My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

新学期はじまる - 春学期授業のご紹介

2009-02-10 12:30:47 | MBA: MBA授業

いや、始まったのは先週なんですけどね。
先週は授業自体はイントロダクションだったので、予習も無く楽で、大変なのは$100Kだった。
それが、週末くらいから勉強のほうも忙しくなってきた。(あるべき姿)

Sloanでは、1年目の秋学期は「コア」と呼ばれる必修科目に加え、基礎的な授業だけで取得可能単位が埋まってしまう。
実質、必修以外で取れるのは、ファイナンスまたはマーケティングのどちらかか、E&Iの学生は水曜5, 6限(16:00-19:00) の授業だけ。
単位の問題だけでなく、宿題もチームアサインメントも多く、時間的にも他を履修するのは厳しい。

ところが春学期になると、コア科目が一切なくなるので、自分の興味に合う選択の授業を取ることができるようになる。
人によっては、ストラテジー、ファイナンスII、オペレーション基礎、マクロ経済、マーケティング、のようにどの分野も基礎的なものを満遍なく取る人もいる。
逆に、例えばアントレ関係だけにフォーカス、と偏って取る人もおり、さまざま。

満遍なくとるメリットは、2年生以降の学期で科目選択の幅が広がること。
ストラテジーやオペレーション基礎などは、より専門的な内容のPre-requisit(必須科目)に指定されていることも多い。
また、MBAらしくいろんな分野を学べること。だから、こういう取り方をしている人は結構多い。
デメリットは、そういう授業の学生は半分以上、MBA1年生なので、多様性は余り望めないし、コア科目と変わらない気がすること。

フォーカスするメリットは、やっぱり自分の好きな科目ばかりできるので、楽しいし、深く入り込める。
特にMITが強い分野の専門的な授業に出れば、PhDの学生や、エンジニアリングの学生も多く、普段と違ったより専門的な雰囲気が味わえる。
話も専門的で、先生と深い議論ができることか。
デメリットは逆に次学期以降の科目選択の幅が狭まること。

私の今学期は、ファイナンスII、オペレーション、マクロ経済を除くと、イノベーションのマネジメントや組織論にフォーカスして履修。
ファイナンスIIは、仕事でも使うコーポレートファイナンスをやるので外せなかったし、
オペレーション基礎は、世は広しといえMIT Sloanでしか受けられない、世界トップレベルのオペレーションの授業たちのPre-requisitになっているので外せなかった。
マクロ経済は、経済を学校でやって来なかった理系の私としては、基礎くらい理解しておきたかったし、先生が面白かったので履修。

で、第一週目も終わったところで、履修科目のレビューをば。

15.365 Disruptive Technology - Preditor or Prey ?                                                              

今学期、最も楽しみにしていた授業。
「イノベーションのジレンマ」著者のクリステンセン氏の先生でもあった、Utterback教授が教えていて、クリステンセン氏もたまに教えに現れるという。

行ってみて、圧倒された。
Utterback先生は、授業にはネット会議など最先端IT技術を入れているものの、どちらかというと昔ながらの大学の講義のように話す先生だ。

圧倒されたのは、授業のスタイル云々ではなく、ひとつひとつの先生の言葉。
すごく含蓄のある内容を、簡潔にさらっと言ってしまう。
今まで自分が、イノベーションについて、仕事や勝手に勉強しながら一人で考えてきたことを、たった一言で触れてしまう。
だから、先生の言葉のひとつひとつを聞き漏らすことができず、そして、自分の頭の中にあった、色んな事例や、考えてきたことが、先生の言葉によって有機的につながっていく。
授業が終わって、先生のところに行って自分が考えていたことを話したら、その内容で修士論文を書けるよ、と言われて、その気になっているところ。

正直、今までの人生の中でも、こんな思いをした授業は大学(院)生活の長かった私といえどもそこまで無い。
本当にMBAに来てよかったー、と心底思えた。

授業内容は、まずSカーブの説明や「破壊的イノベーション」の定義をし、その後「イノベーションのジレンマ」 へ。
学生は、それらの事例になるような実際の技術を調べるプロジェクトをやって、今後クラスで発表していく、というもの。

それだけなら、良くあるイノベーションマネジメントの授業に過ぎないが、この授業のすごいのは、例えば、ただのSカーブひとつとっても、世の中でよく言われていることは違うことや、Utterback先生が日ごろ思っている視点を、さらっと加えてしまうことである。
それが、まさに私が悩んでたところなんですよ!という感じなのだ。

ちなみに、Sカーブというのは、産業や技術などの成長の度合いを、時間軸などでプロットするとS字型になる-最初の黎明期はゆっくりしか伸びず、成長期にぐっと一気に伸び、成熟期で勢いが落ちていく-ことから名づけられたもので、あらゆる分野で使われている。

15.351 Managing Innovation and Entrepreneurship                                                

これは、イノベーション研究をやっているMurray女史が、イギリスのオックスフォード大学からはるばるMITに引き抜かれてきて、やっている授業。
今のところ、やはりSカーブなどの基礎的な説明をやっているが、そのうちどうやってイノベーションを起こすための組織を作っていくか、という組織論的な内容をカバーする。

Utterback先生の授業に比べると感動の数が少ないが、私が今まで受けてきたスローンのMBAの授業に比べると、圧倒的に楽しく、発見も多い。
やっぱり自分の興味のある分野だからなのか。

最初のうちは、かなり基礎的な内容をやっているけれど、今まで自己流で勉強してきた私にとっては、何が基礎なのかしっかり理解できるのはうれしい。
授業に参加している学生も、私のクラスは半分以上がSloan Fellowsと、ノルウェーの技術大学からの交換留学で来ている人たち。
彼らから発せられる質問や事例なども面白いものが多い。(いろんな意味で)

今後は、産業のフェーズごとに、どのような研究ポートフォリオを持つべきか、どのような組織レバーが重要になるか、という議論を行う

イノベーションではこのほかに、組織論の授業をもうひとつ履修予定。

15.012 Applied Macro and International Economics                                                

ベネズエラ出身の経済学教授で、MITでも強烈なキャラクターを誇るRigobon先生と、アフリカで開発経済をやっているSuri女史の二人による授業。
春学期の前期だけで終わってしまうため、月、水、金の週三回授業がある。
しかも私は朝8時半~という授業を取っているので、朝からRigobon先生の勢いに圧倒され、目が覚める仕組み。

Rigobon先生が、どんなすごい授業をするかについては、昨年履修されていたふらうとさんしんたろうさんのブログが詳しい。
とくにふらうとさんのりごぼん語録ダイジェストが面白いので、是非そちらを。
私もMITに行く前からこれら先輩方のブログを読んで楽しみにしていたが、実際は意外とまともな発言が多い気がした。
最近は、余りに常軌を逸した言動は取らなくなっている様子。
とくに「プロフェッショナル・スタンダードを守らなくて良い」などということは一切いわなくなったし、シモネタまがいの発言も一切しない。
学生を床に座らせる横暴にも出ないし、景気の悪い中で就職活動する学生が授業を休むことにも口を出さなくなった。
若干残念だが、まあ時代の流れなのだろう。

内容は、いまのところ中央銀行の役割やIS-LM分析といった、マクロ経済の基礎をカバーしており、後半はそれを活用して実際の国際経済の事例を議論していく。
そういった基礎の基礎も余り知らない私は、結構学ぶことが多いが、こういう何も知らない学生たちを相手に基礎を分かりやすく解説しながら、
たったの1ヵ月半で国際経済の議論ができるように育てていくって大変な仕事だなあ、と思う。
正直先生に申し訳ない。

最後の3回はディベート大会で、中国の今後、アメリカの金融システム、アジア統一通貨の可能性、というお題でディベートをやる予定。


15.402 Finance II                                                                                                              

Asquith先生という、これまたMIT Sloanの名物教授が教える授業。
秋学期のAndrew LoのFinance I が、NPV、Option Pricing、CAPMなどなど、前世紀後半に生まれたFinanceの理論を教えてくれていたのに対し、
この授業は企業のFinance manager、ゆくゆくはCFOになれる人材を作るべく設計された授業。
実践的な手法を学び、訓練を積むための授業と位置づけられている。
そのため、宿題の数がはんぱでなく多い。

ケースを読んで、チームで議論して、ケースの主人公に戦略を提案する、というCase Write-upを週に二回提出。
噂には聞いていたが、すごい量。チームで議論したうえ、それを書いてまとめるので、一回一回に相当な時間を取られる。

これだけ宿題が多いのは、先生の「Finance is the every day practice」という信念に基づくもの。
毎日やらないと、実践的な手法は身につかない、ということだ。
文字通り毎日やってる。

内容は、最初の数回でCash Flow Management、次の10回程度で、企業が直面するあらゆるFinancingの手段と評価方法、最後の数回でValuationを学ぶ。
授業は、ライトアップしてきたケースを先生が解説する形。


15.761 Introduction to Operation Management                                                   

MITにはオペレーションではGalien先生という名物教授がいるが、私は若手のFarias先生という先生の授業を取っている。
授業は講義半分、ケース半分、という感じで、オペレーションマネジメントの基礎を学ぶ。

オペレーション管理とは、企業戦略に実際の日々の企業活動が沿うよう、デザインし、管理し、必要に応じて軌道修正をしていくこと。
生産管理、在庫管理、レベニューマネジメント、サプライチェーン、そして品質・効率性管理、プロセスデザイン、などなど、小売業から外食産業から製造業から銀行まで、あらゆる産業のケーススタディをやりながら勉強する。

私はコンサルタントとしては戦略と組織論ばかりやっていたので、オペレーションは新鮮なところも多く、割と面白い。
ケースが外食や小売など身近な上、日本企業も含め有名企業がどんどん出てくるので楽しい。
ただ、これもチームで宿題をWrite-upする、結構負担の大きい授業らしいので、今後どうなっていくか半分楽しみ、半分不安、という感じ。

以上、こんな感じです。

←ついに新学期開始。今学期もしっかり頑張ろうと思うので、応援してくださいね!



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