徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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フランス・カットノン原発稼働期間延長か?!

2016年03月03日 | 社会

カッテノン原発はモーゼル川流域にあり、ドイツ国境から12㎞、ルクセンブルク国境から9㎞しか離れていません。電力事業者はフランス電力会社(Électricité de France、 EDF )ですが、同社株の85%がフランス国家の所有であるため、ほぼ「国営」と見做して間違いありません。

1986年から30年間の稼働期間中に報告義務のある火災、緊急停電、放射能事故などのトラブルが約800件もありました。新たな鑑定書では同原発の原子炉4基が今日の安全基準を満たしていないばかりか、そのレベルに達するための追加装備も不可能だとのことです。カッテノン原発は福島原発事故後に実施されたストレステストで不備が指摘され、現在豪雨や洪水に対する防護装備を施行中です。

にも拘らず、セゴレーヌ・ロワヤール仏環境相はこの原発の稼働期間を40年間から50年間に10年延長する構えです。

老朽化した原発を稼働し続けることは無責任として、ドイツの緑の党などはカットノン原発の即時停止を求めています。

以下はカットノン原発の原子炉4基の詳細です(出典:日本語版ウィキペディア) 

原子炉名格納容器形式
(原子炉形式)
容量(MW)運用者建造者建設開始送電網接続運転開始営業運転開始 
炉心熱出力(MWt)定格出力(MWe)平均出力(MWe)
Cattenom-1 P'4 REP 1300
(PWR)
3817 1362 1310 フランス電力 フラマトム 1979年1月 1986年11月 1987年4月  
Cattenom-2 P'4 REP 1300
(PWR)
3817 1362 1310 フランス電力 フラマトム 1980年7月 1987年9月 1988年2月  
Cattenom-3 P'4 REP 1300
(PWR)
3817 1362 1310 フランス電力 フラマトム 1982年6月 1990年7月 1991年2月  
Cattenom-4 P'4 REP 1300
(PWR)
3817 1362 1310 フランス電力 フラマトム 1983年9月 1991年5月 1992年3月  

 

EDFはイギリスでヒンクリーポイント原発C建設プロジェクトを進行中ですが、ファイナンスの問題や構造上の問題で延期に次ぐ延期。中国のCGNは今年1月、習近平訪英中にこのプロジェクトに33.5%のシェアで参入すると宣言し、実際に180億ポンド(約2兆8790億円) の投資を決定しましたが、建設に携わるCFE-CGC Energy Unionは、フランスにある同タイプの原子炉(アレヴァ社の欧州加圧水型炉)の構造上の問題を先に解決する必要があるため、2019年まで建設・投資プロジェクトを延期すると3月1日に発表しました。こうした建設プロジェクトの延期はもちろんEDFに経済的打撃を与えています。赤字こそまだ出していませんが、現存の原発の稼働期間を延長することは、原発新設における経済的問題をカバーするための必要悪のようです。

一方、アレヴァ社(国有株87%以上)は5年連続で赤字を計上しました。 2015年は20億3800万ユーロの損失を出し、株価は過去12か月で60%下落しました。同社はまだ経済的体力があるとのことですが、近々負債の返済がままならなくなるのではないかと憂慮されています。

フランス原子力の現状と未来は決して明るいものではありません。フランス政府も遅まきながら昨年8月に、2025年までに原発依存度を現在の75%から50%まで下げることを決定しました。フランスが【脱原発】に向かうのはいつのことになるでしょうか?

参照記事:
クリマレッター・インフォ、2016.02.29付けの記事「カッテノン原発:国境の向こう側の危険
ガーディアン、2016.01.26付けの記事「EDFはヒンクリーポイント原発新設のための投資にもがく
BBCニュース、2016.03.01付けの記事「ヒンクリーポイント原発C建設は2019年まで延期
ユーロニュース、2016.02.26付けの記事「原子力グループアレヴァはまた赤字