飛鳥への旅

飛鳥万葉を軸に、
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万葉アルバム~花、あせび

2009年11月23日 | 万葉アルバム(自然編)

磯の上に 生ふる馬酔木(あせび)を 手折らめど 
見すべき君が 在りと言はなくに  
   =巻2-166 大伯皇女=


 岩のほとりの馬酔木の花を手折ろうと思うけれども、それを見せたい弟がこの世にいるとは誰も言ってくれない。という意味。

 686年、天武天皇崩御後1ヶ月もたたないうちに、反逆を謀ったとして処刑された、大津皇子を葛城の二上山に葬った時に、姉の大迫皇女が作った歌。

アセビ(別名あしび)ツツジ科アセビ属。
やや乾燥した山地に生え、高さ2~9㍍になる。
3~5月、枝先に円錐形序をだし、スズランのようなつぼ形の花を房状にたくさん付け、満開時期は花穂が樹を覆うように咲き誇る。
花冠は長さ6~8㍉の壺形で先は浅く5裂する。有毒植物でもある。
漢字で「馬酔木(あせび)」と書くのはアセボトキシンという有毒成分をもち、馬が食べると神経が麻痺し酔ったような状態になるところに由来し、かつては葉を煮出して殺虫剤としても利用されていたようだ。
万葉集には馬酔木を詠んだ歌が10首ある。

「馬酔木はどこか犯し難い気品がある。それでいて手折ってみせたい、いじらしい風情の花」 (堀辰雄:大和路信濃路より) という記述が的確な表現であると思う。

 奈良公園にはアセビの古木がたくさんあって、万葉の花らしい風情を添えているが、名物の鹿もこのアセビを食べないし、母鹿は子鹿に食べないように教えるそうだ。