公演名 | 大阪松竹座新築開場十周年記念 |
七月大歌舞伎 | |
劇場 | 大阪松竹座 |
観劇日 | 2007年7月15日(日) |
座席 | 1階 花道横 |
昼の部 「歌舞伎十八番の内 鳴神」
鳴神上人:愛之助(代役) 所化白雲坊:市蔵 所化黒雲坊:男女蔵
雲の絶間姫:孝太郎
朝廷に約束を反故にされ、その恨みで竜神を封じ込めてしまった鳴神上人。
日照りで人々が苦しむのを見かねた朝廷は、雲の絶間姫という美女を上人の
もとへ送り込む。姫に気を許し、策略にはまった上人。姫は竜神を解き放ち
その場を去る。欺かれたとわかった上人は怒り狂い、凄い形相で姫を追う。
初観劇の演目なのでビックリするやら、おかしいやら。
このお話ってメチャメチャ手の込んだコメディだったのか~。
代役とはいえ、愛之助さんの上人けっこう似合ってた。
TVで榎本武揚をやった時のような落ち着いた印象。高僧らしくは見えたけど、爽
やかそうで、朝廷に反抗するような意固地には見えなかったかも(笑)。
所化の市蔵さん、男女蔵さんはおトボケ味が効いてて、上人様との上下関係も自
然な感じ。男女蔵さんは困り顔が似合う人なんだなあ。市蔵さん、あとで岩の上
から投げ落とされる役、クルッとトンボ返りお見事でした。
(この岩の上からのトンボ返り、違う日に見ると別の人がやっていた。)
そして、この演目はなんといっても孝太郎さん!
写真で見た雲の絶間姫の顔、あの眉だった。これが当時の美人メイク?
チン、チンと鐘をたたきながら登場した時、私を見て見て!というアピールモー
ド全開、観客の視線を釘付けにして存在感たっぷり。
(雨を降らせるのも私の肩にかかってる。代役2日目の新米上人を舞台の上で
リードするのも自分。・・・と思ったのかどうか、とにかく気合いが入ってた。)
亡夫との思い出話を語って見せる場面、着物の裾を持ち上げ足を見せて川を渡る
仕草には私、こけそうになった。ふと上人様を見ると、経机に頬杖ついていたは
ずなのに、机は後ろ、身を乗り出していた! そして戒壇から落ちて気絶する!
そこから先は破戒に向かって一直線(笑)。
姫にお腹が痛い、胸が痛いと言われ、「自分の手には力がある」と姫の懐に手を
突っ込むところ、とっても嬉しそうな顔をする上人がカワイイ~。
初めて胸に触った後、瞬時に女にめざめちゃって、弟子にしてもいいよと答え、
還俗するから妻になれ!と姫に迫る。じゃあ名前はどうするの? と聞かれて
「片岡愛之助」って。そこ役者さん本人の名前を言ってウケるとこだったのね。
(ここまでのやりとりは二人の相性ピッタリ。テンポも間もよく面白い。)
上人が祝い酒を飲んだ途端、掛け軸の不動明王が燃え出すのにはビックリした。
これぞ破戒のシルシ。
酒に酔いつぶれ眠っている間に、姫によってついに竜神が放たれ、雨ザアザア!!
姫に騙されたことを知った上人、その頭は寝グセじゃなく、怒髪天を突いた状態。
うつむいていた顔を上げると、あの隈取。ぶっ返りで白の衣装が火炎の模様に!
すごいわあ! ふだんは優しげな愛之助さんの、カッと見開かれた目。
荒事での見得を見るのは初めてなので、うわぁっ!!って思った。
上人、所化は投げ飛ばすわ、2回の柱巻きで悔しがるわ、怒り狂って大騒ぎ。
最後は姫を追いかけて花道へ。ここ、顔も凄いけど、勢いが凄い。
まるで炎のかたまりが飛んで行ったような大きな飛び六法、いやー、迫力あった。
本家本元の海老上人様は見逃したけど、愛之助さんも似合うかも。荒事。
舞台では感じさせないけれど、愛之助さん、全演目出演で全部が大役なんて大変
だろうなあ。あと1週間なんとか、なんとか無事に完走できますように!!
昼の部 「橋弁慶」(2)
荒事のあと、何事もなかったかのように(アタリマエだけど)愛之助さんは弁慶。
名乗りが終わって再登場し、花道で長刀を振り回すのに驚いた。
3階では気づかなかったかったけれど、ずっと長刀を持っているせいで動きがゆっ
くり、大きい印象なのかな。弁慶と牛若丸の舞踊、微笑ましくて好き。
<メモ>
舞台正面には松の絵、下手には5色の揚幕。
夜の部の舞台を観てわかったことだけど、この「橋弁慶」には「身替座禅」と同じ
舞台セットが使われている。
てことは、この「橋弁慶」も松羽目物ということなのね。メモメモ。
昼の部 「義経千本桜 渡海屋大物浦」(2)
3階席で聞いた知盛の声が忘れられず、今回も♪と期待するが、1階席では声よ
りも役者さんたちの顔、見た目に心奪われ、「きゃあ、カッコエエわあ!」を心
の中で連発。とても冷静には観られない・・・。
花道から傘を差し、颯爽と歩く銀平が羽織っているのは、イヤホンガイドによれ
ば「厚司(あつし)」というアイヌ特有の衣装らしい。漁師がよく着るものだそ
う。一門の長である銀平=知盛にはそれがよく似合い、厚司を着て煙管をくゆら
す姿には余裕と大きさが感じられ、もうホレボレ~♪
知盛が自分の血を飲むところ。注意して見てたら、花道を歩いている時から喉に
手をやって喉の渇きを表現していたことがわかった。それで、もう一度喉に手を
やって水を求めるけれど水がないので、自分の血に気づくという感じ。唐突じゃ
なく自然な流れだったんだ。うーん。
それから、やっぱりここ好きだな~と思ったのが「乗地(のりじ)」の部分。
三味線の糸にのせて唄うように語る台詞回しをそう呼ぶらしい。
手負いの知盛が血まみれの衣装で餓鬼道とかを語るところ、相模五郎が味方の
悲惨な状況を振りをつけて伝えるところ、追っ手に抗いながら入江丹蔵が覚悟
を決めて語るところ。どれもすごく心に訴えるものがあって、浄瑠璃の声がア、
ア、ア、アとか、かぶってくるのがたまりません!
15日、相模五郎と入江丹蔵の魚尽くし。石でたたいた刀を鞘に納めるところで
ちいさなハプニング。
愛之助さんが「うまく入ればよいのだが」と言いながら、ふたりで「ひの、
ふの、みい!」で鞘に入らず(笑)。すかさず愛之助さんが「もう一度!」と
言い、再び石でカンカン形を整えて再トライ。「ひの、ふの、みい!」でやっ
と鞘に納まった。二人ともほっとした様子だったけど、私たちは2回見られて
ラッキーだったわ~。「もう一度!」の言い方、かわいかったしね。
戦況報告の行き帰り、相模五郎がすごいスピードで駆け抜けてることが花道横
で確認できた。こんなところも一生懸命なのね♪ 愛之助さん。
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誘惑する女、誘惑の糸に絡めとられる男。そのやり取りが、とってもスリリング。
そうして、干ばつに恵みの雨を降らせるのは女の知恵と勇気、ってことなんでしょう。
雲の絶間姫が岩場をよじのぼり、よじのぼり、えいやっとしめ縄を切るところが、なんともいえず爽快でした。
「義経千本桜」は、最後の飛び込みのシーンが圧巻!
仁左衛門は、本当に舞台で大きく見えますねえ。
「鳴神」は本当にハラハラする部分がありましたね。干ばつには女の知恵と勇気、ですか! ナルホド~。面白いお話だけど、私にはどんな意味があるのか全くわかりませんでした。どこかのエライ人のスキャンダルかと思ってた(笑)。
雲の絶間姫は全くスーパーレディですねえ。勇気があって、機転がきいて、ミッションが終わったらパッと姿を消して。カッコイイです(笑)。
仁左衛門さんの飛び込み方、迷いが全くなく、観る者を圧倒しますねえ! 悲しいのに、華々しいです。大きいです。
今回は仁左衛門さんの舞台をじゅうにぶんに堪能しました。ほんとに凄い人、大きく見える役者さんだと思います。
散々『鳴神』については、お茶しながら語ったけれど
どのようにお書きになられているかと思えば・・・。
いえ、もちろんステキなレポでしたよ~~!!
私のツボは・・
上記コメント!!
>面白いお話だけど、私にはどんな意味があるのか全くわかりませんでした。
がはは(笑)
>どこかのエライ人のスキャンダルかと思ってた(笑)。
爆!!!!がはは!!
・・・寝てしまったので、『渡海屋大物浦』は
もう一度きちんと見てみたいです(反省)
ストーリー自体はよくわかったんだけど、何か教訓めいた意味があるのかなと思って。
私には雲の絶え間姫がどうも小池百合子防衛大臣に見えてしかたなかった(笑)。あの方には刺客のイメージがあるし。とすると、鳴神上人は○○さんかな、とか。
それでこの演目も、昔のエライ人の転落、堕落の話を元に作られた話かもしれないって勝手に思ってたんだけど。
雨を降らせるのが女性ということで、あ、やっぱり小池さんや!と思いましてん。あの方、前は環境大臣やったから(笑)。
まあ、そんな事に関係なく、お話そのものがほんまに面白かったと思います、はい。
『渡海屋大物浦』はDVDをお貸ししますよん!