桜花 今ぞ盛りと 人は言へど
我れは寂しも 君としあらねば
=巻18-4074 大伴池主=
桜は今が盛りと人は言うけれど、私は寂しい。あなたと一緒ではないから。という意味。
古代では、山に咲くヤマザクラや、八重咲きの桜が一般的であった。有名な吉野の桜も、ヤマザクラである。ソメイヨシノ(染井吉野)は江戸末期に品種改良されたものである。
『万葉集』に詠まれた「さくら」は四十四首と多いが、
名歌と思われるのは、万葉集以外に多く見られる。
世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし (在原業平 伊勢物語)
いにしへの奈良のみやこの八重桜 けふ九重に匂ひぬるかな (伊勢大輔)
願わくは 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの望月のころ (西行)
花見にと 群れつつ人の来るのみぞ あたら桜のとがにぞありける (西行)
敷島の 大和心を人問はば 朝日ににほふ山ざくら花 (本居宣長)
花の色はうつりにけりないたづらに 我が身よにふる ながめせしまに (小野小町)