飛鳥への旅

飛鳥万葉を軸に、
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中将姫伝説の広がり1:和歌山県橋本市恋野

2009年07月30日 | 中将姫伝説を訪ねて
橋本市は紀ノ川の上流、和歌山県の北東端に位置し、東は奈良県五条市と接し交通の重要地点として栄えたところである。

橋本市の紀ノ川南岸、奈良県に隣接した恋野地区の地名は、中将姫伝説から生まれたと伝えられている。中将姫は奈良時代の権力者のひとり、右大臣藤原豊成の娘として生まれたが、5歳の時母を亡くした。豊成は後妻に照夜と言う女性を迎えたが、 中将姫は成長するにつれ容姿端麗、英知にも富み何事にも優れた女性になった。継母の照夜はこうした中将姫に嫉妬し、憎むようになった。その嫉妬心がますます強まり命をも狙われそうになり、姫は恋野の雲雀(ひばり)山に逃れ、仏に仕えて住むようになったという。
 だが、奈良の都や亡き母を思う心は募るばかりで「母恋し 恋しの野辺や…」と中将姫が詠んだ歌から恋野の地名が生まれた。中将姫は後に奈良・当麻寺に移り、ハスの茎の糸で曼荼羅(まんだら)を織り、その後成仏したと伝えられている。

 恋野の里にはこの中将姫にまつわる伝説の旧跡が数多くある。

中将倉
中将倉は姫が身を隠していた洞窟。父の豊成がこの里へ狩りに来て、この洞窟で一心に読経するやつれた女性に出合った。初めはお互いに父娘とわからなかったが、そのうち姫が気づき涙を浮かべ父のふところに飛び込んだと伝えられている。

中将の森
中将の森は中将姫が観音様を祀ったところといわれている。

観音堂姿見の池
中将の森には中将姫が姿を映したといわれる「姿見の池」や恋野の里の繁栄を祈り別れを惜しんだといわれる観音堂がある。

糸の懸橋
 このほか姫の命を救うため姫は昨年亡くなったと報告したことにちなむ去年川(こぞがわ)、姫がこの橋にかけた糸の懸橋、亡き母を思って通ってきた峠の三本松の布経(ぬのへ)の松、などの旧跡がある。