【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会副会長 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

「俳句大学」学長 「火神」主宰 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞受賞

機関誌『俳句大学』第6号

2021年06月28日 13時39分48秒 | 俳句大学

機関誌『俳句大学』第6号

巻頭言

俳句大学学長  永田満徳

現代は、インターネットの普及によって海外でのHAIKU作家との交流が格段に増えてきた。主にSNSを介したリアルタイムな交流も盛んになってきており、日本の俳句の原理への関心も非常に高くなっている。そこで、「俳句は何か」という、自明の問いを改めて考えてみたい。

本学の五島高資は一早く、俳句の本質である「切れ」に注目し、「俳句の詩的構造である『切れ』をまずHAIKUの必要条件とすべきである」と述べている。これは誰も異論のないことであろう。ただ、「切れ」があっても、「取り合わせ」でないことである。例えば、「大蛍ゆらりゆらりと通りけり 一茶」や、切れ字のある「白藤や揺りやみしかばうすみどり 芝不器男」のように、切れ、或いは切れ字のある一物仕立ての二句一章はその内容から言って、二句があまり断絶していず、句意が一句一章とは大差がない。しかし、切れ(切れ字)があることによって、空間をもたらし、想像の余地を与え、余韻を残す。これが「切れ(切れ字)」の最大の効用である。HAIKUにおいて、二行俳句を推進しているのは、「KIRE(切れ)」を明確にするためで、KIREのない、単なる散文詩的なHAIKUの是正を図っている。

さらに、五島高資は「五七五(四拍子)定型という韻律は日本語の構造に特有なものであり、外国語の俳句(HAIKU)において5-7-5シラブルを適用するのは無意味である」と述べている。俳句の場合はどうかというと、「初蝶の遠きところを過ぎつつあり 山口誓子」という句のように、切れのない、一句一章の句を〈俳句〉と言えるのはひとえに定型であるからである。それほど「定型」は必要不可欠である。私が自由律を俳句と認めないのはこの定型の強固さを定型のないHAIKUによって思い知らされたからである。

 ところで、HAIKU連載中の『俳句界』において、「俳句は『切れ』を基本として、主に『季語』が重要な役割を持つ短詩型文芸である。」という標語で、より強く「KIGO(季語)」を取り入れたHAIKUを提唱している。Mohammad Azim Khanの「sunny spot/the push of a wheelchair」 というHAIKUを例にして、sunny spotに(in winter)を補ってみたらどうだろう。「車椅子」を「陽だまり」の中に押し出し、少しでも温まってほしいという気持ちは「冬」の季節でなければ伝わらない。それほど「KIGO(季語)」の喚起力は強いのである。五島高資のように、KIGOはあくまで詩語の一つであって、無季の句もKIREがあればHAIKUと言って良いとの考えもある。その考えは良しとして、今や、国際俳句学部の「Haiku Column」においては、はっきりとした四季のない国からもKIGOのあるHAIKUが数多く投句されてきており、俳句は〈KIGOの詩〉という認識が世界で広まっている。

 俳句大学は、実践的な俳句の取り組みを通して、俳句の国際化に対応するために、俳句あるいはHAIKUを定義し直し、俳句を国際文芸として位置づけ、ひいては、現今の現代俳句における真の俳句の確立の礎になりたいと思っている。

※参加者のお名前は2校次のままである。

                                          

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〜Haiku Column(俳句大学)(「俳句界」R3.7月号)〜

2021年06月28日 01時30分11秒 | 月刊誌「俳句界」
俳句大学国際俳句学部よりお知らせ!
 
〜Haiku Column(俳句大学)(「俳句界」R3.7月号)〜
 
◆俳句総合誌『俳句界』7月号が発行されました。
◆俳句大学 〔Haiku Column〕のHAIKUから選句・選評した句を掲載しています。また、「俳句界」2019年1月号から毎月連載しています。
◆R 2・12月号から作者の国名を入れています。人種、国籍を問わず投句を受け入れていることから、その「人道主義的」スタンスが広く支持されています。
◆ 向瀬美音氏は日本語訳の改善に着手している。五七五の17音の和訳は、HAIKUをただ端に日本の俳句の五七五の17音にしただけではなく、原句のHAIKUの真価を再現するものであり、国際俳句の定型化に一歩近づくための有効な手立てであることを強調しておきたい。
◆例えば、ある日本の国際俳句大会で「飢えた難民の/前に口元に差し出す/マイクロフォン一本」のような三行書きにしただけで散文的な国際俳句が大会大賞、或いはある国際俳句協会のコンクールで「古い振り子時計―/蜘蛛の巣だらけになっている/祖父のおとぎ話」のような切れがあっても三段切れで冗漫な国際俳句が特選を受賞しているように、三行書きの国際俳句が標準になっていることに危惧を覚えて、俳句の本質かつ型である「切れ」と「取り合わせ」を取り入れた二行俳句を提唱して行きます。
◆2017年7月にフランス語圏、イタリア語圏、英語圏の55人が参加する機関紙「HAIKU」を発行しました。12月20日発行の2号では91人が参加しました。また、5月31日発行の3号では96人が参加し、320ページを数えます。さらに、12月26日発行の4号では112人が参加し、500ページを数えます。そして5号では150人が参加して、550ページを越えて、8月1日に出版しました。そして、6号を2020年12月に出版しました。また、2020年3月1日には「国際歳時記」の第1段として【春】を出しました。「HAIKU」6号と「歳時記」は原句の内容を損なうことなく五七五に訳出しています。
◆総合俳句雑誌「俳句界」2118年12月号(文學の森)の特集に「〔Haiku Column〕の取り組み」について」が3頁に渡って書いています。
◆「華文俳句」に於いては、華文二行俳句コンテストを行い、華文圏に広がりを見せて、遂に、2018年11月1日にニ行俳句の合同句集『華文俳句選』が発行されました。
◆ 二行俳句の個人句集では、洪郁芬氏が『渺光乃律』(2019、10)を〔華文俳句叢書1〕として、郭至卿氏が『凝光初現』(2019、10)を〔華文俳句叢書2〕として、次々に刊行している。さらに、全季節を網羅した「華文俳句歳事記」が2020年11月には刊行されて、これで季重なりの問題が解消されるでしょう。
◆さらに、2020年1月からは月刊『俳句界』に「華文俳句」の秀句を連載している。
◆『俳句界』2020年3月号の特別レポートにおいて、熊本大学で行われたラウンドテーブル「華文俳句の可能性」の報告が8頁に渡って掲載されました。
◆どうぞご理解ご支援をお願いします。
The July issue of 「HAIKUKAI俳句界」!
〜Haiku Colum of Haiku University [Monthly best Haikus]〜
◆the July issue of HAIKUKAI俳句界 has just been published.
◆It contains the best haikus of the month selected by M. Nagata.
◆according to the plan, we will continue to publish 2 lines haikus with kire and toriawase.
juillet aout de 「HAIKUKAI俳句界」!
〜Haikus du mois de Haiku Colum de Haiku Universite〜
◆L juillet de aout de HAIKUKAI俳句界 vient d'etre publie.
◆il contient les meilleurs haikus du mois selectionnes par M. Nagata.
◆Selon ce plan nous allons continuer a publier des haikus en deux lignes avec kire et toriawase.
 
Haiku Column(俳句大学)(「俳句界」R3.7月号)
【今月の秀句(monthly excellent Haikus) 】
永田満徳選評・向瀬美音選訳
(Facebook「Haiku Column」より)
キンベリー オルムタック(オランダ)
サーフィンや逆巻く波に日のさして 
〔永田満徳評〕
「サーフィン」は華やかなウォータースポーツの一つ。サーフボードの上に立ち、バランスを取りながら、波に乗っている姿は見るからに格好いい。日に焼けた、筋肉隆々たるサーファーが朝日、あるいは夕日に燦然と照らされた、大きな「逆巻く波」に颯爽と乗っている沖合の情景を美しく切り取っている。
Kimberly Olmtak(Holland)
waves swirling the first sunrays to shore
summer surfers
〔Commented by Mitsunori Nagata〕
"Surfing" is one of the gorgeous water sports. Standing on the surfboard, balancing and riding the waves is cool to see. It beautifully captures the offshore scene of tanned, muscular surfers surfing in the big "reverse winding waves" shining brightly in the morning sun or the setting sun.
フランソワーズ モリス(フランス)
外出禁止池に映りたる四十雀 
〔永田満徳評〕
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、世界各国は「外出禁止令」と「罰則」による都市のロックダウンを行った。運動や犬の散歩も規定が厳しい外出禁止によって、外では自由自在に飛び回る「四十雀」と、家から一歩も出られない作者とを対比して、戦争状態にあるコロナウイルス感染症蔓延の世を描いている。
Francoise Maurice(France)
confinement
dans le miroir de l’étang une mésange
〔Commentaire de Mitsunori Nagata〕
Pour empêcher la propagation du nouveau coronavirus, des pays du monde entier ont verrouillé des villes avec des «commandes ménagères» et des «sanctions». En raison de l'interdiction stricte de sortir faire de l'exercice et de promener des chiens, le monde de l'infection à coronavirus qui est en état de guerre se propage en opposant la «mésange» qui peut voler librement à l'extérieur et l'auteur qui ne peut pas sortir de la maison, je dessine.
フランシスコ パラディノ(イタリア)
かたつむり付きのレタスのセール中 
〔永田満徳評〕
「セール中」の店頭に並べられた、新鮮な「レタス」。手に取ると、「かたつむり」がレタスのなかに隠れている。作者は思わず驚き、小さな悲鳴を上げたことだろう。「かたつむり付きのレタス」とはよくも言ったもので、かたつむりを一つの商品扱いにしたところに諧謔味があって、心惹かれる。
Francesco Palladino(Italy)
special prices
on each lettuce one snail
〔Commented by Mitsunori Nagata〕
Fresh "lettuce" lined up at "on sale" stores. When you pick it up, a "snail" is hidden in the lettuce. The author would have been surprised and screamed a little. "Lettuce with snails" is often said, and the fact that snails are treated as one product has a scent and is fascinating.
【今月の季語(Kigo of this month)】
永田満徳選評・向瀬美音選訳
(Facebook「Haiku Column」より)
【 初夏 はつなつ hatsunatsu / beginning of summer / début de l’été 】
Ismahen Khan(Tunisia)
boire toute cette lumière
est mon café ~début de l’été
イスマン カーン(チュニジア)
初夏やコーヒーの陽を呑み込みぬ   
Nani Mariani(Australia)
cycling with friends
early summer
ナニ マリアニ(オーストラリア)
友達とサイクリングや夏初め 
【 薄暑  はくしょ hakusho / light warmth / chaleur légère 】
Isabelle Carvalho Teles(France)
Premières chaleurs
les petites jupes blanches sortent de l'armoire
イサベル カルヴァロ テレス(フランス)
箪笥より白きスカート薄暑かな 
In Ismael(Indonesia)
light warmth
birdsong in running water
イン イスマエル(インドネシア)
薄暑光ひた走る水に鳥の声  
【 夏の朝 なつのあさ natsunoasa / summer morning / matin d’été 】
Angela Giordano (Italy)
on the landings the chatter of the neighbors
summer morning
sui pianerottoli le chiacchiere dei vicini
mattino d'estate
アンジェラ ジオルダノ(イタリア)
踊り場に話し声する夏の朝 
タンポポ 亜仁寿(Indonesia)
yoga pose in the gentle breeze
summer morning
タンポポ 亜仁寿(インドネシア)
良き風にヨガのポーズや夏の朝  
【 メーデー  めーでー me-de- / May Day / premier mai, fête du travail 】
Zamzami Ismail(Indonesia)
May Day
unresolved death
ザザミ イスマイル(インドネシア)
メーデーの日や未解決なる死なり 
Jono Fadli(Indonesia)
May Day ~
sound of the siren in workers' ears
ジョノ ファドリ(インドネシア)
メーデーやサイレンを聞く労働者
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〜Facebook「華文俳句社」Kabun Haiku 2021・7〜

2021年06月28日 01時25分36秒 | 月刊誌「俳句界」
俳句大学国際俳句学部よりお知らせ!
〜Facebook「華文俳句社」Kabun Haiku 2021・7〜
◆2021年『俳句界』7月号が発行されました。
◆華文圏に俳句の本質かつ型である「切れ」と「取り合わせ」を取り入れた二行俳句を提唱して行きます。
◆2018年11月1日には、二行書きの華文俳句の合同句集『華文俳句選』が発行されました。
◆2020年12月、本格二行俳句の評論集である余境喜氏著『華文俳句評論集』が発刊されました。
◆ 二行俳句の個人句集では、洪郁芬氏が『渺光乃律』(2019、10)を〔華文俳句叢書1〕として、郭至卿氏が『凝光初現』(2019、10)を〔華文俳句叢書2〕として、次々に刊行しています。ついに、全季節を網羅した、世界的にも画期的な「歳事記」が2020年10月に発行されました。これで季重なりの問題が解消されるでしょう。
◆さらに、2020年1月からは月刊『俳句界』に「華文俳句」の秀句を連載しています。
◆2020年『俳句界』3月号の特別レポートにおいて、「熊本大学」で行われたラウンドテーブル「華文俳句の可能性」の報告が8頁に渡って掲載されました。
◆どうぞご理解とご支援をお願いします。
俳句大學國際俳句學部的通知!
~Facebook 「華文俳句社」Kabun Haiku 2021・7〜
◆2021年『俳句界』7月號已出版。
◆於華文圏提倡包含俳句的基礎「一個切」和「兩項對照組合」的二行俳句。
◆2018年12月1日已出版華文俳句的合著,『華文俳句選』。
◆2020年『俳句界』3月號以八頁的篇幅特別報導了於「熊本大學」舉辦的「華文俳句の可能性」座談會。
◆請各位多多支持指教。
華文俳句【俳句界】2021,7月号
永田満徳選評・洪郁芬訳
鄭如絜
陪嫁時的玉翠環
母親節
〔永田満徳評論〕
母親節是紀念和懷念母親的節日。倘若已與生母永別,逢此日更是感慨萬分!隨身攜帶的手環是母親留下的紀念品,也是陪嫁的嫁粧之一。她看著手上配戴的玉翠環,不由得想起母親而面帶唏噓懷念之色,顯然又想起了當初的點點滴滴。
鄭如絜
嫁入り道具のブレスレット
母の日
〔永田満徳評〕
。「母の日」は母をことさら偲ぶ日である。ましてや、すでにこの世にないならなおさらである。肌身離さず、身に着けている「ブレスレット」は言わば母の形見の品で、「嫁入り道具」の一つになっている。ブレスレットに対して、母を感じ、母をしみじみと思い起こすよすがとなっているところがいい。
丁口
背包客買對折門票
立夏
〔永田満徳評論〕
背包客的旅行者往往是在有限的預算下進行旅行活動。「立夏」過後,一片綠意盎然,忽然想親近花草樹木,外出散步或旅行。排隊站在車站的票,揹著不輕的背包,他買了一張對折的門票。這樣的畫面,幾乎可以說是一個立夏故事的最佳場景了。
丁口
半額切符を買うバックパッカー
立夏
〔永田満徳評〕
「バックパッカー」とは低予算で国外を個人旅行する者のこと。「立夏」ともなると、新緑がまぶしく、木々や草花が恋しくなり、家の外へ出てみたくなるものである。重いリュックサックを背負ったバックパッカーが駅の改札口に並んで、「半額切符」を買っている情景は立夏の頃の風物詩と言える。
雅典
獨輪手推車上的貓
麥秋
〔永田満徳評論〕
麥秋是與初夏同時期的季語。他把疼愛的貓放在獨輪手推車上,緩慢地往前推動。貓一直盯著前方,動也不動。那姿態真是惹人喜愛。這位愛貓者想和他的貓一同被初夏清爽的風輕撫,於是決定帶他去兜風。真是個體貼的好主人呀!
雅典
手押しの一輪車に乗っている猫
麦秋
〔永田満徳評〕
「麥秋」、つまり初夏の頃、かわいがっている「猫」を「手押しの一輪車」に乗せて、ゆっくりと進んでいる情景。前を向き、おとなしく、荷台に座っている猫はさぞかしかわいいだろう。爽やかな初夏の風に当たらせようと思い、わざわざ猫を連れ出した愛猫家の心遣いがうまく描かれている。
 
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月刊『俳句界』7月号

2021年06月28日 01時19分47秒 | 月刊誌「俳句界」
〜6月25日発売〜
【俳句界】掲載
●レポート(176P~177P)
「俳人協会熊本県支部第22回俳句大会」
支部長・永田 満徳(俳句大学学長)
●俳句大学
・「今月の秀句(monthly excellent Haiku)3句」70P
・「今月の季語(Kigo of this excellent month)8句」71P
永田満徳選評・向瀬美音選訳
●俳句大学「華文俳句」72P
永田満徳選評・洪郁芬訳
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定期購読のご案内
・毎月25日発売
・A5判
・定価1,000円(税込)
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