先週、CBCラジオとTBSラジオで話題として取り上げられていましたが、高速道路を走るバスには制度上で、路線バスとツアーバスの二種類があり、その違いと今後はツアーバスは路線バスとして組み入れられる事を話していました。
多くの方は、そんな高速バスにツアーと路線と二つもの違いがあるなんて知りませんし、気にした事もないですね。特に夜行では「寝て目的地に着く」という最大で且つ唯一の目的が達成されればそれでよいわけで。
しかしこの両者、違いが意外と大きな問題をはらんでいます。
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高速道路を走るバス、すなわち「高速バス」。厳密には高速道路を走るだけでは高速バス(路線バスでは)にはならないのですが、今や日本各地を結んで右肩上がりの産業になっています。本音を言えば、その右肩上がりが鉄道の利用にならないかなと思いますけど。
法制上、この都市間を結ぶバスは誰でも利用できることから「一般乗合の定期路線」、すなわち「路線バス」であるべきです。
一方で旅行会社などが主催企画して広くお客を集め、旅行を行うものをツアー旅行といいますね。このツアー旅行は出発地で集合、各地を回りそして出発地へ戻るものですが、一つの形態として出発地集合目的地解散というのがあります。そしてツアー旅行商品にセットされたのは片道のバスだけ。
この片道だけの旅行が、ツアーバスと呼ばれるもので、お客の立場からすれば旅行業法が適用され、「旅行社の商品を買った」形になります。
路線バスは道路運送法の適用で、そこらを走る普通の路線バスと同じもの。路線バスの運行概念に「運行系統」「停留所」「回数」「運賃」があって、運行開始に当たってはそれぞれ定め、許可(運賃は上限認可)がなされて初めて運転が開始されます。そして運転開始後も、運転系統を逸脱できず、停留所も必ず停車し、お客がいなくても勝手に運休は許されず、運賃を下げて「バーゲンセール」もできません。がんじがらめな状況ですね。
ツアーバスはあくまで旅行商品なので、値段の設定は自由、お客さんの多少で増車が可能、目的地までは何処を走ってもいい(一応運行計画はたてます)もので、自由度が高いですね。そして旅行社が貸切バス事業者と運送契約を結んで、つまり下請けで運行させるもので、この貸切運送は道路運送法に規定されているものです。
ツアーバスは路線バスではない以上、公道上には停留所の設置ができません。その代わり集合場所とした近辺の道路に野放図に各社のツアーバスが停車する光景が見られ、周辺の道路交通に影響を与えています。高速ツアーバスが路線バス事業と事実上同質の運送であることから、高速ツアーバスを路線バスに組み入れる事を主眼とした内容で、このほど「バス事業のあり方検討会」の最終報告がだされ、5月から順次実施に向けての動きが始まります。
主な内容として、路線バスでは機動的な対応が難しかった、運賃の引き下げ、運行便の増車に他バス事業者の車両を使う、といったもので、現在のツアーバスを企画している事業者にも新たに路線バス事業(高速乗合バス)に参入しやすくしようというものです。
ツアーバス催行者からすれば規制が厳しくなりますが、適正な価格で安全が担保されているかどうかの監督が行き届くかどうかで、むしろお客のためになると思います。また既存の路線バス事業者からみれば規制緩和ですね
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ところで、これ本当にこの内容通りになるのでしょうか。新たに路線バス事業に参入するには停留所の設置をしなければなりません。既存の路線バス事業者はよくお分かりの通り、バス停一本置くのにどのくらい苦労しているか。そして停留所を置いたら、複数の発車時間は許されませんので、ダイヤの調整も行わねばならず、乗合事業に移行できたものは兎も角、多くの高速ツアーバスは事業継続が困難になるかもしれません。