星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

永楽館柿落大歌舞伎  観劇メモ(3)

2008-08-06 | 観劇メモ(伝統芸能系)

44年ぶりに息を吹き返した明治時代の芝居小屋。
初めて見る場所なのに、床や柱や階段や手すりの木の色に気持ちがなごみます。
レトロな色彩の広告看板や提灯が、もうずっとそこにいるような顔をしています。
ここに役者さん、音楽、唄、舞台装置、照明などが加わると、いきなりパーッと
晴れやかで華やかな雰囲気になるんですね。
甦るって、こういうことなんだなあ。建物だけでもダメなんだよねえ。
なんといっても舞台がっ、花道がっ、低いっ、近いっ。一体感が楽しい♪♪
厳かさよりも、なごやかさと温かさを感じた、こけら落とし公演の舞台。
私にはウットリ心に残る観劇になりました。

以下、1回しか観ていないのでウロ覚えですが・・・。


一、操り三番叟(あやつりさんばそう) 

翁:秀太郎   千歳:壱太郎  
後見:千志郎   三番叟:愛之助
振付:藤間完十郎   長唄囃子連中



松羽目物らしい格調の高さが感じられる舞台セット。
糸操り人形の三番叟の前にまず、翁と千歳による、芝居の大入り繁盛をめでての舞、
天下泰平国土安穏を祈っての舞がありました。
下手から面箱を捧げ持って千歳が現れて、箱を置き、扇を持ち優雅に舞います。
衣装は紫色。きらびやかな髪飾りがおめでたさを寿いでいるよう。
そこに翁も現れ、座して深々とお辞儀をしてから舞い始めます。
金色を基調にした衣装。両手を大きく広げたりしつつも、どこか柔らかな舞。舞い
納めて再び、翁と千歳が深々と座礼し、退場します。
壱太郎さんの踊りは見ていてとても好感がもてました。指先がきれいし、丁寧に舞っ
ていることが素人目にもわかります。
秀太郎さんの翁。「寿式三番叟」と違ってお面をつけていなかったと思います。あ
の優しいお顔がずっと拝見できたから。扇で隠した顔が再び見えた時、やっぱり女
形の役者さん、色っぽくてきれいなあと感じました。

いよいよ三番叟。後見役の千志郎さんが舞台上手から登場しました。
(実際には後見役を演じる千志郎さんと、本当の後見の松之さんがいます。)
下手側に「三番叟」と書かれた大きな箱があり、その中から人形を頭から引っ張り
出します。後見、人形を抱えもって舞台中央へ。人形がうつ伏せに置かれます。
天井から下りてきた糸(と言っても実際には糸は見えない)を整えてから、糸を順
に引っ張っていきます。右側を引くと右手がピクリ、左側を引くと左手がピクリ。
次に顔が前を向き、上半身が起き上がりました。
(操り三番叟を初めて見る私は、ここまででもオオ~!という感じ。)

起き上がった人形。眉間に赤で永楽館の「永」の字が描かれています。目尻も赤く、
愛之助さんのお顔が見えつつも人形の顔。頭には、黒と黄色の横縞に大きな赤丸
(旭日?)のついた三番叟の帽子。衣装は黒地だけどけっこう派手め。

(三番叟といえば6月御園座の「御いのち」を思い出す~。愛之助さん演じる清さ
んは謡や足の踏み込みのお稽古をしてたのですが、今回は人形だったのでその成果
は発揮できなかったようです。笑。)

後見が人形を動かし始めます。
番付によると「揉の段」の踊り。(ウォーミングアップのことかな。)
烏飛びなど元気のいい所作をやってから、調子良く踊り続けています。
といっても人形なので(笑)動く時は手は肘から。足は踵から。頭は後からついて
ゆく感じ。どんな踊りかをここに書けないのがもどかしいのですが、パントマイム
の舞踊版という感じ。ストンと勢いよく前後開脚をしたと思ったらスッと立ったり
もします。曲げた足の、膝から下がブランブラン揺れていたり。
手をパンと叩くときは、肘を曲げずにブキッチョに両手を合わせたり。
大きな袖が絡みつくと自分ではとれないので、後見がやってきて袂を整えたり。
やがて人形は片手、片足をあげたままクルクル回り始めます。クルクルクルクル。
(ここで客席から拍手。)
続けて反対回りに、両足をついた状態でクルクルクルクル。(またまた拍手。)
と、糸が絡まって切れたのでしょうか。
急に人形が前にパタッと倒れ、ペシャンとなってしまいます。(義賢最期の仏倒
しみたいな・・・。)
あわてて後見がやって来て、天井から操り糸を下ろして、切れた糸を調べて結び直
しています。千志郎さん、糸を口に銜えたり、結んだりする所作がきれい。
そして人形の上に立ってチェック。ここ見せ場です。
右手の糸を引くと右手が上がり、左手の糸を引くと左手が動く。
下でうつ伏せになっている愛之助さんには、上の千志郎さんの動きが見えないはず
なのに、タイミングがぴたり。(二人ともお囃子の音で合わせてるのかな?)
とにかくまるでそこに本当に糸があるように見えました。
人形と後見、息がピッタリ合っててお見事!
(なんて楽しい演目なんだ~。)

再び踊り始めた人形。最後は右手に鈴を、左手に扇を持ち、鈴を鳴らしながら動き
回ります。鈴の音がシャンシャン響いて、人形なりにお祝いしてるみたい。
すると、後見が人形の腰のあたりを持って台の上へピョンッと。
手を放すと人形が台の上で、左手をあげて扇を開いてる! 左足は上げたまま、膝
から下がブランブラン揺れています。人形の首がコトンと左に傾いて、幕。
(ひゃあ、人形かわいいー。)

人形なので無表情でしたが、難しい動きがいっぱい入っているし、高度な技術がい
るんじゃないかと思うのですが・・・。
面白くって、華やかで、楽しくて。客席がとっても盛り上がった操り三番叟でした。

アレ? どうしよう・・・・・・。
長くなったので、つづきはまた(冷汗・・・)。


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7 コメント

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楽しいですよね! (しろう)
2008-08-06 23:20:55
また来ちゃいました(笑)
この「操り三番叟」わたしは先日亀ちゃんで観てきましたよ~♪♪後見は亀蔵さん。
後見の動きが全く見えない状態で、よくぞあれだけぴったり合わせられるものだとわたしもびっくりしました。
人形さんの高速クルクル(笑)はスゴイですよね、こちらでも盛大な拍手をもらっていました。
そして人形さんもいいのですが、この演目なぜかいつも後見さんがステキに見えて仕方がないのです(笑)
返信する
訂正。 (しろう)
2008-08-07 06:15:02
すみません・・
わたしが観た亀ちゃんの「操り三番叟」
後見は亀鶴さんです。お恥ずかしい・・
返信する
私も亀ちゃんのを観ました (とみた)
2008-08-07 12:27:29
ムンパリさん、しろうさん、こんにちは。
永楽館はいけなかったので皆さんのブログで楽しませていただいています。
私も亀治郎さんの操り三番叟を見ました。鎌倉で。チェックのところで2人の動きが合うのは、やっぱりお囃子に合わせてるんでしょうね。
返信する
クルクル、クルクル。 (ムンパリ)
2008-08-08 00:34:09
しろうさんのほうが先だったんですね! 操り三番叟。
楽しかったですよー。
歌舞伎の役者さんがどれだけ身体能力が高いかが
よくわかる演目だと思いました。
そうそう。後見をやる人も素敵に見えるというか、きっと
素敵な人がやってるからなんじゃないでしょうか(笑)。
そういう人が黙々と糸を操ってるのがまたイイですねー。
返信する
亀ちゃん! (ムンパリ)
2008-08-08 00:34:42
とみたさんも亀ちゃんですか。
きっとすっごくお上手なんでしょうねー。
二人の人形振りを同時に見てみたいです。
亀ちゃんと愛ちゃんの「操り二人三番叟」(←勝手に創作♪)
なんてのを、いま妄想してみました(笑)。
やはり、お囃子のどの音かを決めてるんでしょうかねー。
返信する
遅ればせながら (ちづる)
2008-08-27 00:52:41
読ませていただきました。ムンパリさんすごいですね~。興奮が蘇る~♪
わたしも巡業の亀治郎さんのを見たのですが、イヤホンガイドで幕間の二人の対談てのあって、亀治郎さんが「あれは人形が操られているように見えて、実は後見が操られているんです」と言っているのを聞いて、ナルホド!を膝を打たんばかりに納得しました。そういえば、あの糸を確かめる場面では、亀鶴さんがさりげなく床にぽんと手をおいた後にツンツンとやっていたので、あれがキッカケだったのかもしれません。
永楽館のほうでは、キッカケにみえるような仕草は見えなかったんですけど、やはり後見さんが合わせるというのがキモなんでしょうね。
返信する
へええ~! (ムンパリ)
2008-08-27 01:21:27
ちづるさん、ありがとうございます。
永楽館はイヤホンガイドがなかったですから、亀治郎さんの
その解説、まさに目からウロコです。
そうと知っていれば、チェックポイントが違ってましたね(笑)。
永楽館のは振付の型がちょっと違っていたんでしょうかね。
亀治郎さんと亀鶴さんのも見てみたかったです。
同じ頃に二つの舞台を観られたちづるさんは、すごく貴重な体験を
されたんじゃないでしょうか! 羨ましいです♪
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