My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

カザフスタン人のチームメート (15.912 Tech Strategy)

2009-09-22 12:08:41 | MBA: MBA授業

今学期の私の時間割。
月・水に4コマずつ詰めて、火曜はスペイン語と指導教官とのミーティング、木曜は、朝にスペイン語のみ。
で、木金土日の4連休が毎週続く夢のスケジュールをついに達成!!
いやっ、勉強するんですけどね、その4日間は。

さて、今日はTechnology Strategyという技術戦略論の授業で、一緒にチームを組むことになったカザフスタン人がとても面白い、という話。

Tech Strategyでは、3人一組でチームを組み、一つの産業を一学期間かけて分析していく。
私のチームは、二人ともSDM(スローンデザインマネジメント)というMBAとはちょっと違う専攻の二人。
Dさんというモンゴル人の女性と、Aさんというカザフスタン人の男性。
Dさんは日本の大学に留学し、修士を取って、携帯端末会社でソフトウェアエンジニアとして働いていた。
Aさんは、カザフスタン政府の技術省で、10年も官僚として働いている。

余談だけど、MITスローンが他のMBAと全然違う、良い点として、
普通のMBAのこういうクラスで、工学部とか科学技術政策とか、MBAでない人たちとチームを組む機会がたくさんある、というのがある。
(もちろん、そういう授業をうまく選ぶ必要はあるけどね。)
宣伝終わり。

このAさんが、とても面白いのだ。
英語が余りうまくないので(って私が言えることじゃないが)、とても苦労しているみたいだが、話していると、非常に頭が切れる人なのはわかる。
相手が何をいいたいか、皆まで言わなくてもわかる上、それを更に越えた答えが必ず出てくる。

今日も、先生がマーケティング的な発想を教えようとして、
「スニッカーズって商品を考えたとき、どういう層をターゲットすべきだと思う?」という質問を学生に投げかけたときのこと。

「高カロリー価なので、若い男性層をターゲットする」などと答えるのが、きっとありきたりの答え。

カザフスタンの彼はこう答えた。
「第三諸国の軍隊の兵士の食料として、非常に能力を発揮する。
 こういうところをターゲットにすることを考えたら、この会社も売り上げがかなり伸びるのではないか。
 この前も、チェチェン軍の若い兵士たちが、スニッカーズを非常用食料として大量に持参して、みんな食べていた。小さく携帯に便利なのに、カロリーが非常に高いうえ、割と安価なのが非常に良い。」

と言っていた。

チェチェン・・・。
すごいよね、ふつー考え付かないだろう、この答え。
しかも、チェチェン紛争が正しいかどうかという論争すら超えている・・・

先生が期待していた答えとは全く違うけれど、先生の質問が、いかに「アメリカ人の常識を前提としたものだったか」ということがあらわになって、私は面白いと思った。

彼は、文脈が読めない人じゃないので、わざと言ったんじゃないかと思う。
とてもプライドが高い人なので、「われわれはこういう考え方をする」ということを敢えて主張するのだ。

同じチームで一緒にプロジェクトを進めていたときも、面白いことがあった。
彼がやたらWiMAXに詳しいので、「どうしてそんなに知っているの?」と聞いたところ、
なんとカザフスタンでは、普通の携帯電話の代わりにWiMAXを使うことにしたんだって

携帯の技術として、今から2Gや3Gを取り入れても、他国に後れを取るばかり。
国土が広く、人口が疎なので、これらの技術は効率が悪い、というのもある。
だったら、最初から広域で利用できるWiMAXを入れよう、ということになったらしい。

で、彼のチームが調査・検討をしたらしい。(決めたのはもっとエライ人だって言ってたけど)
それも、たった去年のこと。

すごいね・・・。いきなりWiMAXかよ・・・
(関連記事を調べてみると、結構あった。これ とか これ とか)

というのもあるが、一国の科学技術の戦略を決定する人と、同じチームで学べるというのがすごいよね。

日本で言えば、40年、50年前はこうだったのかもしれない。
そのころ日本の若い官僚はたくさん海外に留学して、学んだことを日本の科学技術戦略に生かしてきたのだろう。
今の日本は、完全に民が技術を引っ張っていて、官が出来ることなんかそんなにないものね。

結局私のチームは、携帯電話とWiMAXの通信技術をテーマに研究することになった。
このチームで研究したことが、将来、カザフスタンの国家の科学技術戦略に何らかの影響を与えられたらいいんだけどな。
50年前の日本の官僚たちの、外人の学友たちが、日本の科学技術戦略に影響を与えていたように・・・

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新入留学生の気持ち

2009-09-02 04:00:17 | MBA: MBA授業

MIT Sloanでは、月曜から新入生オリエンテーションが始まって、学校に行くと新入生が一杯。
あれから1年も経つのかと思うと懐かしい。

引越し荷物から「のだめカンタービレ」が出てきて、久しぶりに読んだが、
12巻のはじめに、パリの音楽学校に留学したのだめが学校の最初の週を終え、
授業のやり方などが日本とは全く違うのについていけず、すっかり自信をなくしてしまう下りがある。
MBAにいると、「私の今までって何なの~!?」と自信をなくすこともあり、そういうときによく読み返した。

のだめ 「なんにもできなかったんデス
  初見もアナリーゼも。勉強したのに
  のだめはなにひとつ、さっぱりついていけないんデス・・・
  みんなのだめより若いのに、すごく立派なインテリジェンスで、音楽詳しくて
  のだめは・・・子供にも笑われて
  のだめは井の中の蛙で、世界はすごく広かったんデス
  それだけです」
(講談社「のだめ・カンタービレ#12」二ノ宮知子より)

のだめカンタービレ (12) (講談社コミックスKiss (544巻))
二ノ宮 知子
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これって言葉をちょっと変えると、MBAに来たばかりの日本人留学生の気持ちだよなあ、と思う。

「授業で何にもできなかったんデス。教科書もケースもしっかり予習したのに。
 みんなの発言に、なにひとつさっぱりついていけないんデス・・・
 みんな私(僕)より若いのに・・・(注:MBAの学生は通常日本人留学生より平均して若い)
 私(僕)は井の中の蛙で、世界はすごく広かったんデス
  それだけです」

MBAに留学してくる人は、日本では学業上、仕事上も成功してきた人が多いんだと思う。
「出来ない」と思ったときの精神的ギャップたるや、日本では落ちこぼれだった、のだめ以上のはず。

それから、日本では一流企業に勤め、そこでも業績がトップクラス、なんて人が多いと思うが、
MBAに来てみると、周りの学生が自分の会社を知らない、なんてざらである。
日本のメーカーならば誰でも知ってるので、胸を張って生きていけるが、銀行や商社だと知られていないことも多い。
商社だと、そもそもビジネスモデルが理解されず、「何やってる会社?」と言われることも多い。(商社じゃない私も聞かれる)

日本でなら、説明しなくても誰でも知っている憧れの企業にいたという人ほど、この「カルチャーショック」は耐え難いものがあると思う。

(さすがにアメリカの銀行出身の人は、日本の銀行は知ってます。
 それからFTとWSJで毎日のように広告出してるみずほ銀行はMBA生はみんな知っており、
  昨年アメリカの巨大投資銀行を買収した三菱と野村は今では有名です。)

余談ですが、商社出身の方は「Trading company」と直訳すると全く理解されず、「何がすごいの?」となる。
私は夏のインターンで、上司に「日本の商社が何故そんなにすごい会社なのか」を説明するのに大変苦労した。
「自分は産業の屋台骨を支える、日本を代表する「Congromerate」から来た。
エネルギーや原材料調達、食品や工業製品の流通、他国での事業開発や投資、IT分野でのベンチャーキャピタルなんかも担っている重要な企業だ」
とかって説明するのが良いと思う。
余談終わり。

私も、この1年間いろいろ苦労したな、と思い出す。

オリエンテーションの最初の日、全く何をしゃべっているのかわからない(ほど英語が早い)チームメートがいて、面食らった。
この半年間、どうやってこのチームメートとうまくやってけば良いのだろう、と思った。

授業は先生の話はまだわかるが、他の人の発言で聞き取れないのがたくさんある。
雰囲気で、何言ってるのかはわかるが、それにBuild onして意味のある発言が出来るほどにはわからない。

しばらく経って聞き取るのに慣れてきても、今度は意味のある発言が出来ない。
英語が下手すぎて、発言内容が刺さらなかったり、思っていることを十分に表現できなかったりして、
落ち込むことも多々あった。
それこそ、予習も完璧に、何を言うかまで事前に考えてあったのに!
「クライアントに役に立つインサイトを発言する」ことが評価されてきたような業界から来たから、この「出来ない」ショックは大きかった。

100Kをはじめとしていろんなチームやコミュニティで、リーダーシップを取ろうとして全然うまくいかず、空回りしたこともあった。

普段日本でやっているレベルと同じようにやろうとして、全く出来ず、
自信をなくした、というのは、人によって対象は違えど、誰もが経験することだと思う。

しかし最終的には、誠実に、周りの人と協調しようと努力しながら、頑張る姿勢は評価される。
授業中たまにしか発言できなくたって、その内容が深く考えられていたものであれば、言葉のギャップがあっても皆理解できるのだ。
英語が下手でも、自分の得意分野を見つければ、そこで
リーダーシップを取って、「いつもどおり」進めることも出来る。

もちろん、それぞれうまく進めるためのコツはあり、それを習得するにはやっぱり1年はかかるな、と思った。

結局、MBAでも認められるポイントは、自分が今までの会社やコミュニティで認められてきたポイントと全く同じだったりする、と気がつく。
そして弱点も、言葉が通じないからその分新人に戻ったような気分になるが、結局同じところだったりするのだ。

だから、結局あわてずに、自分がこの2年間に何を達成したいのか、目標をしっかり定めて、一歩一歩着実に乗り越えていくしかない、と思う。

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MBA交渉術の授業の行方 (15.067 Negotiation and Decision...)

2009-05-07 14:22:51 | MBA: MBA授業

4月から始まった、交渉術(Negotiation)の授業が結構面白い。
春学期の後期だけなので2ヶ月だが、週に二回の授業で毎回交渉の実践演習があるので、かなり密度は濃い。

MBAならどこでも交渉の授業はあるし、MIT Sloanにも交渉の授業は3種類くらいある。
そのなかでも、私のとっている授業は、複雑な意思決定を伴う交渉を色々やるのが売り。

実際、3人以上もステークホルダーがいて、20項目以上も議論しないとならないような複雑な交渉で、
どう話を始めて、どこでどう落とせばスムーズに交渉が進み、更に自分が勝てるか、
という感覚がだんだん分かるようになってきた。

例えば、今週の月曜は、実際に1960年代にあった日・米・中の3カ国間交渉をモデルにしたケース。
当時、アメリカ・中国間が直行便を飛ばそうとして交渉をはじめ、日本を通過しないと飛ばせないので日本を巻き込んで行われたものだそうだ。
上海・北京以外に自国の空港を増やしたくないが、日・米には航空便を飛ばしたい中国。
自国の航空会社の数が飽和しているので、他国の航空会社を入れたくないが、自分は日・中に便を飛ばしたいアメリカ。
羽田がいっぱいなので、通過するだけの便なんか入れたくないが、アメリカと中国に便数を増やせるならメリットがある日本。

三者交渉なだけではなく、決める項目も20項目以上ある。
各国間の航空便の数。開く空港の数。
日本からアメリカに飛ばす航空会社を増やせるか。
中国の空港の修復に誰が金を出すか。
中国の空港のコンピュータシステムは日米のどちらが売るか。
宣伝はどの国で打つか。
ハイジャック防止法に調印するか。

初めてこの授業を取った先月のはじめ頃は、中古車の売買の交渉とか、決める項目が値段だけ、みたいな簡単な交渉をやっていた。
それがこのひと月で、10個も交渉の演習をやって、だんだん慣れてきたらしい。
こんな複雑な交渉を、英語で出来るようになるなんて思っていなかったので、やっぱりやればやるだけ力がつくものなのかもしれない。

複雑な交渉のスキルが分かってきた、というのも良いが、
何よりこの授業を取ってよかったのは、自分の強み・弱みが分かったこと、
交渉力は語学の問題ではないこと、
そして、世の中にはすごい!ひとがいる、ということが分かってきたことじゃないか。

強み・弱みで言うと、どうやら私は、論理的にサクサク進む交渉は圧倒的な強さを誇るらしい。
特に一対一の交渉に強い。
相手がネイティブであろうが、先に条件を提示して来ようが、
色々なところから論理的に突いて、相手の型を崩し、自分の型に組み直してしまうのが勝因らしい。

交渉術では常套手段であるアンカリング
(自分が先に条件を提示することで、相手を自分の思考の幅に入れてしまう手段)
は授業でもやったので、誰もが先に条件を提示したがる。
なので、私は相手に先に型を作らせてあげて、安心させた後に、
それを論理的に崩しにかかり、自分の型に組み替えてしまう、という方法を取る。

なんか自分の麻雀の打ち方に似てるなー、とちょっと思った。
私あんまりリーチしないもんね。

一方、相手が論理では通じず、だだをこねたり、交渉が長引くようなケースだと、
面倒になって、早く終わらせようとして、大幅に譲歩してしまい、負けてしまうらしい。
そういえば、麻雀でも西入とかすると弱いのであった。

あと、相手が感情的になって怒ってきたり、泣きそうになってきたりすると、
びっくりしてしまうというか、情にほだされて、譲歩してしまい、騙されて負けたことが2回くらいあった。

自分の強み・弱みが分かるって大切だと思った。
交渉を取り巻く環境をどう制御するかが、勝敗に大きく影響するということだし、
相手が苦手なタイプか判断して、十分注意して臨むことが出来る。

しかしそんなことよりも、世の中にはすごい交渉の仕方をする人がいる、という発見がやっぱり大きい。
例えば、このクラスにいる、あるラテン系の女の子
その子と交渉した人たちから、以前から
「彼女は本当に、すごい押しが強くて、とにかく大変だ」とうわさに聞いていたのだが、
何と押しが強いだけではなかった。

私が始めて彼女と交渉したのは先週の月曜。
2対2の交渉で、私はアメリカ人の工学部の男性とペア、
彼女は別のアメリカ人のMBA2年生で、押しの強いことで有名な女の子とペアだった。
そのときは、すごかった。

どんなに論理的に考えられる譲歩案をこちらが提示しても、
「そんなんじゃマイナスになってしまう。」
「それではもう私たちは倒産するしかない。」
「あなたたちはそれで得をするのかもしれないけど、私たちに死ねと言っているようなものだ」
と口々に言われ続けて2時間半が経ち、泣かれそうになったりして、
流石に消耗してきたので大幅に譲歩して終わった。

すると、私たちのチームは何とクラスで最下位、しかもマイナス3シグマというありえない負け方をした。
(当然相手方は、クラストップで、プラス3シグマだったわけだが)

このクラスの成績は、クラスの平均と比較して標準偏差で割った値(つまり○シグマ)を全部足したものを使う。
つまり勝ち続けていればA+が取れるし、負け続けていればB-になってしまう、きびち~世界だ。

幸い、全12回の交渉のうち、成績の悪い2回は取り除かれる、というルールがあるので、
私たちのマイナス3シグマは成績には反映されないのだが、
普通スコアは±1シグマに収まるらしいのが注目ポイント。

要は私たち、普通の3倍負けてるってことだからね。
押しが強いというより、相手をここまで追い込んでおきながら、それでも「私たちに死ねと言うのか」という度胸がすごい。
世の中にはこんな交渉が出来る人たちがいるのかと感動した。

そして、今日。
また彼女が相手にいるチームと戦って、何と3時間半かかった。
今日の彼女の戦術もまたすごかった。

私も前回の交渉で彼女のやり方については学んでいたので、
彼女が「この値は何があっても受け入れられない」と言えば、
私も「私たちもこの値は受け入れられない」と鸚鵡返しのように返していた。
彼女が当然我々に受け入れられない数字を出してこれ以上は譲れない、と言ってくれば、
私たちも同じように返す、という目には目を戦術である。

そうこう2時間もやっているうち、最後に、だんだん数字が詰められてきて、何とかファイナルアンサーにたどり着いたか、と思ったところ。
突然、彼女が思いついたように感情的に怒り出した。

「この数字では私は損しか出ない。これで行くなら私はWalk away(交渉決裂)する。」
もう詰まりそうなところに来ているのに、この時点でひっくり返すのはかなり意外感がある。

「じゃあWalk awayしよう。」
と私も言った。
こうなると、ハッタリの出し合いみたいな世界。

するとハーバードから来ている私のチームメートの女の子が慌てだして、何とか譲歩案を出そうと頑張り始めた。
その子も若いのかと思うが、慌てると人の話を全く聞かなくなる。
こうなると、彼女の術中にはまったのと一緒だ。

今日のケースはかなり複雑で、同じチームの中でも利害関係がある、というものだったので、
その利害関係を忘れてチームが一丸となって、提案をするのが勝つための戦略なのだが、
それがだんだんと壊されてしまう。

そこから1時間も粘っただろうか。
多少そのラテン系の彼女に有利な方向で展開されつつあったところ。
私のもう一人のチームメートの男性が、何と彼女と同じ事をやったのである。

「君たちがここで決めるなら、僕はWalk awayする」

もうその頃には私は点数はどうでも良くなっており、早く終わらせたかったので、
正直ヤメテクレヨー、という感じではあったが、彼の作戦は少なくとも彼には成功だった。

同じチームでも利害相反する私にはあまりよい結果ではなかったが、
少なくとも、ラテン系のその子から多少の点数を奪うことに成功したらしい。

今日は私は早く帰ってお勉強がしたい気分だったのに、
結果として交渉に3時間半もかかってしまい、すっかり消耗してしまって、お勉強どころではなかった。

この3時間半で何を学んだだろう、と思い返すと、非論理的な相手には同じくらい非論理的に返すことで、少なくとも同じレベルまでは取り返せる、ということか。
これって、交渉のスキルなんだろうか、と疲れた頭で考えたが、世の中にいろんな人がいるということを学ぶのが勉強なのかもしれない、と思い直すことにした。

まあ、そういうのも色々含めて、興味深いクラスです。

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オラクルのサン買収は成功するか?(15.351 Managing Innovation)

2009-04-29 08:08:39 | MBA: MBA授業

一週間も前の話題で恐縮ですが、昨日のManaging innovationの授業で、イノベーションへの買収の影響って話がでて、このネタをクラスに振ってみたら盛り上がったので。

この不況もあって経営不振で苦しんでいたサン・マイクロシステムズは、ついにオラクルに買収された。
個人的には「えー、うそーっ」と大声を上げてしまうほど驚いた。

オラクルがサンを買収するのは、事業戦略的には理にかなっている。
まずオラクルは、ERP、データベースなど企業向けシステムにおける中上位レイヤで強いが、OSなどの下位層で失敗し続けている。
一方、Sunの強みはハードやOSといった下位層。
この買収で、IBMやMSがやっているように、ハードからアプリケーションまで全レイヤを一気通貫、全て取り揃えて顧客に提供することが出来るのは、競合上非常に有利だ。
それから、入ろうとして入れなかったオープンソース戦略。
サンが最近買収した、MySQLというオープンソースデータベースは、Oracleも喉から手が出るほどほしかったもの。

事業戦略的には問題ない。
でも問題は、たくさんの人がWeb上で指摘しているように、「オラクルにオープンソースなサンの企業文化を維持できるのか」ということじゃないか。
つまり買収後の組織・文化の問題。
サンとオラクルじゃ文化が全然違うのだ。

サンは、自社のソフトウェア商品のコードを全世界にオープンにして、ソフトウェア開発者なら誰でもアクセスして、改造できる仕組みにしている。
そうすることで、サンの社員じゃなくても、世界中に散らばる優秀なソフトウェア・エンジニアの頭脳を借りて、自社の商品を向上させていくことが出来る。
別に全てのサンの製品がオープンなわけじゃないが、大手のソフトウェア企業の中では最もオープン化に成功しているといえる。

サンの強みは、こういう世界中の優秀なエンジニアのネットワークを携えていること。
それは、そのネットワークをうまく仕切れる社員がいて、そういうソフトウェア開発を行える企業文化が根付いていることに拠っている。
問題解決や品質向上に思わず時間とエネルギーを投じてしまう、知的好奇心と「遊び心」にあふれた優秀な人たちのネットワークを活用するには、彼らが常に満足させられる課題を提示し、うまくまとめていくような人と文化があることがとても大切なのだ。

一方で、オラクルは「コストカットの文化」。
もともとはピープルソフトのエンジニアでオラクルに組み入れられた、私の友人のIvyの表現だ。
彼女が授業中に解説してくれたところによると、
オラクルでは、社内のエンジニアを使って、できるだけリーンにソフトを開発できるアーキテクチャを組み、できるだけインドなどのODC(Oversea Development Center)に出して開発してもらう。
世界中の遊び心満点で優秀なソフトウェアエンジニアをひきつけるようなものは無い、と言う。
とにかく「効率」を優先する。
彼女自身は買収当時(2005年)はまだエンジニアとして経験が浅かったので、オラクルに残ったが、優秀な先輩エンジニアは、そんなオラクルの文化を嫌ってたくさん外に出て行ったのだそうだ。

オラクルのピープルソフト買収といえば悪名高い。
1年半にも及ぶ敵対的買収の応酬の後、104億ドル(当時の日本円で1.1兆円)なんて、考えられないほどの高値でピープルソフトを購入。
嘘か本当か、その1週間後には、ピープルソフトの数千人の社員に解雇通知を一方的に送り
オラクルが選んだエンジニアだけにオラクルの採用通知を一方的に出す、という「効率的な」方法を取ったそうだ。
更に、新たに「採用」されたピープルのエンジニアは、ばらばらに違う部署に採用されたりしたので、もともとの社内の人とのつながりやコミュニティも無くなってしまったという人もいるそうだ。
それは文字通り、もともとの企業文化はなくなってしまう、ということだ。

それは、買収時に常に問題になる、企業文化の摩擦を回避するには最も「効率的」かもしれない。
相手の企業文化そのものがなくなってしまうんだから。
が、今回はどうだろう。

オラクルがピープルソフトやシーベルなどの今までの買収劇みたいに、サンの企業文化をずたずたにして、オラクルに組み入れてしまうようであれば、
オラクルは、この優秀なエンジニアコミュニティを仕切れる優秀な社員を失い、
オープンソースを支えるコミュニティを失って、製品は失速し、
結果として、この買収は今世紀最大の失敗事例になるかもしれない。

オラクルがこの買収の後、どう組織を改変し、サンの社員を扱い、仕組みを定め、製品の扱いを決めていくのか。
なんだかんだ言っても、ある程度期待しつつ見守っていくしかない。

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未来を夢想する力-イノベーション(15.365 Disruptive Technology)

2009-04-15 22:05:49 | MBA: MBA授業

前の記事で、大きな保存容量や処理速度を持たず、常時ネットに接続する機器が将来は主流になるかもしれない、と書いた妄想の続き。

機器のひとつとして、net-iPodみたいなものもあるかもな、と思っていた。
iPod-shuffleかそれより小さくて、WiFI、Bluetoothとちょっとした処理機能だけがついてる。
勝手に登録したオンラインのMusic Storageにつながって、オンラインでつくった自分のアルバムからランダムに音楽を流す。
いや、これだけだったら、イヤホンやヘッドフォンだけでも機能を果たせるかもしれない。
勝手にネットにつながって、自分のアルバムの曲を流すヘッドフォン。

あーでも、これだと今のWiFiじゃあ、移動中に接続できなくてだめかもしれないな。
新しい無線規格が必要になるのかなあ。
ついでに私はアンチ・アップルなので、Apple以外の会社が実現してくれると面白いんだけどなあ。

などなど、あれこれ考えていた。

私はもともと、授業を聞かず、窓の外を眺めて物思いに耽るのが好きな小学生だった、妄想家タイプ。
今もあまり変わらない。

さて勝手に妄想を繰り広げていたところ、何と、前回のUtterback先生のイノベーションのクラスに、Irving Wladawsky-Berger氏が講演に来た。
彼はもともとIBMでCloud Computingを主導していた、この業界では著名な方。

Cloud Computingというのは、インターネットでソフトウェアやサービスなんかを提供するやり方の総称。
もともとはビジネス分野で、SaaSといって、ソフトウェアをインストールしたり、サーバを買ったりしなくても、オンラインで会計管理や顧客管理のソフトウェアを提供できる(貸し出す)サービスのコンセプトから始まった。
今は、オンラインでパワーポイントやエクセルが使えるGoogle Docや、写真ソフトのPicasaやMac photo、更に広く、FacebookやTwitterのようなリアルタイムメッセージングサービスもCloud Computingの仲間に入れられる。

さて、氏が講演に来たときのこと。せっかくなので、
「Cloud Computingによって、10年後の消費者の生活-カスタマー・エクスペリエンスはどう変わるのか、そのためには現状の技術では何が足りないと思うか」と質問してみた。
ついでに、上記のオンライン音楽機器のアイディアを例として話してみた。

ところが彼の答えは、
「そういう風に未来を夢想して、それを実現するためには何が必要なのかを考えられる力こそが、イノベーションに必要なものだ」
というものだった。

「実現するために必要な技術はR&Dを頑張れば、いくらでも出てくる。
少なくとも、現在までは、克服が不可能なのではないかと思われるようなことでも、圧倒的な速さで克服してきた。
12年前を覚えているか?
インターネットなんて、パソコンにモデムをつけて、ダイヤルアップで接続して、それでもせいぜい60kbpsの速さしか得られなかった。
それが、今は無線で100Mbpsの世界だ。
技術はいくらでも変わりうる。
それよりも必要なのは、未来を夢想する力だ。」

傍目には、質問をはぐらかされたようでもあるが、ハッとするものがあった。
その昔AT&Tのベル研究所で電子管部長を務め、トランジスタの開発に深くかかわったマービン・ケリー氏の逸話を思い出した。

ケリー氏が、当時MITの博士課程の学生で、後にトランジスタ開発でノーベル賞を受賞したショックレーをスカウトしたとき、自らの夢を語るのだ。
ケリー氏は、
「10年後、20年後、このアメリカという国が求めるものはなんだと思うか。」
とショックレーに問う。

「それは、全てのアメリカ国民が、この国のどこにいても、いつでも、まるで向かい合っているように会話を交わせる通信システムだ。
そのネットワークをつくるためには、残念ながらAT&Tが誇る真空管ではできない。
真空管とは違ったほかの技術が必要なのだ。
それを開発してもらうために君に来てもらいたい。」

ショックレーは、このケリーの夢を聞いて感銘を受け、ベル研に移動し、本当に現在の電話ネットワークの基礎となっているトランジスタ(半導体)を開発する。
この話はもともと菊池誠氏の「日本の半導体40年」に載っていた話だが、記憶が定かでないので、言葉はちょっと不正確かもしれない。

この本を読んだ当時は学生だった私も感銘を受け、こういうケリー氏みたいな人になりたい、と思った。
留学してから、なんとなく忘れかけていたが、コンサルタント時代は、「自分が目指す姿」として色んなところでこの話をしていた。

将来、どのように人々の生活が変わるのか。
人々がどんな新しいことを経験できるようになるのか、どんなふうに便利になるのか。
そういうことをはっきりとイメージできることが、技術を主導するハイテク企業の経営者、そしてそれをサポートするコンサルタントにも必要なことだ。
などと偉そうに語っていたものだった。

未来を夢想する力-The ability to dream the future world-がイノベーションを主導するのに大切だということ。
Irving Wladawsky-Berger氏は、そのことを思い出させてくれた。

私の妄想は、ベル研のケリー氏のような夢想のレベルに達しておらず、はっきり言って技術好きのただの妄想の粋を出ていない。
更なる勉強と想像力の研鑽が必要だ
でも、彼のような、企業や産業が本当に目指すべき世界をはっきりと思い描き、それを主導していくような人になりたい、と思う。
そういうことを、久しぶりに思い出し、襟が正されるような講演だった。
流石IBMの技術の主導者だと思う。

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最高のチームを作る (15.365 Disruptive Technology)

2009-04-10 10:06:38 | MBA: MBA授業

ここんとこ、メキシコ旅行の話ばかり書いていたので、今日はMBA生活のことをちょっと書こうかと。

先週メキシコから帰ってきてから、強制的に忙しい学生生活に引き戻された。
4月から新しく始まった授業。
毎日のように出るファイナンスの宿題。
イノベーションのクラスの、大変重いチームプロジェクト。
でも、今学期は必修のクラスばかりだった先学期よりも圧倒的に楽しい。

ひとつは、自分のやりたい科目ばかり取っているから。
結局私は、普通MBA学生が取る、ストラテジーやオペレーションを取らないという、勇気ある行動に。
で、イノベーション関連の授業ばかり取っている。
宿題やリーディングも、イノベーション研究の最先端をカバーした論文や本。
量はMBAの授業と比較にならない程多いが(週末に本一冊とか)、興味がもてるものを読むのは楽しい。

もうひとつはチームに恵まれたこと。
MBAは一般にチームで活動して、アウトプットを出させることが多い。
私の場合今学期は、ファイナンス、マクロ経済学のほか、イノベーション関連のクラス3つで、計5つのチームが走っているが、大変だけど、チームに会うのが楽しい。

特に好きなのは、Utterback先生のクラスで、メディア系家電製品における破壊的技術について一緒に研究している4人チーム。
バックグラウンドも国籍も違うけど、携帯電話やテレビ、オーディオなどの家電に強い興味を持つ4人。
経営学の修士学生のチリ人のJulio。
工学部でリーンオペレーションの修士のアメリカ人、Craig。
同じSloanのMBAだけど私より9歳も年上で、携帯アプリで起業していたこともある韓国人のWoojae。
それから日本人で、ハイテク系企業のコンサルもやってた私。

4人で話していると、自分ひとりではとても思いつかなかったような面白い意味合いにたどり着く。
その結果、プロジェクトとしても、本当に面白いインサイトが出てきている。

MBAのチーム活動が、みんなこのチームみたいだったら、楽しいのにな。
どうしたらこういう素晴らしいチームを構成できるんだろう。

一つ目は、全員の興味分野が一致していること。
だから、他の人が自分の知らないことを話していれば、興味があるから自然と聞く。
相手の話が納得がいくから、相手の話に乗っけて話す、というのも自然に出来る。

二つ目は、それでも一人一人が持っている強みがまったく違っていること。
お互いが相手に敬意と好意を持っていて、尊重しあっている。

Julioは頭の回転が速くて、処理能力がとても高い。
彼にファシリテートを任せるとすぐにチームのTo Doが明らかになる。
チームの生産性の高さの半分は彼のファシリテートのおかげではないか。

Woojaeは家電分野なら知らないことは無い博識で、ネットワークも豊富。
チームの知識の半分は彼から出てきているんじゃないか。

Craigは一番年下だけど、チームで唯一のNativeで、彼がいないと英語レポートが書けない。
また、じっくり考えるタイプだから、みんなが見落とすところに気がついて、なるほどと思うことを言う。
これは大事な役割だ。
仕事もまじめに着実にこなすから信頼できる。

私はリサーチに強いのと、真の問題は何かつきつめ仮説を構築する、皆が言ってることをその場で構造化して、意味のあるインサイトを出すこと、などか。
何かコンサルっぽいなー。
まあコンサル出身だから仕方ないけど。
そんなわけで、Julioが先鋒なら、私はチームが詰まったときにファシリテートして、最後にまとめる殿(しんがり)の役目に自然となっている。

MBAのクラスで最初に言われるのが
「他の人の意見を聞きなさい」
「他の人の意見にBuild onして自分の意見を言いなさい」
そんなの、相手の話が聞いていて面白く、意味のある話なら自然と出来る、ということか。

能力をつけることはもちろん大事なんだけど、自然と生産性が高くなるチームを組むってのも大事だな、と改めて思う。
アメリカに来て、色々とチーム活動で苦労してきたから、このチームのありがたさが身にしみる。

あと2週間で、30ページ近くのペーパーを完成させる予定。
クラスで一番面白いインサイトを出すぞ、と4人ともやる気満々だ。
残りの2週間、楽しく頑張って行こう。

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チームマネジメント

2009-03-11 16:35:47 | MBA: MBA授業

今週は春学期前期最後の週のため、プレゼンが3本もあり、大変忙しい日々を送っている。
思えば、秋学期は、そんなに気合を入れてやるようなプレゼンも少なく、チームメンバーに結構任せたりしていたのだが、今学期は何故か仕事のように一生懸命だ。

その中で、今大変なのが、ノルウェー人3人と組んでいるチーム。
途中から取り始めた、Utterback先生の特別講義で、リサーチ中心のプロジェクトなのだが、ばらばらの意見をまとめるのが大変。

先週の土曜は、昼の1時から夜中の12時までミーティングして、議論がまとまらない。
今日も午後8時半頃から11時頃まで再度集まってプレゼンの仕上げ。

私は秋学期のコアチームが大変効率的なチームだったので、こんな経験は始めてである。
今回は、リサーチのテーマが曖昧な上、チームメンバーがそれぞれにやりたいこと、仕事のやり方がてんでばらばらであるというのが原因らしい。
特に、うち一人が、最後まで決めないでラストミニッツでやりたいタイプで、かつ独自性を極端に追求するタイプなのでなかなか大変だ。
彼の持っている良いものを上手く取り入れつつ、全体としてひとつの方向性を持った、意味のある内容にする、という作業に相当の時間を費やしている。

皆で合意しても、合意したとおりのスライドが上がってこない。
合意してないところがたくさんやってあって、合意したところがやってない。
なので、無いものは私が作るが、出来るだけ本人を説得して作ってもらうようにする。

また、プレゼン資料がぱっと見て意味が分からないと思い、私がわかりやすいように書き直すと、嫌がられる。
ので、一緒に話を聴きながら、フィードバックをして、一緒に問題解決をして、一緒に書き直す、という作業をする。
彼自身も、チームの考え方と合わないことは感じていて、何とかしたいと思っているので、こういう作業をすると大変感謝される。
ただ、とても時間がかかるのだけど。

さらに、明日が発表だというのに、今からまだ資料を読んでスライドを書き足したいという。
今日作業して骨子はしっかり作ったので、あとはやりたいようにやってもらうしかないと思っている。

一人だけテンポが違うからといって置いていったり、全部自分でやってしまうのではなく、ちゃんと信頼して、巻き込んで一緒に仕事をする。
時間はかかるけれど、大事だなあ、と思った。

そんなことが、3つもプレゼンを抱えていて極限状態にあるときでも出来るようになったなんて、自分も変わったな、と思う。
仕事の時だったら、ある程度やってダメだったら、効率性を優先して自分一人で仕上げてしまったりしたかもしれない。

やっぱり、自分が異邦人としてこの半年間苦労したからなんだろうか。
少々歯車が合わなくても、多少作業効率が落ちても、相手を信頼して一緒にやっていこう、と自然と思えるようになった。
もちろん腹は立つこともあるが、チームワークを最優先できる。
出立前に、みんなが「お前は外国で苦労しろ!」と言ってたのはこういうことだったのかなあ、とちょっと思った。

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授業(単位)を落とす覚悟

2009-03-04 16:27:35 | MBA: MBA授業

この学期に入ってから、ずーっと忙しい忙しい言い続けてますね。

私が主催の一端を担う$100Kのイベントがこの木曜に迫っているのと、取っているイノベーション関連の授業3つとも、プロジェクトの中間発表を来週に控えている。
この分だと、今週末も週末が無いな。

ついに忙しくて、結局、Introduction to Operation(9単位)を落とすことにした。
E&Iに必修だったNew Enterprize(9単位)は、もう最初の週で落とすことにしたので、かなり取得単位数が減ってしまった。

代わりに、オペレーションと同時刻に開催されている、イノベーションのUtterback先生のセミナー(6単位)を取ることにした。
Utterback先生といろいろ話すようになり、彼を指導教官として研究を進める道筋が見えてきたから、もっとイノベーション研究の役に立つ授業を受けたかったのだ。

あとは、3月後半・4月からは、春学期後期開催の授業と、実際に研究に向けた活動をすることで、単位取得予定。

オペレーションの授業を切った理由は、もうひとつ。
どうしても興味が持てなかった。

授業では、例えば、銀行のATMの前の行列は、いくつATMをおけば解消するかとか、コールセンターをどう配置するかとかという問題を解くことにフォーカスする。
しかし、それを解くことが会社全体の経営にどう結びつくのか、という議論が殆どない。
局所的な解を求めて終わりになっているところが、好きになれなかったのだ。
その割には予習の負担が多く、宿題も多い。

この授業を取らないと、次学期にサプライチェーンマネジメントなどの授業が取れなくなるので、非常に迷った。
が最終的には、イノベーション研究に専念しよう、と決心し、ついにドロップする覚悟が出来たのだ。

決めた後は、罪悪感などはなく、とてもすがすがしい気持ちになった。
やっぱり、
自分が本当にやりたいと思っているテーマだけをやれるのって、幸せなんだな
どんなに忙しくたって、これなら弱音を吐かずにやってられるよー。

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使えるファイナンスII (15.414 Finance Theory II)

2009-02-18 12:40:24 | MBA: MBA授業

今学期始まって3週目の授業に入りつつあり、だんだん授業の形式や先生の独特の癖などにも慣れてきた。
一応2週間たったところで、レビューしてみる。

先週、春学期の履修科目を全てご紹介したが、そのうち圧倒的にすばらしいと思うのはやはり、Utterback先生の”Disruptive Technoogies”。
毎回の授業で、今まで自分がイノベーションについて考えてきたことが、次々につながり、新しい考えが生まれてくる、という経験をしている。
書きたいことは山のようにあるのだが、今自分の頭の中が成長段階で、次々に考えが変わっていくような状態なので、なかなか書けずにいる。
「書く」という行為は、いったんポジションをとって、言い切る、という作業だから、こういう状態の時にはどうも筆が進まない。
もうすこし落ち着いてきたらアップします。

それにくらべて、Murray先生のManaging Innovationは、授業自体は正直普通だ。
ただ、ケースを大量に読むので、そこからの学びが多い。

さて、個人的に、Utterback先生の授業をのぞき、最も学びが大きいのはアスキス先生のファイナンス2だ、と思っている。
以前も書いたとおり、この授業はチームで解くケース宿題が週に2度も出て、文字通り毎日ファイナンスをやってる感じなのだが、ケースで練習することよりも、授業での学びが非常に大きい。
具体的なファイナンスのツールだけでなく、ファイナンスの視点でのものの見方、というのが分かってくるのだ。

コンサルタントをやっていた自分が、如何に「事業戦略」側に偏った人間か、ということが身にしみて分かる。
そのたびに、「ああ、こういうファイナンス的な視点でも物を見ないと、本当に会社を経営している人の課題なんて解けないよなあ、と思うのだ。

今日のケースもまさにそんな感じだった。
Financial strategyではなく、思いっきりProduct Market Strategyに振った答えを出してしまった。
どの国・どの分野に事業展開すべきか、どこは投資をやめて、選択・集中すべきか、などをたくさん書いてしまった。

企業が、まさに破綻直前に迫っているというのに。
いまこの瞬間、どこから資金を調達するのかが重要なのに。
調達先が、銀行なのか、株主なのか、それとも今選挙が間近に迫っている候補に政府からの支援を約束させるのか、なんてことは全く考えなかったのである。

戦略コンサルタントの価値っていろいろあるけど、一番大きいのは、しがらみに捉われず、ゼロベースでものを考えて、現場の人には思いつかない正しい解を導き出したり、それを実現する方法を提供したりするところにあると思う。
同様に、長期的な視野で戦略を考えられる、というのも価値のひとつ。
「今日の飯より、明日の糧を如何に2倍にするか」を考えることが多い。
それが「今日の飯」だけで精一杯になりがちな企業に、新しい視点を加えることができる。

問題は、そういう価値にこだわりすぎる余り、経営者が日々直面している資金繰りとか、「今日の飯をどう食うか」をないがしろにしがちなところだろう。
これは、BCGというコンサルティングファーム出身で、産業再生機構の社長をやっていた冨山さんがおっしゃっていたことだが、正にその通りだと反省しきりである。

もうひとつ、具体的なファイナンスの分析ツールで、目ウロコなものも結構あって勉強になる。
最近のわたしのお気に入りは、Sources & Uses分析。

数年間のバランスシートを見て、どのアセットやライアビリティが増えてるか、減ってるか、を引き算するという簡単なもの。
しかしそれだけで、その会社が、何を「Source(資金調達元)」にして、何に「Use」しているかが一目で分かる。
財務戦略から事業戦略まで、一気に見えてくるのだ。

例えば、上記のように最初の5年間に、Long Term LiabilityやEquityが増えて、PP&Eが増えていたら、その会社は長期融資や積み上げた利益に依存して、工場などの不動産を買っていることになるから、健全な経営といえる。
ところが次の5年間で、Equityが減り、Short Term Liabilityが増えて、PP&EやInventoryが減っているのを見ると、この会社は損失が出て、長期融資が出来なくなり、果ては資金繰りに困って工場をリストラしてるのか、というのが目に見えて分かるのである。

アスキス先生は、この分析を必ず最初にやれ、と言う。
たしかに財務諸表を詳しく読み込まなくても、その企業の財務・事業戦略の大枠が見えてくるというのは非常に役に立つ。
今まで色んな財務諸表を見てきたと思ったけど、分析手法は未熟だったんだな、と知って、ズドーンと大砲を撃たれたような衝撃だった。

こんな具合で、毎回ズドーンと体を打たれる思いをしつつ、ファイナンスにだんだん詳しくなってきてるのが嬉しい今日この頃です。

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新学期はじまる - 春学期授業のご紹介

2009-02-10 12:30:47 | MBA: MBA授業

いや、始まったのは先週なんですけどね。
先週は授業自体はイントロダクションだったので、予習も無く楽で、大変なのは$100Kだった。
それが、週末くらいから勉強のほうも忙しくなってきた。(あるべき姿)

Sloanでは、1年目の秋学期は「コア」と呼ばれる必修科目に加え、基礎的な授業だけで取得可能単位が埋まってしまう。
実質、必修以外で取れるのは、ファイナンスまたはマーケティングのどちらかか、E&Iの学生は水曜5, 6限(16:00-19:00) の授業だけ。
単位の問題だけでなく、宿題もチームアサインメントも多く、時間的にも他を履修するのは厳しい。

ところが春学期になると、コア科目が一切なくなるので、自分の興味に合う選択の授業を取ることができるようになる。
人によっては、ストラテジー、ファイナンスII、オペレーション基礎、マクロ経済、マーケティング、のようにどの分野も基礎的なものを満遍なく取る人もいる。
逆に、例えばアントレ関係だけにフォーカス、と偏って取る人もおり、さまざま。

満遍なくとるメリットは、2年生以降の学期で科目選択の幅が広がること。
ストラテジーやオペレーション基礎などは、より専門的な内容のPre-requisit(必須科目)に指定されていることも多い。
また、MBAらしくいろんな分野を学べること。だから、こういう取り方をしている人は結構多い。
デメリットは、そういう授業の学生は半分以上、MBA1年生なので、多様性は余り望めないし、コア科目と変わらない気がすること。

フォーカスするメリットは、やっぱり自分の好きな科目ばかりできるので、楽しいし、深く入り込める。
特にMITが強い分野の専門的な授業に出れば、PhDの学生や、エンジニアリングの学生も多く、普段と違ったより専門的な雰囲気が味わえる。
話も専門的で、先生と深い議論ができることか。
デメリットは逆に次学期以降の科目選択の幅が狭まること。

私の今学期は、ファイナンスII、オペレーション、マクロ経済を除くと、イノベーションのマネジメントや組織論にフォーカスして履修。
ファイナンスIIは、仕事でも使うコーポレートファイナンスをやるので外せなかったし、
オペレーション基礎は、世は広しといえMIT Sloanでしか受けられない、世界トップレベルのオペレーションの授業たちのPre-requisitになっているので外せなかった。
マクロ経済は、経済を学校でやって来なかった理系の私としては、基礎くらい理解しておきたかったし、先生が面白かったので履修。

で、第一週目も終わったところで、履修科目のレビューをば。

15.365 Disruptive Technology - Preditor or Prey ?                                                              

今学期、最も楽しみにしていた授業。
「イノベーションのジレンマ」著者のクリステンセン氏の先生でもあった、Utterback教授が教えていて、クリステンセン氏もたまに教えに現れるという。

行ってみて、圧倒された。
Utterback先生は、授業にはネット会議など最先端IT技術を入れているものの、どちらかというと昔ながらの大学の講義のように話す先生だ。

圧倒されたのは、授業のスタイル云々ではなく、ひとつひとつの先生の言葉。
すごく含蓄のある内容を、簡潔にさらっと言ってしまう。
今まで自分が、イノベーションについて、仕事や勝手に勉強しながら一人で考えてきたことを、たった一言で触れてしまう。
だから、先生の言葉のひとつひとつを聞き漏らすことができず、そして、自分の頭の中にあった、色んな事例や、考えてきたことが、先生の言葉によって有機的につながっていく。
授業が終わって、先生のところに行って自分が考えていたことを話したら、その内容で修士論文を書けるよ、と言われて、その気になっているところ。

正直、今までの人生の中でも、こんな思いをした授業は大学(院)生活の長かった私といえどもそこまで無い。
本当にMBAに来てよかったー、と心底思えた。

授業内容は、まずSカーブの説明や「破壊的イノベーション」の定義をし、その後「イノベーションのジレンマ」 へ。
学生は、それらの事例になるような実際の技術を調べるプロジェクトをやって、今後クラスで発表していく、というもの。

それだけなら、良くあるイノベーションマネジメントの授業に過ぎないが、この授業のすごいのは、例えば、ただのSカーブひとつとっても、世の中でよく言われていることは違うことや、Utterback先生が日ごろ思っている視点を、さらっと加えてしまうことである。
それが、まさに私が悩んでたところなんですよ!という感じなのだ。

ちなみに、Sカーブというのは、産業や技術などの成長の度合いを、時間軸などでプロットするとS字型になる-最初の黎明期はゆっくりしか伸びず、成長期にぐっと一気に伸び、成熟期で勢いが落ちていく-ことから名づけられたもので、あらゆる分野で使われている。

15.351 Managing Innovation and Entrepreneurship                                                

これは、イノベーション研究をやっているMurray女史が、イギリスのオックスフォード大学からはるばるMITに引き抜かれてきて、やっている授業。
今のところ、やはりSカーブなどの基礎的な説明をやっているが、そのうちどうやってイノベーションを起こすための組織を作っていくか、という組織論的な内容をカバーする。

Utterback先生の授業に比べると感動の数が少ないが、私が今まで受けてきたスローンのMBAの授業に比べると、圧倒的に楽しく、発見も多い。
やっぱり自分の興味のある分野だからなのか。

最初のうちは、かなり基礎的な内容をやっているけれど、今まで自己流で勉強してきた私にとっては、何が基礎なのかしっかり理解できるのはうれしい。
授業に参加している学生も、私のクラスは半分以上がSloan Fellowsと、ノルウェーの技術大学からの交換留学で来ている人たち。
彼らから発せられる質問や事例なども面白いものが多い。(いろんな意味で)

今後は、産業のフェーズごとに、どのような研究ポートフォリオを持つべきか、どのような組織レバーが重要になるか、という議論を行う

イノベーションではこのほかに、組織論の授業をもうひとつ履修予定。

15.012 Applied Macro and International Economics                                                

ベネズエラ出身の経済学教授で、MITでも強烈なキャラクターを誇るRigobon先生と、アフリカで開発経済をやっているSuri女史の二人による授業。
春学期の前期だけで終わってしまうため、月、水、金の週三回授業がある。
しかも私は朝8時半~という授業を取っているので、朝からRigobon先生の勢いに圧倒され、目が覚める仕組み。

Rigobon先生が、どんなすごい授業をするかについては、昨年履修されていたふらうとさんしんたろうさんのブログが詳しい。
とくにふらうとさんのりごぼん語録ダイジェストが面白いので、是非そちらを。
私もMITに行く前からこれら先輩方のブログを読んで楽しみにしていたが、実際は意外とまともな発言が多い気がした。
最近は、余りに常軌を逸した言動は取らなくなっている様子。
とくに「プロフェッショナル・スタンダードを守らなくて良い」などということは一切いわなくなったし、シモネタまがいの発言も一切しない。
学生を床に座らせる横暴にも出ないし、景気の悪い中で就職活動する学生が授業を休むことにも口を出さなくなった。
若干残念だが、まあ時代の流れなのだろう。

内容は、いまのところ中央銀行の役割やIS-LM分析といった、マクロ経済の基礎をカバーしており、後半はそれを活用して実際の国際経済の事例を議論していく。
そういった基礎の基礎も余り知らない私は、結構学ぶことが多いが、こういう何も知らない学生たちを相手に基礎を分かりやすく解説しながら、
たったの1ヵ月半で国際経済の議論ができるように育てていくって大変な仕事だなあ、と思う。
正直先生に申し訳ない。

最後の3回はディベート大会で、中国の今後、アメリカの金融システム、アジア統一通貨の可能性、というお題でディベートをやる予定。


15.402 Finance II                                                                                                              

Asquith先生という、これまたMIT Sloanの名物教授が教える授業。
秋学期のAndrew LoのFinance I が、NPV、Option Pricing、CAPMなどなど、前世紀後半に生まれたFinanceの理論を教えてくれていたのに対し、
この授業は企業のFinance manager、ゆくゆくはCFOになれる人材を作るべく設計された授業。
実践的な手法を学び、訓練を積むための授業と位置づけられている。
そのため、宿題の数がはんぱでなく多い。

ケースを読んで、チームで議論して、ケースの主人公に戦略を提案する、というCase Write-upを週に二回提出。
噂には聞いていたが、すごい量。チームで議論したうえ、それを書いてまとめるので、一回一回に相当な時間を取られる。

これだけ宿題が多いのは、先生の「Finance is the every day practice」という信念に基づくもの。
毎日やらないと、実践的な手法は身につかない、ということだ。
文字通り毎日やってる。

内容は、最初の数回でCash Flow Management、次の10回程度で、企業が直面するあらゆるFinancingの手段と評価方法、最後の数回でValuationを学ぶ。
授業は、ライトアップしてきたケースを先生が解説する形。


15.761 Introduction to Operation Management                                                   

MITにはオペレーションではGalien先生という名物教授がいるが、私は若手のFarias先生という先生の授業を取っている。
授業は講義半分、ケース半分、という感じで、オペレーションマネジメントの基礎を学ぶ。

オペレーション管理とは、企業戦略に実際の日々の企業活動が沿うよう、デザインし、管理し、必要に応じて軌道修正をしていくこと。
生産管理、在庫管理、レベニューマネジメント、サプライチェーン、そして品質・効率性管理、プロセスデザイン、などなど、小売業から外食産業から製造業から銀行まで、あらゆる産業のケーススタディをやりながら勉強する。

私はコンサルタントとしては戦略と組織論ばかりやっていたので、オペレーションは新鮮なところも多く、割と面白い。
ケースが外食や小売など身近な上、日本企業も含め有名企業がどんどん出てくるので楽しい。
ただ、これもチームで宿題をWrite-upする、結構負担の大きい授業らしいので、今後どうなっていくか半分楽しみ、半分不安、という感じ。

以上、こんな感じです。

←ついに新学期開始。今学期もしっかり頑張ろうと思うので、応援してくださいね!


スローンの冬休みは長い

2009-01-22 21:42:53 | MBA: MBA授業

長かった冬休みもあと十日ほどで終わってしまう。

スローンは本当に冬休みが長い。
12月16日に試験が終了し、次の学期が始まるのが2月2日。
休みは約45日。
こんなの、MBAでは珍しいんじゃないだろうか。

一応その長い休みの期間に、IAPと言って、色んな学部で普段は開講されない面白い講義が開催される。
外部の講師が来たり、他学部の授業をとってみたり。
ただ、特に単位をここでとる必要は無いので緊張感は余り無い。

人によっては完全に休みとして、1ヶ月間以上、どこかに旅行に行ってしまう人もいる。
別の国のプロジェクトに入って、3週間ほど仕事をやっている人もいる。

私も日本に2週間ほど帰り、ベイエリアに2週間ほど滞在して、4週間近くもボストンにいなかったわけだ。
それでもまだ2週間以上休みが残っていたわけだが、もう残り11日となってしまった。。
まあ、しっかり休んだので、有意義と言えなくもないかな。

ただ、あと10日しかないので、そろそろエンジンをかけ始めないとね。

←エンジンかけます。クリックして、応援お願いしマース。


プラットフォーム化へのファンド活用- 15.360 Silicon Valley Trek (6)

2009-01-13 22:00:17 | MBA: MBA授業

水曜の朝は、iFundというファンドをやっているベンチャーキャピタルを訪問。
i-Phone周りのアプリケーションを作るベンチャーを支援するファンドなのだが、非常に面白いと思った。
プラットフォームの標準化戦略において、自分の持っていた問題意識にヒット。

携帯電話でもOSでもゲーム機でも、使っているユーザ数がある程度を超え、その周辺に色んなアプリケーションが生まれるようになると、好循環が生まれ、ユーザ数が増える。
たとえばWindows OSは、使ってる人が多いので、OS上で動くアプリケーションを作る人が増え、より便利になるから、更に使う人が増える、という具合。
i-Podなんかも同様で、Pod castが増え、他社からi-Pod対応のスピーカーやカーオーディオ、PCが発売され、より便利だから、i-Podユーザが増える。

単にユーザ数を増やすだけでなく、対応するアプリやサービスを増やして、あらゆるニーズに対応することが、普及の鍵になる。
こうして普及した製品・サービスを「プラットフォーム」と呼ぶ。

では、対応するアプリやサービスをどうやって増やすか。
自社開発する方法もあるが、自社のリソースやアイディアは限られており、自社だけで全てをやろうとすると失敗しかねない。
そこで、他の大企業とのパートナー戦略や、ベンチャー企業の活用などが鍵になる。
大企業(インカンバント)とのパートナリングは、成功すればインパクトは大きいが、自由度が低くなったり、動きが遅くなってタイミングを逸することも多い。
よって、大企業とのパートナリングに頼るだけでなく、協力ベンチャーも育成する方が、プラットフォーム化は成功する、と私は思っている。

ベンチャーを育成する、といっても、一筋縄ではいかない。
どのレベルまでサポートし、どこから放っておくか、という見極めが実は難しい。
というのは、余りサポートしすぎると、コストがかかるだけでなく、ベンチャー企業が下請けマインドになって、イノベーションが生まれにくくなる。
また、企業にベンチャー支援の専門家がいるとも限らない。
そうすると、結局はうまく行かず、アプリを自社開発したほうが良かったんじゃないか、ということになりかねない。

i-Fundのスキームが面白いと思ったのは、i-Phone周りのベンチャーへの投資・支援を、Apple自身ではなく、VCがやっている、ということだ。
いろいろとうるさく口出して来るであろうAppleが直接関わるのではなく、VCというクッションがある。
この距離感がいい。
それに、Appleがベンチャー支援のノウハウがあるとは限らないが、VCにはある。

日本にはVCらしいVCが存在しないので、日本企業がこれをそのままマネしようとすると難しいかもしれない。
でも、ある意味でVC的な役割を果たしている、商社を活用する、という方法があるかもしれない。
また、シリコンバレーのVCを活用する、という方法もある。
i-Fundはまだ始まったばかりで、どこまで成長するかはわからないが、日本企業への応用が可能か、という視点でもう少し観察したい。

ところでこの話、前エントリのモバイル・ペイメントの普及にも、同じように使えるはずよね。
ペイメントを決済に使ってくれる店舗を増やしたり、テレコムや銀行などのインカンバントとのパートナリングだけが普及の鍵ではない。
このペイメントシステムをプラットフォームとして、更なるサービスを開発するような、ベンチャー企業を育成していくことが解決のひとつになるかもしれない。
(ただ、そうするとセキュリティの問題が常にあるけどね)

← いろいろ考えが膨らんでます。だれかコメント待ってます。


モバイル・ペイメントを普及させる- 15.360 Silicon Valley Trek (5)

2009-01-13 09:32:53 | MBA: MBA授業

火曜に訪問した企業はどれも素晴らしく、一緒に行った仲間はみんな大興奮だった。
特に午前中に訪れた、モバイル・ペイメントのプラットフォームを作ってるベンチャーがすごいよかった。

女性のCEOが我々10人程度を出迎えてくれたのだが、その人がまずカリスマ的だった。
なんというか、エネルギーにあふれてるだけじゃなく、尖っている。
例えば、自己紹介のとき、単に自分の経歴だけ話してる人には、「で、何のためにあなたは私の会社を訪問したの?」と手厳しい。
でも、一定の基準を満たしているものに対しては、敬意をもって接し、真摯に答えてくれる。
そこには、人を育てようという真の優しさはあるが、甘やかしは微塵もない。

そんな彼女は、今までにも3つの会社を成功させ、IPOまで至らせている、Serial Entrepreneurだ。
今回訪問したモバイルの会社は4つ目の会社。
そして、私生活では3児の母だという。

ビジネスモデルは、ソフトウェアをインストールするだけで、シンプルフォンでも決済が出来る仕組みをつくる、というもの。
これ自体は良くある話だが、将来的には、シンプルフォンが主流のアフリカで、モバイル決済を普及させる、というビジョンが新しい。
既にインドなどいくつかの発展途上国での普及を狙って事業展開している。

他国で普及を担当するのは、各国から採用された人だという。
どうやって採用するのか、と聞いてみると、イベントや人づてに会って、「この人は良い」と思った人には、その日のうちに連絡して、会って、自分のチームに加わらないか、説得するのだそうだ。
彼女にビジョンを語られたら、多くの人はやってみようか、と思うかもしれない。

さて、モバイルペイメントにおいては、日本は世界に誇れる仕組みを持っている。
ソニーとドコモとJRのおかげなわけだが。

携帯電話をかざすだけで、コンビニで買い物が出来、駅で切符を買うのに並ぶ必要が無い、インターネットに接続してクレジットカードや銀行口座からチャージできる、という仕組みを持っている国は、今のところ他にはない。

ただ、携帯電話に「フェリカ」という半導体を導入する必要があるのと、店などの受け側にも一つ一つ機械を導入する必要がある。
よって、一人当たりのコストがとても高いのが問題だ。

一方、この企業がやっているようなソフトウェアベースのプラットフォームの場合、クレジットカード端末を活用する仕組みになる。
携帯電話にはアプリをインストールするだけで済むし、カード端末はアメリカならどの店にもあるから、導入の必要が無い。
導入も簡単だし、安い、となると、あとは普及の問題だ。

この手のサービスは普及が鍵。
日本
企業各社の努力のおかげで、もう大分普及しちゃったから、余程のことがないと(大きなユーザカスタマーベースを持つ企業が採用するとか)ひっくり返されることは無いだろう。
そうすると、逆に心配なのは、日本以外の国で安いシステムが普及しちゃって、日本だけ高いシステムを保有していて互換性が無い、という、よくある話が起こることだね。
2Gの携帯電話がそうだったように。

ミーティングの最後に「宿題」が出た。
彼女の目下の課題は、まずこのサービスをアメリカで普及させることらしい。
というわけで、どうやってアメリカ国内で普及させればよいか、興味があったらレポートを書いてほしい、とのこと。
良かった人はサマーインターンとして採用するとか。

せっかくモバイル・ペイメントが素晴らしい国、ニッポンから来たので、この知見を生かすべく、ちょっと考えてみても良いかな。

次エントリ→プラットフォーム化へのファンド活用- Silicon Valley Trek (6)

← これからも色々頑張ってくので、応援してください!


日本でイノベーションを加速する- 15.360 Silicon Valley Trek (4)

2009-01-12 21:07:31 | MBA: MBA授業

月曜の夜は、シリコンバレーでインキュベーターをやっている企業を訪問し、ディナーもいただいた。
この企業は、起業家にオフィススペースを貸し、起業家同士をつなぐイベントやアドバイザリーを提供し、家賃をもらう、というビジネスをやっている。
この手のシステムは日本でもたくさん聞いたことがあるけど、この企業が面白いのは、起業家をサポートしたり、起業家の生態系を作ったり、だけじゃないこと。
Googleやマイクロソフトなど、シリコンバレーの大企業と協力して、大企業と起業家の協業のプロデュースもしているのだ。

私がMITにいる間のテーマは、イノベーションを生み続けられるような組織をどうやって作ったらよいのか、ということ。
その結果、日本がもう一度世界のイノベーターとして生まれ変わるためにはどうすれば良いか、について、ある程度実行可能な結論を出すのが目的だ。

ところで、アメリカでは、50年代~60年代にかけては、IBMやXerox、AT&Tなどの企業研究所がイノベーションの多くを生み出していたといわれている。
その後、70年代~80年代にかけて、ほとんどイノベーションが生まれない停滞の時代があった。
そしてシリコンバレーのスタートアップが、90年代以降のアメリカのイノベーションの多くを生み出した。
(要ソース。ボストンに帰ってから元になった本を探します)

日本はどうだろうか?
イノベーションの指標によると、60年代~70年代にかけて、大企業を中心にイノベーションが生み出されていた。
それが徐々に小さくなり、90年代から全く停滞している、という状況。
かつてイノベーションが生み出され、経済を牽引していた大企業から、それらしい経済規模に見合うイノベーションが生まれなくなっているのだ。

これを復活させることを考えた場合、単純にシリコンバレーをまねて、起業家を支援して、イノベーションを生んでもらう、というモデルがうまく行くのか?
日本にこのシリコンバレー・モデルを埋め込むべく、色んな人たちがインキュベーションをやっていることは知っている。
でもそれが本当にうまく行くか?

コンサルタント的に問題を解くなら、まずは何で大企業でイノベーションが起こらなくなったのか、真の原因を見極め、その課題に答えられる解を導くべきだろうね。
そのあたりは、今日は端折る。

結論だけ書くと、製造業などの大企業を最終的な受け皿(投資家)とし、スタートアップと大企業の多段階の協業をサポートする仕組みを作ること。
そして、大企業における企業内起業(Corporate entrepreneurship)やCVC(Corporate Venture Capital)を推し進めることが鍵じゃないかと私は思っている。
そもそも日本では、今停滞していると言っても、イノベーションにおける大企業の役割が無視できない。
単なる起業家支援だけでは、イノベーションは起こらないと私は思っている。

近年のシリコンバレーでは、IntelやCisco、Googleなどがシリコンバレーのスタートアップと協業、場合によってはCVCを使って吸収し、さまざまな新しい製品やサービスを生んでいる。
日本でうまく行くのはこういうモデルだと思う。

ただ、大企業がやるのを待っているだけでは何もおこらない。
例えば、アメリカのベンチャーキャピタルは、起業家の卵に金を出し、育て、関係構築をやってあげて、一人前にし、場合によっては大企業とのコラボの面倒も見る、という全てをやってくれる。
こういう
仕組みが、日本には未だ無い。
かといって、アメリカのようなベンチャーキャピタルを作る必要は無いと考えている。
既にあるパーツを上手く組み合わせ、足りないところを補って仕組みを作る、というやり方が合っているんじゃないか、と思う。

イノベーションのシーズは大学やベンチャーから得る。ただし日本だけじゃなくてシリコンバレーのベンチャーとも積極的に協業。
ベンチャーキャピタルや投資家ではなく、最終的にイノベーションを製品化したい製造業が、金を出す。
ベンチャーキャピタルではなく、商社のような企業が、投資家や専門家を橋渡しする役割を担う。

これなら、今の日本のシステムを大きく変革とかせず、今のシステムの良いところを促進し、パズルのように組み合わせるだけで、イノベーションを産むポンプのような仕組みができる、と思っている。

更に、日本の大企業も最近は近視眼的で、本当に小さいベンチャーには興味が無くなっている。
今、本当に小さいベンチャーを支援できるのは中くらいの企業だろう。
こういう異なる利害を持つ複数のステークホルダーを巻き込んだ、多段階で育成していく仕組みを作る必要がある。

ちょっとがんがん書いちゃったけど、まだこなれてない仮説で、検証もしてないので、これから進化させていく必要がある。

ともかくそういう議論を、ここの企業でビジネスパートナーシップマネージャーをやっている人とした。
アジア地域で、インキュベーションの仕組みが全く違う、という話は同感だ、ということで盛り上がった。
月曜から、これは!と思える企業に出会えて幸せだー!

後日談。
その時した話が面白かったみたいで、ちょっと話して一緒に何かやってみないか、と昨日連絡が来た。
何と、CEOに会わせてくれるという。
せっかくのチャンスなので、ものにすべく頑張って来ようかと思います。

次エントリ→ モバイル・ペイメントを普及させる- Silicon Valley Trek (5)

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シリコンバレートレックも佳境に- 15.360 Silicon Valley Trek (3)

2009-01-12 09:44:13 | MBA: MBA授業

更新遅れました。
実は金曜からずっとヨセミテ国立公園に行っていたのですが、ロッジのインターネットが壊れており全く接続できず。
サンフランシスコに戻って、
スターバックスで漸くつながった。

シリコンバレー・トレックの詳細について、まずはレポートします。

E&Iの必修であるこのトレックでは、シリコンバレーにいるテクノロジーやバイオなどの企業を訪問。
もう大企業になってしまった企業ではなく、スタートアップをメインに訪問する。

すでに書いたが、月曜から最終日の水曜まではプログラムがびっしり詰まってて大変だ。

朝7時半からは、VCなどからスピーカーを呼んで、約1時間のスピーカーセッション。
Ken Morseの東海岸的な趣味で、みんな朝っぱらからシリコンバレーには似合わないネクタイにダークスーツでしっかりキメている。
眠い目をこすりつつ、朝食をとりながら、話を聞き、メモを取り、質問する。
ラフな格好で来たスピーカーからは、「何か朝っぱらからお葬式みたいだぞ?」とからかわれたりする。

その後、だいたい9時ころから一つ目の企業を訪問。
一企業5人~15人くらいのグループに分かれ、グループ全体では一度に8企業くらいを訪問する。
20台近くのレンタカーに分乗して、企業に向かう。

ほとんどのスタートアップでCEOが出てくる。場合によってはそこにいる全員で出迎えてくれる。

スタートアップに行って良かったと思ったのは、彼ら自身の現在の経営課題のような、センシティブな話題までわれわれにシェアしてくれること。
起業する時に直面する本当の問題がわかるし、ビジネススクールの学生としてどんな貢献ができるのか明確なイメージが持てる。
VMWareやAppleなどの大企業も訪問できたが、これらはただのリクルーティングの説明って感じで、正直つまらなかった。
ポイントをついた質問をしても、はぐらかされたり、担当者が余り知らなかったり。

昼に一度ホテルに帰ってきて昼食-ここでまたスピーカーセッションが入る。
休む暇も無く、午後に訪問予定の企業に向けて出発。

皆ラフな格好なので、さすがに場違いな感じがして、Ken Morseの指示は無視し、ネクタイを取ったりジャケットを脱いだりして訪問。

ホテルに帰ってきて、パソコンをネットに接続する暇も無く、スポンサー企業が用意してくれたディナーに向けて出発だ。
まずはスポンサー企業の説明を聞き、それからネットワークイベント。
ディナーは結構美味しかったけど、常に新たなネットワークを求めて誰かと話していないといけない。
ちょっとでも仲間内でしゃべっていようものなら、Ken Morseに見つかって、「君たち何やってるんだ-ここに来てる色んな人たちと話さなきゃだめじゃないか」と叱られる。

大体8時くらいにイベントは終了し、ホテルに戻る。
その後、明日の企業訪問に関してのミーティング、約1時間。9時半ころにはフルストップ。
やっと休める。

でも、宿題がある。今日訪問した企業を宣伝するピッチを提出。
訪問した企業や会った人たちへメールを送る-会った人には必ずその日のうちに必ずEmailを送れ、翌日ではインパクトが薄くなってダメだ、というのがKen Morseのアドバイスだ。

こんな感じで濃密な3日間を過ごし、正直疲れたけど、いろいろ勉強になった。
それに、自分が興味があって、詳しい分野の人と会えて、自分の強みや知識を元に貢献する可能性をいろいろ見つけられた。

スローンでの1学期の授業は会計、ファイナンスなどの超基礎にフォーカスするので、コンサルタントとして色んな産業分野で働いてきたこととかは、余り役に立たなかった。
正直、この国で私って役に立つんだろうか、と少し自信をなくしていた。
夏休みにインターンなんて本当にできるのかなー、と疑問に思っていた。
だから年末に日本にいるときなど、アメリカに帰るの嫌だなーと思っていたのだ。

でも、このトレックでの色んなチャンスを通じて、アメリカでも自分が教えてもらうだけじゃなくて、自分の持っているものを元に貢献できそうだ、という感触が得られた。
それ以外の学びもいろいろあったけど、自信が取り戻せたっていうのが、一番大きかったかな、と思う。

次エントリ→日本でイノベーションを加速する- Silicon Valley Trek (4)

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