My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

文系の研究論文をはじめて書く方のための覚書

2010-05-23 08:58:58 | MBA: 研究&TA

皆様、大変ご無沙汰しました。
ついに3日前、人生二度目の修士論文を完成して提出しました。
最後の1週間は、文字通り、朝起きた瞬間から夜寝るまでずーっと論文で作業している状態でした。
そして印刷に出してついに提出。

提出後のまる2日間は昼・夜といろんな方(MBAの学生から教授まで)とお会いしてお食事した以外は、
10時間寝たり、ラテン系とクラブに踊りに行ったり、マンガ読んだりと
自堕落な生活。
流石にそろそろ社会復帰したくなったので、まずはブログからはじめることに。

最初はまず、今回の修士論文を書いていて、経営・ビジネス分野の研究をするのに大事なお作法を、
自分への覚書としてまとめておこうと思う。

文系全般の研究について言えると思ったので、こういうタイトルにしたけど、
経営・ビジネス分野のローカルルールもあるかもしれないし、逆に理系研究にも役立つし、
そもそも仕事全般に当てはまるようなこともあると思う。

1. Bibliography(参考文献集)を常に更新・メンテナンスする

経営の研究を始めたころは、何故これがそんなに大切なのか全くわかっていなかった。
Bibliographyとは、理系で言うところのReferenceと同じで、論文の一番最後に載ってる文献集のことだ。
今の研究を始めた数ヶ月前、私の先生はことあるごとに「Bibliographyを見せろ」と言っていた。
で、当時は余り理由も分からず、仕方なく書いて送っていた。

で、ウチの教授に限らず、色んな先生と話しているうち、文系の研究では、ある一定レベルの先生達は
「Bibliographyを読めば、その人がどんな背景を元に、何を書こうとしているか大体分かる」し、
「Bibliographyの内容で、その人がどれくらいちゃんと調べてるかがわかる」
ということが、わかってきたのだ。

理科系と違い、経営やビジネス分野では、過去に同じ問題意識やテーマで研究が進められていることも多く、
そこで新しく研究をする価値は、同じ問題に違う方向から光を当てた、だったりすることも多々ある。
(例えばみんなの大好きなクリステンセンの「イノベーションのジレンマ」で書かれてることの大半は、
 1980年代からの研究者が言ってることと大差ない。
 彼の価値は、それをディスクドライブ業界で精細に検証し、掘り下げたことなのだ。)
こういう過去の研究を踏まえたうえで新たなことをやってるんだ、というのを明確にするためにも、Bibliographyは大切なのだ。

また、多くの理系分野と違い、言葉などが体系化されてない文系の分野では、
その分野の「共通言語」を理解している、ということを示すためにもBibliographyが大切だったりする。

更に、文系の研究では、新聞やデータベースを含む文献リサーチが重要になることが多い。
こういうものも、どれだけ広範に、ちゃんと調べてるか、Bibliographyを見れば分かる。

論文を評価する側の都合だけでなく、書く側も、本や論文を読むたびにBibliographyに加えておくと、非常に便利だ。
あとで「あの本なんだっけ・・・」と思ったときにすぐに見返すことが出来るし、いざ論文を書こうと思ったときにも重宝する。

と言うわけで、文系分野で研究をはじめようと思ったら、自分が読んで参考にしたいと思った論文や本をBibliographyにしっかり整理しておくのが、まずやるべきことだ。

2. 研究内容が決まったら、その分野やキーワードで書かれた博士論文・修士論文を探して読む

私が指導教官に、まず最初に読め、といわれたのが似た問題意識で研究している過去の博論・修論だった。
これは文系に限らず、理系でもはじめてその分野の研究をしようと思ったときに非常に役立つと思う。
特に、博士論文が素晴らしい。
博士論文は、その分野で身を立てようと思った人が、基礎から自分の理論なりを打ち立てるため書くものだ。
通常、教科書に書いてあるレベルから、最前線の研究に至るまではギャップがあることが多いが、
博士論文にはちゃんと基礎的なことから、研究の進め方、読むべき基礎文献も含めてちゃんと解説してある。

また、修士論文と違い、厳しいディフェンスも通ってるので、ある程度の質も確保されている。
(修士論文はレベルがまちまちであることも多いのは、日本もアメリカも一緒。
 ただ、経営・ビジネス分野は修士論文でも質の高いものが非常に多い。
 普通の修論と違い、社会人だとか他分野の研究者を何年も続けた後に書いてる人が多いからかも。)

従って、その分野ではじめて研究しよう、という人には絶好の指南書なのだ。

色んな大学の過去の博士・修士論文は、Google ScholarD-spaceで簡単に検索することが出来る。

3. 指導教官の期待値をうまくコントロールし、自分が指導を受けやすいように調整する

私は社会人になる前に大学院で研究していた頃は、こういうことを考えたことが一度も無かった。
指導教官というのは、学生のために時間をちゃんと使い、指導をしてくれるものだと思っていた。
それが出来ない指導教官というのはダメな教官なのだ、と思っていた。

ところが、社会人になってから、社会はそうは動いていないことを知った。
例えば、自分のやっているプロジェクトにどうしても上司の協力を得なければならないときは、
どんな手を使ってでも(笑)上司の注意を喚起し、時間をもらえるように努力する。
上司があまりにも詳細まで入ってきてやりにくいときは、早く上司を安心させて手を引かせ、
自分が一番動きやすいように調整する。

上司が特に自分のプロジェクトを最優先に考えてないのは、世の中では当然であり、
その上司の期待値をうまくコントロールし、一番活用するにはどうするか、という身の処し方を社会人は学ぶわけである。
学生の時に、こういうことに気づく人はまれかもしれないが、指導教官も同様なのだ。

まずは、自分は指導教官に対して、どういう指導を受けることを期待しているのか、を自分の中で明確にするのが大切。
指導教官の性格を把握することも大切だ。
その上で、理想的な指導を受けるにはどうすればいいのか、指導教官との付き合い方に戦略を持つ。
(本来は、指導教官を選ぶ際にも、こういう視点で見るのが良い)

指導教官が、もしマイクロマネージが好きで、細かく学生の研究に手を入れたいタイプの場合、
かつ、それが面倒でイヤだ、と感じる場合は、出来るだけ早い段階で、大枠を提示して、
相手を安心させて、手を入れさせ過ぎないようにするのも一つの手だ。

逆に指導教官が、余りにも放任主義の場合は、どうやって注意を向かせるか考えなくてはならない。
リスクはあるが、全然出来てないことを見せて、不安にさせるのも一つの手である。

指導教官がルーズで、言ったことを全然やってくれない、という性格なら、
ミーティング時間を出来るだけ長く取り、問題は全てミーティングの中で解決するようにする。
(で、教授がそれ以外の時間に時間を使って解決してくれるとは期待しない)
それ以外のお願い事は、口頭だけでなく、メールで送ったり、秘書を活用するようにする。

指導教官が、どうしても自分の指導に熱が入っていないと思うとき。
何が彼・彼女の今の一番の懸念事項なのか考え、それを解決して、注意を自分の研究に向かせる必要がある。
次の研究予算がいくら取れるかとか、担当している授業の方が、学生の研究よりも余程大事な瞬間も、彼等にはあるだろう。
それに対して、ある程度の理解を示し、解決に協力して、自分の研究に注意を向かせることも大切だ。

指導教官は、自分より専門知識も経験もあるが、一人の人間なのだ、という事実を受け入れて、
どうやったら一番自分の研究に役に立ってもらえるのか、という発想で考えるのが良い。

もっとも、指導教官がそれ以上に、人間的に、自分に与えてくれる影響は沢山あるだろう。
でも人間的にどんなに素晴らしくても、自分の研究にも役に立ってもらわないと困るわけで、その方法は戦略的に考えるべきなのだ。

4. 自分が何の問いに答えたいか明らかにする→答えの仮説を立てる→それを検証する方法を考える

これも、理系・文系に限らず、研究を効率的に進める上で非常に大切なことだ。
コンサルティングファームに勤めて、こういうことが当たり前に出来るようになってから、研究の世界に戻り、
初めて、研究をする上でも非常に大切なプロセスなのだ、と言うことが分かった。

まず、自分の研究が、どのような問題に答えるためのものなのか、を明確にするのが大切だ。
これが明確に定まってないと、何のための研究だか分からなくなるし、軸がブレやすくなる。
これをコンサルの言葉ではIssue Identification、と呼ぶ。
研究に限らず、会社などの全てのプロジェクトでも非常に大切で、
「一体何を解決するためのプロジェクトなのか」を明確に定めて常に意識しておくことで、ぶれずに進めることが出来る。

次に大切なのは、その問いに対する解の仮説を立ててから、検証計画を立てることだ。
これをやると、闇雲に文献やデータを調べなくても、その仮説の検証に必要なデータだけを調べれば良くなるので、非常に研究の効率が上がる。

5. 出来るだけ沢山の人と議論して、インプットをもらう

新規性が大切で、人に話すとアイディアを盗まれてしまう、というわけでない限りは、
出来るだけ沢山の人に話を聞いてもらい、インプットをもらうことは、研究の質を上げるのに非常に重要だ。

こうすることで、「自分の研究に足りない視点は何か」「自分の研究が学界にどれだけのインパクトを与えそうか」などを事前に把握することが出来るし、
議論から新しいアイディアが出てくることもある。

指導教官だけが、研究を指導する人ではない。
同じ大学の先生であれば、多くの場合喜んで時間をとってくれることは多いだろうし、
他大学の先生であっても、その先生の研究分野に関連があれば、話を聞いてくれるだろう。
そして、こういうネットワークは、もしその研究分野で身を立てるとなった場合、
例えば何かのポストについたりするときに推薦者が増えるわけで、色んな意味でプラスなのだ。

ただし、指導教官をちゃんと立てて、事前に他人に話を聞いてもらうことは知らせたり、
指導教官を介して紹介してもらう、のは人間として当然の礼儀である。

6. とにかく書く-モノがないと始まらない

指導教官の指導を仰ぐ際も、いろんな人のインプットを受ける際も、何か見せるモノがある、のは重要。
ポスターでもいいし、プレゼン資料でも良いし、論文の概要でも良い。
何か、アイディアがあったら、たたき台になるような資料をいつでも作っておくこと。

自分の研究が完全に進んでいるわけでなくても、1で書いたBibliographyがあるだけでも、
文系の場合はかなり有効なようだ。

また理系の場合は、実験データとか、計算結果とか、まだ文章にはなっていなくても、
最低限の議論が進められるような資料を、自分なりにまとめておくのは重要だ。

とりあえず、今思いつくのはこれくらいだろうか・・・
まだ他にもある気がするので、思い出したらコメント欄か、第二段で書きます

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チームの人を活かすということ

2010-03-05 14:44:45 | MBA: 研究&TA

最近、TAをやってる授業の中間発表が近くなってきたため、学生のチームと面談をやることが増えてきた。
私が直接頼まれて相談に乗ることもあるが、大体は先生とチームとの面談に私も参加する、という感じ。
先生がチームをどう指導するかを見てると勉強になる。

昨日は、先生の指導を見ていて、ひとつはっとさせられたことがあったので、メモっておく。
起業や企業経営にも役に立つ話だと思う。

昨日面会したチームの中にひとつだけ、明らかに問題を抱えているチームがあった。
軍隊出身の真面目なアメリカ人がリーダーっぽくやってるチームなのだが、
チームメンバーの一人が忙しいことを理由にほとんどミーティングにも参加せず、貢献もしないのだという。
更に、授業で与えられた課題を元にテーマを設定したが、非常に難しく、難航しているという。

その軍隊出身のリーダーは、メンバーがちゃんと参加しないことでチームの風紀が乱れており、
それがチームのやる気をなくしている。
諸悪の根源はそのやる気のないチームメンバーではないか、と考えていた。

これに対して、先生は、余りにもその人がやる気が無いなら、チームとして彼を追い出しても良い、
というオプションを示しながら、テーマそのものをチームのメンバーに合わせて変えてしまったらどうか、という提案をした。

彼等が考えていたテーマは、ある新技術の製造に関する話だった。
確かに、その技術は製造がよく問題視されている技術なので、その問題設定は良く分かる。
でも、チームの話をよくよく聞くと、製造に関わったことがあるのは一人しかいないのだ。
チームメンバーの多くの人のバックグラウンドが、デザイナーだったり、ソフトウェアエンジニアだったりしている。
だったら、製造ではなく、その技術を使ってどうプロダクトデザインするかをテーマにしたらいいのではないか、と先生は提案した。

また、やる気の無いチームメンバーの人は、実は似た技術で実際に会社を立ち上げようとして忙しいとのことだった。
だったら、その技術を使ってどのようなビジネスプランが考えられるか、というテーマを取り入れれば、
彼もやる気になって参加するのではないか、と先生は提案した。

チームの能力や興味が計画に合わないなら、チームを変えるのでなく、
テーマを変えて、チームのやる気を出し、力を最大限活用できるようにすればいいのではないか、と言う話だ。

同じ事を、いくつもの起業経験のある有名なシリアルアントレプレナーからも聞いたことがある。
起業するときは、一度一緒にやろう、と誓い合ったチームを変える、というのは難しい。
それこそ目的のためにメンバー交代などしたら、チームの良い雰囲気が壊れてしまう。
そういうときは、チーム全員が最大限力を発揮できるように、起業時のやり方や事業計画などを変えてしまう柔軟性が重要になる、そうだ。
起業で最も大切なのは、戦略や技術ではなく「人」だ、とその人はいっていた。
自分と気のあう、一緒にいるとやる気の出る人をまず見つけ、チームを組み、
そのチームの力を発揮させられるようなテーマを見つけるべきだ、というのが彼の考え方だった。

軍隊などの大組織やスポーツチームなどでは、ミッションや計画あらかじめ決まっている。
そのミッションに対して、仮にチームメンバーの能力や性格が合わないなら、メンバー交代をしてでも、
ミッションを果たすことが大切になってくるだろう。

ところが、起業時のメンバーだったり、MBAの学生のチームだったりすると、そのチームを維持することがとても大切になる。
会社で新事業を立ち上げる、とか小さな部署で何かやる、というときも同様だ。
一度チームを組んだら、そのチームのやる気を出させ、全員の力が発揮できるようにすることが成功の鍵になる。
仮に最初に立てた計画がチームの能力や性格に合わないなら、計画自体をチームにあわせて変えてでも、
ひとつのものを作り上げる、ということが非常に大切になってくるというわけだ。

最終的に達成すべき目的を大局的に見て、それ以外はチームを最大限活かせるように、柔軟にものを考える。
大組織にいる人間は、意外と忘れがちだろう。
起業に興味がある人や、チーム運営に悩んでる人には参考になる視点かもしれない。

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何か大きなことを成し遂げるときに、最初にやること

2010-02-14 14:58:13 | MBA: 研究&TA

私が今書いてる修士論文を書き始めたときに、指導教官がした話が面白かったので書いてみる。

ビジネススクールは、卒業時に論文を書くのは前提ではないので、自分で指導教官を選んで、概要を書いて持っていき、指導教官となることをお願いする。
私は、修士論文の内容を元に本を書きたい、と常々思っていたので、その本の構想を章立てにして、細かく概要を書いて持っていった。

分かっていた反応ではあったが、先生の反応は「これは多すぎる」というものだった。
「これが博士論文であれば、私はこれほど素晴らしい概要は無い、と言うだろう。
 でも短期間で書き上げる修士論文としては、あまりに壮大すぎる。」
(そして、この内容なら素晴らしい博士論文が書けるから、と博士課程に進むことを強く勧められた)

私は、「多すぎるのは分かっている。実はこういう内容の本を近い将来書きたいと考えているのだ。
そう考えたとき、私は修士論文では何をすべきか。」
と先生に問うてみた。

そのときに先生がしてくれた話。

「何かを成し遂げようと思うときは、今自分がいる位置からどう積み上げるか、と考えてはダメだ。
出来上がった本なり、目指してるものをを自分が今手にしていることを想像して、今の自分がいる位置を振り返ってみるのが大切だ。

ゴールにたどり着くには、様々な道があり、どの道を通っていけばいいのか、全く分からない。
でも、ゴールにたどり着いた自分から見れば、道は自分が通ってきた一本だけだ。

ゴールにいる自分をよく想像する。
そこから今の自分を振り返ると、一本の通るべき道が見える。
その道をよく見ると、今の自分には大きく欠けている部分(Missing part)がいくつか見えるだろう。
そのMissing Partsこそが、最初に取り組むべきことだ。

このMissing Partは「今の自分に出来ること」をベースに積上げたのでは、絶対に見えない。
だから平凡な人は、いつまでもゴールにたどり着かないのだ。
まずはゴールを精細に思い描き、そこから振り返ってMissing partsを探しなさい。」

私の場合、ゴールである本の概要は明確に見えているわけで、それを書くに辺り、最も弱い仮説を深めて検証するのが、修士論文でやるべきことなのだ、というのはすぐに分かった。

ただ、この話は修士論文ではなく、人生の全ての取り組みにおいていえることであり、
学生に問われたときに、そういう示唆的な話がすぐに出来るのが、教育者の才能なのだ、と思った。
その後も、私のMBA卒業後の進路も含めて、色んな話を先生とした。
いい先生に出会えてよかった、と思った。

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アメリカの大学院の学生の傾向-TAやってて思うこと

2010-02-13 22:57:37 | MBA: 研究&TA

ご無沙汰してます。
こちらは土曜の朝。
今学期二週目の今週は、怒涛の忙しさで全くブログに手をつける時間がなかったです。

毎学期そうだけど、2週目に入ると課題が多くなってくるのに加え、イベントが増えたりする。
しかもだいたい自分が幹事をやってるもんだから、忙しさが増す。
先週末から、スコッチウィスキーの会、ワインクラブのテイスティング会と、自分がTAやってるクラスのオフ会、と三つも幹事をやっていた。
加えて、TAの仕事も増えてきたし、修士論文も加速してきた。

日本人MBAの2年生最終学期となれば、単位も取り終わってゴルフと旅行三昧というのがあるべき姿では(笑)?
それなのにTA2本を引き受けて、修士論文まで書いてる私。
Mなんだろうか(笑)

今週末は三連休。
頑張ってエントリを色々書いてみるので、応援よろしくです♪ (ブログランキングのクリックとか)

まずは、TAをやってて気が付いたことから書いてみるデス。

1.アメリカの学生ってTAを使い倒す

MBAでは、どの授業にもTA(ティーチングアシスタント)がつく。
先生の授業準備の手伝いをしたり、学生の提出物を評価したり、
授業中の学生の発言をカウントしたり(MBAは授業での貢献が大切な評価のひとつだから)
学生の質問に答えたり、プロジェクトをサポートしたりなどなどが仕事である。

実は、私も他の日本人と同じく、余りTAに質問したり相談したり、という経験がなかった。
質問があれば教授に直接聞いていたし、分からないときは自分で調べたり考えたりすることの方が多かった。

ところがアメリカやヨーロッパの学生はTAを使い倒すらしい。
先週、授業が開始した頃から、学生からの質問や相談のメールが一日に10通以上届くようになった。
授業が終わったあとも、私に相談するための学生の列が出来たりする。

内容は
「この授業と別の授業のどちらを受けるか迷ってる。アドバイスが欲しい」
「授業のプロジェクトのテーマに何を選ぶか迷ってるので、相談に乗って欲しい」
「先生の説明していたこの概念が分からないので、詳しく載っている本とかを教えて欲しい」
といった、授業に関する内容から
「自分はこの分野に興味があるが、MITの授業で他に受けた方がいいものはあるか?」
「誰かいい教授を紹介してもらえないか?」
など、TAの私よりアカデミックアドバイザーに聞くべき質問まで幅広い。

私がこのブログで有名にしてしまった(汗)韓国人の親友のWが、以前こんなアドバイスをくれた。
「TAが始まったら、学生のメールには出来るだけ早く返事をしろ。でないとすぐにこのTAはダメだ、と噂になってしまう」
私自身もクラスメートから「あのTAは不真面目で使えないからダメだよ」みたいな発言を何度も聞いたことがあったので、これは説得力があった。
そんな風には言われたくない。
で、質問には出来るだけ早く返信するようにしていた。

でも、逆に「あのTAは割と使える」ということになると、質問が殺到するんじゃないか?と思った。
前よりメールがどんどん増えてるように思う。
人に頼りにされるのは好きなので、やりがいはあるけど、なんかホントに仕事みたいだ。(仕事だけど)

メールの返事は丁寧にやってる暇が無いので、要件のみ返信。
おかげで、端的なメールを書く習慣がついたように思うので、それは良かった。

こっちの学生は、TAというのがただの「役割」であって学生としては対等、エライわけでもない、と分かっている。
で、使えるものは使う。
「同じ学年の学生に、相談するのは恥ずかしい」というキモチは無い。
それで、役に立てば、「有難う」と返す。
(もちろん「君はいい仕事してるよ」と上から目線で返事をくれる人もいるが、これが対等であることの証なんだろう)
確かにそのほうが世界が広がるよね。

私も、学生から来たメールで「TAの使い方」を色々学べたので、あと一学期間だけど、他の授業に生かして、他のTAを使い倒そうかと(笑)思ってる。

2.学生がプログラム別・出身別に固まるのは日本人と同じ

私の受け持ってるクラスのうち片方は、学生がプロジェクトチームを組んで研究を行うことになっている。
クラスには、MBAの人、Sloan Fellowsというシニアな一年制のプログラムの人、SDMというエンジニア向け技術経営のプログラムの人、さらにノルウェーからのVisiting Fellowが10人いる。
MBAを除くと、年齢層が高く(40代の人も結構いる)、バックグラウンドが多様なのがクラスの特徴だ。

これが放っておくと、プログラムを超えてチームが出来る、ということがほとんど起こらず、プログラム別に固まる。
やはり社会人を10年、20年とやって来た30代、40代の方に、「他の学生に声をかけて、チームを作ってくれ」なんてMBAみたいなこと言ってもなかなか難しいのは、どこの国も同じなのだ。

MBAでは「日本人や韓国人は、自分の国だけでチームを作る人が多くてよくない」ということをよく聞く。
あれは日本人だから・韓国人だから、ではなく、年齢の問題だと私は思っている。
日本・韓国は社費が多いので、通常のMBAの学生よりは年を取っていることが多い。

年をとると、知らない人や若い人に話しかけてチームを作ろうなんてなかなか言えなくなる。
ましてやネイティブでなければ、言葉の壁もある。
かといって、若い人は若い人どおしで楽しくやるので精一杯で(特に男の子が女の子に声をかけるので精一杯)
経験を積んだオジサンに声をかけようとしないのも、どこの国でも一緒。

その結果、若い人は若い人だけ、30代・40代は出身地別に固まったチーム構成が出来る。
興味対象によるチーム分けではなく、年齢と出身地別のチーム構成になるのだ。

こういう現象を他の授業で見てきて、せっかく豊富な経験を積んだ、様々なバックグラウンドの人がたくさんいるのに、興味対象ごとに混ざらないのはもったいない、と思っていた。
それで、TAになったこのクラスでは、クラスのオフ会(Class mixer)を主催してみた。

30人のうち、遠隔で参加してる5人と都合が悪かった5人を除く20人が参加。
教授のお金で頼んだ食べ物と飲み物を教室でつまむ小さなパーティだ。
まるで小学生のクラスみたいで申し訳ないながら、最初に全員に自己紹介させたら、それなりに盛り上がったし、その後も自分の興味のある人に声をかけて交流していた。

その結果、普段は話さないような違うバックグラウンドの人との交流も進んだようで、
プログラムの枠を超えたチームがいくつも出来た。
ノルウェーから来たVisiting Fellowの一人(45歳)は、
「他のクラスでは、結局いつもノルウェー人だけでチームを組むことになってしまっていたが、今回は自分の興味のある分野の人とチームが組めて非常に良かった」
と言っていた。

どの国でもこういう会で交流を深めるのは大切だってことなんですよ。

そんなわけで、TAの仕事は大変ながらも、楽しみつつやっている。

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わたしがTAしてる授業

2010-02-02 09:49:00 | MBA: 研究&TA

いやー。
最終学期が始まったわけですが、思いのほか忙しい。
特にTAの仕事が。

ビジネス&経済系の書きたいネタが溜まっていて、書きたいんですが、あーゆーのって書くと結構時間かかる。
だから今日は時間無くって。
ですが、楽しみにしている人も多いかと思うので、時間出来たら頑張って書きます。

今日は、私が今学期TAをする授業について紹介。

15.365 Disruptive Technology: Predator or Prey?-破壊的技術:喰うか喰われるか

これはMBA向けの授業で、私が昨年の春学期に受けていた授業。
実は、この授業での発言やレポートが良かった、ということで、私は先生から直接TAにスカウトされたのでした。
英語ネイティブでもないのに、ありがたいことだ。

余談だけど、MIT Sloanの場合TAの半分くらいが、前年に受けていた授業で先生の覚えめでたかった人のスカウト。
TAどおしは情報交換してるからお互い良く知ってるけど、普通の学生から見ると、「いつの間にか決まってる」感じに見えると思われる。
先学期と今学期はTAの非ネイティブ率が高く(それだけ非ネイティブが優秀だってことなんだが)、
ネイティブ学生を中心に「何で!?」という声が広まってるがそういう理由です。

残り半分は公募。
(公募、と言っても全員にアナウンスするのは少なく、前年の似た授業で成績がAだった人だけが対象だったりする)
1年生の必修の授業(補講をTAが受け持つ)と新しい授業のTAはたいがい公募で、面接をして採用される仕組みだ。
余談終わり。

この授業では、前半でUtterback先生のDominant DesignやSカーブにまつわる一連の考え方など、産業全体でのイノベーションの視点を勉強する。
後半は、クリステンセンのイノベーションのジレンマ-つまり企業視点でのイノベーションの扱いを学ぶ。
ミクロ・マクロ両面からのイノベーションのダイナミクスについて学べる、というわけ。

ゲスト講演者も結構豪華。
クリステンセン氏のほか、IBMで長らくメインフレーム事業部長だった方などなどがいらっしゃる。

実は24回の授業の中の半回分を私が受け持つことになっている。
私がやってる修士論文の内容について話すことに。

どきどき。
ちゃんと準備しないと。

授業の他に、グループプロジェクトがあって、これが採点のメインになる。
グループでひとつの産業を選んで、研究し、最後に30ページ以上の論文を提出する、というもの。
産業のでどのようにDominant designが決まり、どのような企業が業界リーダーになっていったのか、
R&D戦略やパテントなどはどう影響してるか、などを研究する。
研究を進めるための、キークエスチョンがまとまってるので、それを参考に進めると、深堀りできる仕組み。

15.965 Technology Strategy for SDM-技術戦略論

もうひとつの授業は、SDM(スローン・デザイン・マネジメント)という、技術経営を中心に学ぶ方々のための必修の授業。
ここには、エンジニアなどを10年以上行ってきた方で、「そろそろ経営の方を」てな感じで会社から派遣された方がメイン。
SAPのCTO直前の人とかが普通にいるので緊張する。

SDMの方は1年間のうちに修士論文を書いて卒業しないとならない。
だから、
この授業でも「研究ことはじめ」という感じで、論文を読みこなすのがメインだ。
一回の授業で課される論文が2,3本。
更に、自分の興味テーマに沿った論文をいくつか読んで、レビューをするのが宿題となる。
自分の興味にそって、先行研究をしっかり勉強するのが、研究の第一歩だからね。
学問とは積み上げなのだ、特に文系は。
まさに研究準備のための授業、という感じ。
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で、今日は先生とミーティングした後、明日の教材とかを色々Web上にアップロードしたり、
突然履修を決めた学生をAddしたり、学生の人々にアナウンスを流したりなどしてました。

それで、今から自分の明日の授業のための予習・・・。
TAもあって、授業もあって、はやっぱり大変。
これからちゃんと両立できるのか、不安になる。

明日の授業は朝8時半から。
頑張ります。

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ビジネススクールのTAのおしごと。

2009-12-04 15:50:10 | MBA: 研究&TA

さっき家に帰ってきて、溜まっていた洗濯をやり、漸く一息ついたところ。
寝る前に更新。

今日は、朝9時からのスペイン語の試験が終わった後は、一日中TA(ティーチングアシスタント)のお仕事。
来週にファイナルレポートの締め切り3本と、試験1本抱えているが、TAは給料もらってるレッキとした仕事。
やらないわけには行かない。

ちなみにスペ語の試験は散々だった(汗)。
授業が過去形に入った頃から、完全に落ちこぼれ気味。
理由は簡単で、動詞によって色々違う、過去形の活用をちゃんと暗記してないから。
要は、真面目に勉強してないことが問題だってこと・・・。

TAの仕事方は、スペ語が終わったあと先生に会って、来学期の授業の内容を議論した以外は、ほとんど雑用。
授業でリーディング教材として指定する大量の論文のPDFを、ひとつずつオンラインから探し出してきて、授業用サイトにリンクを張る、と言う作業。

まあ、TAの仕事なんて、普通はほぼ雑用だ。
だから、ちゃんと給料もらえるわけで。
むしろ、私はもっとクリエイティブで、自分の研究に役に立つ仕事をもらっている方だと思う。

例えば、ビジネススクールだと、通常TAは「授業中、誰が発言したか記録する」という大変面倒な雑用を与えられるが、私にはそれが無い。
(先生が、発言で成績をつけるのはバカバカしいと思ってるからなのだが)
それに、授業の内容も、
TAである私に意見を求め、私の意見も結構取り入れてくれる。
これはかなり楽しい。
それから、私の一番大切な仕事が、授業で参考文献として取り上げる大量の論文を全て読んで、内容を理解していること。
これは、授業を取っている学生を指導する必要があるからなのだが、自分の研究にも役に立つ。

さて、気になるお給料ですが・・・。
まあ、授業によって額が異なるし、学校によっても違うので敢えて書きませんが、かなり多いです。
少なくとも日本の国立大学で、大学院生がやるTAの5-10倍はもらえる感じ。

さー眠くなってきたのでそろそろ寝ます。
詳しい話はまた今度・・・

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「一日三本論文読むのは研究者のディシプリン」

2009-10-16 07:27:50 | MBA: 研究&TA

昨日は弱音を吐いてましたが、あの後結構元気になってきました。
「書く」ことで自分を客観視できるものですね。。
それから、色々コメントいただけて、とても嬉しかったです。

さて、一日4本授業が入っている怒涛の火曜・水曜が終わり、昨晩からまた論文読みの生活に。

Utterback先生は、私にはとにかく「本を読めー」「論文を読めー」と言う。
先生の口癖は「1日に3~4本の論文を読むのは、ディシプリンだ」。
(余談だけど、ハーバードのクレイ・クリステンセンも授業で全く同じことを言っていた。)
ディシプリンって、「自分で自己管理してやるべきこと」みたいな感じの意味の英語

理系の研究だと、ここまで先行研究を勉強するのに時間はかけないと思う。
実験でも理論でも、体系化された方法論があり、それを習得すれば研究は出来るようになるから。

だが、イノベーションの研究者は、自分が実際に何かイノベーションを生み出すわけではない。
それに方法論も、数学や物理のように体系化された、確立した何かがあるわけではない。

ちゃんと先行研究を勉強しないと、みんな自分のフレームワークを色々作って、勝手なことを言うだけになって、何にも体系化されない。
あーだこーだと言われていることをちゃんと「まとめて」、更に「上を行く」議論をしなければ、ただ新しいことを言っても価値が無いわけである。

したがって、研究者が論文を読むのは大事である、と。
毎日、論文を読んで考えろ、という。

もうひとつは、私がコンサルタントだから。
実は先生はメーカー出身者とかには、そこまで「論文読めー」とは言わない。
彼らは、自分のメーカーの研究開発部門などにどんどんインタビューをかけたり、観察を進められる。
それは、その企業の人たちにしか出来ないことだから、そっちに時間をかけるほうが価値がある、と考えている。

しかし、コンサルタントというのは、社内とかに観察対象があるわけではない
研究者と同じで、どうせ他人様の事例を使って研究するのである。
だから、全体像を把握し、深い知識を詳しく持っていなければ、相手に与えられるインサイトも無い。
そうしたら意味のある情報なんて何も引き出せない。
価値のある研究なんて出来ないでしょ、ってこと。

一方、私は、いろんな論文を読むのを楽しんでる。
特にTAの仕事が始まってから、自分の興味がある以外の論文も次々に読むようになって、「あの研究はこの研究から発してるんだな」とか、つながりがすごくわかるようになってきた。
こうやって全体像を把握し、縦横無尽に知識があるのって、コンサルタントとしてこの分野で価値のある仕事をするためにも大切だな、と心底思う。

読みながら、「あのプロジェクトのあの時、この本/論文を知ってたら、もっとインサイトが出ていたかもしれない」とか「もっとうまく説明できたかもしれない」と思うことも、正直たびたびあった。
(逆に授業を聞きながら、「あ、この先生、あの論文読んでないな」と思うことも増えた)

先生が、何故あそこまで「論文読めー」と口を酸っぱくして言うのか、今はよーくわかる。
コンサルタントを続けてたら、ここまで死ぬほど読み続けることは出来なかっただろう。
それで満足して、井の中の蛙になってたかもしれない。
やっぱりMBAに来てよかったなー、と思った。

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イノベーションってそもそも何さ?

2009-10-02 09:50:20 | MBA: 研究&TA

朝起きたら、熱が37度まで下がっていた。体も痛くない。
チキン・ヌードルの神様が降臨したのかな。
これならスペイン語の授業行けるかな・・と思っていたが、また寝てしまい、すっかり寝飛ばしてしまった。

お昼にルームメートのYEが、レトルトのおかゆを作ってくれた。
韓国海苔とか入って韓国風。おいしい。

夕方には熱が完全に下がってきた。
やはりただの風邪だったか。皆さん本当にご心配おかけいたしました・・・。
いつまでも寝てるわけには行かないので、ベッドに横になったままできることとして、たまっている本読みからはじめる。

火曜は、Utterback先生と会って、来学期授業に向けたブレストをしてきた。
(寝不足の原因になった、自分の研究のほうは時間切れで話せなかったのは残念)
忘れないうちに、内容を。

私が来学期、TAとして担当するのは二つ。
ひとつは、SDM(スローン・デザイン・マネジメント)の必修の技術戦略論の授業。
もうひとつはMBAの選択の破壊的イノベーションに関する授業。

SDMとは、スローンにある、MOTとシステム工学とインダストリアル・デザインの考え方をあわせたような、1年制の大学院。
学生のほとんどは、10年・15年とエンジニアとしての経験を積んできた人がほとんどで、社費も多い。
会社が、この人はこれからマネジメントに転じさせよう、と考えている優秀なエンジニアが世界中から集まってきてるわけだ。
以前書いたカザフスタン人のように、国から派遣されている官僚もいる。(もちろん私費もたくさんいる)
技術戦略論は今までSDMの必修じゃなかったのだが、来年度のカリキュラムから取り入れられることになり、いま、その授業の設計をしているというわけ。

来年2月からSDMに来るつもりで勉強されている皆様。
すみません、わたくしめが技術戦略のTAになります。
役に立つTAになる予定ですのでよろしくです。

今学期の私の仕事は、先生のブレストに付き合うこと。
そして関連論文を大量に読んで、TAとして勤まるように準備すること。

ジム・クラークやクリステンセンをはじめとし、あれだけ沢山の大家を育ててきた先生と、ブレストをするのは、勉強になるし、何より楽しい。
先生から出てくるアイデアは、常に的を得ているし、広い。
私は、いま読んでいる論文から内容的にそれを補完するのと、
コンサルタントとして鍛えたやり方でブレストを進めるすることで貢献している感じか。

余談だけど、うちの会社では、大学を出て間もない若手コンサルタントが、大企業の40代のミドルマネジメントとも、ブレストや議論ができるように相当鍛えられる。
軸を出す、ポジションを取る、ソリューションスペースを広げる・・・
相手の言ったことの具体例を出す(例を引き出す)など。
最近は、うちの会社の出身者が、こういう話を小出しに本にして儲けるのがはやってるみたいだから、このブレスト力も本にしたら売れるかもね(笑)
余談終わり。

ブレストの結果、授業の大枠の方針はまとめると、
・Value CreationとValue Captureは同じくらいの比重で扱う
・デザインによるイノベーションや、仕組み・組織構造の変化によるイノベーションも扱う
・MITで生まれたイノベーションの考え方をできるだけ埋め込み(Re-manufacturing、User centric、Open innovationなど)、関連の教授もできるだけ呼ぶ

Value CreationとValue Captureをどのくらいの比重で扱うか、は先生は悩みどころだったようだ。
Value Creationとはイノベーションの元となるアイディアや技術が生まれるところ。
Value Captureとは、それを商品化して、経済活動に落とし、利益を得ていくところ。

SDMの学生は今まで、ずっとValue Creationの方に携わってきたし、今後もどちらかといえばValue Creationをどう増やしていくか、に関わる学生がほとんどだと思われる。
(つまり、研究開発センターの所長とか、マネジメント職といっても、そういう職)
先生自身も、そこまでValue Captureの方に寄ろうとは思っていなかった。
でも私と話していて、考えを変えたらしい。

私のほうも、先生と話していて、基本に立ち返らされた。
ドラッカーのイノベーションの定義を思い出す。

Innovation is the means by which the entrepreneur either creates new wealth-producing resources or endows existing resources with enhanced potential for creating wealth.
(イノベーションとは起業家が新しい富を生み出すリソースを作り出すか、
既にあるリソースを使って新たに富を生み出すポテンシャルを高める行為のことだ)
Peter. Drucker "Innovation and Entrepreneurship" (1985)

経済学は、富が限られているときに、それを無駄なく分配する方法を教えるものだ。
政治や倫理とは、その富をどのような優先順位で分配するかを決めるものである。
そして、イノベーションとは、人類の富自体を増やすこと。

つまりパイを分けるのでなく、パイ自体を増やすこと、というのが本来のイノベーションの定義なのであった。
(わすれたけど、シュンペーターの定義も多分そうだ)
だから、Value CreationのないValue Captureはイノベーションにはならない。

ところが、Value Creationをしても、Value Captureをちゃんとやって、それを金銭経済に落とさなければ、富にならないのだ。

ゼロックスのパロアルト研究所が、window systemを開発しても、
マイクロソフトがそれを商品化して世の中に広めなければ、人類の富にはならなかったわけだ。
だから、よくマイクロソフトを「ゼロックスの研究成果を奪った」かのように言う人がいるけど、私はちゃんと商品化して世の中に広めたマイクロソフトはエライと思っている。
(もちろん儲けすぎで、富の分配が非効率になっているのは経済学的には問題。)

Value CreationとValue Captureはセットでイノベーションにはじめてなるのだ。

もちろん、商品化すればタダで売っても人類の富にはなるわけだが、
この世の中が金銭経済を主軸として動いている以上、継続的なValue Creationを行うには、どこかで金にすることが重要だ。
儲からなければ、せっかくイノベーションを起こす素地があっても、継続的には起こらなくなってしまうだろう。

だから、長いことエンジニアをやってきたSDMの人たちは、Value Creationに対する思い入れが大きいと思うけど、私はちゃんとValue Captureもやって欲しいと思っている。

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指導教官の資質

2009-09-14 09:20:36 | MBA: 研究&TA

先週、指導教官のUtterback先生と話して、授業のTA(ティーチング・アシスタント)を二つやることになった。
もともと、来学期のDisruptive TechnologyのTAをやることは夏休み前から決まっていたんだけど、もうひとつやって欲しい、といわれた。
それは、先生が今年から受け持つことになった、SDM(Sloan Design and Management Program)というスローンの中でも、エンジニアが技術経営を学ぶための1年コースの必修授業。

新しい授業だから、内容をゼロから作り始めないとならないし、今までやっていたDisruptive Technologyの中身も変えたい、ということなので、2つの授業を作り直すことになる。
TA的には、来学期の授業が二つなのだが、今学期から先生と週に1度会って相談しながら、進めることになる。
(だから給料も今月からもらえる)

TAの仕事は、通常は授業に参加して出席を取ったり、発言をカウントしたり、学生の質問を受けたり、レポートを採点したり、というもの。
こういう感じで、授業の設計をゼロから先生とやる、というのはなかなか珍しい。

授業の設計にあたり、大量のイノベーション関連の論文や本を読むことになる。
読む論文は、どれも私の研究や、私の考えを進めるのに必要なものばかりだから、とても役に立つ。

ただ、その量が尋常じゃなくなる。
2個の授業を設計するための情報量って、ダンボール一箱くらいの本の量か。
1日に論文数本は読むスピードでやらないと間に合わないくらい。
そして、読んだものから、どの論文を学生に読ませ、どういう概念をコースでカバーするか、というのを設計していく。

先生から、「まずは先人がやっていた研究を勉強しろ」と言われて久しいのだが、
アウトプットを出したい性格の私は、ただ読むだけというのはなかなか進まなかった。
コンクールに出る予定がないのに、ピアノの練習をただひたすら続けるのがつらいのと一緒だ。

授業の設計、というアウトプットを出すためにはそれだけの論文を読むのは必須。
今回のTAのオファーは、私のその性格を読み取られて、私が研究が一番進む方向に仕向けてもらったような気がする。
非ネイティブの私だが、アウトプットを出す、となると、とたんに集中力が出て、情報吸収力が上がるのだ、私。

大学の教授は、ある程度まで行くと後進を指導するのが仕事になり、
自分の業績も、後進がどれだけ頑張ってくれたか、というのに依存するようになる。
だから、研究室の学生をうまく指導して、その学生が最大限の成果を上げられるようにするのは、本来は非常に大切な仕事。
だが、アカデミックの人は必ずしもそれが得意とはいえない。

これは日本に限ったことではなく、アメリカだって同じことだ(とアメリカに来てから知った)。
学生の興味や能力を無視して、自分のやり方を押し付けるが、特に学生の就職の責任は取らない人。
学生から何か言ってくるまで放置放任の人。
というのがなんと多いことか。

私のような、ただの本読みが遅々として進まない、というしようもない学生ながら、
問題解決能力とか社交性を買って、一番力が発揮できるであろう仕事を与えてもらえたのには感謝。
学生本人が、自然に力が出せる方向、
それも、やらなきゃならないけど不得意なことが進む方向に仕向けてくれる、というのは素晴らしい指導力だな、と思う。

と言うわけで、タダでさえ今学期は読む量が多い授業が多いのに、TAもあって、大変になります。
でも英語の不得意な非ネイティブの私が、TAをやらせていただけるなんて、本当に有難い機会。
何より、TAをやりたい学生なんていくらでもいるのに、私に二つも賭けてくれたのは嬉しい。
今学期は寝不足を覚悟して頑張ります・・・。

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研究ことはじめ

2009-04-13 23:02:25 | MBA: 研究&TA

4月に入って3週目、本当に忙しくなってきた。
本当に、文字通りブログを更新している時間が無い…

一番時間をとられているのは、Utterback先生のクラスのプロジェクト。
それから先生とはじめたIndependent StudyのReadingだろうか。
この2年間でちゃんと研究をして、論文を書きたい、と思っていたのだが、その準備として先生に読書課題をもらい、きちっと読んできて先生とディスカッションする、というのを4月から始めたのだ。

その量が半端じゃなく、週末に本一冊読んで、論文を3本程度読んで、何をディスカッションするか考えて…
これに加えて、他のMBAの授業のケースやリーディングは普通にあるわけで。
久々に院生らしい生活が始まった感じだ。

ああ、もうファイナンスの授業が始まっちゃいます…
先生がしゃべり始めてるので流石にPCの電源を落とそうと思います。

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