My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

ネットブックの未来

2009-04-15 10:42:40 | 2. イノベーション・技術経営

メキシコから帰国後、HPminiを「メインマシンとして」使い始めてから2週間。
ネットブックを買う多くの人が「セカンドマシン」として購入する中、一時的とはいえメインとして使ってる人って珍しいんじゃないか。

実際に「メイン」として使ってみてどうかというと、特にディスク容量の制約から、PCの使い方が色々変わった。
そのうち、もしかするとこれがいわゆる「破壊的イノベーション」ってやつなんじゃないか、と思えるようになってきた。
更に、将来はこういう記憶容量の小さいPCを、メインとして使うのが主流になるかもしれない、などと妄想するようになった。

HPminiは、ディスクドライブは2種類から選択できる。
ひとつは160GBの通常のハードディスクドライブ。
もうひとつはSolid State Driveという、読み込み速度が通常のハードディスクより1.25倍ほど速いが、容量が16GBなどと小さいディスクドライブ。
しかも、ドライブの容量が大きい普通のディスクのほうが、Solid Stateより50ドル近く安い。

新しもの好きの私は、読み込み速度の速さに惹かれて、Solid State Driveを購入。

何度も書くが、セカンドマシンとして携帯し、メールチェック、簡単なプレゼンなどを目的として使うなら、16GBでも何も問題ない。
ところが「メイン」として使うとなると、大量の過去の写真や音楽、パワーポイントなどを保存するのに、16GBではとてもじゃないが収まりきらない。

それで、Googleなどからオンラインのストレージサービスのスペースを購入。
容量を食うファイルはそこに全てアップロードすることにした。
20GB程度で年間20ドル程度だから安いものである。
今、私のパソコンには、チームで作業中のエクセルやパワーポイントファイル、このブログに近々アップ予定の写真くらいしか、ファイルらしいファイルは無い。
これはもう使わないな、と思ったらフォルダごとアップロードし、自分のディスクからは消し去る。

最初は面倒かな、と思ったが、実際やってみると、オンラインサービスの方が圧倒的に便利だと気がついた。
MITのようにネットワークに常時つながる環境にいるからかもしれないが、不便を感じないどころか、寧ろ便利なのだ。

まず写真。
考えてみたら、一度取った写真はなかなか自分では見返さない。
本当に見返したいと思ったら、オンラインの写真サービスに接続して見れば良い。

Google Picasaのようなオンラインの写真サービスは、写真を見るソフトシェアも発達してるし、オンラインで加工も出来る。
アップロード・ダウンロードもとても簡単。
探すのもこっちのほうが簡単。
他の人にシェアするときも、いちいちメールに添付するより圧倒的に楽だ。

パワーポイントなどのドキュメントも同じく。
Gmailユーザであれば、メールの添付ファイルをいちいち保存しなくても良いわけで。
やたらタブが増えて使いにくくなったOffice 2007よりすっきりしていて、ソフトとしても使いやすい。
MIT生なら無料でダウンロードできるOffice 2007 Enterprise、もしかしてインストールしなくても良かったかもしれない、と思う始末。

MITに来て、実質「通勤」時間が無くなってしまったので、最近はポータブル・ミュージック・プレーヤーの類も使ってなかったんだけど、その気になればMusic Hosting Serviceだってオンラインで使える。

こういう生活を2週間してみると、常時無線でネットに接続できる環境なら、かさばって、故障の原因になる既存のハードディスクなんて要らないかもしれない、なんて思うようになった。
将来は多くの機器が、常にネットに接続して、大きな保存領域や速いプロセッサを持たずに、機能する、なんて日もくるかもしれない、なんて思うのだ。

もちろん、実際には常時、ほとんど問題なく無線でネットに接続する環境にいる人なんてそんなにいないだろう。
だから、ネットブックをメインとして使って支障なく生活できるなんて、MIT、しかもオンキャンパスに住んでる私くらいかもしれない。

でもWiFiがもっと普及して、いつでもどこでもブロードバンド(古い…)につながるのが普通になったら?
大きな保存領域や速いプロセッサがなくても、支障なく、いやむしろ普通のPCより便利にネットブックを使えるようになるんじゃないか?
それこそ、シン・クライアント(Thin Client)の無線バージョンみたいな感じで、ネットブックが使われるようになる日も来るかもしれない。

または、別のシナリオ。
こうやってネットブックが普及するとともに、Solid State Driveの性能も上がり、記憶容量なんかもハードディスクと同等になって、パーソナルコンピューター市場における既存のディスクドライブの地位を脅かすようになるかもしれない。
そして、小さい持ち歩きパソコンであるネットブックも、共に成長して、パーソナルユースのコンピュータの市場を食うことになるかもしれない。
そうしたら、まさにクリステンセンの「破壊的イノベーション」だな、と思う。
最初は、既存技術の主要市場とは違う、ローエンド市場にサーブしていた新しい技術が、徐々に性能があがって、バリューチェーンごと既存技術の市場を脅かすようになる、っていう。

こっちのシナリオのほうが面白いかもしれない。

などと、色々妄想が膨らむのでした。

←書きたいネタはたくさんあるのに、なかなか書く時間が無くって。クリックで暖かい応援をお待ちしてます!



最新の画像もっと見る

4 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
ネットブック (TK)
2009-09-07 15:15:22
こちらも面白いです。おっしゃるとおりのシナリオになりつつありますね。続編楽しみにしてます。
返信する
続編 (Lilac)
2009-09-08 18:21:32
破壊的イノベーションってネタで、続編的なものは書きたいと思ってましたので、頑張ります
返信する
Unknown (うし)
2010-01-28 12:48:12
10年前外資で働いていたころ、データ、ドキュメントは手元のPCへの保存禁止でした。保存先はすべて会社のサーバ。経理ソフトもメーラーもWEBアプリケーションでサーバから起動。サーバは多分米国本国とフィリピンあたりのアジアにあってメンテナンスされていたと思う。トラブルがあればフィリピンのエンジニアが遠隔操作で手元のPCを直してくれたり。ログイン時のアカウント認証や回線のセキュリティは厳しかったですが、手元のPCのスペックはほどほどでというかんじでしたか。
返信する
Unknown (Lilac)
2010-01-28 20:50:26
>うしさま
面白い。それって米国の防衛施設などもそうらしいです。
ファイルサイズが大きくなってるので、アメリカのネットワークもそれに合わせて大きくなって欲しいですけどね。
返信する

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。