春日野に 煙(けぶり)立つ見ゆ をとめらし
春野のうはぎ 採みて煮らしも
=巻10-1879 作者不詳=
春日野の方に青い煙が立ちのぼっているのが見えるけれど、あれはきっと、乙女た
ちがヨメナを摘んで煮ている煙に違いない。という意味。
万葉時代に春日野と呼ばれていた所は、今の奈良公園の一帯。
遠くから春ののどかな風景を眺めて想像をめぐらしている。
「うはぎ」は現在のヨメナ(嫁菜)と呼ばれているもの。秋には淡紫色の可憐な花が咲く。
ヨメナは3月頃、萌え出る若芽を摘みとり、生の葉を天ぷらや汁の実にする。かるくゆでたものはおひたしやあえもの、炒め物に、細く刻んでご飯に散らして蒸らすとヨメナ飯が出来る。