星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

「七月大歌舞伎」私のラスト観劇

2007-07-23 | 観劇メモ(伝統芸能系)

日曜日、またまたまたまた松竹座へ。昼・夜通しで観劇。
1つの劇場にこんなふうに通うのは2月の「朧の森~」以来。
いま松竹座に行かへんかったらどこ行くのん? モードな私。アホやなあ~。
1週間ぶりに観劇してすぐに思ったのは、もう代役なんかじゃないということ。
役者さんたちがそれぞれの役をすっかり自分のものにしていた。素晴しい。
7月22日。この日も「七月大歌舞伎」は熱かった~!!



実際の舞台とは逆に、販売中の舞台写真の中に海老蔵さんの姿を発見!
鳴神上人が1枚、与兵衛が2枚。合計3枚が追加されていた。
(代役3人の写真は一切追加されていない。)
番附も舞台写真入りに変わっていて、海老蔵さんの写真も掲載されている。
幻の舞台となった写真を見るのは不思議な気分・・・。

劇場内でかずりんさんと会い、昼の部終演後、短いおしゃべりタイムへ。
メインテーマは「鳴神」の染ちゃん VS 愛ちゃん対決と、「朧の森」ゲキ×シネ
の特典DVDについて。楽しかった~♪ 夜の部は再び一人で劇場へ。


さて。自分にとってラスト観劇になった7月22日。
かなり個人的なメモだけど、思い出として書き残しておこうと思う。

昼の部「鳴神」(2)
芝居自体が1週間前よりも面白く、パワーアップした印象。
鳴神上人になって9日目の愛之助さん。
素人の私がいうのもヘンだが、前回観た時から格段によくなっていた。
印象としてはのびのびとして声もよく通り、動きがダイナミックになっている。
前方で見たせいかもしれないが、荒事の技がいっそう大胆に感じられ、一つ一つ
の見得が大きくて素晴しかった。睨みもしっかりきいていたように思う。
なんといっても、雲の絶間姫との掛け合い、絡みが絶妙。新米上人がようやく姫
に追いついき、その分、姫も自由になったのか。この二人なら当然といえるかも。
今公演の孝太郎さん、ほんっとに目を見張る大活躍。
拍手も声もいっぱいかかり、見応えもじゅうぶんな「鳴神」に満足~♪

昼の部「橋弁慶」(3)<7/24追記>
揚幕のほうから登場した弁慶の顔に、さっきの鳴神上人の面影を探してしまう。
が、やっぱりどこにもそれはない。
「某は~に住む武蔵坊弁慶と申す者にござる。これから十禅寺に丑の刻参りに行
こうと思う」てなことを最初に名乗るのだが、この時の発声がいかにも腹の底か
ら出しているなと思うような太く大きな声。この日もその響きをじゅうぶんに感
じることができた。
花道から再登場する時に弁慶の顔がよく見える。この弁慶の化粧は無骨な感じで
はなく、どことなく品格があって好き。
牛若丸は一見女性にも見えるほど華奢で可憐な感じ、声も高い。
今日こそは弁慶が勝ちそうな気が毎回するのだが、やはり長刀を取られては勝て
ない。この日も牛若丸の勝ち。アタリマエだけど。

昼の部「義経千本桜 渡海屋大物浦」(3)
薪車さんの義経は10日目。
義経らしい柔らかな品のよさがよく出ていた。最後、花道をゆっくり引っ込む時
の表情が自信に満ちていて清々しい。
前回、花道横で見て大興奮だったけれど、今回はもっと落ち着いて見ることがで
きた。3階席で感じた知盛のあの声は、やはり独特の響きを持って心にすうっと
染み込んでくる。知盛が語っているのは台詞じゃない。と、再び感じた。
伝わってくるのは何か巨大なものがくずれるときの最後の音。この感覚が何なの
かわからないけれど、また味わえるものなら味わいたいな。
安徳帝に絡んだ場面では毎回、同じ場面で涙する。
典侍の局といっしょならどこへでも行く。「波の底にも都ありとは~」と帝が言
うと「安徳帝の御幸なるぞ、守護、守護ーっ!」と典侍の局。ここで涙ぼろぼろ。
「義経をあだに思うな」と安徳帝に言われて糸が切れたようになる知盛。最後ま
で安徳帝のことを気にかけて死んでゆく二人が印象的。
「おさらば」という言葉について。
この演目ではたくさんの人物がこの言葉を口にして、一人一人消えてゆく。
最後におさらばと言ったのは知盛、それをさらばと返すのが義経。「さようなら」
とは違う、覚悟を決めた人間の重みのある言葉がそのつど胸に響いた。
自分の遺体が二度と海に浮かぶことのないようにと、碇とともに飛び込む知盛の
大きな最期。もうこれが見納め。おさらば・・・と心の中でそっと告げる。

夜の部「鳥辺山心中」(3)
4回目にしてようやく3列目。半九郎さまに最接近した夜。
遠方席からは見えていなかったことが見えて、私にとってのサプライズに♪
二人がお互いを思う気持ちについて、私はずっと 
お染>半九郎 だと思っていた。
おまけに半九郎はオッサンくさいとか、年齢詐称疑惑まであるらしい(笑)。
でも、今回前方席で見たら半九郎はちゃんと22歳だった。その訳は・・・。
心中を決意したお染のこの台詞。
「店出しの宵からお前さまの揚げ詰めで汚れのない私の体は、どこまでも半さま
ひとりを夫として清い一生を送りたい・・・」
お染をじっと見つめていた私、ここで涙がブワーッ。(自分でもビックリした。)
二人の姿が涙でかすんでしまったので、そのまま目を凝らしてもう一度舞台を見
直してみたら・・・半九郎さまの美しい顔にも涙の跡が。
あふれた瞬間は気づかなかったけれど、両方の目から流れ出た涙の筋が光ってた。
あわわ。それを見て胸がいっぱいになり、また涙があふれる私。
「生まれつき涙もろいのじゃ」という台詞はたしかにあるけれど、いつもこの場
面で泣いてたんやね、半さま。知らなかった・・・。
死ぬ時の二人は お染>半九郎 ではなく お染=半九郎 やったんやね~。
そう思うと、不幸な二人を見ているのになぜか幸福感で満たされてしまった。
花道では、お染が半さまを見つめる目と同じぐらい半さまの視線も熱い ♪♪♪
でも、嫉妬を通り越してなんかもう幸せだった。(完璧にぶっ壊れました~~。)
清い乙女に涙するわたしをもうオッサンくさいとは言わんでくれ。 by 半さま。
(あ~い~。)
そんな涙々の、幕があいて21日目の半九郎とお染だった。

夜の部「身代座禅」(2)<7/24追記>
愛之助さんの六役の中では、見ていて一番ホッとする役がこの太郎冠者。
身代わりが玉の井にバレた途端、間髪を入れずにお殿様のことを
「花子様のところへ行きましたーーーっ!!」と言ってしまうところが好き。
お前までが花子様というか。め、と言いやれ。め、と。
めめめめ、<め>でございます。その、花子<め>のところに行きましたー!
<め>のところを強調する言い方がすごく可笑しい。
何かつらいこと、悲しいことがあった時はこの太郎冠者を思い出そう!

夜の部「女殺油地獄」(2)
22日。仁左衛門さんはお疲れが見えるどころか、ますます体の切れがよくなって
いるように感じた。特に、お吉との立ち回りは呼吸がピッタリ。恐るべし。

今年になって仁左衛門さんの孝夫時代の本を図書館で借りて読んだ。
その中に与兵衛の性根について面白いことが書いてあった。
「善の部分の自分と、悪の部分の自分とが取り乱れ、一つの事に対しても、その
時々で善悪の比率が変わるということです。そしてそのいずれの場合でも、自分
の本当の心なのです。」(1981年『とにかく芝居が好き』より引用)
この芝居が面白いのは、与兵衛のこの脈絡のない性格のせいなのか。
さっきと今ではまるで違う人格かと思うような態度を見せたり、借金の申し出か
ら殺人までの刻々と変わる心理状態を表情や仕草で覗かせる与兵衛。
あの暗い舞台で、仁左衛門さんの表現している顔や体の変化を追うのは集中力が
いるけれど、でもめちゃめちゃ面白い。めちゃめちゃスリルがある。
殺人を犯した後も目が離せない。人を殺した現実に気づいて震え出し、なかなか
刀がとれず、鍵がうまく開けられず、しまいにはと犬の遠吠えに追い立てられる
ようにして引っ込むハラハラな最後まで。刀が手から離れないのは「伊勢音頭恋
寝刃」でも出てくるが、慌てぶりはこの与兵衛のほうが激しい。鍵をお吉の懐か
ら奪い取るのに、お吉の死顔から目を背けたままという小心ぶりも凄い。
殺人現場であっちこっちから声がかかって拍手喝采なんて不思議なお芝居だなと、
家に帰ってふと思い笑ってしまった。それがまさに歌舞伎なんだけど、この舞台
が歌舞伎だったことを忘れるほど、殺人者の心理劇として面白いお芝居だと思う。

ここでも孝太郎さんのお吉が光っていた。セレモニーで孝太郎さんから撒きてぬ
ぐいをもらったから言うわけではないが、おぼこ娘のお染も、雲の絶え間姫も、
このお吉も上手に演じ分けられていて、どの役もすっかり堪能させていただいた。

私の観劇は終わったけれど、七月大歌舞伎は残りの公演も盛況なんだろうな。
特に夜の部のチケットは平日も取るのが難しそう。面白いから当然だよね!


七月大歌舞伎 昼の部「橋弁慶」(1)「義経千本桜」(1)(このブログ内の関連記事)
海老蔵さんのいない日曜公演(このブログ内の関連記事)
七月大歌舞伎 夜の部「鳥辺山心中」(1)(このブログ内の関連記事)
七月大歌舞伎 夜の部「女殺油地獄」(このブログ内の関連記事)
七月大歌舞伎 昼の部「鳴神」「橋弁慶」(2)「義経千本桜」(2)(このブログ内の関連記事)
七月大歌舞伎 夜の部「鳥辺山心中」(2)「身代座禅」(このブログ内の関連記事)

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6 コメント

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ご苦労さまでごさいました! (かずりん)
2007-07-25 09:45:39
愛に溢れたレポの数々、ご苦労様でございました。
もうっ!すごいっ!!

三列目のステキな席でよかったですね~!
ふとした瞬間に 視線がぶつかる
・・・ってことはなかった?
幸せのトキメキ 覚えているでしょ?
・・・以前、そんなこともあったでしょ?
パステルカラーの季節に恋した
・・・今まさに!!
あの日のように輝いてる あなたでいてね・・・。
・・・今回輝きっぱなし・・・。

・・・ほんとにお疲れ様!な愛之助さまを見ていると
ZARDの『負けないで』を口ずさんでしまうのよ。私・・。
もう少し!!がんばれ~~!愛之助さま!!
返信する
お疲れさまでした! (ハヌル)
2007-07-25 23:13:40
いろいろあってまた一つ思い出深い興行となりました。
今回はちょっと大人しく・・・と心に決めていたのに、
こんなことになっちゃったら、もう。やっぱりダメでした~(爆)

一つ一つの演目についてコメントしたいのですが、
長文の感想文になってしまいそうなので控えておきます。
またいつかどこかでゆっくり語り合えたらいいですね。

半さまが涙を流していたのですかっ! 
物凄く切なげで悲しげでその上愛おしむような顔をしていたので、
どうなっちゃたの?と思っていたのですが・・・。
そうか、やっぱり泣いてたんだ・・・。涙には気付かなかった(T_T)
もう、おっさんとは言いません、すみません・・・、半さま。

どれを?どれに?と、わけがわからないくらいですが(苦笑)
ラスト繋がりにTBさせていただきます。
返信する
お疲れさま&ありがとう♪ (ムンパリ)
2007-07-26 00:55:03
かずりんさんも、こんないっぱいコメントありがとう!!
前の席で見てて思い出したのは「染模様~」の時のこと。あれも間近で見てウルウルしちゃったもんねー。
視線のことなんだけど、私が見つめられたのは、雲の絶え間姫、お染ちゃんと・・・玉の井!!(笑)
まあそれもほんまに光栄なことではございますが・・・。
今回は始まる前から孝太郎さんの手ぬぐいをキャッチしたりして、ご縁があったからね♪
あとは皆さんに向かって「負けないで~」を熱唱・・・心の中で。(歌詞ぜんぶ知らんけど。)
返信する
お疲れさまでした&ありがとう♪2 (ムンパリ)
2007-07-26 01:02:00
ハヌルさん、今回はほんとに思い出深い公演になりましたね!
私も当初は2日間の予定だったのに・・・(笑)。ハヌルさんに出逢えて途中でイロイロ、いろいろ・・・やりとりできたおかげで楽しみ、盛り上がりが倍増しました。ありがとうございます♪
あと千穐楽を残すのみ。最後までいい舞台になりますようにと、お祈りしましょ!

幕見と夜の部追加で、今回は半さまドップリでした。でも、前で観たのは1回だけ。その観劇日に涙の跡を見つけてメチャ動揺してしまいましてん(笑)。台詞だけ聞いてると、半さまはお染ちゃんに同情してるだけで愛がないように感じられるんだけど、舞台では観るたびごとに二人の関係が密になっていったように思う。
私が観た日も、ハヌルさんが観た翌日もたぶん、半さまの気持ちは22歳のピュアラブだったよ、きっと(笑)。あの切なげな目元、胸にしっかり刻んでおこうねっ♪
また次回、どこかでゆっくりね!(もしかしたら近いうちかも!)
返信する
すばらしかったですね (スキップ)
2007-07-28 22:52:31
ムンパリさま
私は昼1回と夜1.5回(笑)でしたが、泣き、笑い、
感激し、ほんとに楽しませていただきました。
らぶりん大奮闘公演となりましたが、どのお役も
すばらしかったですね(って、「鳴神」観てないのですが)。
仁左衛門さんの3役はもちろん、孝太郎さんも秀太郎さんも
歌六さんも竹三郎さんも薪車さんも・・・そして最初に見た
海老蔵さんも・・・みんなみんなすばらしく、忘れられない
公演になりそうです。
返信する
すばらしかったですね~2 (ムンパリ)
2007-07-29 01:32:26
スキップさん、ほんとに今回は記憶に鮮やかに残るような素晴しい公演でしたね。
私もついついチケットを買い足して劇場通い。歌舞伎がますます面白いなと思えた、思い出深い公演になりました。やはり、その一番大きな部分が仁左衛門さんの3役ですね。愛之助さんの6役は体の事を思うと涙が出そうでした。孝太郎さんも、秀太郎さんも歌六さんも竹三郎さんも薪車さんも・・・しっかり心に刻まれました。
海老蔵さんはもっと観たかったという飢餓感が日に日に強くなってます(笑)。またいつか観たいですね!
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