mitakeつれづれなる抄

普段いろいろ見聞き感じ考え、そして出かけた先で気になることを書き綴ったブログです。

回送列車は何故ある

2017年02月26日 | 鉄道
 少し前、駅で列車の到着を待つと、回送列車が先にやって来て、そこで聞こえた高年ご婦人の会話、「回送だって。空で走らせるのならお客さん乗せればいいのにね」と。
 こうした回送運行には、空で走らせる事への疑義疑念は時々耳にします。

 気楽な話として、何故回送運行(回送列車・回送バス)があるかを考えてみます。
 ・輸送効率の為 鉄道でもバス輸送でも、ある時間帯に往復ともに輸送需要があるわけではなく、特に朝ラッシュ時は都心方向への需要が集中する一方、逆方向はそれほどでもなく、都心方向へ行った車両は、そのまま営業では折り返しさせず、回送便として運行させれば途中駅に停車する必要が無く、効率的に返す事ができます。
 ・車庫と起終点間の運行 営業運行の列車・バスは一定の運転区間があります。その起終点駅・停留場と車庫の間で動かさねばならず、この運行が回送になります。
 新車輸送や修繕のため 新車導入の際はいきなり車庫に搬入するわけではなく、鉄道なら搬入基地から、バスなら自動車メーカーから運びます。
 ・少ない例ですが所属基地変更で回送 ある車両がAという車庫に所属していたものがダイヤ改正などで、Bという車庫に所属替えする場合は、回送運行になります。

 大別するとこの三パターンになります。日常的には1と2の例を目にします。
 回送にすると乗務員の乗務手当が減らせるという、極めて部内的な要素があります。
 鉄道の場合は、営業列車と回送列車とではハンドル時間の算定基準が違うと伺っております。
 バスは、車庫と起終点の間の回送時間は、拘束時間ではあるものの勤務時間に入っていない会社もあると聞いています。

 前記の例2番目は、本来なら回送とすべきところをあえて営業とする場合もあります。
 鉄道の場合は中途半端な位置で、短い区間で運行する列車、バスの場合も辺鄙な位置で起終点となる運行、特にバスの場合はひっくるめて「出入庫系統」と称されています。
 この回送を営業にすると、乗務員は普通に勤務時間に算入されるので、それなりの経費が発生しますので、できることなら非営業ですませたいところです。

 あと、法律的な面から行きますと、回送は鉄道・バス営業の面では預かり知らぬ世界です。
 というのは、鉄道の回送列車は「列車」としては鉄道事業法の規制範囲内ですが、国土交通省へ届け出る運行度数(運行回数)には入らないもので、省は関知しないもの。
 バスの場合も営業と回送では大きく違い、回送はただの大形バスの扱い。
 なので、ダイヤにある回送便も回送であるうちは、道路運送法の適用外になり、事業許可線路外の道路も走行できます。
 一方で道路交通法の「路線バス」には該当しなくなり、「右・左折禁止」「車両進入禁止」などで「路線バスを除く」の除外規定には該当しなくなります。

 回送にしておくと、あくまで非営業運行なので、運行の取り消しや変更が容易です。営業運行にすると定時運行が拘束されますので、何らかの事情で運転する必要が無くなった場合、「運転止めます」とはいきません。
 この件では、バスの世界での出入庫系統のうち、「上乗せ運行」というものがあり、既存の運行系統区間の一部を出入庫として運行する場合、あえて停留所時刻表示をしていない場合があります。
 この場合、運転士時刻表でも時刻表記は無く、ただ【営業】とあるだけで、勤務時間算定上の時刻があるのみです。

 これらもあって、回送が存在するわけで、ある一時の瞬間的な面では、空の電車が走って勿体ない、という感じですが、全体としては効率的なものになります。
 人はまぁね、目の前の出来事で判断するわけで、仕方がありません。
 かく私も、一宮市内印田バス停で一宮駅方向のバスを待つと、車庫から出庫回送が何台か通って行きます。
 どうせ一宮駅まで行くので、あれに「乗せてくれないかなぁ」、などと思いますが、そこは裏の事情が分かるだけにね。