徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:一ノ宮美成・小出裕章・鈴木智彦・広瀬隆他著、『原発再稼働の深い闇』(宝島社新書)

2016年10月23日 | 書評ー歴史・政治・経済・社会・宗教

『原発再稼働の深い闇』(宝島社新書)は福一原発事故の翌年、2012年9月に発行された新書です。反原発運動にかかわりのある人にはすでに有名な小出裕章氏の名前につられて、発行間もなく買った本です。

再稼働問題は、その後悪い方向にしか動いていないようです。そのうちこういった出版物にも検閲が入るようになるのではないかと懸念されるほど、日本の政治は随分とおかしな方向に突き進んでいるように見受けられます。

こうした背景を前に、今一度この本を俎上に載せることは意味があるのではないかと思い、読んでから随分立っているとはいえ、書評を書くことにしました。

まずは目次:

第1章 原発再稼働の深い闇 

― 世論を無視した暴挙のカラクリ なぜ大飯原発3,4号機が再稼働の突破口になったのか(一ノ宮美成)

― 協力会社エンジニアたちの証言 福島第二の水素爆発疑惑を隠し、柏崎刈羽を再稼働させたい東電(鈴木智彦)

— 地元経済に深く食い込む原発マネー 若狭湾「原発銀座」買収工作の実態(一ノ宮美成)

― 現職道知事は経産省と電力会社の”傀儡” 北電「泊原発3号機」再稼働計画に蠢いた金と票(一ノ宮美成)

第2章 世論操作の深い闇

― 血税を使った国民洗脳 やらせ官庁「経産省資源エネルギー庁」原発推進PRの大罪(神林広恵)

— 原子力文化振興財団、電力中央研究所ほか 原子力ムラの公益法人に”天下り”した新聞社幹部たちの実名(高橋篤史)

第3章 汚染隠しの深い闇

— フクシマの原発事故は終わっていない 「冷温停止」「除染」という言葉に誤魔化されてはいけない(語り手=小出裕章、聞き手=明石昇二郎)

— 国連もぐるになった国際原子力マフィアの罪 年間被曝線量の規制値を操る「ICRP」の闇(語り手=広瀬隆、聞き手=大泉実成)

第4章 原子力ムラ復興の深い闇

— 脱原発の壁、天下りコネクション解剖 原子力系「独法」「公益法人」の巨大資産力(高橋篤史)

— 20人中16人が東電救済法案の採決で利害関係者として賛成 東電&関電株を保有する国会議員ランキング(佐々木奎一)

— 手放しでは喜べない「再エネ法」の成立 電通連&永田町”自然エネルギー潰し”の手口(李廉)

— 失敗しても原発業界は取っぱぐれがない仕組み(李廉)

— 原発利権の本丸を追う 「核燃料サイクル」を止めなければ、原発は止められない(李廉)

 

なんかもう、目次の見出しを見ているだけで、どろどろとした黒~い闇が目に浮かんでくるようです。各章ではその見出しに沿って、それを裏付けるデータ、例えば寄付金額とか、推進事業の受注額とか、団体名などが具体的に提示されます。

これらの利権ブロック、原子力マフィアにはいかなる理性的な正論、例えば、日本が地震大国であること、活断層の危険性、放射能汚染による健康被害の危険性などなどがまるっきり無視されてしまうほど、強く甘い利権構造があるわけですね。

東電株を所有する国会議員が多い中で、エネルギー政策に関する議論がなされればどういう結果になるか、推して知るべし、ですし、「団体票」という現象が許されている日本の選挙制度にも問題が大ありです。

ある閣僚経験者(自民党)の元秘書の証言:「電力は今もって、関連業種の裾野の広い巨大産業です。彼らと気脈を通じておくことは、再選こそが最大の関心事である議員にとって、極めて重要なことと言える。解散総選挙が近づき、票の流れが見えない現在のような時期にはなおのことです。
世論の手前、電力業界は以前ほど派手には動けませんが、水面下では活発に議員への働きかけを行っている。とくに、フクシマの原発事故後も種子替えをせず、原発推進に賛同している議員には手厚い支持を約束しているはずです」

これはこれで行動原理として議員自身にとっては筋が通っているのでしょうが、国民のための代議士としては倫理的にダメダメです。こうしたエゴイストに、どういう理由であれ投票してしまう国民の責任もあります。民主主義とは選挙のみで成立するわけはなく、常に自分たちが選んだ代表が不正なく、公約を守っているかチェックする必要があります。その一端を担うはずのジャーナリズムが、日本では政権に飼いならされてしまっており、国民の自覚も薄いなか、どこまで追い詰められれば方向転換するのかと、外からハラハラ見守っている私です。