をしていない男が、自分を男に見せるために、そんなガンダムみたいなものを凝りまくったのですよ。一見すごいことをしているように見えるが、じつはそんなに痛いことをしているわけではない。気の弱い男でも、技術があればできるようなことだ。
本当の男は、パソコンや妙なカメラを高い技術で使いこなすより、立派な自分の体と心で、当たっていくべきところがあるはずですがね。
そういうことはやらずに、裏から賢く回れる男が、いい男だということに、馬鹿男はしたかったのだ。しかし、そういう手が一切通用しない女性に出会った時の、馬鹿男の狂いようと言ったらなかった。
あらゆるあがきをして、その結果、大変な事態を招いたのだが、それを何とかするべく手を打つこともできない。
結局、ガンダムなんて、何の役にも立たないガラクタに過ぎなかった。技術の粋を尽くして、いやらしいほどかっこいい男の形に作ったのに、全部無駄だったのだ。あんなもの、本当の美女は見向きもしない。
嘘だとわかっているからです。