ひとり井戸端会議

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死刑制度と憲法

2007年05月26日 | 死刑制度
 周知の通り、死刑制度に関しては、戦後間もなくの頃から、以来、存置派と廃止派は互いに激しい論争を展開しています。今回は、憲法と死刑制度の関係について、少し考察していきます。

 憲法36条に、次のような規定があります。「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」。しばしば死刑廃止派は、この条文を挙げ、死刑制度の廃止を訴えることがあります。その主張とは、すなわち、死刑が憲法36条の「残虐な刑罰」に該当する、というものです。確かに一見すると、たとえ日本の死刑の執行方法が絞首によるとはいえ、それは取り返しのつかない人の生命を奪うことであり、憲法で禁止している「残虐な刑罰」に該当するように見えます。現に裁判でも死刑の合憲性が争点になったことがあります(代表的なものとして、最大判昭和23年3月12日)。

 しかし、このような主張に対し、最高裁は現在に至るまで一貫して死刑の合憲性を認め、死刑制度は憲法違反ではないとしています(とは言うものの、国民感情の推移によっては、死刑制度が将来違憲となる可能性も指摘しており、前掲最高裁判決では、死刑の執行方法が火あぶり、磔など、「その時代と環境において人道上の見地から一般に残虐性を有するものと認められる場合」には、憲法の言う「残虐な刑罰」に該当すると判示しています)。

 更に、憲法を持ち出して死刑制度の廃止を訴えるならば、その同じ憲法に、死刑制度を是認すると解される条文も同時に存在しているのです。それは13条と31条です。13条には「生命自由及び幸福追求に対する国民の権利」は、「公共の福祉に反し」てはならないと規定されています。つまり、死刑の執行によって社会悪の根源を絶ち、それによって社会を防衛するためには、死刑制度は許されるというものです。31条は、もっと明確に死刑制度を是認しています。すなわち「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命」を「奪はれ」ないと規定しています。死刑制度を「残虐な刑罰」を絶対に禁止する憲法自ら肯定しているのです。

 もちろん、国民感情が変化すれば、死刑制度が将来違憲の存在となることは最高裁が指摘したようにその通りですが、現実は法務省の調査によれば、約8割の国民が死刑制度を支持しています(これは大分前の調査結果らしいので、凶悪犯罪の増加が叫ばれて久しい現在では、もっと多くの国民が死刑制度を支持している可能性も考えられます。なお、総理府(当時)が行った死刑制度の世論調査では、平成元年の時点ですが、死刑制度廃止に反対の国民は66.5%であったといいます。)。国民感情も死刑制度を支持している以上、現在国内法体系における死刑制度は、合憲とされると解釈していいでしょう。

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