My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

モバイル・ペイメントを普及させる- 15.360 Silicon Valley Trek (5)

2009-01-13 09:32:53 | MBA: MBA授業

火曜に訪問した企業はどれも素晴らしく、一緒に行った仲間はみんな大興奮だった。
特に午前中に訪れた、モバイル・ペイメントのプラットフォームを作ってるベンチャーがすごいよかった。

女性のCEOが我々10人程度を出迎えてくれたのだが、その人がまずカリスマ的だった。
なんというか、エネルギーにあふれてるだけじゃなく、尖っている。
例えば、自己紹介のとき、単に自分の経歴だけ話してる人には、「で、何のためにあなたは私の会社を訪問したの?」と手厳しい。
でも、一定の基準を満たしているものに対しては、敬意をもって接し、真摯に答えてくれる。
そこには、人を育てようという真の優しさはあるが、甘やかしは微塵もない。

そんな彼女は、今までにも3つの会社を成功させ、IPOまで至らせている、Serial Entrepreneurだ。
今回訪問したモバイルの会社は4つ目の会社。
そして、私生活では3児の母だという。

ビジネスモデルは、ソフトウェアをインストールするだけで、シンプルフォンでも決済が出来る仕組みをつくる、というもの。
これ自体は良くある話だが、将来的には、シンプルフォンが主流のアフリカで、モバイル決済を普及させる、というビジョンが新しい。
既にインドなどいくつかの発展途上国での普及を狙って事業展開している。

他国で普及を担当するのは、各国から採用された人だという。
どうやって採用するのか、と聞いてみると、イベントや人づてに会って、「この人は良い」と思った人には、その日のうちに連絡して、会って、自分のチームに加わらないか、説得するのだそうだ。
彼女にビジョンを語られたら、多くの人はやってみようか、と思うかもしれない。

さて、モバイルペイメントにおいては、日本は世界に誇れる仕組みを持っている。
ソニーとドコモとJRのおかげなわけだが。

携帯電話をかざすだけで、コンビニで買い物が出来、駅で切符を買うのに並ぶ必要が無い、インターネットに接続してクレジットカードや銀行口座からチャージできる、という仕組みを持っている国は、今のところ他にはない。

ただ、携帯電話に「フェリカ」という半導体を導入する必要があるのと、店などの受け側にも一つ一つ機械を導入する必要がある。
よって、一人当たりのコストがとても高いのが問題だ。

一方、この企業がやっているようなソフトウェアベースのプラットフォームの場合、クレジットカード端末を活用する仕組みになる。
携帯電話にはアプリをインストールするだけで済むし、カード端末はアメリカならどの店にもあるから、導入の必要が無い。
導入も簡単だし、安い、となると、あとは普及の問題だ。

この手のサービスは普及が鍵。
日本
企業各社の努力のおかげで、もう大分普及しちゃったから、余程のことがないと(大きなユーザカスタマーベースを持つ企業が採用するとか)ひっくり返されることは無いだろう。
そうすると、逆に心配なのは、日本以外の国で安いシステムが普及しちゃって、日本だけ高いシステムを保有していて互換性が無い、という、よくある話が起こることだね。
2Gの携帯電話がそうだったように。

ミーティングの最後に「宿題」が出た。
彼女の目下の課題は、まずこのサービスをアメリカで普及させることらしい。
というわけで、どうやってアメリカ国内で普及させればよいか、興味があったらレポートを書いてほしい、とのこと。
良かった人はサマーインターンとして採用するとか。

せっかくモバイル・ペイメントが素晴らしい国、ニッポンから来たので、この知見を生かすべく、ちょっと考えてみても良いかな。

次エントリ→プラットフォーム化へのファンド活用- Silicon Valley Trek (6)

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4 Comments

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バルセロナの状況 (cruasan)
2009-01-14 06:24:33
Lilacさん、こんにちは。
数年前の事なのですが、実は僕もバルセロナで「お財布ケータイ」導入計画の責任者だった事があります。
日本のシステムはすごく進んでいて、ヨーロッパではどの国もお手本にしているのですが、バルセロナでもNFCカードを携帯に入れて買い物も出来るシームレスなシステムを、市当局として導入しようという動きがありました。
スペイン最大手電話会社のテレフォニカ、日本のJRにあたるTMB、ヨーロッパの大手広告会社JCDecauxなどがパートナーで、市当局からは僕と同僚がプロジェクトを受け持っていました。
しかし、ご指摘の通り、インフラの普及が壁になりオジャンになってしまいました。
電話会社の方は、「先に改札などのインフラを作るのが先」と言い、電車会社の方は「携帯にNFCを入れるのが先」という、正に卵と鶏状態。幾ら議論してもラチが空かないので、結局、欧州プロジェクトにしてEUから資金を得ようという話になっていますが、事実上止まったも同然の状態ですね。

その点、ご紹介されていたシステムはインフラ問題が解決されているので、面白いなーと思いました。
どうなるか楽しみですね。
ヨーロッパでの普及のかぎ (Lilac)
2009-01-14 19:17:36
Cruasanさん、

いつもながら、面白いご経験をシェアしてくださって有難うございます。
考えさせられます。

確かに。ヨーロッパの場合は難しいかもしれませんね。。
Cruasanさんのお話を読んで、何故ヨーロッパで普及しにくいのか、考えてみました。

日本の場合は、電話会社が先導しておサイフケータイを普及させたわけですが、これが出来たのは、ひとえに携帯端末を作る会社が、電話会社の言うことを聞くからですよね。
それも電話会社が、責任とって端末を実質買い取ってあげて、消費者には1万円以下の安い価格で提供してるから(それが我々の通話料に響いてるわけですが)、端末会社も安心してFelicaなんてコストの高いものでも導入できる。

ところが、ヨーロッパでは端末を作っている会社は地域電話会社とは全く独立ですし(ノキアやソニーエリクソンみたいに)、電話会社が進めようとしたって、乗ってこないでしょうね。
たとえ、日本みたいに、電話会社が買い取る、と言ったとしても、最大手のノキアが乗ってくるのかは不明です。

一方、日本の場合は鉄道も、携帯でSuicaが使えるようになる前から、カードでFelicaを導入していたんですが、これもヨーロッパの場合メリットが見えにくいですよね。
やっぱり日本と違って、都市部の電車の人密度が低いこと、料金計算の仕組みが面倒でないことから、改札に殆どコストをかけないで済むのでしょう。

日本の場合は、歴史的に改札に大きなコストがかかっており、それが、駅員→自動改札→Suica導入、とコストが下がってきた経緯がある。
東京駅の20万人、新宿駅の15万人、といった毎日の利用人数を考えると、これをスピーディに、殆どメンテナンス不要で通すことが出来るSuicaという仕組みは大きなコストメリットがあるんだろうな、と推察します。
このメリットがヨーロッパの都市だと見込めないんだろうな、と思いました。

香港、シンガポール、インドのデリーなどでは、電車でのFelica決済が普及しているんです。
香港なんて、日本以上なので驚きます。
こういう国は、結局都市部の人口密度が異常に高く、上と同じ理由でメリットがあるからでしょうね。

こう考えると、ヨーロッパでは、電話会社にも電車会社にも、フェリカ導入のメリットも力も無い。
逆に言うと、オーバースペックなんだろうな、と思いました。
ますます、日本(&アジア地域)の規格が孤立する危機を感じました...
Unknown (icy)
2009-01-15 17:34:22
London Olympics で地下鉄に導入すれば?ロンドンの地下鉄サービスはひどいのでね。改善の余地あり。オリンピックみたいなイベントだと予算もつきやすいのでは。
要は小銭を使う機会が多いところで、しかも社会インフラの一部になっているところで、予算の言い訳しやすいビジネスケースで、やるんでしょうね。ヨーロッパに限らず。
なるほど (Lilac)
2009-01-16 16:25:26
それはいいかもしれませんね。
北京も確かオリンピックにあわせて自動改札とか一部導入しましたよね。

ロンドンって、あんまり知らないんですが、誰がステークホルダーになってるんでしょう。

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