東の 野にかぎろひの 立つ見えて
かへり見すれば 月かたぶきぬ
=巻1-48 柿本人麻呂=
東の野の果てに曙光がさしそめて、振り返ると西の空には低く下弦の月が見えている。という意味。
柿本朝臣人麿の長歌につけられた人麿自身作による四首の反歌のうちのひとつで、人麿の歌としてはもっとも有名なもののひとつ。
炎(かぎろひ)とは輝く光のこと、つまり朝陽によって真っ赤に染まった空のこと。東の野原を見れば空を真っ赤に染めていままさに朝陽が昇ろうとしている。振り返って西の空を見ればまだ月が沈まずに残っている。
この自然の輪廻に譬えて、いままさに沈もうとしている月を亡くなった父の草壁皇子、のぼる朝陽に軽皇子とした、なんとも壮大な一首なのである。
紫草塚
この万葉歌碑は下野市天平の丘公園の入口に近く、薄墨街道沿いの紫草塚に建っている。
天平の丘公園は、美しい自然林と貴重な史跡が調和された面積11ヘクタールの公園。木立の中を小川が流れ、園内には造成中に発見された古銭をまつる銭石や万葉植物、万葉集の歌碑などがある。
隣接する下野国分寺跡・国分尼寺跡も公園として整備されており、古代下野国の風情を偲ばせるところだ。
花の広場には日本各地の桜の銘木や約450本の八重桜が植えられており、4月中旬から4月下旬にかけて開催される天平の花まつりは多くの花見客で賑わうようだ。