メカニック日記

メカニックです。仕事ネタから感じた事思った事など気まぐれに更新していきます…

低品質な整備…2

2020-05-31 07:56:00 | 整備
久々の低品質な整備シリーズ…

そんなシリーズあったのか?って話ですが。
過去にも少し記事にした事があるので 今回は第2弾にしてみました…笑

読んで字のごとく最近経験した低品質整備事例をご紹介します…


乗用車や外車をメインでやられている整備工場さんからのご依頼でアクセルを開けるとヒュルヒュルと異音がするという事で修理の依頼を受けたダイナ…

キャブを上げて目を疑いましたよ…

コレ。


分かります?





あろうことか4番のエキマニスタッドが折れ込んで、それを誤魔化す?ためにボンドで埋めてあるという暴挙…
(ちなみに依頼主さんの整備工場での仕事ではありません…)

コレやった奴は車触んない方が社会のためですよ。本当に。
もし整備士だったとしたら今すぐ辞めて頂きたい。


結論、異音の原因は4番マニホールドからの排気漏れでした…

イヤ、そりゃあどう考えたって締まってないんだから漏れるよな…

逆にコレをやった奴はボンドで排圧を止めきれると思ったのか?

いつどこで誰がやったのかは分かりませんし知りたくもないですけどね…


依頼主さんに説明すると予定を止めてもらうから直ぐに修理にかかってくれ…と。
(そりゃそうだよなぁ…)

部品を手配しつつ分解していくと他にも低品質な整備があちこちにあり…

まずベルト調整用のオルタの取り付けボルトは無くなってるし、ターボ上部のウォーターパイプのユニオンボルトはガスケットが3枚(通常は2枚)入ってるし…





ターボ外してエキマニも外すとガスケットも向きが全然違うし…




エキマニガスケットの向きが1番以外は全部ハズレ。




こんなところまで低品質な整備の手が回っているので正直嫌な予感しかしない。


で、問題の4番…


スタッドが折れた理由は分かりませんがそれを誤魔化すためにボンドって…

塗りたくられたボンドを除去すると上側の折れこんだボルトにはポンチの跡が残っており…
と、いうことは折れ込んだボルトを抜こうとしたという事。
ポンチの位置はセンターから全然ズレてるけどね…


ここまでやって続きをやらなかった事には疑問が残るけど…(ちなみにこの後その理由も判明する…笑)

とりあえずポンチ打ち直して下穴開けてまずはエキストラクターで挑戦…






すると上はすんなり抜けました…



そのまま下側のボルトにかかると、お気に入りの月光ドリルでも下穴が一向に開かない…

アレ?おかしいな…と思い表面をよく調べてみると、まさかの折れたエキストラクター?もしくはドリルが内部で折れ込んでる…





そりゃ穴も開かないはずだわ…

恐らく…
何らかの理由でスタッドが折れ、それを修理する為にターボ、エキマニを外して折れ込んだスタッドボルトの抜き取りにチャレンジするもエキストラクターもしくはドリルがスタッド内部で折れ込んでしまった為に諦めて破茶滅茶な組み方で戻してボンドを大量に塗りたくって誤魔化した…というとこでしょう。

ていうか折れ込ませたスタッドの中に更に余計なモンを折れ込ませてんじゃねぇよ…笑


どちらにしてもエキストラクターでの抜き取りが不可能なのでTIGでボルトに肉盛りして抜きとる事に…

肉盛りして…



適当なボルトを溶接して…



カジらないようにグリグリ慎重に抜き取り…



無事に摘出…






タップを立てて…



どちらのネジ山も問題なしでとりあえずひと安心…




他のスタッドボルトも全交換…



エキマニは当然と言えば当然なんですが歪んでおりました…





本当はエキマニも換えたいところですが、今回は依頼主さんの意向もあって歪みを可能な限り修正して再利用していきます…
鋳物なんであんまりプレスし過ぎちゃうと割れちゃうので注意が必要ですが…


当然ガスケットは新品に交換して…





組み付け…





冷却水も交換して修理も完了です…





今回はこんな低レベルな整備を目の当たりにしてあまりにも腹が立ってしまったので記事にしてみました…

この車両DPF付きだし、一歩間違えば車両火災になる可能性だって十分あった訳です…


お客さんはこんな低品質な整備がされているとも知らずにお金を払っている訳で…
逆に言うとお金払って車を壊されてるんです…

今までどこに修理を出していたのかはお客さんが1番分かっている事だと思いますので、今回の車の状態はありのままを説明させて頂きました。
初めはこの修理を行った所にクレームで持って行こうか…という話も出たのですが、こんな作業をする所がまともな修理が出来るとは思えませんからね…


理由はどうあれボルトを折ってしまった事は仕方ないとしてその時点でお客さんに説明して時間を貰ってでもキチンと修理するべきで…
ボルトの折れ込みなんてこの仕事では日常茶飯事なんだから説明するだけなんですよ…
お客さんに怒られようが何だろうが折れちゃったもんはしょうがないし謝るしかないんだから。

ただそれだけの話なのに自分のミスを隠そうとしてこんなクソ整備をしてる事に腹が立つ…


以上、低品質な整備事例でした…


あ、それからやっとアベちゃんマスク届いた…!!

しかも会社に…笑












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最近の作業…34

2020-05-25 22:22:00 | 整備
緊急事態宣言も多くの地域で解除されましたが…


ウチにはまだアベノマスクは届いておりません…


最近ではマスクの供給もだいぶ追いついてきているのか私の住んでいる地域ではそこそこ普通に買えるようになってきています…


なので…

今更…マスク要る⁇
しかも2枚だけとか…笑

ほとんどの方は使わずに放置されるような気がします…






今年のゴールデンウィークは1日だけ休みがありましたが、過剰自粛ムードの中どこにも行けないので朝から家で子供とゴロゴロして夕方にスーパーにちょっと買出しに行く程度で、それ以外は何もせずダラダラと過ごしました…
今年に入ってからは休み無しで仕事してきたので、まあそんな日もたまにはいいでしょう…笑


これは休み前の作業で…

SCR触媒交換で入庫したプロフィア …
差圧過剰のコードを検出しており、もう排気音からして明らかにおかしかったんですがNOxセンサーの取付ボスから中を覗き込むとスリップ触媒が割れているのが確認出来ました…



で、SCR触媒を交換するために取り外すと…

おぉ…



しかも飛び出してる…



更に取り外すと…
溶損ではなく破損…









この白い塊は尿素水がマフラー内で化学変化を起こす事で生成されるシアヌル酸という物質で、これは尿素水に含まれるトリウレットという不純物が原因です…

よく勘違いしている方がいますがこのシアヌル酸は尿素水がこぼれた時に出来る結晶とは全くの別物です。

この破損の原理も調べていくと生成されたシアヌル酸によって起きている可能性が高い事も分かり…
色々な分野のプロフェッショナルな方々に話を聞くと面白い程に点と点が線で繋がってきます…
その情報を整備の現場にフィードバックしたメンテナンスを行い…
その経過や結果を見ながらより効果の高い予防整備方法を模索、確立している段階です…

まあもちろん全てが想定通りの結果になる事は稀ですし、その過程でまた新たな別の問題が発覚する事も多々あります。

まあ、こんな事言うのもおかしいですが、だからこそ追求のし甲斐があるんですけどね…
簡単に直ったらなんの経験にもならないですから。

エンジンオイルもそう…
鉱物からフルシンセティックに変えた事で一部のエンジンでは別の問題も発生しています…
これは今色々と対策を実験、検証中なのでその結果を楽しみにしています。




で、新品を組み付けてデータをリセットして完了。







お次はマフラーカバーのステーが腐食で脱落したプロフィア の修理。







正攻法でいけばDPRユニットASSYでの交換になるんでしょうが、この年式にその修理代は割に合わないのでステーを製作してカバーを取り付ける事に…


適当なステーを製作。


仮付けしてボルト穴の位置を合わせながら…


位置が決まったら本溶接…



裏側にナットも溶接して…




カバーは取り付け穴が4箇所ありこのカバーの取り付け穴とナットの位置合わせが地味に大変です……

で、気休めの耐熱塗装を施し…



新品のカバーを取り付け…





完了です…




それからフォワードのDPFリビルトの依頼…
単品での持ち込みです。


内部はアッシュに加え軽油の混入も見られたのでこのDPFを搭載していた車両はインジェクターの交換も早めに行った方がいいですね。







分解して洗浄して組み付けて補修塗装まで行い完了…





更に車検で入庫したトラクタとトレーラのセット。


トラクタの方はベローズが危険領域なので交換…











問題はトレーラ…
車両引取り回送時にトレーラーABSのチェックランプが点灯しており…



WABCOのバリオCという古いシステムなんですが、自己診断をかけると…




コンピュータ異常のコード…
消去不可能で検出し続けるので恐らく本当にダメでしょう…

どちらにしてもこのままでは車検NGなので車検と平行して修理をする事に。

といっても、バリオCのコンピュータなんてもうとっくの昔に廃盤になっているのでまだ供給のあるVCS2にシステムごと載せ換え…
PCVやホイールセンサは再利用が可能なのでコンピュータとそれに関係する配線を引き直していきます…





まずは古いコンピュータを撤去して新しいコンピュータの位置決めから…






ここから配線を接続して各センサやアクチュエータ、電源、診断用コネクタを振り分けていくんですが…


とにかく配線が長い…笑








組んず解れつの配線を各所に無理な無いように這わせていきます…



外部診断用のコネクタも新設する必要があります…


現車がタンクローリーなのでタンクやフレーム、サイドバンパー、更にはアウトリガまでもがアルミ…


溶接で取り付け可能な場所が無いので既存の穴を利用して共締めで取り付け。





電源コネクタも当然交換です。



更にcautionラベルも…



で、試運転にて無事にチェックランプが消灯する事を確認して後は車検持込へ…





壊れたコンピュータを開けてみると見事に湿気にやられておりました。









それから少し時間が空いたのでACマシーンの使い方に慣れるためにも自社の足車のエアコン配管のフラッシングをする事に…

3万で買ってきたタントちゃん…



まずはガスを回収してパイプを切り離しフラッシングキットを接続します。


で、標準的な設定で内部フラッシングを開始…
この間は当然自動なので放ったらかしも可能です。


サイトグラスを流れるオイルや不純物を見ながら…



フラッシングも完了…


後は通常の真空引きからガスチャージを行います…



ついでにエアコンの効率をアップする添加剤を注入…


コレ、実際にデモを見せてもらい思ったのはコンプレッサーのフリクションロスは間違いなく減るでしょうね…



で、作業完了…



ビフォーを撮り忘れましたがバッチリ冷えているのでオッケーに。





DPFのチェックランプが点灯するという事で入庫したプロフィア…



洗浄前の差圧はご覧の通り…



DPFを洗浄後の差圧測定は劇的に改善しました…



なにせ大量のアッシュが取れましたからね…





最近面白いのはDPFから出てきたアッシュの状態を見て使用しているエンジンオイルの銘柄がなんとなく分かるようになってきたこと…笑

もちろん全部が全部分かる訳ではありませんがある特定の銘柄のエンジンオイルは出てくるアッシュにも特徴がある事が分かりました…

これは非常に興味深い。


しかし調べれば調べるほどエンジンオイルって奥が深いですねぇ…




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新兵器

2020-05-03 11:15:00 | 工具




最近は暖かくなってきましたが寒いシーズンでも少なからず依頼のあるエアコン関係の修理依頼…
これから暑いシーズンになるとその修理依頼も激増します。

ウチは今までエアコン関係の修理は外注業者さんにお願いする事が多かったのですが、この業界の人手不足はどこも同じで修理の依頼を外注してもすぐには来れない…という状況が多々発生しており結果的にお客様に迷惑をかけている部分があり、どうしたもんか…と今後の対策について色々と考えていました。

で、エアコン修理を自社で完結させようと思うとマニホールドゲージや真空ポンプ、リークテスタ、冷媒ガス回収機等の設備を入れればとりあえずは可能ですが、その方法だと物理的に人間の作業が避けられない部分を除いても全ての工程で人の手による作業が必要になってきます…

その上で今当社の現状を考えると現在の仕事量に加えてエアコン関連修理の全行程に対応している人員的余裕はありません。

そこで去年の年末ごろから考えていたのが全自動A/Cガスマシーンの導入…
理由は簡単で全自動のタイプであれば人が行う必要がある作業を除いた部分を全て自動化できるからです…

そうすれば今まで1から10まで人間が対応しなければならなかった工程の少なくとも半分は自動化が可能で、それならエアコン修理も自社で対応可能になるかな…と色々検討していました。


現在、自動車用エアコンの冷媒ガスはHFC134aというガスが広く一般的で現行車の9割はこの134aが採用されています。
ただ、この134aガスは大気開放禁止のガスという事もあり環境保護の観点から欧州ではHFO1234yfという環境への影響がほとんどない新ガスへの代替が進んでます。

日本の自動車関連規制は欧州規制に右ならえ…といった習慣があり、結果的に日本でも乗用車に関しては2023年以降の新車には1234yfの採用が義務づけられました。

実際、国産乗用車なんかでも既に1234yfが採用されている車種も普通に販売されています…
この代替の動き自体は何も悪い事ではなく、世界的な環境保護という方向性に日本も足並みをそろえたという話。

ただガスが変わるという事は先に書いたマニホールドゲージ等の設備は兼用が出来ないため、使用するガスに合わせた設備が別途必要になってきます…

トラックも当然その対象になってくる訳ですが今のところ代替期限に猶予があり、トラックメインの当社としては1234yfに対してはそこまで急いで考える必要はないかな〜と思い、HFC134aガス専用機を想定して導入を検討していました…



ところが…


欧州の雄であるダイムラーを親会社に持つふそうさんが既に国内向けの新車に1234yfを採用しているという話を聞き…

なんでやねん!とツッコミを入れつつ、当社としては134aの一本に絞ろうとしていた考え方を変更せざるを得ない状況になり…

新たに検討し直しておりました。


結果的にA/Cマシーンを導入しても134aは作業出来て1234yfが作業出来ないって言うんじゃ意味ないよね…という事になり


色々と考えた挙句…


デュアルモデルを導入する事にしました。



コレは134aと1234yfの2種類のガスを一台でメンテ可能なタイプで、更にPAGとPOEの2種類のコンプレッサーオイルの完全分離に対応しているという事で当初からこのタイプの導入を検討しており、スナップオンの方にもわざわざ東京から来て頂きデモも行なってもらっていました。
(その時はもちろんシングルモデルを想定していてまさかデュアルモデルを導入するとは考えてもいなかったけど…笑)


で、ふそうさんが先走って現行車に1234yfを採用してくれたおかげで結果的にシングルモデルでは不十分となりこちらのモデルに変更する事になった訳です…


ただコレでウチのお客様のエアコン修理に自社対応可能になりました…





エアコン修理時に活躍する事はもちろん、予防メンテナンスにも重宝します…

とりあえずデータ取りとして自社車両のエアコンガスをリフレッシュ…


このリフレッシュがエアコントラブル予防には有効で経年劣化でガス配管内に混入した水分やガス自体の汚れをクリーンにして再充填します。



基本的にエアコンって壊れた時しか触らない事も多いですが、エンジンなどと同じで壊れないように予防メンテナンスをする事もこれからの時代には非常に重要になってくる要素の1つです。



購入から約1年のサービスカーのキャラバンなんかは…





こんな結果に…





規定量500gに対して335gしか入ってないんですよ…
ちなみに漏れはないです…

どういう事かと言うと…

恐らく新車でラインオフした段階から少ないんですよ…
キャラバンの製造ラインでどういう方法でガスチャージしてるか分かりませんが少なくとも新車時の充填量管理はいい加減な事が分かります。
まあ商用車なんでそんな所にコストはかけられないと言われればそれまでですが…
こんな状態の個体は数多く存在している訳です。

ちなみに、一部レクサスの製造ラインには同じタイプの機械が導入されてるらしいですけどね…

そうやって考えるとコストをかけてもそれなりの利益が見込める高級車は製造ラインからガスの充填量を管理している訳で…

言い換えれば商用車なんかはコストを下げるために特に管理が甘いんじゃないかと思っちゃいますよね…
とりあえず冷えときゃ文句言われねぇだろ…的な。

でもね…
これが数年単位で見た時にエアコントラブルを起こす要因だったりするわけです。
なんでもそうですが適正なメンテナンスをする事で防げるトラブルは防ぐに越した事ないですから…
予防メンテナンスは長い目で見た時に必ずコスト削減に繋がります。


まずはこれから暑いシーズンに向けてエアコンのトラブルは間違いなく増えるのでウチのお客様に関してはとりあえずガスのリフレッシュをしてシーズン中のエアコントラブルを出来る限り予防したいと思います。

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