星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

歌舞伎役者片岡仁左衛門 第4部「人と芸の巻 下巻」

2008-03-27 | 演劇・ダンス・映画・音楽・古典・TV

映画「男はつらいよ」で人間国宝の陶芸家が登場したことがありました。
あ、実在の人物ではなく、そういう役。
陶芸家のせんせい、お手伝いさんに恋の説教をするのですが、その女性に幸せ
になってほしいがゆえに、歯がゆさあまってつい叱咤してしまうという・・・。
そんな人間国宝を演じる俳優さんの、そこはかとなく匂い立つこの品のよさは
何なのだろう、と思いながら見ていました。

この陶芸家こそ、歌舞伎役者片岡仁左衛門。
私が最初に出会ったのは舞台の上ではなく、スクリーンの中でした。
いま思えば、本当に無知だったな。
歌舞伎役者だと知った時にはもうこの世の人ではなく・・・。
今回、この映画を通じて、十三代目の芸談や、稽古場風景や舞台映像、
ふだんの様子を自然な形で見ることができ、ほんとに嬉しかったです。

映画そのものはドラマチックな音楽もなければ、脚色した語りもありません。
時系列や場所がわかるようにときおり入る字幕がナレーション代わり。
そんな淡々とした記録映画なのに、笑ったり、泣いたり、興奮したり。
私は2本しか見ていませんが、歌舞伎ビギナーにもたっぷり楽しめました。
事前に聞いてはいましたが、上演前の当代仁左衛門さんの挨拶映像がまた、
ええんですよね。
ふと一瞬言いよどんでから、はにかんだように照れた顔で
「・・・はっきり言って尊敬する父でございます。宝でございます」。

もう記憶があやふやなので、ここと自分のメモを見ながら思い出した事だけ。


第4部「人と芸の巻 下巻」
観賞日   2008年3月16日(日) 
映画館   下北沢トリウッド
上演時間  1時間45分





・冒頭の「芸談をきく会」でのインタビュー。
怪談の話、笑わせてもらいました。暗い舞台はどこから幽霊が出るかわからな
いから怖いのに、近頃は先回りしてライトを照らす。わかってしもたら少しも
怖くない、と。
お岩さんでは、怖がる役のほうが難しい。初めからワーッ!と大声をあげてし
まうのはよくない。そこで十三代目のお手本は、初めは声を出さない。表情だ
けでじゅうぶん伝わる。その後に声が遅れてついてゆく感じ。
ナルホド。

・身近な人たちに聞く十三代目の話。
我當さん、若い時があったんや~とか、秀太郎さん、色っぽい~とか、静香さ
んて「円」の人だったのねとか、個人的にサイドネタで盛り上がったりして。
印象に残ったのは、番頭の伊藤友久さんの話。(背後に膨大な資料!)
十三代目はどんな役の時にも本を見たり、型を調べたり、とにかくたくさんの
ことを調べる人で、年齢を経てからもつねに研究していたそう。
孝夫さんの子供の頃のエピソードも面白かった~。
こたつの中で眠る場面があって、舞台で本当に眠ってしまい、あとでバシッと
叩かれたとか。孝夫少年には相当怖かったらしい(笑)。
京都嵯峨の自宅で語る喜代子夫人。視力の変調に気がついた時のお話。
このとき、自宅の風景の一部がチラッと映るんですよね。畳とか、庭先とか、
花瓶だったか置物だったか。風鈴の音や蝉の声も・・・。
もしも自宅を手放してたらこの風景もなかったんだな、と思いながら見てい
ました。

・仁左衛門歌舞伎のこと。
映画の順序通りではありませんが、出演者が思い思いに語っていたのがこれ。
関西で歌舞伎の興行が打てない時代に、十三代目自らがまさに捨て身で行った
「仁左衛門歌舞伎」のエピソードです。
以下、言葉はこの通りではありませんが内容はこんな感じだったと思います。

この公演名は自分でつけたわけじゃなく、「仁左衛門歌舞伎」がいいと言い出
したのは報道の人たちでした。(我當さん)
見てほしい芝居がいっぱいあるのに、それがやれないまま歌舞伎はダメだと決
めつけられるのが残念だ。だから自分がやりたい芝居をする、と言ってました。
でも、まわりに迷惑はかけたくないから、家を売ってでもとにかくいい芝居を
すると。(十三代目の決死の覚悟をこんなふうに明かすのは喜代子夫人)
結果、お客さんがいっぱい入ってくれて嬉しかったですね。余ったお金はみん
なで分けました。(と笑いながら語るのはご本人)


今まで孝夫さんの著書等、文字でしか知ることができなかった仁左衛門歌舞伎
のことを、今回こうやって当事者たちが話すのを見ると、親子、夫婦、家族と
かを越えた何か特別なものが、片岡家の人たちを結びつけているのではないか
と思えてきました。同志、という言葉にも似た強い特別な絆みたいなもの。

長い上演時間なので他にもいっぱいありましたが、ひとまずこれで。
さてと。10分間の休憩をはさんで次の回の上映「孫右衛門の巻」がはじまる
よーーーっ!

>> 下北沢トリウッドでの上映記録はコチラ


ビデオレター、突然思い出し書き。(追記版)(このブログ内の関連記事)
映画『歌舞伎役者 片岡仁左衛門』上演中(このブログ内の関連記事)
映画「歌舞伎役者 片岡仁左衛門」が大阪で!(このブログ内の関連記事)

歌舞伎役者片岡仁左衛門 第1部「若鮎の巻」(このブログ内の関連記事)
歌舞伎役者片岡仁左衛門 第2部「人と芸の巻 上巻」(このブログ内の関連記事)
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2 コメント

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Unknown (hitomi)
2009-02-23 16:27:45
はじめまして。詳しいレポをありがとうございます。当地方にもようやくこの映画の上演が始まり今日まず最初の2本を観てきました。3週にわたっての上映です。平日の朝からなのに結構お客さんが入っていてうれしかったです。
13代目は不遇の頃、東映の大川橋蔵(6代目の芸養子)の映画に出ていていました。時々BSで放送されます。
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はじめまして♪ (ムンパリ)
2009-02-24 01:06:09
hitomiさん、コメントを頂きありがとうございます。
名古屋での上映会がはじまったんですね。
貴重な映画ですから、全部見られるといいですね♪
私は東京で2本と大阪で3本。
しかも、あと1本「登仙の巻」を残しているんです(泣)。
来月、ついに京都でそれが完結します。
見た時期がバラバラで、記事も見つけにくいですので、
あらためて関連記事のリンクをまとめさせて頂きました。

東映の映画ですか?
お若い頃の様子が想像できませんが(笑)、またネットで
検索してみたいと思います。
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