徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:森見登美彦著、『夜は短し歩けよ乙女』(角川文庫)~第20回山本周五郎賞受賞作品

2018年01月08日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

 『夜は短し歩けよ乙女』は第20回山本周五郎賞受賞作品。題名は大正時代の歌謡曲「ゴンドラの唄」の歌詞「命短し恋せよ乙女」をもじったものであることは一目瞭然。ということで、急に「ゴンドラの唄」が聞きたくなって、YouTubeでいろいろと聞き比べたところ、森昌子の歌う『ゴンドラの唄(歌:森昌子)』が一番くせがなくてオリジナルに近い感じで気に入りました。

それはさておき、 『夜は短し歩けよ乙女』は大学のクラブの後輩に恋をして、何度も「偶然の出会い」を演出しようとする男と、そのターゲットとなっている後輩の「黒髪の乙女」が交替で語る物語です。少しファンタジーの入ったコメディという感じです。

私は森見登美彦の作品を読むのはこれが初めてなので、この作品の文体が彼のスタイルなのか、この作品独特の演出なのか判断しかねますが、奇妙な表現が満載です。主人公の片割れである乙女はちょっと古めかしい(例えば「楽しきこと」)言い回しをするので、インスピレーションの元である唄の時代をイメージしているのかなと思います。

そして絶賛片思い中の彼は、「私は彼女と私を結ぶ赤い糸が路上に落ちていないかどうか、鵜の目鷹の目で探していた。」なんてことをのたまったりします。え、「赤い糸」ってそうやって探すものなの?

夜に一人でお酒を思いっきり飲みたくなって京都の町をうろつく乙女はとあるリーズナブルなお店を見つけて、「お財布への信頼に一抹の翳りある私のような人間のために神が与えたもうたお店」と面白い言い回しで表現したりします。単に「お財布にやさしいお店」と言っても良さそうなところをそこまで引っ張るか?とツッコミたくもなりますが、こういう奇妙な言い回しと、二人が巻き込まれるあり得ない出来事の組み合わせが醸し出す独特の世界がこの作品の味わいなんだと思います。

少々ドタバタし過ぎているように私には思えますが、かなり笑えるので、エンタメ性は高いと思います。

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