飛鳥への旅

飛鳥万葉を軸に、
古代から近代へと時空を越えた旅をします。
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万葉アルバム~花、ぬばたま(ヒオウギ)

2009年11月09日 | 万葉アルバム(自然編)

居(ゐ)明かして君をば待たむぬばたまの
我が黒髪に霜は降るとも
   =巻2-89 磐姫皇后=


 このまま夜明けまで、あなたをお待ちします。私の黒髪にたとえ霜が降りようとも。という意味。

 磐姫(いわのひめ)皇后は仁徳天皇の皇后で、ひどく嫉妬深い女性として有名である。
 磐姫が旅行中に、天皇がかねてご執心の異母妹・八田皇女(やたのひめみこ)をこっそりと宮中に入れたのだ。それを知った磐姫は宮中に帰らず、山城国の帰化人の所に身を寄せてしまった。 
 慌てた天皇は再三磐姫を迎えに来たが、磐姫は天皇に会うこともなく、5年後にその地で生涯を終えたという。激しい気性だったが愛情も深かったようだ。

「ぬばたま」は、ヒオウギ(緋扇)の光沢のある黒色の種子のことを古代では言っていたようだ。
ヒオウギはアヤメ科ヒオウギ属。山地の草原に生える多年草。花は径4~6㌢で、黄赤色で内側に濃い暗紅点が多数ある。葉がひのきの薄板で作った扇状に展開するので桧扇とも呼ばれ、いけばなの花材に使われる。晩秋には光沢のある黒い実をつけ、これが「ぬばたま」とよばれていたのである。
このヒオウギの花そのものを詠った歌は一首もない。ぬばたまは枕詞として用いられ、夜・黒髪・黒馬などの黒を強調するための詞とされている。