浅緑 染め懸けたりと 見るまでに
春の柳は 萌えにけるかも
=巻10-1847 作者未詳=
浅緑に布を染め上げて枝に懸けたと見間違えるほどに春の柳は萌え出ていることですよ。という意味。
「染め懸け」は「布を染めて、かけて干す」の意。
芽吹いたばかりの薄い黄緑色の柳がしなやかに揺れている様子を素直に詠んだ歌。
ネコヤナギの花穂の毛は春の日差しを浴びると、薄緑に染めた糸でできたように輝いてみえることから、
私はこの歌はネコヤナギを詠ったのではないかと思う。
万葉集には「かわやなぎ」を詠った歌が2首あり、これが今日のネコヤナギではないかとも言われている。
ネコヤナギは北海道から九州に分布する落葉の低木。山間渓流や中流の流れが急な場所などに生育する。雌雄異株であり、春に葉の展開に先立って花序を出す。若い雄花序は葯(やく)が紅色なので、全体が紅色に見えるがやがて葯が黒色になって長くなる。雌花序は絹毛が目立つのでふさふさとした感触であり、これをネコの尻尾にみたてて、ネコヤナギの和名が付いた。渓流の春を知らせる植物である。
この万葉歌碑は千葉県袖ケ浦市の袖ヶ浦公園内の万葉公園に建っている。