飛鳥への旅

飛鳥万葉を軸に、
古代から近代へと時空を越えた旅をします。
「リンクメニュー」(分類別目次)機能付。

万葉アルバム(関東):埼玉県、行田市 小埼沼

2012年07月09日 | 万葉アルバム(関東)

埼玉の 小埼の沼に 鴨ぞ翼(はね)霧(き)る
おのが尾に 降り置ける霜を 掃(はら)ふとにあらし
   =巻9-1744 高橋虫麻呂=
埼玉(さきたま)の 津(つ)に居(を)る船の 風をいたみ
綱は絶ゆとも 言(こと)な絶えそね  
   =巻14-3380 作者未詳=


<歌の意味>
(巻9-1744)
埼玉の小埼の沼に鴨が尾をふるわせている、自分の羽に降り積もった霜を払おうとしている。
(巻14-3380)
埼玉の津に帆を降ろしている船が、風をいたみ、つまり激しい風のために綱が切れても、大切なあの人からの頼りが絶えないように。

行田市さきたま古墳群の東方の水田地帯に小さな林の一角がみえる。ここが小埼沼である。かつてこの周辺は沼の多い湿地で、昭和50年代まで小針沼(別名:埼玉沼)と呼ばれる広大な沼が存在していた。
古代万葉の頃には小埼沼の周辺は、東京湾の入り江(埼玉の津)だったと云われているが、今では水も涸れ、沼の面影はみあたらないが、かすかに一部が涸れあがって残った跡が見受けられる。

この万葉歌碑は小埼沼に「武蔵小埼沼の碑」が立っており、この碑の背面に、万葉集に詠われた埼玉に関する歌2首が万葉仮名(漢字)で刻まれている。宝暦三(1753)年に忍城主阿部正允が建てたもの。江戸時代中期の古い歌碑で、この地を万葉に詠われた故地として後世に残そうという当時の人々思いが今に伝わってくる。


武蔵小埼沼の碑と沼跡(右側くぼんだところ)

これらの歌は行田市さきたま古墳群の前玉神社の石灯篭(元禄10年(1697)建立)にも刻まれている。
  →万葉アルバム